養護施設の高校生ら、授業料免除で沖大に5人合格

琉球新報 2013年12月17日

 児童養護施設や里親宅で暮らす社会的養護が必要な高校生を対象に沖縄大学(加藤彰彦学長)が開設した奨学生制度で、5人の合格者が16日までに決まった。制度は来年4月以降の入学者が対象で、5人は制度創設後の第1号となる。4年間の授業料(年間72万円)を全額免除する制度は全国でも珍しい。県里親会(比嘉朝文会長)や県内の児童養護施設によると、社会的養護が必要な生徒の大学進学率は低く、進学しても学費が支払えず中退する人も多い。
 県里親会や同施設は「大学でさまざまなことに挑戦し、将来への可能性を広げてほしい」と期待を込めた。
 合格したのは、里親の元で暮らす生徒が3人、児童養護施設の生徒が2人で、いずれも女子生徒。福祉文化学科に3人、こども文化学科に2人が進学する。
 児童養護施設「島添の丘」で生活する合格者の女子生徒は「1年生のころから大学進学を考えていたが、授業料を支払えるか不安があった。合格が決まってうれしい」と声を弾ませ「充実した4年間を過ごし、将来は精神保健福祉士になりたい」と夢を語った。
 玉城孝施設長は「奨学生制度があれば、明るい未来が描ける。他の大学にも広がってほしい」と願った。県里親会の比嘉会長は「子どもたちの努力が報われる。制度があれば将来への道が開ける」と話した。
 奨学生制度は、一定の学業成績があり、里親会や施設長の推薦を受けた新規卒業の高校生が応募資格者。5人は11月に願書を提出し、推薦入試の選考を経て合格した。沖縄大入試広報室の大城貴之さんは「制度ができた後、高校生や里親、養護施設の職員から問い合わせが相次いでいる」と話し、反響が大きいことを強調した。(高江洲洋子)

スマホで未成年被害続発 県警など対策へ

読売新聞 2013年12月18日 地域版石川県

 スマートフォン(スマホ)の普及に伴い、無料通話アプリを介して下心のある大人と未成年が知り合い、児童買春事件などに発展する事例が相次いでいる。県内では今年、児童買春や深夜連れ出しなど未成年の健全育成を阻害する「福祉犯」の検挙数が過去10年で最多となっており、県警は県教委や携帯電話事業者らを交えた会合を初めて開催。危機感を共有し、有効な対策を打ち出したい考えだ。
 県警少年課によると、今年11月末までに、18歳未満の少年少女とのみだらな行為などを禁じた児童ポルノ・児童買春禁止法、県子ども総合条例、児童福祉法などに違反した「福祉犯」の検挙数は88件73人。過去10年のいずれの年間検挙数も超えている。被害に遭った未成年は63人に上るという。
 背景には、若年層の間で、スマホの無料通話アプリが普及したことがあり、県警は今年からスマホが関連する事件の集計を開始。今年10月末までの集計によると、約4割はスマホを介することで、大人と未成年が結びついていたという。
 無料通話アプリに登録すると、取得したIDで電話番号を知らない相手とも通話やメッセージのやり取りができる。このため、利用者向けにIDを交換する掲示板がインターネット上に複数存在。児童買春などの温床になっているとして、アプリ運営会社の中には、今年から18歳未満のID利用に制限を設ける対策を取り始めたところもある。
 同課と大聖寺署が11月に児童福祉法違反などの容疑で逮捕した加賀市の会社員の男(34)は高校2年の少女と8月に掲示板でIDを交換し、無料通話アプリで連絡を取るようになった。男は少女とみだらな行為をしただけでなく、掲示板に「女の子紹介します」などと書き込み。別の男3人とアプリで連絡を取り、少女と引き合わせ、みだらな行為をさせていたという。
 被害を食い止めようと、同課は11月27日、携帯電話大手3社と県教委の担当者らを集め、「携帯電話等利用による少年非行・被害防止対策連絡会」を初めて開催。同課の松本和彦課長は「中高生のスマホ利用を巡る児童買春が後を絶たない。連携を強化し、被害防止を徹底したい」と協力を呼びかけ、店頭でのフィルタリング機能の説明や教育機関での注意喚起などが話し合われた。
 同課は今後も連絡会を随時開催する考えで、「未成年者への啓発活動と積極的な摘発を両輪にして、被害を減らしたい」としている。

体罰での教員処分2253人 過去最多、わいせつも急増 文科省調査

MSN産経ニュース 2013年12月17日

 平成24年度に体罰で懲戒処分や訓告などを受けた教員は計2253人で、昭和63年度の調査開始以来、過去最多だったことが17日、文部科学省の調査で分かった。わいせつ行為などが発覚した教員も増加しており、訓告を含む処分の総計は1万827人(前年度4319人)。最も重い懲戒免職も過去最多の206人に上った。
 調査は、全国の公立小・中・高校と特別支援学校の教員約92万人を対象に実施した。それによると、体罰で処分を受けた教員は小学校652人(前年度81人)、中学校1093人(同180人)、高校488人(同139人)、特別支援学校20人(同4人)-に上った。
 急増の理由について文科省は、「大阪市立桜宮高での体罰自殺事件を受け、これまで指導の一環として見過ごされていたケースも体罰として処分されるようになった」としている。
 具体的な状況は、「素手で殴る」が最も多く全体の60%、「蹴る」が9%、「殴るおよび蹴る」が6%、「棒などで殴る」が5%-の順。場所は教室が37%、運動場や体育館が34%。状況は授業中が33%、部活動中が28%だった。
 わいせつ行為で処分された教員も増加し、前年度より16人多い186人に上った。このうち自校の児童、生徒、卒業生を相手にしたものが96人で過半数を占めた。内容は、体に触るが59人、盗撮やのぞきが40人、性交が35人、陰部などの露出が10人-など。
 このほか、昨年に勤務時間中の組合活動や「カラ研修」が問題となった北海道で教員3795人が訓告などを受け、全体の処分件数が前年度を大幅に上回った。最も重い懲戒免職も、わいせつ行為が119人(前年度101人)、飲酒運転44人(同40人)、体罰3人(同0人)、その他40人(同39人)-で過去最多だった。
 文科省では「事態を深刻に受け止めている。都道府県教育委員会を通じ、再発防止を徹底したい」としている。

LGBTと「社会的養護」――家庭を必要としている子どもたちのために – 藤めぐみ

SYNODOS 2013年12月13日

日本の社会的養護

「社会的養護」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
 社会的養護とは「家庭において適切な養育を受けることができない児童を、社会が公的な責任の下で養育する仕組み(広義には、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を含む)」を指す。平たくいえば、育てる保護者のいない子どもたちを社会でどう育てていくか、という話である。
 現在、日本の社会的養護の現状は批判にさらされている。里親家庭に委託される児童は要保護児童全体の12%(2011年度末現在)にすぎず、残りの児童は乳児院・児童養護施設等で養育されている。アメリカ・イギリスなどの欧米各国では、70%~80%の児童が里親家庭で育っているのに対し、12%は極端に低い数字である。欧米では「子どもは家庭で育つべき」という概念が当たり前になっており、国連から日本政府に対して、このような保護者のいない子どもたちには里親家庭などの家庭的な環境で子どもへのケアを提供するよう勧告が出されている。
 そのような状況を受け、厚生労働省は「家庭的養護の推進」という目標の下、里親家庭の委託率を上げるためにさまざまな施策を進めようとしている。少しでも多くの里親家庭を増やし、社会的養護における施設偏重の現状を里親家庭などの家庭的養護中心のものへ転換していくことは、我が国の喫緊の課題であるといえよう。

「里親の人材」としてのLGBT
 昨年、私は友人から、上記のようなこの国の社会的養護の実態を聞いた。日本で里親制度が普及してこなかったのは、日本の文化が血縁を重んじる傾向にあること、里親自身が里子の養育について語ってこなかったこと、行政による里親制度のPR不足など、さまざまな要因があるらしい。そのとき、私の頭の中に思い浮かんだのは、LGBT(*1)のカップル達の存在であった。
 (*1)LGBT・・・女性同性愛者(レズビアン)、男性同性愛者(ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、性別越境者(トランスジェンダー、性同一性障がいの方も含む)の方々をまとめて指す言葉。
 LGBTカップル間では、生物学的に二人の間で子どもを授かる方法がない場合が多い。その場合、あきらめるか、生殖医療技術によって子どもを授かるか、の主に二者選択の中で決断をするのが現状だ(里親・養親として子育てをしている人は皆無ではないがわずかである)。生殖医療技術は、費用面、倫理面などさまざまな理由で簡単には踏み切れない高いハードルがあり、自分の人生において「子育て」という選択肢をまったくないものとして生きている(もしくは自明なものとしてそう思い込んでいる)カップルも少なくない。
 そんな彼らに、生殖医療による子育て以外にも、社会的養護の観点から子育てに参加することもできる、という事を伝えていけば、「それならば育ててみたい」と考えるLGBTカップルは増えるのではないか。そしてその彼らは、この国の社会的養護における家庭的養護の推進を支える人材として社会的に位置付けることができるのではないか、と考えたのである。
 幸運にも、社会的養護に関わる勉強会を開催している方がこのテーマに関心を寄せてくれた結果、昨年秋、「LGBTと里親制度」と題した勉強会を行うことが出来た。そこに参加いただいたアメリカのソーシャルワーカーの方からは、アメリカではLGBTが里親制度の人的資源として広く認識され、すでに多くのLGBTが里親として子どもの養育に関わっており、LGBT専門の里親・養親支援の団体などが存在することを教えてくれた。
 また、里親の当事者からは、里親もLGBTと同じくマイノリティであるということを聞いた。周りからの無理解・偏見などLGBT当事者の悩みとも共通する部分が多くあった。ある里親さんからは「悩みながら生きてきたLGBT当事者は里親としてむしろ子どもに寄り添える資質があるともいえる」との言葉をいただき、LGBT里親の可能性について考えていくべきだと勧められた。日本でも、この「LGBTと里親制度」、さらに広げて「LGBTと社会的養護」について話し合う場、機会がもっと設けられるべきだと、この勉強会を開催して強く認識したのであった。

「LGBTと社会的養護」の現状
 そのような経緯を経て、今年1月、LGBTの社会的養護への参画を考える団体「RFC(Rainbow Foster Care) http://rainbowfostercare.jimdo.com/」を設立することとなった。
 これまで勉強会を計6回(2013年11月現在)開催し、法律の専門家、ソーシャルワーカー、研究者、里親など、さまざまな参加者が集まり議論を行った。参加者はLGBT当事者のみならず、非当事者でLGBTの社会的養護への参画について興味のある方にもたくさん参加していただいた。
 そこで、日本の「LGBTと社会的養護」の現状について整理された事柄は次のとおりである。

【里親制度について】
 日本では法律上、里親登録できる者を「夫婦」に限定しているわけではない。よって、同性カップルが里親になるために、同性婚制度の整備が必須というわけではない。
 ただし、各自治体に独自の里親認定基準がある。例えば、東京都の基準では、「配偶者がいること」が基本原則となっており、例外ケースである独身者は、保育士などの資格を持っていることや同居の親族等の存在などの要件を別途満たさなければ登録ができない(東京都福祉保健局の回答によると、同性パートナーは「同居の親族等」に含まれないとのことである)。
 独身者の里親登録が容易な県もあり、自治体ごとに里親認定基準がバラバラである。
 里親の「登録」は可能であっても、「委託」されるか否かは自治体の判断にゆだねられており、現状では同性カップルであることを理由として委託を避けられる可能性もある(「登録」「委託」の二つのハードルがある)。
 カップルの一人がトランスジェンダーであれば「同性カップル」と同じ問題が起こる場合がある。しかし、カップルの一人が戸籍上の性別を変更後、カップルが婚姻し、「法律上の夫婦」となった場合は里親登録・委託が可能である。

【養子縁組制度について】
 特別養子縁組の養親の条件は「夫婦」であり、同性カップルが特別養子縁組制度の下で子どもを養子として養育するためには民法の改正が必要である。また、現行の民法で同性カップルが子どもと普通養子縁組をすることは可能であるが、里親制度ですら原則として「夫婦」の基準を設けている自治体がある現状では、自治体が普通養子縁組という形で要保護児童を同性カップルのもとにあっせんする可能性は低そうである(他方、民間の養子あっせん団体では、同性カップルへのあっせんを視野に入れているケースがあるとの情報も寄せられた)。
 このように、児童養護分野については自治体行政の裁量領域が非常に広範であることが判明した。厚生労働省が「家庭的養護の推進」を掲げる現在、各自治体は里親登録できる人材を限定して受け入れるのではなく、より多様な人材を柔軟に受け入れていく方向に転換すべきではないだろうか。子どもにとって必要なのは「安心・安全」な場所である。シングル親の家庭、法律婚を選ばないカップル、同性のカップル……と、すでに家庭が多様化していることに鑑みれば、もはや「父と母がいる『普通の家庭』」に限定して里親家庭を選ぶのではなく、どのような形の家庭であれ「安心・安全」な場所であれば、広く門戸を開くべきである、と私達は考える。

以降省略