養護施設退所者に返還不要の奨学金、市が全国初の進学支援/横浜

カナロコ 2013年12月20日

 児童養護施設を退所し、大学などへ進学する子どもに返還不要の奨学金を支給する取り組みを横浜市が始める。高校卒業と同時に施設を出て、自力で生活しなければならない子どもたちの経済的な負担が進学や学業継続の大きな壁となっている現状がある。施設を退所した子どもへの公的な奨学金支援は全国で初めてという。
 奨学金は月額3万円の生活資金のほか、学費や書籍代、就職活動に必要な品の購入費などに充てられる30万円の一時金。就職に必要な資格の取得、その受験資格を得ることが条件で、資格を取得するまでの期間支払われる。
 奨学金の原資には、市民からの寄付による市社会福祉基金が充てられる。
 市こども青少年局によると、施設を退所した子どもたちの高卒後の進学率は約20%で、全体の約70%(全国平均)を大きく下回る。家族からの支援がないため、学費や生活費を自分で賄わなければならず、経済的な負担が進学への壁となっている。
 学業とアルバイトの両立も難しく、進学しても中退してしまう割合が全体の約3倍に当たる約30%という厳しい現状がある。
 奨学金は、市内に10施設ある児童養護施設の子どものほか、自立援助ホームの子どもなども申し込める。
 募集人数は6人ほどで、書類審査、面接で奨学生を決める。内定した人はオリエンテーション、合宿研修、スピーチコンテストなどのプログラムに参加する。
 また、市の委託を受け、児童養護施設などを退所した子どもへの相談活動などを行っているNPO法人「ブリッジフォースマイル」が西区に設けている「よこはまPort For」に毎月1回以上、来所する必要がある。ここでスタッフから資格取得に向けたサポートを受けることができる。
 問い合わせは、同NPO法電話045(548)8011。
 同NPO法人は21日午後1時から4時まで、桜木町駅前で街頭募金を行う。募金は来年7月ごろに予定するスピーチコンテストの運営資金に充てるという。

沖大奨学生制度 大胆な公的支援が必要だ

琉球新報社説 2013年12月20日

 沖縄大学が県内大学として初めて創設した、児童養護施設や里親家庭の高校生を対象にした奨学生制度で、第1号となる5人の合格者が決まった。年間72万円の授業料を4年間全額免除する。
 虐待などさまざまな事情で児童養護施設などで過ごす子どもたちは全国で約3万人、県内でも500人余に上る。児童福祉法に基づく制度上、18歳になると自立とみなされ、原則として高校卒業時に児童養護施設を退所しなければならず、里親委託も解除される。子どもたちが大学進学を希望しても、経済的な理由で断念する場合が多いという。
 沖大の奨学生制度は、社会的養護が必要な子どもたちに夢と希望を与えるだけでなく、子どもたちの厳しい境遇に社会の関心を向けるきっかけともなり意義は大きい。あらためて敬意を表するとともに、県内の他の大学などにも波及することを期待したい。
 一方でそれは行政が担うべき役割でもある。高等教育の付与はいわば人材への投資であり、最大の振興策であるはずだ。未来への投資として、希望する生徒全てが進学できるよう大胆に予算を配分してしかるべきだ。
 国の支援制度では、18歳の施設退所時に、「大学進学等自立生活支度費」として7万9千円が支給される。親の経済的援助が見込めない場合は特別基準が加算されるが、家賃や生活費を工面しながら多額の授業料を自力で賄うには、限界があるのは明らかだ。
 3年前のクリスマスに児童養護施設にランドセルが寄付されたことをきっかけに、全国に「タイガーマスク現象」が波及したことは記憶に新しい。裏を返せば、施設で暮らす子どもたちへの公的支援が十分ではなく、個人の寄付や民間の支援団体の善意に支えられている実態を示していよう。
 厚生労働省の調べでは、児童養護施設で暮らす生徒の大学などへの進学率は約1割にとどまり、過半数が進学する一般家庭とは大きな格差がある。
 貧困と低学力には因果関係があることが学力テストから立証されている。とりわけ沖縄の貧困率は全国最悪との調査結果もある。社会的養護が必要な子どもたちの境遇は推して知るべしだ。貧困の連鎖を絶ち切るためにも、国、県を中心に、社会全体で子どもたちの未来を閉ざさない仕組みを早急に構築する必要がある。

福祉施設「養育園」、新たに3職員が暴行疑い 千葉

MSN産経ニュース 2013年12月21日

 知的障害のある児童らの福祉施設「養育園」(千葉県袖ケ浦市蔵波)で11月下旬、入所者の少年(19)が職員1人から暴行を受けた後に死亡した問題で、県は20日、入所者への暴行を認めた5人のほかに、男性職員3人が別の入所者を暴行していた疑いがあると発表した。
 県が18、19の両日、障害者総合支援法に基づいて実施した立ち入り検査で判明した。県によると、平成23年夏ごろ、2人の男性職員が少年とは別の男性入所者に馬乗りになり、頭を蹴るなどの暴行を加えていたという複数の目撃証言があった。「2人で暴行していた」という証言もある。
 また、別の1人の男性職員による暴行を目撃したとする報告を23年度に施設長が受けたこともあったが、聞き取り調査で「虐待ではない」と判断されたという。今月の問題発覚後、施設長は「虐待の報告は受けていない」としていたが、「思い出した」と説明したという。
 また、施設の指定管理者である県社会福祉事業団から県に事故として報告書が提出されていた1件が、暴行によるものだった疑いも浮上した。森田健作知事は20日の臨時記者会見で「痛恨の極み。再発防止に全力で取り組む」と話した。
 同事業団は同日、暴行を認めていた20~50代の男性職員5人を解雇した。