児童虐待判断マニュアル 群馬の小児科医、米の医学教科書翻訳

TOKYO Web 2013年12月28日

 子どもが虐待を受けたかどうかを見分ける虐待医学の専門書「子ども虐待医学」(明石書店)が今月、翻訳出版された。原書は米国で教科書として使われる一方、日本語の体系的な専門書はこれまでなかった。翻訳した済生会前橋病院(前橋市)の小児科医溝口史剛(ふみたけ)さん(38)は「虐待診断が進むきっかけになれば」と話している。 (伊藤弘喜)
 原書は二〇〇八年に出版された。小児科や外科、婦人科、皮膚科、精神医学などの専門家計四十九人が執筆し、さまざまな研究データを紹介。虐待の見分け方を解説している。
 例えば、頭のけがの研究では、ベッドなど低い所から転落した六歳未満の子ども二百四十六人を調べた結果、脳や脊髄を傷めた例はないと指摘。そうした事例では、親などが「ベッドなどから転落した」と主張する場合でも、虐待の可能性が高いとしている。
 米国では、虐待問題にかかわる医師や警察官、裁判官、ソーシャルワーカーらの間で、虐待医学を体系的にまとめた定番の教科書として読まれているという。溝口さんは「虐待があったかどうかの判断に生かせるエビデンス(証拠)やデータが詰まっている」と話す。
 教科書を以前から知っていた溝口さんは〇九年、八百ページ超の翻訳に取り掛かった。翻訳版では詳細な目次と索引を加え、使い勝手を良くした。日本子ども虐待医学研究会の市川光太郎会長は「虐待判定のバイブルとなる」と推薦する。
 米国の医療界では一九六二年に医師が初めて児童虐待を報告して以来、五十年以上の虐待判定の蓄積がある。一方、溝口さんらによると、日本の医療界が制度的な虐待対策の構築に乗り出したのは、十五歳未満の子どもからの臓器提供を可能にした一〇年の臓器移植法改正後。虐待を受けた子どもからの提供が禁止され、虐待を見抜く医療態勢の必要性に迫られたためだ。
 溝口さんは「日米の数十年のギャップを埋める本。従来は断片的な知識と経験で虐待の判断を迫られた。統計的なエビデンスに基づき、より客観的で正確に虐待を見抜けるようになれば」と願っている。
 「子ども虐待医学」はB5判八百七十七ページで三万九千九百円。
<児童虐待> 殴ったり、激しく揺さぶったりする「身体的虐待」、子どもに性的行為をする「性的虐待」、食事を与えないなど育児を放棄する「ネグレクト」、言葉での脅しや目の前で家族に暴力を振るう「心理的虐待」の4分類がある。厚生労働省によると児童虐待は年々増え、2012年度は6万6701件。虐待を受けた子どもは小学生(35・2%)が最多で、3歳~学齢前(24・7%)、0~3歳未満(18・8%)、中学生(14・1%)。11年度は58人が虐待で死亡した。

憲剛 児童養護施設慰問「来て良かったな」

スポニチ 2013年12月28日

 川崎FのMF中村が川崎市内にある児童養護施設の川崎愛児園を慰問した。自身が設立した児童虐待やいじめ撲滅を目的とした一般財団法人「チャイルドワン」の活動の一環で、家族による養育が困難な子供たち約30人と交流した。
 5月にサッカー用具を贈呈したが、訪れたのは初めて。書籍をプレゼントしたり、急きょグラウンドで子供とボールを蹴り合うなど触れ合った中村は「歓迎してもらって。子供たちからは(悲しさや寂しさを)顔に出さない強さを感じる。そのことに僕が励まされる。またみんなの顔を見に来たい」と今後も継続して支援、交流していくことを約束していた。

福祉施設の暴行、施設長が上司に虚偽報告 千葉・袖ケ浦

MSN産経ニュース 2013年12月27日

 知的障害のある児童らの福祉施設「養育園」(千葉県袖ケ浦市)で、入所者の少年(19)が職員の暴行を受けた後に死亡した事件で、同園の施設長が2年前に起きた職員2人による暴行を把握したが、上司の袖ケ浦福祉センター長に「不適切な支援(対応)はなかった」と虚偽の報告をしていたことが27日、分かった。県が記者会見で明らかにした。
 県は同日、同園の指定管理者の社会福祉法人県社会福祉事業団(近藤敏旦理事長)に対し、障害者総合支援法と児童福祉法に基づき、同園の新規利用者の受け入れを当分の間停止する行政処分と、施設長を施設運営に関与させない体制整備の検討などを求める改善勧告を出した。
 県によると、施設長は11日の立ち入り検査時には「暴行の報告はなかった」と説明。しかし、その後の県の調査に「報告があったことを思い出した。聞き取り調査したが虐待はなかった」と証言を覆した。
 さらに、県が詳しく事情を聴くと、施設長は「もう1つ報告があったことを思い出した」として、平成23年12月に職員4人が虐待をしたとの報告があったと証言。このうち2人が暴行したと判断し、24年1月に口頭注意したことを認めた。その後、施設長はセンター長に「不適切な支援はなかった」と事実と異なる報告をしたが、県は理由について「現時点では施設長に聞いていない」としている。
 県はこれまでに、同園の元職員5人が少年を含む入所者10人を日常的に暴行していたことを確認。別の職員3人も暴行した疑いが判明している。25、26日の3回目の立ち入り検査では、新たに職員1人の暴行が確認されたほか、同園や関連の障害者施設「更生園」の職員計2人が入所者に暴行した疑いも浮上した。