里親を増やそう 支援ネットワーク結成

読売新聞 2014年2月28日

 桑名市とNPO法人、児童養護施設などが27日、親と離れて暮らさなければならない子どもたちを養育する里親を増やそうと、「くわな里親支援ネットワーク」を結成した。同市によると、児童相談所を持たない自治体が、里親支援に乗り出すのは珍しいという。
 ネットワークを結成したのは、市子ども総合相談センター、市内の里親らでつくるNPO「チャイルド・ネットワーク」、子育て支援の活動をしているNPO法人「MCサポートセンターみっくみえ」、乳児院・児童養護施設「エスペランス桑名」「エスペランス四日市」。桑名市役所で、伊藤徳宇(なるたか)市長ら代表者が、協定に調印した。
 協定に基づき、ネットワークは今後、登録者を増やし、委託率を向上させるための里親に関する説明会を開いたり、里親の家庭を訪問して支援したりする。
 市子ども総合相談センターによると、死別や虐待などで、親と暮らせない子どもは、児童養護施設などに入所するか、里親に養育される。里親の登録や養育の委託は、県の児童相談所が行っている。家庭環境に近い里親に育てられるのが望ましいが、県内で里親に引き取られる子どもの割合は約17%にとどまるという。
 同センターは「里親は長期の養育と思われがちだが、短期で預かる制度もある。正しい情報を広め、里親になるハードルを下げていきたい」としている。問い合わせは同センター(0594・24・1298)。

虐待から守る「子どもシェルター」県内初開設へ

読売新聞 2014年2月26日

 虐待などで家庭に居場所を失った子どもを受け入れる一時保護施設「子どもシェルター」が、今秋にも県内で初めて新潟市内に開設される見通しとなった。行き場のない子どもを救う緊急避難所としての役割に期待がかかる。(深谷浩隆)
 子どもシェルター全国ネットワーク会議(東京)によると、子どもシェルターは2004年に東京都内に初めて開設された。虐待通告件数の増加で児童相談所の一時保護所が定員を超えるなど、子どもの受け皿が不十分なことを背景に全国に広がり、現在は9都道府県で運営されている。
 新潟では、昨年4月から県弁護士会子どもの権利委員会が中心となって設立準備を進めてきた。岡山県のシェルターの視察などを経て、今年1月に運営主体となる「子どもセンターぽると」を設立。6月には新潟市からNPO法人として認可される見込みといい、その後はシェルターとする一軒家を探したり資金面を支える会員や協賛企業を募ったりして、10月頃の開設を目指す。
 シェルターは、性被害などに遭う危険性が高く緊急の保護を要する女子を対象とし、基本的に15~19歳の定員6人を予定。主に児童相談所から一時保護措置の委託を受ける形で子どもを受け入れ、常勤職員やボランティアスタッフらが寄り添って食事や衣類を無償で提供する。子ども一人一人に担当弁護士を割り当て、児童福祉機関とも連携しながら支える。連れ戻しによるトラブルを避けるため、場所は公表しない。
 滞在は平均2か月程度を想定し、その間に親子関係を修復させて家庭に戻したり、児童養護施設や就労をサポートする自立援助ホームなど次の居場所を探したりする。虐待以外に、妊娠して家を飛び出した子や交際相手から暴力を受けた子なども受け入れる。
 運営団体の理事を務める黒沼有紗弁護士は「行き場のない子どもは潜在的にいるはず。彼らにとって一つの選択肢になれば」と話している。

いじめ:前年の1.5倍増 警察との連携で「迅速な対応」

毎日新聞 2014年02月27日

 2013年の1年間に「犯罪」として摘発された事案が前年の約1.5倍の410件に上るなど深刻さを増すいじめ問題。対応が後手に回った大津市の中学生自殺事件をきっかけに、学校現場では警察との連携を強める動きが出ている。
 昨年8月、名古屋市教委と愛知県警は、いじめや非行に関する協定を結んだ。事件として対処すべきいじめや生命に関わる恐れがある事案については、学校から警察に児童生徒の名前など関連情報を提供するなどの内容。同市教委は「警察と連携を密にすることで迅速な対応ができる」と意義を強調する。
 横浜市が昨年12月に策定した「いじめ防止基本方針」は、警察や児童相談所など関係機関からなる「いじめ問題対策連絡協議会」の設置をひとつの柱に掲げた。
 こうした動きの背景にあるのは、いじめ防止対策推進法だ。大津市の事件を機に成立した同法は警察との連携強化に踏み込んだ。学校現場は従来、「校内で起きた問題は学校で対処する」との意識に加え、「警察に通報すれば保護者から子どもを『売った』などと批判される」として、警察の介入をちゅうちょする傾向があった。
 いじめ問題に詳しい千葉大の藤川大祐教授は「被害者を守る意味で、学校は警察に委ねるべき事案は委ねるという対応が必要だ。警察に相談しないことは子どもの間に、犯罪行為があっても罰せられないという認識を生む恐れもある」と指摘する。一方、元小学校教員で白梅学園大の増田修治准教授は「教師が『警察に言ってもよいのか』などと子どもに言うなど、表面的な解決や自己防衛のために警察の力を借りようとして本末転倒になっているケースも出ている。いじめの背景にしっかり目を向けることが大切だ」と話している。【三木陽介】

ブラピ&アンジーに4人目の養子!? 小さな子の「養子縁組」なぜ日本で少ないのか

弁護士ドットコム 2014年02月27日

 ブラピ&アンジーが4人目の養子? 小さな子の「養子縁組」は日本でなぜ少ないのか
 ハリウッド俳優のブラット・ピットとアンジェリーナ・ジョリー夫妻が新たに養子縁組を考えていると報道され、話題になっている。夫妻にはすでに、3人の実子と3人の養子、計6人の子どもがいるが、さらにエチオピアから女の子を養子として迎えることを検討しているという。
 ブラピ、アンジーに限らず、アメリカでは養子縁組が盛んだ。朝日新聞GLOBEの記事によると、年間12万件以上の養子縁組が成立するという。特に、公的な里親制度を利用した養子縁組がそのうちの約5万件にのぼるとされる。
 一方、日本の場合、6歳未満の子が対象となる特別養子縁組の数は年間300件前後と格段に少ない。なぜ日本とアメリカで、小さな子どもを対象にした養子縁組の件数が大きく違うのだろうか。また、特別養子縁組とはどんな制度で、その課題はどんな点にあるのだろうか。家事事件に多く関わってきた石川一成弁護士に聞いた。

実の親との関係が「終了」する
 「特別養子縁組は、実の親が育てられない要保護児童に、新しい家庭を与えることがそもそもの制度目的とされています。
 最大の特徴は、養子となる子どもと『実の親』との親族関係が、法律上は『終了』するということです。つまり、その子どもは法的に、新たに養子縁組をした『養父母』だけの子になるのです」
 実の親との関係が切れるという点で、里親が子どもを預かって一時的に育てる「里親制度」や、二組の親子関係が併存する「普通養子縁組」とは異なるという。
 「普通養子縁組は、合意と届出で成立します。それに対して、特別養子縁組を成立させるためには、家庭裁判所の審判が必要です」
 ほかにも、特別養子縁組の親になる側は原則として、25歳以上で、配偶者がいなくてはならず、特別な事情がない限り離縁できない……といった様々な条件が課されるという。

特別養子縁組が少ないワケは?
 「特別養子縁組は、親子関係の終了という重大な効果を及ぼすため、数々の厳格な要件が課されているのが特徴ですが、問題も指摘されています。
 たとえば、特別養子縁組をするためには、『実の親の同意が原則必要』とされている点です。これが問題になるのは、実の親が行方不明で連絡が付かないようなケースです。
 法律上は、実の親が行方不明の場合、同意がなくても許容されうることになっています。しかし、養子の斡旋(あっせん)機関である児童相談所は、後になって実の親が現れてトラブルになるのではという懸念から、一般に特別養子縁組の申立てを控える傾向があるようです」
 特別養子縁組には養子の年齢という、タイムリミットもあるという。
 「また、養子の年齢についても原則6歳未満という制限があり、それ以上の年齢の児童を特別養子にはできません。
 これも、実父母が行方不明等の場合にまで年齢制限を設けるのは、合理性に乏しいと言われています。
 このように、特別養子縁組が現実的に利用しにくい制度であることが、日本で小さな子どもの養子の数が少ない一つの原因と考えられます」

幸せな家庭を一つでも多く
 石川弁護士は日本の養子制度の問題点をこのように指摘したうえで、次のように述べていた。
 「アメリカは『すべての子どもは家庭的環境で養育を受ける権利がある』という理念の下、養子制度を発展させて来ました。日本もこれを見習い、法の不備の改正のほか、里親養子手当制度や養子斡旋法の制定など、国を挙げた施策が望まれます。
 家庭に恵まれない子どもと、子どもに恵まれない父母のマッチングを図り、幸せな家庭を一つでも多く増やしていくことが、日本の養子制度にも期待されています」