和歌山虐待死:児相、協議会開催「不要」 乳児院の要請に

毎日新聞 2013年11月08日 07時39分(最終更新 11月08日 08時34分)

 和歌山市の自宅で長男星涼(せり)ちゃん(2)に暴行を加えて死亡させたとして会社員、原和輝容疑者(26)が傷害致死容疑で逮捕された事件で、和歌山県子ども・女性・障害者相談センター(児童相談所)が、乳児院から家庭復帰の前に、関係機関の担当者による協議会の開催を市に求めるよう要請されていたにもかかわらず、「必要なし」と判断していたことが7日、分かった。

 時期はセンターが乳児院からの家庭復帰方針を決めた6月4日の直後だった。今回の事件では、センターの対応が問われており、県は8日、有識者による検証委員会の初会合を開く。

 2012年2月から措置入所していた星涼ちゃんは今年7月8日、乳児院での措置が解除され家庭復帰。しかし、同24日に外傷性くも膜下出血で死亡が確認され、10月23日、原容疑者が逮捕された。

 乳児院によると、今年2月ごろから、一時帰宅から乳児院に戻った際、星涼ちゃんが他の子どもにかみつくなど落ち着かない行動を見せたり、発熱や下痢の症状が出たりすることもあった。このため、「家庭で何らかのストレスを受けている可能性がある。まだ虐待の心配がある」と伝えた上で、警察や教育機関、保健所などで構成する「要保護児童対策地域協議会」の個別ケース検討会議の開催を市に求めるよう要請。しかし、センターは「親の姿勢が改善されている」としてその必要性を認めなかった。【中村好見】

児童養護施設:子供向け就職情報誌「エール」2号発行 同じ環境で育った先輩の声、届けたい /神奈川

毎日新聞 2013年11月06日 地方版

 児童養護施設など出身の子どもたちの就職支援をするNPO「フェアスタートサポート」(横浜市中区)が、施設退所者の就活や就職後の体験談を掲載した情報誌「エール」の2号を今月発行する。

 フェアスタートサポートの永岡鉄平代表(32)は、18歳で自立を迫られる施設出身の子どもたちが、住み込みの条件を優先して自分と合わない仕事に就いてしまったり、その後の離職が住居喪失に直結して非正規雇用から抜け出せなくなってしまったりする現状を指摘。「同じような環境で育った先輩の声を『エール』で発信したい」と語り、ロールモデル(行動を模倣・学習する対象となる人)を示す必要性を強調する。

 1号は、全国に約590カ所ある児童養護施設のほぼ全てに送付した。「子どもたちに読ませたい」と数十冊単位でのリクエストもあったという。

 2号には、児童養護施設退所後、解体工事の仕事やアルバイトを経て、現在はIT企業で働く男性(22)ら「先輩」に就職活動や仕事のやりがいに関してインタビューした内容が掲載されている。

 10月22日にシェアオフィス「さくらWORKS関内」(横浜市中区)で行われた「エール」発行記念のトークライブには、施設出身者が登場した。

 児童養護施設で育ったという会社員、吉江英利さん(40)=千葉県船橋市=は「今は子どもが3人いて家庭を持つが、当時はどういう仕事、どういう可能性があるのか分からなかった。仕事の種類を知り、可能性を自分で見つけてもらいたいので、貴重な情報が(施設の)皆さんの手元に届けば」と話した。

 問い合わせはフェアスタートサポート(045・568・4266)。情報誌の印刷費や発送費の寄付も募っている。【山田麻未】

京都・25歳殺害:養護施設の後輩少年 強殺容疑で逮捕

毎日新聞 2013年11月04日 21時07分(最終更新 11月04日 21時38分)

 京都市北区のマンションで10月、ラーメン店店員、松竹順さん(25)が遺体で見つかった事件で、京都府警北署捜査本部は4日、窃盗容疑で逮捕した住所不定、無職の少年(19)を強盗殺人容疑で再逮捕した。少年は、松竹さんが2004年2月まで暮らしていた京都市内の児童養護施設の出身。捜査本部によると、「全く知らない」と容疑を否認しているという。

 再逮捕容疑は9月26日午前0時から8時半の間、松竹さん方で、松竹さんの前胸部を刃物で刺して死亡させ、キャッシュカードなどが入った財布を奪った、としている。刃物は見つかっていない。  捜査関係者によると、少年は05年10月から08年9月まで施設に入所。松竹さんとは重なっていないが、手紙をやりとりし、今年9月以降は松竹さん方に度々寝泊まりしていた。少年は「松竹さんの漫画本などがなくなり、犯人視されるトラブルがあった」、更に「松竹さんから1万数千円を盗み、飲食やネットカフェに使った」と供述しているという。少年は10月15日、松竹さんの携帯電話を盗んだ窃盗容疑で逮捕された。

 松竹さんの父弘さん(51)は「逮捕と聞いてもモヤモヤした気持ちは晴れない。裁判になれば、あの子がなぜ殺されなければならなかったのか、見届けたい」と話した。また、児童養護施設の男性施設長(58)は「ここで育った2人が被害者と加害者になってしまったとすれば、本当に寂しい。今も支え合って生活している子供たちがおり、『悲しいことがあったが強く生きていこう』と伝えたい」と唇をかんだ。【土本匡孝、花澤茂人】