BPO「明日、ママ―」審議せず 肯定的な意見も

スポーツ報知 2014年3月17日

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の「放送と青少年に関する委員会」は16日、児童養護施設を舞台にした日本テレビ系のドラマ「明日、ママがいない」を審議対象としないことを決めた。
 BPOによると、委員から「関係団体への配慮は丁寧にしなければいけない」という意見が出た一方、「デリケートな問題を扱いにくくなるのは問題」との指摘もあり、総合的に判断し審議しないことを決めた。視聴者からは「番組が問題を明るみに出した面もある」と肯定的な意見もあったという。
 青少年委員会は委員の意見をまとめ、委員長コメントとして近く公表する。これとは別に、慈恵病院(熊本市)が審理を求めた申立書を受理するか、放送人権委員会が検討している。「明日―」は12日に最終回が放送された。

退所後のケア考える、横浜で児童養護施設職員らシンポ/神奈川

神奈川新聞社 2014年3月16日

 児童養護施設を退所した子どもたちへの支援を考えるシンポジウム「アフターケアの保障を実現させるために」が15日、県社会福祉会館(横浜市神奈川区)で開かれた。児童福祉の第一線で子どもたちに向き合っている県内外の児童養護施設職員らが、退所者に必要な支援の在り方を探った。
 児童養護施設に入所する子どもたちが、法的に保護されるのは原則18歳まで。社会経験や経済力が未熟なまま自立を求められ、相談できる相手もいないなど、困難を抱えてしまうケースが少なくないという。
 シンポでは、強羅暁の星園(箱根町)の男性が、退所者と長く関係を保ち、勤務先の人間関係や家族の問題を抱えた退所者をケアした事例などを紹介。「施設は子どもたちの実家になりうる場所。お金、時間、人、理解がなければアフターケアはできない」と力説した。
 退所者や元職員らが集う「集まろう会」などの活動を行っている聖母愛児園(横浜市中区)の男性は「強みを生かし、弱みを補う。施設内だけで完結せず、外部とも連携したい」と語った。
 先駆的な取り組みが行われている東京都からは、子供の家(清瀬市)の男性が参加。「退所者は年々増えるが、アフターケアは、基本的に一生涯必要。大切なのは、退所者とつながり続けていること」と呼び掛けた。
 また、県からは子ども家庭課の菊池正敏課長が出席し、2014年度から予定している新規事業について説明した。
 シンポは児童福祉に携わる有志で構成する「かながわアフターケア勉強会」と、「わかもの互立(支えあい)ネットワーク」の共催で、北海道や埼玉など県内外から約80人が参加。児童養護施設退所者を支援するNPOや里親らも交え、活発に意見交換した。

奨学金が夢つなぐ 「にじのはしファンド」支援で大学卒業

琉球新報 2014年3月16日

 南城市にある児童養護施設「島添の丘」を卒園した後嵩西優(しいたけにし・ゆう)さん=山口県萩市在=(23)が、2013年4月から山口県社会福祉事業団で働いている。経済的な理由などから、児童養護施設卒園生の大学進学率が沖縄県平均に比べて低い中、後嵩西さんは「島添の丘」卒園生で初めて4年制大学を卒業した。生活費の捻出が難しく、挫折しそうな時期もあったが、NPO「にじのはしファンド」(糸数未希代表)の奨学金を受けて大学生活を継続。「学業に専念できた。ファンドの人たちとのつながりが心の支えになった」と実感を込める。
 ファンドは11年1月、児童養護施設などから大学・専門学校に進学したり、資格取得に励む若者へ経済的な支援を目的に発足した。代表の糸数さんと当時、山口福祉文化大学2年生だった後嵩西さんとの出会いが設立のきっかけだった。糸数さんは、学業とアルバイトの両立が厳しくなっているという後嵩西さんの窮状を施設から聞き、ファンドを立ち上げ、生活費月額5万円の送金を始めた。
 後嵩西さんは母親が病気のため家庭で暮らすことができず、1歳半から高校卒業まで「島添の丘」で育った。保育士を志して大学へ進学。授業料は学費減免制度を活用し、日本学生支援機構の奨学金と飲食店のアルバイト収入で生計を立てた。故郷を離れた生活、保育士資格に必要なピアノの演奏が上達せず、心が折れそうになる時期もあった。そんな中、生活費の支援が始まり、ファンドのブログで他の奨学生の近況を読んで、気持ちを立て直した。
 3年次の保育実習が転機に。障がいのある子どもたちがゆっくり、着実に成長する姿に心を揺さぶられた。特別養護老人ホームで介護職として働いているが、将来は同じ事業団が運営する障がい児の保育施設で働きたいと願っている。「子どもたちと同じ目線に立って成長を支えたい」。未来を描き、夢を膨らませている。(高江洲洋子)

寄付金募り奨学金支給 にじのはしファンド
 約3年前に設立した「にじのはしファンド」は、これまで6人に奨学金を支給してきた。活動の原点には、1959年に発足し、約30年間活動した「首里奨学母の会」の存在がある。首里地域の女性たちが毎月、豆腐1丁分を節約して寄付金を集め、子どもたちの通学を支援した。代表の糸数未希さんは母の会の歩みを自らの活動に重ね「子どもたちの成長を実感しながら支援できることがやりがい」と笑顔で語る。
 趣旨に賛同するサポーターから受け取った寄付金(毎月1口千円)を積み立て、1人当たり月額3~5万円を支給。奨学生は家賃、寮費、教科書代などに活用している。4月以降、奨学生は継続希望者3人のほか、新たに5人が加わって計8人になる。過去最多になるが、現行のサポーター数では長期的な送金が難しくなる見通し。そのため、ファンドは新たなサポーターを募っている。
 同ファンドのブログからサポーターの加入手続きができる。

死亡時画像診断:子供の遺体、診断拡充 虐待死見逃し防止−−厚労省

毎日新聞 2014年03月16日

 死亡した子供を対象に通常は患者の診断に使う医療機器で遺体の画像データを残し、死因の究明に役立てようという取り組みが、新年度から本格化する。厚生労働省の旗振りで、全国の一部医療機関では死亡した子供全てに原則実施する。医療関係者は「虐待死の見逃し防止につながれば」と期待する。【一條優太】
 遺体の画像を撮影し死因を探る取り組みは「死亡時画像診断(Ai)」と呼ばれ、成人では珍しくない。子供のAiを巡っては、日本医師会の検討委員会や厚労省の検討会が、児童虐待や不慮の事故の防止に有効だとして例外なく実施すべきだと提言。背景には「病気であれ、事故であれ子供の死は常に異常」という考え方がある。
 各都道府県の委託でAi事業に取り組む大学病院などは、2014年度から、院内で死亡した全ての子供に、遺族から承諾を得てAiを実施。費用は厚労省と都道府県が負担する。対象年齢は15歳未満となる見込み。
 日本では幼児死亡率が他の先進国に比べて高いとされるが、明確な理由は分かっていない。子供の事故に詳しい横浜市の小児科医、山中龍宏医師(66)は「子供は死亡時の情報が少ない事例も多い。Aiで体内の情報が得られるのは利点だ」と評価。病院や児童相談所、警察などの連携が不十分な点を踏まえ、「Aiだけでは十分と言えず、情報収集・分析の体制づくりも必要だ」と話す。
病院や警察、広がる活用
 東京・銀座の雑居ビルにある「Ai情報センター」。約8畳のオフィスにパソコンが並び、インターネットを通じて全国から画像データが集まってくる。2009年に開設され、Aiの経験が豊富な医師12人が画像を診断している。
 センターで扱う件数は右肩上がりで、13年は160件。犯罪や医療事故が疑われる事例のほか、裁判所に証拠採用された画像の鑑定も請け負う。代表理事の山本正二医師(46)は「病院や警察、弁護士、保険会社のほか、死因に納得しない遺族からの依頼もあり、ニーズは高い」と語る。解剖と違って遺体を傷つけず、遺族の心理的な抵抗が少ないことも大きなメリットだ。
 国内の遺体解剖率は解剖医不足などから約2〜3%にとどまる。多くは医師が遺体を外から見るだけ。こうした現状がAiで改善すると期待され、本格的に取り組む医療施設は全国二十数カ所に増えた。警察も事件性の有無を確認するためにAiを活用する。警察庁によると、12年度に全国の警察がAiを依頼した件数は分かっているだけで5519件と、5年間で10倍だ。
 課題は残る。1件5万円程度の費用は病院や遺族が負担することも多く、Ai学会は「国が負担すべきだ」と主張する。捜査機関が依頼する場合は「捜査情報」として遺族への開示が制限されかねない。専門の医師の養成も必要だ。

ことば
 死亡時画像診断(Ai)
 通常は患者の診断に使うコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像化装置(MRI)などで遺体の画像を撮影し死因を調べる手法。「解剖」という意味の「autopsy」(オートプシー)と、「画像診断」の「imaging」(イメージング)の頭文字を組み合わせた。2000年に作家で医師の海堂尊さんが提唱した概念。海外では「バートプシー」(バーチャルとオートプシーを組み合わせた言葉)などとも呼ばれ、英国やオーストラリア、スイスなどで導入が進められている。

「准保育士」導入を検討 政府、子育て経験女性を担い手に

日本経済新聞 2014年3月14日

 政府は保育士不足を補うため「准保育士」制度を作る検討に入った。子育て経験のある女性が保育所で働く環境を整え、保育所に入れない待機児童を減らす。ただ、保育士団体の反発も予想され、調整は手間取りそうだ。
 政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)が14日に開いた「雇用・人材」の分科会で、民間議員が提案した。政府が成長戦略を改定する6月に向けて、女性の活躍を推進する政策の提言をまとめる。
 子どもを保育所に預けることができず、職場復帰を諦める女性はなお多い。今は保育所を造っても、保育士が足りない問題が深刻だ。育児経験のある主婦は数多くいるが、保育士の国家資格を得るには専門知識を学び、実技試験に合格する必要があり、主婦にとってはハードルが高い。
 分科会は、国家資格の保育士より簡単な試験や研修で取得できる准保育士という民間資格の新設を提案した。専門知識のハードルを下げる一方で、主婦の子育て経験を重視する。現在でも保育士の資格を持たない人が補助として保育所で働くケースもあるという。
 政府は07年に准保育士制度を検討し、導入を見送ったことがある。当時は、准保育士が広がれば、保育士全体の賃金が下がると危機感を抱いた全国保育協議会などの業界団体が反対した。
 分科会は女性の就労を抑える一因とされる税制や年金などの制度見直しも求めた。妻が専業主婦の場合に夫の所得税負担が軽減される「配偶者控除」の縮小・廃止が柱。専業主婦が社会保険料の納付を免除される「第3号被保険者制度」は存続の是非を含めて見直すよう求めた。子育て中の女性が在宅でも働きやすいよう深夜労働の割増賃金といった規制を緩めるべきだとの意見も出た。