高等教育を誰でもどこでも無料で「JMOOC」スタート 会員数3万人突破 メインはビジネスパーソン

ITmedia ニュース 2014年4月14日

 日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)は4月14日、日本初の大規模オープンオンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)として、東京大学と放送大学の提供する3コースの講義配信を始めた。今後順次コースを拡充し、100大学との提携と利用者100万人を目指す。
 MOOCは任意の科目の映像講義をオンラインで視聴し、小テスト/課題に取り組み数週間かけて学んでいく教育サービスの総称。米国を中心に利用者は世界で数百万人以上に上っている。日本では、JMOOCが昨年10月に発足し、民間企業と教育機関ともにパートナーを広げてきた。現在約20大学からの講義提供が決まっている。
 JMOOC公認の配信プラットフォーム「gacco」の登録者数は約2カ月で3万3000人を突破。利用者の年代はビジネスパーソン層の30~50代が多いという。カリキュラム開発にたずさわる東京大学大学院情報学環の山内祐平准教授は「まだまだ目標は高いが、これだけの人が待っていてくれたことは喜ばしい」と話す。
 同日スタートした東京大学の本郷和人教授の「日本中世の自由と平等」の受講総数は約6800人で、平均年齢は46歳(男性47歳、女性42歳)、男女比は7対3となっている。「日本史というテーマもあり、男性が多めで平均年齢はやや高め。女性は20~30代も比較的多い。いわゆる“歴女”層でしょうか」(山内准教授)
 約1カ月の開講期間は1週間毎に区切られ、10~15分の講義映像を5~10本視聴し、課題に取り組む必要がある。講義の確認の意味だけでなく、自分で調べなければ答えが出ない設問も。最終課題のレポートを提出し、一定の成績を修めると実名入りの「修了証」(PDFを予定)が発行される。
 MOOCの大きな特徴の1つが、受講生同士や講師陣がコミュニケーションできる掲示板。同講義でも開講前から活発に利用されており、年齢や学ぶ動機がそれぞれ違う受講生同士の自己紹介がずらりと並ぶ。講義内容に関する質問に受講生同士で回答するなど相互学習の様子も早速出てきている。
 期間内に2回の発展的な内容の対面講義の機会を設ける有料オプション「反転学習コース」には当初定員の100人を上回る約140人の申し込みがあった。一般参加者に加え、全国から高校生を招待し、16歳から81歳まで幅広い年代が集うことになる。
 放送大学は2コースの提供を開始。岡部洋一学長による「コンピュータのしくみ」、山田恒夫教授による「にほんごにゅうもん」を独自プラットフォーム「OUJ MOOC」で配信する。動画やリンクが埋め込まれた電子教材で学習を進めながらFacebookグループでディスカッションする形式で、教材のアップデートはタイムラインに通知される。
 岡部学長は放送大学がMOOCに取り組む意義について「教育のあり方が日々変化している中、放送を通じた形式では難しい双方向的な学びのスタイルを蓄積する必要を感じている」と話す。JMOOCの理事長も務める白井克彦理事長は「放送時間の制約がなく、科目数に制限がないのがネット配信の魅力の1つ」としつつ、「単位や学位を授与するには個人認証システムなどの観点からまだ難しい」と違いを述べた。
 「gacco」では年度内に18講座の開講が決定しており、現在「インターネット」(慶應義塾大学 村井純教授)、「経営(マネジメント)入門」(グロービス経営大学院 荒木博行教授ほか)「マンガ・アニメ・ゲーム論」(明治大学 氷川竜介客員教授ほか)などの受講登録を受け付けている。
 JMOOCが掲げる目標は、「100大学との連携」と「利用者数100万人」。キャリア選択に望む高校生や、知的興味の強い社会人、企業教育の現場などに活用されればとしている。当面は会員企業・大学の会費で運営費をまかなうが、受講生向けのスタディツアーやフィールドワークの企画、企業研修への導入などビジネスモデルは検討していきたいという。
 白井理事長は「教育面で共通の基盤を持つことは人類課題の解決につながるはずで、MOOCが実現している“高等教育の大衆化”は世界中で今後さらに進んでいくのでは。グローバルな動向を注視しつつ、日本の地域社会や少子高齢社会にも貢献したい」と国内の今後の発展と普及に取り組む。

「保育所に子どもを預けられない!」待機児童問題は「法の下の平等」に反しないか?

弁護士ドットコム 4月14日

 子どもを保育所に預けたくても、定員オーバーで入れることができない――。厚生労働省によると、認可保育所に入れなかった「待機児童」は2013年10月時点で、全国に約4万4118人。3年連続で減少したが、まだ解決にはほど遠い。
 親たちが保育所を選ぶ際にも、「どの保育所が良いか」と探す前に「どこなら入れるか」と考えるしかない状況だという。今年2月には、待機児童の多い東京都杉並区と中野区で、子どもを認可保育園へ入所させられなかった親たちが、区に対して数十人規模の集団異議申し立てをおこなった。
 2015年度に始まる「子ども・子育て支援新制度」についても、預けられる要件がゆるやかになったとして評価する声があるが、どんな運用になるかは結局のところ各自治体しだいだ、という指摘もある。市や区などの自治体は「待機児童の解消」について、法的な責任を負っていないのだろうか。待機児童の問題に取り組む大井琢弁護士に聞いた。

児童福祉法では「待機児童」はないのが原則だが・・・
 「共働き夫婦の家庭など『保育に欠ける』子どもについては、原則として市区町村が、認可保育園において保育をしなければならないとされています(児童福祉法24条1項)。それにもかかわらず、待機児童がなくならないのは、市区町村が『例外』を言い訳にしているからです」
 その例外とは、児童福祉法の24条1項ただし書きのことだ。そこには、こう書かれている。「ただし、保育に対する需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない」。
 つまり、多くの自治体は「やむを得ない事由がある」と言い訳しているというのだ。
 「そのような言い訳を許さないためには、杉並区や中野区の保護者の方々のように、異議申し立てという形で、行政に対して声を上げる必要があります。私も昨年と今年、杉並区の保護者の方々の異議申し立てのサポートをおこなっています」

憲法14条の「平等原則」に違反する可能性も
 現実には、保育所に「入所できた児童」と「入所できなかった待機児童」という差が生じている。はたして、それは「平等」と言えるのかと、大井弁護士は指摘する。
 「認可保育園に入所できるかどうかは、保護者にとっても、子ども自身にとっても切実な問題です。
 しかし、待機児童が多い市区町村では、認可保育所に入所できるかどうかは紙一重です。『なぜ、うちの子どもが入れないの?』という疑問を持つ保護者もたくさんいらっしゃるはずです」
 こちらも、「やむを得ない場合」には、公正な方法で選考できるという記載が条文にはあるが・・・。
 「それでも、認可保育園に入所できる子どもと、入所不承諾となって待機児童となる子どもが生じているのは、『差別的な取扱い』といえます。自治体がそのような措置をとる合理的理由がないとすれば、『法の下の平等』を定めた憲法14条1項の平等原則にも違反することになります」
 ルールの趣旨を考えれば、いつまでも「やむを得ない」として、現状を是認するわけにはいかなさそうだ。大井弁護士は「2015年度から始まる新しい制度でも、こうした問題点が解消されるわけではありません」として、今後もいろいろな方法で行政を動かしていく必要があるだろうと話していた。
 (弁護士ドットコム トピックス)

国家公務員の人事評価 パワハラを助長

しんぶん赤旗 2014年4月13日

 国家公務員の職場で2009年から人事評価制度が実施されています。総務省の「人事評価に対する検討会」は2月にまとめた報告書で、同制度の運用に「非常に難しい課題」があると指摘しました。日本共産党の山下芳生議員が10日の参院内閣委員会で、同制度がパワハラも助長していると批判しました。
 人事評価制度は、職員の能力と業績を評価し、賃金などに反映させるものです。
 日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)は12年にアンケートを実施。5省庁の約5000人が回答し、「本来、求められる仕事は何なのかという視点を失い、数値目標だけが重視される」という人は60%にも上りました。「評価者(上司)ごとに評価基準があいまい」との回答も過半数を占めました。
 山下氏は委員会で「公務は国民の権利を保障する仕事だ。数値目標による人事評価はなじまない」と指摘。稲田朋美行政改革担当相も「私もその通りだと思う。民間でも数値目標になじまないものもある」と答えました。しかし、現行制度を改善する考えは示しませんでした。
 人事院が行っている「苦情相談」の3割はパワハラです。
 山下氏は「自らの成果を上げるために部下に目標を求めることも起きている。パワハラを助長することになっている」と告発しました。稲田担当相が「人事評価がパワハラの原因になってはならない」と答えたのに対し、山下氏は「そうなってしまう構造的な問題がある。評価する上司自身も評価されるからだ」と指摘しました。
 富士通総研・経済研究所のリポート「成果主義と社員の健康」(11年)は、成果主義の導入と、うつ病など精神疾患による長期休業者の増加との関係を指摘しています。
 国家公務員の長期病休者(11年度)のうち、20代の8割、30代の7割超が精神疾患です。稲田担当相は山下氏に「非常に大きな課題だ」と答え、メンタルヘルス対策を強化すると述べました。

処方クリームに細菌性など皮膚感染症使用禁忌のステロイドが混入

QLifePro医療ニュース 2014年04月11日

横浜市の山口医院でアトピー性皮膚炎に処方
 神奈川県横浜市都筑区の山口医院が、アトピー性皮膚炎に処方していた「漢方クリーム」で、説明とは異なり、ステロイドが混入していたことが判明した。4月4日、病院側が対応方針などについて説明するとともにこれまでの経緯を明らかにし、謝罪のために患者説明会を開催した。
 今回、ステロイドが入っていないと説明していたにもかかわらず、実際にはステロイドが混入していることが判明したのは、山口医院がアトピー性皮膚炎患者に対し、1番、2番という案内で処方していた外用剤。使用による副作用の恐れがあるため、消費者庁リコール情報サイトでも、対象のクリームを使用している患者に対し、皮膚科を受診するよう案内している。

設備清掃の不備でクロベタゾールプロピオン酸エステルが混入
 山口医院の発表によると、処方していた「漢方クリーム」は、中国中医研究開発公司に製造を委託していたもので、ステロイドが混入しているのではないかとの指摘を受けたことから、同医院が調査を依頼したところ、設備の清掃に不備があったため、平成25年出荷分の外用剤について、同じ設備で製造していた他の製薬会社向けステロイド製剤が混入した可能性があるとの回答を得たという。
 混入していたのはクロベタゾールプロピオン酸エステルで、ステロイドのなかでも1群に分類されているもの。湿疹に対して効果がある一方で、細菌などの皮膚感染症に対しては使用禁忌となっている。皮膚萎縮や緑内障などの副作用の恐れもあり、注意が必要だ。
 山口医院では今回の事態を重く受け止め、今後この中国中医研究開発公司から供給を受ける製品について、「漢方クリーム」以外のこれまで提供してきた全ての外用剤も含め、取り扱いの中止を決定。引き続き原因究明と再発防止に努めていくとしている。(紫音 裕)