スマホのルール 生身のつながり優先で

中日新聞 2014年5月6日

スマートフォンや携帯電話を手放せない子どもが増え、社会問題化している。利便性とトラブルが同居する空間とどう向き合うべきか。人と人との生身のつながりの大切さを考え直す機会としたい。
ひと月余り前、埼玉県警はこんな事案を発表した。
ガールズバーで小学六年の女子児童を接客させていたとして、児童福祉法違反の疑いで経営者を逮捕した。時給千二百円で真夜中に働かされ、学校は休みがちだった。
驚かされたのは、女児がスマホの無料通信アプリ「LINE」を通じて従業員の募集を知り、連絡を取ったというのだ。親や先生は異変に気づかなかったのか。大人の責任は重い。
内閣府調査では、今や小学生の四割近くがスマホやケータイを持っている。中学生では二人に一人、高校生になるとほぼ全員だ。
好奇心の旺盛な子どもにとってインターネット空間は魅惑的だろう。友だちとやりとりしたり、ゲームに興じたり。調べものに役立てれば、学習効果も見込める。
例えば、昨年の小六と中三を対象にした全国学力テストの結果を見ると、一日一時間までネットを使っているという子どもの成績が最も良かった。それ以上になると成績は下がり気味だった。
携帯端末はもろ刃の剣だ。うまく使いこなせず、依存しがちな子どもの増加は気にかかる。食事中も布団の中でも手放さない。睡眠不足から勉強や運動がおろそかになる。反社会的情報に触れ、犯罪に巻き込まれる危険も高い。
「LINE」では手元に届いたメッセージを読んだかどうかが即座に相手に伝わる。返信しないといじめや仲間外れにつながりかねず、書き込みをやめられない。そんな強迫的な現象も起きている。
子どもに買い与えるなら親子でルールを決めるべきだ。だが、子どもの世界の“おきて”があると、親は口を挟みにくくなる。
愛知県刈谷市の取り組みは注目したい。四月から全小中学校とPTAが連携し、午後九時以降は親が預かり、使わせないという共通ルールの導入を試みている。早くも効果が表れたという。
親にも子どもにも、大義名分が立つからだろう。学校と地域、家庭が足並みをそろえて絞り出した知恵を評価する声も出ている。
もっとも、外からの使用制限ではネットとつき合う力は育めまい。生身の人間関係こそが道具に振り回されない自主性や自立心の糧となる。再確認しておきたい。

<社会的養護の今>(中) 環境を整える

中日新聞 2014年5月6日

光が注ぎ込むダイニングキッチン。カウンターの上には子どもたちの帰りを待つように、おやつが並んでいた。ここは茨城県つくば市の児童養護施設「筑波愛児園」の小規模グループケア施設。小学生から高校生までの男女六人が、職員とともに暮らしている。同様の施設が園内に計六カ所ある。
「小さいけれど個室もあり、好きな写真を飾ることも一人の時間を持つこともできます」と園長の山口公一さん(66)。ことし一月までは寮のような建物で、子ども十三人が一組で生活していた。建て替えで職員の担当する子の数はほぼ半数になり、子どもとの関係が濃くなったという。
朝起こすとき、前は一回声を掛けて終わりだった。今は起きられない子には何度か声を掛け、顔色を見る余裕ができた。話し掛けてくる子に職員が「後でね」と返すこともなくなった。山口さんは「子どもが『自分は大切にされている』と、感じられることが何よりも重要」と言う。
山口さんによると入所児の約八割が被虐待児。多くが自分の存在を否定していたり、人を信用できなかったりする。「養育は肯定的な受け止めの積み重ね。小さな集団だから安心感を持たせられる」と小規模化の利点を話す。
国も家庭的な環境や安定した人間関係下での養育が必要として、里親委託と施設の小規模化を進める。しかし、主に建て替え費がネックとなり、今も児童養護施設の半数は定員二十人以上の「大舎」のままだ。
筑波愛児園の建て替えはNPO法人「リビング・イン・ピース」(東京)が協力。クレジットカード決済で、毎月千円からの寄付を募る「チャンスメーカー」プログラムで資金を集めた。会員は現在、二十~三十代を中心に約五百人。広報担当の佐藤徹さん(29)は「何かしたいと考える人は少なくない」と話す。

進学就職の状況

進学をサポートする団体もある。名古屋市のNPO法人「ひだまりの丘」は、市内の児童養護施設に有償ボランティアの大学生らを派遣し、小中学生の勉強を見ている。理事の高村俊輝さん(30)は「施設について事前に学んだり、子どもたちの学習状況を共有したりして、丁寧な指導を心掛けている」と工夫を話す。
児童養護施設の子の高校・大学進学率は、全体と比べて低い=表。家庭学習の習慣が身についていなかったり、施設職員が多忙で勉強を見られなかったりするのが一因とみられる。東京都内の施設で学習支援をする塾「学力会」代表の杉浦孝宣さん(54)は「施設の中学生には、国や自治体から学習塾費が支給されるが、もっと早い時期から、学習支援を受けさせてあげるべきだ」と話す。

経済的困難が加わる大学進学に対しては、NPO法人「タイガーマスク基金」や同「ブリッジフォースマイル」(東京)などが進学資金の援助をしている。タイガーマスク基金代表の安藤哲也さん(51)は「自立や自活は普通の人にだって難しい。安全なネットワークは、十八歳で施設を出た後も必要」と訴えた。

特別養子縁組み あっせん事業の団体指導を

NHKニュース 2014年5月7日

厚生労働省は、民間団体が行う特別養子縁組みのあっせん事業について、縁組みを行ったあとも育ての親と子どもを継続的に支援することなど、団体が果たすべき役割について細かく決め、これに基づいて団体を指導するよう都道府県などに求めました。

特別養子縁組みは、血縁関係のない大人と子どもが裁判所の許可を得て親子関係を結ぶ制度で、民間団体によるあっせんは平成23年度は127人で、増加する傾向にあります。
あっせんを利益目的で行うことは法律で禁じられていて、厚生労働省は都道府県などに対して、民間団体の事業が適正に行われているか指導するよう求めています。
しかし、具体的な事業の在り方が決められておらず、指導が難しいとして、東京都が去年12月、厚生労働省に改善を求めていました。
これを受けて厚生労働省は、生みの親に養子の同意を得る前に、公的な支援を受けながら自分で育てる方法などについて丁寧に説明することや、養子縁組みが成立したあとも子どもや育ての親を継続的に支援するなどといった、団体が果たすべき役割について細かく決め、都道府県などに通知しました。
また厚生労働省は、乳児院などの施設で暮らす子どもの養子縁組みの取り組みを強化するため、児童相談所に対して民間団体と連携するよう求めました。

いじめは自殺の原因ではなく誘因 その違いは?

EconomicNews 2014年05月05日

2012年9月、品川区の区立小中一貫校に通う12歳の男子生徒が自宅で自殺した。それから1年半。被害を受けた生徒の両親が、区役所、担任、生徒と保護者らに対して約1億円の損害賠償を求めた裁判が、4月16日から始まった。両親はいじめ行為の重大性、犯罪であることを世の中に伝えると会見で述べている。
被害生徒が殴る蹴るといった暴力を日常的に振るわれていたこと、脅迫されたこと、クラスの多くの生徒から言葉の暴力を受けていたこと、同学年の多くの生徒がそのいじめの存在を知っていたこと、傍観者のままであったことなど、非常に悲しい事件であった。日本中が大騒ぎになった大津のいじめ自殺から1年もたたずになぜこんな悲劇が起こってしまったのか、と思ってしまう。
事件後、いじめた側も児童相談所送致などの制裁を受け、区役所も有識者を交えた調査委員会による調査がされ、「いじめ等調査・対策報告書」がまとめられ、議会ではいじめ解決に関する決議が行われたようだ。
調査委員会の調査に参加した遺族であったが、今回司法に訴えた。裁判では品川区は「因果関係を認めない」との主張をしているそうだが、報告書では「いじめが自殺の誘因であった」ことが認められている。さて、誘因と原因はどう違うのか。
誘因とは「ある事柄を誘い出す原因」と定義される。他方、原因とは「ある物事や、ある状態・変化を引き起こすもとになること。また、その事柄」と定義される。いじめが自殺の直接的原因であったとみるか、自殺の原因ではないがいじめは誘因の1つだったとみるか、その違いと解釈できる。いじめが自殺という結果を引き起こした主な原因かどうか、つまり、因果関係の強さ・度合が争点だということだ。
この裁判についてはその推移を見守りたいが、この裁判の行方にかかわらず、区役所は対策を粛々と実行してもらいたい。報告書では、第一に教育委員会事務局に「いじめ問題対策チーム」を設置し、いじめの原因や背景について分析すること、第二に専門技術を持つスクールソーシャルワーカーの設置すること、第三に児童生徒へのアンケートによる学級アセスメントの実施、第四に学校検証委員会の設置、第五に目安箱とホットラインの設置が提言されている。こうした対策が形骸化しないよう推移を見守りたい。(編集担当:久保田雄城)

面前DV 心に深い傷 児童虐待 県内通告の半数

中日新聞 2014年5月6日

児相「暴力の環境 離れるのが最善」
虐待があったとして警察から児童相談所への通告対象となる子どもが、全国で増えている。特に目立つのは、両親間のドメスティックバイオレンス(DV)を子どもが目の当たりにする「面前DV」。心理的虐待の一種で、ここ数年で顕在化してきたと指摘される。児童にどのような変化を生むのか。その根深い心の傷を追った。(兼村優希)
少女は、母親の代わりに“良妻”を演じようとしていた。父親がビールを飲もうとすると、いそいそとつまみを用意。「おまえは気が利くけど、母親は気が利かん」。そう言って父親はまた、少女の目の前で母親を殴った。父親の気を引くことだけが、家族の中で自分のポジションを保つ唯一の方法だった。児童相談業務に長年就いている金沢市児童相談所(金沢市富樫)の川並利治所長(55)が、これまでに把握した事例だ。
面前DVは二〇〇四年の児童虐待防止法の改正に伴い、心理的虐待の内訳に取り入れられた。石川県警によると、理解が浸透したこともあり、県内では昨年、児童虐待での通告人数のうち半数以上を占めた。警察が夫婦間のDVを確認して発覚するケースがほとんどだった。
川並所長によると、面前DVによる心の傷は、明らかな兆候として表に出ることは少なく、はたから見ただけですぐにその影響とは分かりにくい。ただ、「被害が重篤でないからといって、決しておろそかにしてはいけない」と断じる。父親と一緒になって母親をたたいたり、学校の友だちに暴力をふるったりといった形で表出することもあるという。
DV被害を受けた親が子連れで住居を転々としながら、加害者側の親から逃げ回るケースも多い。川並所長は「逃げることに必死で子どもに目を向けられない。その間に子どもは心の傷をどんどん深めていく」と警鐘を鳴らす。
DVの夫婦では、互いに強く依存する場合もある。だが川並所長は「解決には一刻も早く暴力の環境から離れることがベスト。別れるという選択肢もある。大切な子どものためにも、親と子の生活をきちんと立て直してほしい」と強く訴えている。

「お母さんにやさしい国」ランク

毎日中国経済 2014年05月07日

「お母さんにやさしい国ランキング」、アジアではシンガポールが首位、韓国が続く―シンガポール華字紙
シンガポール華字紙・聯合早報(電子版)は6日、国際救援団体セーブ・ザ・チルドレンが発表した最新の「母親指標~お母さんにやさしい国ランキング~」で、シンガポールが2年連続でアジアの首位を獲得したと報じた。
セーブ・ザ・チルドレンは毎年、母の日に合わせて同ランキングを発表しており、今年で15回目。今年の上位3カ国はフィンランド、ノルウェー、スウェーデンだった。シンガポールは15位でアジア最高位。30位の韓国、32位の日本、61位の中国を上回った。最下位はソマリアだった。
母子生存率、児童生存率、教育水準、国民総所得(GNI)、女性の政治的地位について、世界178カ国・地域をランキングした。シンガポールについて、セーブ・ザ・チルドレンの東南アジアと東アジアエリアを統括するGreg Duly氏は「非常に素晴らしい。地域内の他の国々を大きく上回っている。女性と子どもの福祉が短期間で大幅に改善されている」と称えている。
東南アジアで最もランクが低かったのはミャンマー。ベトナム、ラオス、カンボジアは順位を落とし、それぞれ93位、129位、132位となった。このほか、マレーシアは68位、フィリピンは105位、インドネシアは113位となっている。
(編集翻訳 小豆沢紀子)