景気回復で物価上昇鮮明 雇用環境も改善、賃上げは追いつかず

SankeiBiz 2014年6月28日

景気回復を背景に幅広い品目で物価が上昇し、雇用環境の改善も鮮明になってきた。27日発表された5月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3.4%上昇の103.4と、12カ月連続で上昇した。上昇幅は1982年4月(3.5%上昇)以来、32年1カ月ぶりの大きさ。消費税増税の影響を除いても1.4%上昇した。完全失業率は3.5%と16年5カ月ぶりの低水準だった。

高額品の販売好調
「景気が良くなり、高機能な製品を買う動きが広がっている」
家電量販店ビックカメラの広報担当者がそう話すように、東芝が4月に発売したフルハイビジョンの約4倍の高精細な画像を楽しめるノートパソコンは、想定価格が23万円前後と高価にもかかわらず、「販売は堅調」(広報担当者)だ。景気回復やサポートが終了した基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」からの買い替え需要が追い風となっている。
5月の消費者物価指数の上昇は、消費税率の引き上げの影響(2.0%)やエネルギー価格の上昇が大きいものの、価格上昇品目は469と、下落品目の46を大きく上回った。
品目別ではノートパソコンが15.5%上昇、エアコンも19.4%上昇するなど、税率の引き上げ分以上に値上がりしている品目も多く、脱デフレに向け順調な道筋をたどっている。
消費全体は消費税増税後の反動減がなお続いている。総務省が同日、発表した5月の2人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は27万1411円と、物価変動を除いた実質で前年同月比8.0%減だった。東日本大震災が発生した2011年3月(8.2%減)以来、3年2カ月ぶりの落ち込みだ。
高額の自動車や住居で反動減が大きいが、食料の消費支出が前月比で4.1%のプラス、家具・家事用品が3.0%プラスと、一部で落ち込みが和らいでいる。消費の現場では「価格を比較するより、いいモノを選ぶ傾向が強まってる」(イトーヨーカ堂の戸井和久社長)、「少し高くても消費者は品質の良さを求めている」(ロイヤルホストの矢崎精二社長)という。麻生太郎財務相も同日の会見で、支出落ち込みについて「想定の範囲内ではないか」と述べた。
雇用環境を示す経済指標も好調だ。厚生労働省が同日、発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.01ポイント上昇の1.09倍と18カ月連続で改善し、1992年6月の1.10倍以来、21年11カ月ぶりの高水準。総務省が発表した5月の完全失業率(同)も、前月比0.1ポイント低下の3.5%に改善し、97年12月以来、16年5カ月ぶりの低水準になった。
ただ、雇用環境の改善を受け賃上げやボーナスの増額が相次ぐものの、まだ物価の上昇分には追いついていない。

正社員化促進も課題
総務省の5月家計調査によれば、自営業などを除いたサラリーマン世帯の実収入は実質で前年同月比4.6%減の42万1117円と8カ月連続マイナスだった。
また、失業率が同水準だった97年当時と比べると、労働者全体に占める非正規雇用の割合は2割強から4割近くにまで高まっている。人手不足が深刻化するなか、人材確保のために一段の賃上げや、非正規社員の正社員化を進める企業も増えており、今後そうした動きが継続的に拡大するかが景気の行方を左右しそうだ。

児童虐待の捜査情報、不起訴でも児相に提供指示

読売新聞 2014年6月27日

和歌山市で昨年7月に起きた男児虐待死事件に絡み、法務省が、児童虐待で逮捕された人物が不起訴(起訴猶予)となった場合を含め、捜査情報を積極的に児童相談所(児相)に提供し、共有するよう、全国の検察に指示したことがわかった。
厚生労働省も27日、児相側から検察に情報を求めるよう全国の関係自治体に通知した。
法務省刑事局は、児相が虐待を受けて施設で保護していた子どもを家庭復帰させるかどうかを決める際、安全確保の観点から捜査情報が必要と判断。全国の高検と地検に対し、必要に応じて事案の概要や不起訴処分の理由などを幅広く提供するよう求めた。また、スムーズに連携するため、普段から児相と協議・研修することも要請した。

渋谷駅「幼児虐待」動画 「女性が特定された」と警察から投稿者に連絡

弁護士ドットコムトピックス 2014年06月27日

ネット上で大きな反響を呼んだ「渋谷駅で女性が幼児を蹴り倒す動画」。人々が行き交う駅の構内で、小さな子どもが母親らしき人物に頭を蹴られて倒れこむ様子は、多くの人に衝撃を与えた。この問題の女性が「特定された」という報告が6月27日までに、動画の撮影者のもとに、警察から寄せられたことが分かった。
動画を撮影し、フェイスブックで公開した会社員の嘉瀬正貫さん(38)によると、その女性は「動画に映った本人だ」と、警察に認めたのだという。警察は「児童相談所と連携して対処している」とのことだ。
渋谷警察署から電話で連絡を受けた嘉瀬さんは、「最初に相談した際には『見つかりっこない』と言われていた。こんなに早く特定されるのかと思った。動画が反響を呼んだことで、警察に多くの情報が寄せられたのではないか」と話している。

「虐待をどう防ぐか」議論の深まりに期待
今回の件について、「ひとまず、児童相談所につながったことで、母親も暴力を振るいにくくなっただろう。良かった」。こう述べる嘉瀬さんだが、一方で、「動画を撮影したとき、すぐに警察や児童相談所に相談・連絡しておくべきだった」と、反省する言葉も口にした。
動画を撮影してフェイスブックに投稿したのは、今年3月。警察へ相談したのは、6月になって動画に数多くの反響が寄せられてからだった。
児童虐待防止法6条1項によると、虐待を受けた児童を発見した人は、福祉事務所などに通告する義務がある。そのことについて、嘉瀬さんは「残念ながら知らなかった」としたうえで、「こうした現場に遭遇した際、一般人はどう行動すれば良いのか。110番のような通報先を設けて、もっと認知度を高めていくことも必要かもしれない」と指摘していた。
嘉瀬さんは「今回の動画は、ひとまず役割を終えたと思うので、近日中に削除する。ただ、ほかにも虐待を受けている子どもたちは、たくさんいるはずだ。今回のことをきっかけに、虐待をどうなくしていくのかについて、議論が深まればと思う」と期待していた。

心の病で労災請求、過去最多 認定者も2番目の多さ

朝日新聞デジタル 2014年6月28日

うつ病など「心の病」で2013年度に労災請求をした人が1400人を超え、過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめでわかった。認定者も436人おり、前年度に次ぎ過去2番目の多さ。職場のストレスやパワハラで発病した場合にも労災が認められると、広く知られるようになったことが背景にある。
厚労省が27日、労災の請求・認定件数を発表した。 「心の病」である精神障害での請求は1409人。前年度より152人増え、記録をさかのぼれる1983年度以降で最多だった。
認定者は前年度より39人減ったが、400人超えは2年連続。うち自殺と自殺未遂が63人いた。原因別では「仕事の内容や量の変化」「嫌がらせやいじめ、暴行」(ともに55人)のほか、「悲惨な事故や災害を体験、目撃」(49人)が目立つ。認定は幅広い職種であり、年代別では30代が全体の4割近くを占めた。

<厚生年金>「現役世代の50%」受給開始直後のみ

毎日新聞 2014年6月27日

厚生労働省は27日の社会保障審議会年金部会(厚労相の諮問機関)に、モデル世帯の厚生年金の給付水準(現役世代の平均的手取り額に対する年金額の割合)が、受給開始から年を取るにつれてどう変わるかの試算結果を年齢層別に説明した。ともに1979年度生まれで現在35歳の夫婦の給付水準は、受給を始める65歳(2044年度)時点では50.6%あるものの、受給期間が長くなるほど低下し、85歳以降は40.4%まで下がる。どの世代をとっても受給開始時は50~60%台の水準ながら、90歳付近になると41.8~40.4%まで低下する。

【厚生年金給付水準 「成長頼み」の側面否めず】
政府はモデル世帯(平均手取り月額34万8000円の会社員の夫と専業主婦の妻、夫婦は同じ年齢)の夫婦2人分の年金給付水準について、「50%を維持する」と法律に明記。3日に公表した、5年に1度の公的年金の検証結果でも、15年度から43年度まで労働人口の減少などに応じて毎年、年金を1%程度カットする仕組み(マクロ経済スライド)を導入し、14年度の給付水準(62.7%)をじわじわ下げていけば、43年度以降は50.6%を維持できるとしていた。
しかし、今回の追加試算で、「50%」は受給開始時の話に過ぎないことが明確になった。試算はいずれも、将来の実質賃金上昇率が1.3%で推移することなどを前提としている。
年金の給付水準は、もらい始めは現役の賃金水準に応じて決まり、受給開始後は毎年、物価の動きに合わせて増減されるのが基本。通常、物価(年金)の伸びは賃金の伸びを下回るため、年金は賃金の伸びに追いつけず、現役の賃金に対する年金額の割合を示す給付水準は、年々低下する。
とりわけ、15年度から43年度までは、マクロ経済スライドの適用を前提としている。この間の年金の伸びは物価上昇率よりも低く抑えられ、現役の賃金との開きはさらに大きくなる。その結果、14年度に65歳で受給を始める49年度生まれの夫婦は、最初の給付水準こそ62.7%だが、19年度(70歳)は58.1%、24年度(75歳)は51.6%と年々下がり、39年度(90歳)には41.8%に低下する。
若い世代はさらに厳しい。84年度生まれの30歳の夫婦の場合、49年度(65歳)の受給開始時に既に50.6%。5年後には47.4%と5割を切り、69年度(85歳)には40.4%となる。【佐藤丈一、中島和哉】