子供145人所在不明…調査、直接確認は求めず 神奈川県

読売新聞 2014年07月01日

県内の市町村と児童相談所(児相)が把握している所在不明の子供(18歳未満)が計145人に上ることが30日、わかった。県と3政令市、横須賀市が同日、発表した。厚生労働省が全国の自治体に報告を求めた初の実態調査に基づくものだが、子供本人への直接確認までは求められておらず、実際には所在不明の子供を見逃している可能性がある。
厚労省が市町村に報告を求めたのは、5月1日現在、所在不明の子供で、19市町で計324人に上った。その後、各自治体は継続調査を行い、180人の所在を確認。残る不明者は6市の144人となった。このほか、県が所管する児相の緊急点検で、女児(1)の所在が確認できていない。
所在不明なのは、横浜市(25日現在)で71人。年齢の内訳は、0~5歳が55人、6~14歳が16人。このうち幼児1人は、昨年から市が県警に相談しているが、市こども家庭課は「市内にいることは把握しており、緊急性の高い状況ではない」としている。また、52人は保護者が外国籍とみられ、このうち26人は入国管理局(入管)に照会中という。
川崎市(27日現在)では46人が不明となっており、年齢別では、0~5歳が32人、6~14歳が11人、15~17歳が3人。このうち44人は保護者が外国籍で、市は入管に照会中、または照会予定という。残る2人のうち、1人は2012年度以前に行われた3歳児健診を未受診で、別の1人は昨年6~8月に児童手当の申請がなかった。いずれも保護者と連絡がとれないという。
このほか、30日現在で所在不明の子供は、横須賀市で17人(2~16歳)、茅ヶ崎市で5人(1~4歳)、平塚市で4人(2~4歳)、相模原市で1人(小学6年の女子児童)の計27人。このうち20人は保護者が外国籍という。

厚木のケース、見落とすおそれ
今回の調査は、厚労省が4月11日、「居住実態が把握できない児童に関する調査」として全国の自治体に協力を依頼し、6月30日までの報告を求めたものだ。同省は「把握できない児童」の定義を、乳幼児健診や予防接種などを受けておらず、電話や文書、家庭訪問などで家庭と連絡・接触できない子供――としており、家族とさえ接触できれば、子供を直接、確認することまでは求めていない。
だが、厚木市のアパートで5月30日、斎藤理玖ちゃん(当時5歳)の遺体が見つかった事件では、「妻子は東京のどこかにいる」という父親の説明をうのみにし、発覚が遅れた。県内の自治体からは「理玖ちゃんのようなケースが漏れている可能性は否定できないが、全員を直接確認するには人手が足りない」との声も出ている。
県は6月2日から行った児相の緊急点検の際、「親族以外の第三者による目視か電話での確認」を要件とした。菊池正敏・子ども家庭課長は30日の記者会見で「今回の調査は(所在不明の子供を)全て網羅できず、児童の安全という意味では十分ではない。市町村の業務負担や財政的な支援を含め、国に検討をお願いしたい」と語った。

神奈川県内の所在不明児144人 うち4人に切迫性、県警と連携へ

カナコロ 2014年07月01日

居住実態が把握できない18歳未満の子どもが5月1日時点で、県内に計324人いたことが6月30日、各自治体の調査で分かった。同日までに所在が確認できていない子どもは144人おり、各自治体が調査を継続。このうち少なくとも4人について切迫性があるとして、県警と連携するという。
厚生労働省が全国の18歳未満の子どもを対象に、学校に通っていなかったり乳幼児健診を未受診だったりするなど、本人や保護者の所在を確認できない実態調査を初めて実施。結果は、今夏公表する。
厚労省に報告した324人の内訳は▽横浜市143人▽川崎市70人▽相模原市6人▽横須賀市49人▽4市を除いた県所管の29市町村が56人-だった。
その後の追跡調査で計180人の所在が判明。同日までに所在が分からないのは▽横浜市71人▽川崎市46人▽相模原市1人▽横須賀市17人▽平塚市4人▽茅ケ崎市5人-の計144人。
所在不明のうち、横浜市は乳幼児1人について県警に相談。川崎市は3人について今後、県警に行方不明届を提出するという。
県などによると、住民票を残したまま引っ越したケースや、外国籍の保護者が住民票を置いたまま外国に転居したとみられるケースもあり、各市は児童相談所や東京入国管理局への照会を行うなどして調査を進めている。
【神奈川新聞】

児童養護施設退所者の自立を支援 藤沢に神奈川県の拠点が開設

カナコロ 2014年07月01日

児童養護施設などを退所して就職し、自立を目指す退所者を支える県の支援拠点「あすなろサポートステーション」(藤沢市)が1日に開設される。新しい生活で直面する仕事や人間関係などの相談に乗り、寄り添うことで孤立や離職を防ぐ目的。拠点に足を運んでもらうのを待つのではなく、自宅などの訪問を通じてつながりを失わない工夫も凝らす。
「あすなろ」の代表の前川礼彦さん(41)は「どこに相談していいか分からない退所者は少なくない。10代で自立しなければいけない青年を支えなければ、もっと転落してしまうことになる」と話す。
施設などで育った子どもたちは退所後に家族を頼れず、独り暮らしの生活や金銭管理で壁にぶつかったり、人間関係でつまずいたりして、生活が一転するケースもある。
県児童福祉施設職員研究会調査研究委員会は児童養護施設などの退所者について2012年に調査を実施。それによると、06年度から10年度までに、県内で施設などを退所した人は369人いた。
退所直後は、住み込みや勤務先の寮で暮らす人が141人いたが、調査時点では87人に減少。また、飲食業に就いた人が当初は50人いたが、調査時には26人になり、「職業不明」は12人から45人に増えていた。何らかの理由で仕事を辞め、同時に住まいも失ってしまったことが推察される。
「あすなろ」の対象者は原則、横浜、川崎、相模原の3政令市と横須賀市を除いた地域の退所者。支援期間は18歳から23歳までの5年間で、社会福祉法人白十字会林間学校(茅ケ崎市)が運営し、専属のスタッフが配置される。
特徴は退所者の訪問支援に重点を置くことだ。
既存の支援事業は退所者が集う「居場所」の性格を持つものが多いが、新しい場所に足を運びにくい人もいる。相談業務を主にする「あすなろ」は「訪問相談で関係をつくるだけでなく、『あなたのことを忘れていないよ』というメッセージを送れれば」と前川さんは話す。
さらに、県域18カ所の児童養護施設などの職員を「あすなろサポーター」に指名。担当の県子ども家庭課は「退所した施設には顔を出せるが、『あすなろ』には相談に行きにくいという人をつないでもらう」ことが目的で、施設にいるときから切れ目のない支援を目指す。サポーターには県の負担で研修なども受講してもらう。各施設の職員が善意で対応してきたアフターケアを制度化するのも狙いの一つだ。
「あすなろ」は当面の間、毎週火、木、土曜日に開所。前川さんは「退所者にとって、退所後の自立生活は生まれて初めての体験なのに、失敗が許されないという過酷な状況。その心細さを受け止め、相談に乗ることで、問題が重くなる前に解決できる」と期待を込める。
問い合わせは、前川さん電話0467(58)6260=自立援助ホーム「湘南つばさの家」内。
【神奈川新聞】

神奈川県職員ボーナス支給 平均額は74万円 前年比8594円減

カナコロ 2014年07月01日

神奈川県は30日、職員の期末・勤勉手当(夏のボーナス)を支給した。全職員の平均支給額(平均年齢41・3歳)は前年比8594円減の74万8773円。黒岩祐治知事は269万9900円(前年同額)だった。
支給対象者は8万7人で前年比437人増、支給総額は584億1300万円で4億8500万円減った。再任用を除く職員の支給率は昨年と同率の1・9カ月。
職員区分別の平均支給額は▽一般職員(平均年齢43・3歳)74万4576円▽教育職員(同41・8歳)75万5068円▽警察官(同38・3歳)73万2409円。
知事や副知事ら特別職7人(支給率1・225カ月)の支給総額は1300万円。
県議(支給率1・9カ月)は5%カット(11万580円)で210万1020円。104人の支給総額は1200万円減り、2億1900万円だった。
特別職らの支給額は次の通り。
▽副知事215万9920円▽議長259万9200円▽副議長233万9280円。
【神奈川新聞】

<ベビーシッター>自治体9割近く「活動実態、把握せず」

毎日新聞 2014年6月30日

法的な規制がないベビーシッターの活動実態について、全国の自治体の9割近くは何も把握していなかったことが30日、厚生労働省の調査で分かった。埼玉県富士見市のマンションで3月、横浜市の2歳男児の遺体が見つかった事件を受けた初めての調査で、ベビーシッターの信頼性を担保する制度がない現状が浮かんだ。厚労省は有識者会議を設置し、規制強化を検討する。
調査では4月時点の現状について、都道府県・政令市・中核市全109自治体のほか、シッターを求める親らと保育者をつなぐ「マッチングサイト」の管理者らが回答した。
全自治体中、ベビーシッターや出張保育など、利用者か保育者の自宅で子供を預かるサービスについて、子供の数や保育場所など何らかの情報を把握していたのは15自治体(13.8%)にとどまり、9割近くは全く把握していなかった。
サイト管理者は、厚労省が把握した8サイト中5サイトが回答。登録した保育者に確かめる情報の多くは証明書を求めず、保育士など資格の有無=4サイト▽保育場所=4サイト▽氏名、年齢などの「素性」=3サイト--は「自己申告」だった。
一方、児童福祉法の届け出対象外である「5人以下」の認可外保育施設についても聞いたところ、91自治体(83.5%)が何らかの情報を把握していたが、独自の届け出制を設けているのは東京都と岡山県倉敷市だけだった。把握できた「5人以下」の施設は3637カ所で、約5万人の子供が利用していた。
厚労省は近く、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)に専門委員会を設置し、シッターやサイトへの規制の在り方を検討し、認可外保育施設の届け出対象範囲も見直す方針。【遠藤拓】

SIMロック解除義務化へ…携帯乗り換えやすく

2014年06月29日

総務省は、携帯電話会社が端末を他社で使えないように制限する「SIMロック」の解除を、2015年度にも義務づける方針を固めた。
携帯電話会社を乗り換えやすくして、通信サービスの多様化や料金の引き下げなど競争促進につなげたい考えだ。
30日に同省の有識者会議がまとめる中間報告に義務づけの方向性が盛り込まれ、年内に具体策を決める。
携帯電話は、電話番号や利用者の情報を記録したSIMカードを差し込むことで使用可能になる。国内の携帯電話大手はSIMロックをかけているため、利用者が携帯電話会社を変えるには端末ごと買い替えなくてはいけない。乗り換えがしにくいため、通信料金の高止まりや、過度なキャッシュバック(返金)競争につながっていると指摘されていた。欧州と韓国では、契約から一定期間後にSIMロックを解除するのが一般的で、米国も今年5月からSIMロック解除が始まった。

厚労省 年金納付率高めるため免除者を増やせと指示していた

NEWS ポストセブン 2014年7月1日

年金崩壊が政府の手によって進められている。厚生労働省は「納付率を高める」という目標を達成するために、何と「免除者数を増やせ」というとんでもない指示を出していた。どんな手口で年金制度を骨抜きにしているか、その現場を見ていく。
この春、都内に住む30代男性Aさんの自宅に、突然「その人」はやってきた。マンションのインターホンが鳴る。女性の声。
「年金のことでお話ししたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
自営業のAさんは現在のマンションに引っ越してから2年弱、仕事が忙しくなったこともあって国民年金の保険料を支払っていなかった。きっとその件だろう。Aさんはすぐにピンと来たという。
玄関先で面会した60歳前後の普段着の女性は、手元のスマートフォンをちらちらと見ながら矢継ぎ早に質問を浴びせてきた。
「あなたはAさん(フルネーム)ですね。えーと、生年月日は昭和○年×月×日で間違いないですね? こちらには単身でお住まいですか?」
Aさんは、その通りですと相槌を打った。すると女性はこう継いだ。
「未納の分の平成24年分と25年分について、保険料免除の申請ができるんです。こちらの書類にサインしてください」
女性から保険料の支払いを求められると思っていたAさんは思わぬ展開に驚いたという。このやりとりこそ、厚生労働省の「納付率粉飾」を象徴する出来事なのだ──。
年金追及第1弾を掲載した週刊ポスト7月4日号が発売された6月23日、厚生労働省は2013年度の国民年金保険料納付率が「60.9%」となったことを発表した。
新聞各紙はいつもの通り大本営発表を垂れ流し、〈国民年金の納付率 4年ぶり60%台〉(朝日新聞6月24日付)などの見出しで報じるばかりだった。
前号記事では、その厚労省発表の納付率が大ウソであることを指摘した。一般には公開されていない同省の資料には、2012年度の表向きの納付率は59.0%ということになっているが、「本当の納付率」は39.9%と4割以下に落ち込んでいることが記されていた。
そのカラクリは、保険料納付の免除者(384万人)や学生などの猶予者(222万人)を増やして、分母(納付すべき人)から除外することで見かけの納付率を上げるというものだった。
「免除者増やし」は国策なのだ。冒頭のAさんを訪問した女性は、その役割の一端を担っているといえる。Aさんと女性のやりとりに戻ろう。
玄関先で女性から渡されたのは、「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」というA4判2枚つづりでカーボンコピーになっている書類だった。言われるままに生年月日、氏名などを書き込む。しかし、空欄となっている基礎年金番号がわからない。
戸惑っていると女性はスマホを覗き込んで、「あなたの年金番号は○○○○○○ですね」という。手取り足取りの指導で数分のうちに書き終わった。そうしてあっという間に「免除申請」が済んでしまった。年金の受給を申請する時にはうんざりするような面倒な手続きをさせられるのとは対照的だ。
この間、「未納分を支払ってください」という言葉はなく、はじめから「免除できます」というやりとりだった。Aさんは支払う意思や余裕があるかどうかすら聞かれていない。これでは単に払うのを忘れていただけで納めたいと思っている人も免除申請してしまう。
いま、同様の未納者訪問が全国で繰り広げられているのである。
実は、「免除のススメ」を行なっているのは年金事務所の職員ではない。あまり知られていないが、2009年からこうした事業は民間業者に委託されている(2005年から実験的な委託はされていた)。訪問しているのはそれらの業者に雇われた人たちである。
「国民年金保険料収納事業の民間競争入札」によって事業者が決定し、例えば2012年7月に落札したのはオリエントコーポレーション、経理などのアウトソーシングサービスを展開する日立トリプルウィンなど4社だった。
「保険料収納」という事業内容から見れば、未納者に支払いを督促するのが仕事だと誰もが思うだろう。
それが違った。本誌が入手した受注希望業者向けの「民間競争入札実施要項」の中に、鍵を解く文書がある。同要項の「別紙2」は、こう題されている。
〈年金事務所別達成目標等一覧〉
資料には、縦軸に「年金事務所名」がズラリと並び、横軸に目標数値が記されている。そこになんと、「免除等」の目標数値が設定されているのである。
つまりこれは、発注元の日本年金機構が受注する業者に対して「免除申請をこれくらい取ってこい」と指示する文書なのだ。その結果として「見かけの納付率」が上がる仕掛けである。
※週刊ポスト2014年7月11日号

ワンコイン健診で看護師いるのに「自己採血」させられる理由

NEWS ポストセブン 2014年7月1日

企業の定期健診を受けるサラリーマンと違って、フリーターや主婦、自営業者などは健診を受ける機会が少ない。そうした人たちのために「ワンコイン健診」と呼ばれるサービスが生まれ話題となったが、それが「役所の規制」によって邪魔されているという。元キャリア官僚で規制改革担当大臣補佐官を務めた原英史氏(政策工房社長)は新刊『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)の中で規制のおかしさを解説している。

1年以上健診を受けていない人は日本に3500万人いるとする推計があり、自覚症状のない糖尿病の早期発見などが難しい現状がある。そうした中で生まれたのが、1検査500円で手軽に、「血糖値」「コレステロール値」などの数値を測ってもらえる「ワンコイン健診」だった。
都心の病院で血液検査をすれば5000~6000円(保険外の場合)かかり、検査結果を知るために再度病院に行かなければならない。忙しい人や高額な検査代に二の足を踏む人は少なくない。「ワンコイン健診」では、店舗には医師を置かない。看護師だけがいる簡易な検査だが、そのかわり安くて早い。定期的に健診を受ける機会のない人にとって価値の高い新サービス……のはずだったが、そう簡単には事が進まないのが日本の規制社会だ。サービスを提供する中で、いくつかの規制の壁が現われた。
そのひとつが「採血は自分でやらないといけない」という規制だ。規制される根拠としては、いくつかの法律が挙げられるが、根っこにある規制は「医師法」17条にある〈医師でなければ、医業をなしてはならない〉という条文だ。
厚労省医政局長通知(2005年)では〈医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為〉を「医行為」とし、それを反復継続することを「医業」としている。ニセ医者が医療行為をやってはいけないという当たり前の条文に見えるが、問題は「医業」ないし「医行為」がどこまでを含むのか。手術などの本格的な医療行為はともかく、その外縁部分になってくるとだんだんおかしな問題が生じてくる。その顕著な事例が、「ワンコイン健診」をめぐる問題だった。
「採血は自分でやらないといけない」と規制される理由は、「採血」が医行為にあたるからだ。つまり、医師にしか認められないのが原則。看護師は例外的に認められる場合があるが、それは「医師の指示」のもとで行なう場合に限られる(保健師助産師看護師法37条)。ワンコイン健診の店舗には、看護師しかおらず、「医師の指示」がないので、採血はできないわけだ。
ところが、この規制にはおかしな抜け道がある。検査を受ける人が自分で採血することは違法ではない。自分でやるなら違法性が阻却されるというのが厚生労働省の説明だ。その結果、素人が自分一人で採血しても構わないが、プロである看護師は周りに医師がいない限り採血が許されないことになる。奇妙な話だが、合法的に事業をやろうとすれば、「採血は自分で」とせざるを得ないわけだ。
ワンコイン健診の店舗では、利用者が手の指先に印鑑ケースほどの使い捨て検査器具を当てる。その場にいる看護師の「ボタンを押してください」という声に従ってボタンを押すと器具から小さな針が出て指先から少量の血液が自動的に採取される。このボタンを押すのが看護師ならばアウトで利用者ならばセーフというのだから、規制の馬鹿馬鹿しさがよくわかる。
筆者は数年前から、「せっかくプロの看護師がいるのだから、自己採血でなく看護師にやってもらったらいいのでは?」と指摘してきた。おそらく誰もが感じる当たり前の疑問だが、解消されない。
なぜこの問題に容易に手がつけられないかというと、医師という専門家集団の「縄張り」に関わる問題だからだ。ワンコイン健診で看護師に採血させる程度で「医師の仕事を奪う」といった大仰な話になるまい……と思われる方もいるだろうが、“縄張り”の議論では、蟻の一穴を開ける危険性を極めて慎重に考慮するものだ。

規制のもともとの目的は〈衛生上の危害〉(保健師助産師看護師法37条)を防ぐことだ。自己採血から看護師の採血に切り替えて〈衛生上の危害〉が生じるとは到底思えないが、「縄張り」の壁は厚いのだ。
※原英史・著『日本人を縛りつける役人の掟』(小学館)より