児童虐待7万件 子供救うため躊躇するな

産経ニュース 2014年8月14日

全国の児童相談所が平成25年度に対応した児童虐待の件数が7万3765件に達した。調査を開始した2年度から23年連続の増加で、7万件を超えたのは初めてだ。
厚生労働省は、虐待への積極的対応や警察からの通告が増えたことなどが件数増加の大きな要因と分析している。それにしても、7万人以上の子供が虐待に苦しんでいると想像すれば、暗澹(あんたん)たる気持ちになる。
児相や学校など関係機関は、一人でも多くの子供を救うための通告や保護、親権停止の申し立てなどを躊躇(ちゅうちょ)してはならない。
7月30日早朝、東京都西東京市の住宅で、中学2年の男子生徒が首をつっているのを、母親が見つけた。遺体には暴行の痕が認められた。傷害容疑で逮捕された父親は前日、男子生徒に「24時間以内に首でもつって死んでくれ」と言ったと供述した。スパーリングと称して殴ることもあったといい、自宅からはボクシングのグローブが押収された。こんなかわいそうな14歳の死に方があるか。
顔のあざに気づいた担任が声をかけたこともあったが、男子生徒が「大丈夫」と答えたため、児相や教育委員会へは報告しなかった。6月以降、男子生徒が登校しなくなってからも、電話で父親に様子を聞いただけで、本人との接触は持たなかった。
校長は事件後、「適切な対応をすれば防げたかもしれない」と述べた。だが、もう遅い。
児童虐待防止法は、教職員や医師、弁護士などは児童虐待の早期発見に努め、速やかに児相に通告しなければならないと義務づけている。この際は、守秘義務違反に当たらない。
後悔は先に立たず。厚労省によれば、23年度に虐待によって死亡した56件のうち、41件は福祉事務所、病院、学校、児相など何らかの関係機関が関与していた。防げたかもしれないということだ。
児相が25年度に親権停止を家裁に申し立てたケースは16自治体で23件あった。親権停止は24年施行の改正民法で導入された制度で、深刻な虐待で子供に生命の危機があるなどと判断した場合に申し立てができる。虐待をやめない親からはまず、子供を引き離さなくてはならない。
件数の増加で児相は対応に追われており、態勢の強化や児童福祉司の増員も急がれる。

<暴言>教諭、小2に「窓から飛び降りるか」 浜松

毎日新聞 2014年8月14日

浜松市南区の市立白脇小学校で先月、男性教諭(41)が2年生の男子児童に「窓から飛び降りるか」と言うなど、不適切な指導を繰り返していたことが14日、市教委への取材で分かった。外国籍の親を持つ児童に「国へ帰れ」と暴言を吐いたこともあったといい、市教委は「厳正に対処する」としている。
市教委や同校によると、教諭は先月17日、担任を務める2年生クラスの「帰りの会」で、話を聞かない男児に「やる気があるのか」「窓から飛び降りるか」などと発言し、男児を立たせようと腕を引っ張った。男児は倒れて近くにいた女児にぶつかり、女児は背中に軽い打撲を負った。教室は校舎3階にある。
教諭は2人の保護者に謝罪。同校は同25日、緊急のクラス保護者会を開き、校長や教頭らが経過を説明した。別の児童に対しても「国へ帰れ」などの問題発言が複数回あることから、一部の保護者からは「担任を代えてほしい」との要望が出たという。
同校は2学期以降も教諭に担任を任せるかなどを問うアンケートを、クラスの保護者に配布した。今月25日までに結果を集計し、対応を決めるとしている。【飯田和樹】

「危険ドラッグ買うため」=ひったくり容疑少年3人逮捕―窃盗後購入、吸引・警視庁

時事通信 2014年8月14日

危険ドラッグを買う金欲しさにバッグをひったくったとして、警視庁少年事件課などは14日までに、窃盗容疑で東京都墨田区や荒川区に住む16~19歳のフィリピン人と日本人の無職少年計3人を逮捕した。いずれも容疑を認め、「危険ドラッグの購入代金のためにやった」などと話しているという。
逮捕容疑は7月25日午前3時5分ごろ、台東区浅草橋の路上を歩いていた派遣社員の女性(47)の後ろから、自転車で追い抜きざまに現金約1万円やクレジットカードが入ったバッグをひったくり、盗んだ疑い。
同課によると、少年らはひったくり前後に危険ドラッグを吸引。窃盗後は千葉県市川市にある危険ドラッグ販売店に電話で注文し、浦安市内に配達させ、盗んだ金で購入していたという。

定員外保育で裏金2億円…14施設で、飲食にも

読売新聞 2014年8月14日

新潟、兵庫、福岡、長崎の4県にある14の認可保育園が、「私的契約」という形で定員を超える計約300人の園児を預かり、総額約2億円の保育料を得ていたことが13日、県や政令市などが2009~13年度に行った特別監査で明らかになった。
定員超過は厚生労働省の通知で禁じられており、県などは保育園を運営する社会福祉法人に対し、社会福祉法に基づいて適正な会計処理や責任者の処分を求める改善命令などを出した。14園の中には、超過分の保育料を裏金としてプールし、職員同士の飲食に使ったり、園長が私的流用したりした事例もあった。
認可保育園の場合、入園などの手続きは市区町村が窓口になっており、市区町村は家庭環境や居住地などを考慮し、入園先を決める。だが、定員割れしている園に関しては、保護者と園側が直接話し合い、入園させることができる。14園は定員を満たしていたにもかかわらず、私的契約という形で県などに報告しないまま園児を受け入れていた。

知っておきたいエボラ出血熱の基礎知識

マイナビニュース 2014年8月14日

死者が1,000人を超えるなど、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱だが、とうとうアフリカ以外で初めて死者が出た。エボラ出血熱が日本に上陸するかどうか、心配な人も少なくないだろう。そこで、エボラ出血熱に関する基礎知識をまとめてみた。
昨今の動きを受け、厚生労働省は8月11日、公式サイトに「エボラ出血熱に関するQ&A」というWebページを開設した。
まず、エボラ出血熱の病状から整理しておきたい。エボラ出血熱とは、エボラウイルスによる感染症で、エボラウイルスに感染すると、2日~21日(通常は7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈する。続いて、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れるという。
現在、エボラ出血熱に対するワクチンや特異的な治療法はないため、患者の症状に応じた治療(対症療法)を行うことになり、WHOによると致死率は90%に及ぶとのことだ。
次に、最も気になるエボラウイルスの感染について見てみよう。エボラウイルスは野生動物からヒトに感染し、その後、ヒトからヒトに感染していく。WHOによると、オオコウモリ科のコウモリがエボラウイルスの自然宿主であると考えられている。
具体的には、エボラウイルスに感染しているヒトの体液(血液、分泌物、吐物・排泄物)や体液に汚染された物質(注射針など)に直接触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染する。
つまり、エボラ出血熱は、咳やクシャミを介してヒトからヒトに感染するインフルエンザなどとは異なり、簡単にヒトからヒトに伝播する病気ではないため、適切な対策を講じることで予防できるという。
厚生労働省は、エボラ出血熱が日本国内で流行するかどうかについて、エボラ出血熱が、主に患者に直接接触することにより感染すること、流行地域がアフリカに限定されていることから、通常の日本人旅行者が現地で感染するリスクは非常に低いとともに、国内の医療体制や生活環境から考え合わせると、国内でエボラ出血熱が流行する可能性は、現時点では低いとしている。
現在、エボラ出血熱の新薬の研究が進められているが、WHOは開発中の未承認の治療薬を投与について「倫理的」とする見解を発表した。今後の動向が気になるところだ。

義父からの精子提供…長野のクリニックは福音? 「子供の視点」はあるのか

産経新聞 2014年8月13日

妹の卵子提供による出産や国内初の代理出産を行ったことで知られる諏訪マタニティークリニック(長野県)の根津八紘院長が、夫の実父(妻の義父)から提供された精子で110組の体外受精を行ったことを7月31日、日本受精着床学会で発表した。無精子症などの夫婦に対して現在、国内で行われている精子提供は「匿名」が原則だが、根津院長は「提供者が誰かわかっており、信頼関係のもとで治療が行われる」とその利点を語る。ただ、生殖補助医療(をめぐっては子供の出自を知る権利を認めるべきだとの考えが主流となってきており、事実を知った子供へのケアをどう行うかは大きな課題だ。

「家制度」の名残?
根津院長の学会発表は、不妊治療の現場に驚きをもって受け止められた。
「義父の精子提供なんて絶対に無理。絶対にイヤです」と話すのは2年前から不妊治療を受けている都内の30代の女性会社員だ。「うちは不妊の原因が夫にあると断定できないので第三者からの精子提供(AID)は考えていないが、もしそうだとしても、精子提供は知らない人からがいい。子供を夫の実家に取られそうだし、夫もかわいそうだと思う」と女性。女性にとって、義父の精子と自身の卵子による子供、というのは心理的な抵抗が強いようだ。
だが、義父の精子を使った体外受精は不妊に悩む夫婦から一定のニーズがあるのだという。四国地方の産科医はこんな体験を披露する。
「もう随分前ですが、ぼくのところにも義父の精子による体外受精を希望する夫婦が来たことがありますよ。うちの病院がある県庁所在地ではなく、県の外れに住む夫婦でした。家制度の名残なんでしょう。家系を絶やさないために、という一族の総意があったようです」
家族関係が複雑になることを危惧して治療を断ったという医師は、それだけに義父の精子を使って110組の体外受精を行い、78組が出産したという根津院長の発表に複雑な思いだ。
「今なら依頼を受けてしまうかもしれないな。何でもありの時代になっちゃったから…」
義父からの精子提供を禁止する法律はない。だが、厚生労働省の厚生科学審議会が平成15年4月にまとめた報告書では、精子提供は第三者からに限られ、祖父や兄弟などからの提供は認めていない。祖父だと思っていた人が遺伝子上の父だったなどという構図は家族関係を複雑にし、相続のトラブルにもなりかねないからだ。もちろんこの報告書を守らなくても罰則はないが、業界は“自主規制”してきたのが実態だ。

「トラブルはない」
義父からの精子提供は、家族関係をどう複雑にするのだろうか。
日本産科婦人科学会の吉村泰典元理事長は「子供が何らかの障害を持って生まれてきたとき、その子がどちらの子かをめぐりトラブルになりかねない」と懸念する。第三者が匿名であれば当事者間のトラブルには発展しようがないが、提供者が明らかな場合は状況が異なる。
法律の観点からも問題がある、と吉村元理事長は危惧する。現行では、結婚している夫婦の子は原則として夫の子とみなされる。しかし、生物学的な“親子”関係を明らかに否定できる場合の扱いは微妙だ。このケースでは、祖父の遺伝子を受け継いだことが明確なだけに、父と母の子供とは認められないことも考えられる。また、遺産の相続などをめぐり、子供自身が祖父の“実子”だと主張することもあり得る。
しかし、学会発表を終えた根津院長は会見で、「義父の精子提供で家族関係は複雑にならない」と断言した。それどころか「提供者の妻(義母)は被提供者(夫)の母であり、協力が得やすい」「夫婦に似た子供が生まれる」などと“メリット”を強調したのだ。
確かに、第三者からの精子提供では、提供者が分からないがゆえの悩みはある。精子提供を受けて親になったある男性は「子供が小児ぜんそくになって病院に行ったとき、医師から『親御さんや親類にアレルギーの強い人はいませんか』と尋ねられ、どう答えてよいか分からなかった」と打ち明けた。提供者が分かっていればそうした不安はなく、根津院長の主張には、一定の根拠はある。
根津院長によると、義父の精子提供を受けて出産した79組のうち28組が第二子を望んでおり、根津院長は「良好な家族関係を築いている証拠だ」と話す。

生殖医療の当事者は?
だが、こうした生殖医療を語るときに忘れてはならないのは、医療が行われるときには存在しない「子供側の視点」だ。会見中、根津院長が何度も強調したのは「目の前にいる患者のために」との言葉。確かに、生殖医療を行う時点での「当事者」は子供を望む夫婦である。しかし、子供が無事に生まれてくれば、生殖医療の当事者には「生まれてくる子供」も含まれる。
日本産科婦人科学会のある役員はこう指摘する。
「根津先生はいつも、『不妊に悩む夫婦のために』という言葉を免罪符のように使う。学会指針を破ってでも患者の願いをかなえようとするその姿勢は、不妊に悩む夫婦には福音かもしれない。でも、その先に生まれる子供が幸せになれる環境について考えていくことも、私たちの仕事ではないか」
生殖医療の発達は、不安定な立場で生まれてくる子供が増えることでもある。もっとも、この役員がそれを意識したのは最近だという。
「一番歴史が古い生殖医療は第三者からの精子提供です。この方法で生まれてきた子供が成長し、声をあげ始めたからです」
今年5月に出版された書籍「AIDで生まれるということ」(萬書房)には実名、仮名を含め、精子提供で生まれた6人の子供たちの声が紹介されている。
「自分は人と人との関係ではなく提供されたモノから作られた人造物だ」「誕生日を祝われるのがイヤだ」など、苦しむ当事者の声は重い。
しかし、こうした声を上げる当事者が少ないのも事実だ。その理由として、精子提供の事実が子供に伏せられていることが多いという可能性が考えられる。子供が親を知る権利(出自を知る権利)は国際的にも認められているが、国内では精子提供の事実を告知するかどうかは、多くの場合、親に委ねられている。
根津院長は「告知については任せているが、子供に聞かれたら必ず(本当のことを)答えるように」と話しているという。しかし、根津院長が64組の親を対象に行ったアンケートでは、子供に告知をした人はゼロ。「精子提供が後ろ指を指される世の中で、なぜ告知しなければならないのか」と根津院長は、その理由を社会の偏見にあると説明した。しかし、精子提供で生まれた子供からは「知らなければよかったといわれる出自を負わされる身にもなってくれ」との意見も上がる。

全てが親のエゴ?
根津院長はこうも言う。
「子供の権利を尊重するというが、そもそも子供を作ること自体が親のエゴではないか」
「生まれてきたい」と思って生まれてきた子供などいないのだから、この主張はある意味で真理を突いている。しかし、だからといって子供の権利を無視してよいとは根津院長も考えてはいないだろう。
海外の調査では、精子提供で生まれた子供たちの多くは、真実を知って苦しんだとしてもなお、「(精子提供の)事実を知って良かった」と考えていた。
国内では、自民党が代理出産や第三者からの精子、卵子提供を容認する法案をまとめ、早ければ秋の国会に提出されるとみられている。しかし、草案では出自を知る権利について決まりはなく、今後の議論に期待がかかる。
折しも、タイでは日本人男性が代理出産で産ませたとされる複数の乳幼児が話題になっている。生殖医療が進むにつれ、これまで考えられなかったような手段により生まれてくる子供は増えていく。義父からの精子提供という衝撃的な“事実”を特殊な事例と考えるのは早計だ。
多くの場合、親は子供より先に死ぬ。その後の人生を生きていくのは子供自身だ。どんな出自であろうとも、生まれてきた子供が幸せな人生を生きていくことが最優先される社会でなくてはならない。精子提供の当事者や生殖医療に携わる医療関係者だけでなく、誰もが真剣に考えなくてはならない大事なテーマであることに議論の余地はない。

座高測定:意味なし? 学校健康診断から削除へ

毎日新聞 2014年08月07日

小中学校などの健康診断から座高測定が姿を消す。文部科学省が2016年度から検査項目からの削除を決めたためで、「座高データはほとんど活用されておらず、学校現場から不要だとの声も多い」ことなどが理由だ。足長の結果を出そうと背をかがめて座ったあの座高測定、どんな意味があったのか。【庄司哲也】
「座高は子どもの発育の研究者には体格変化のデータとして意味があるのでしょうが、子ども一人一人の健康とは直接の関係はありません」。座高測定の削除を提言した文科省の有識者会議の座長、母子愛育会日本子ども家庭総合研究所長の衛藤隆さんは、そう言い切る。
身長、体重は、測定結果を標準的な数字と比べればその子の発育状態が分かり、児童虐待の発見にも役立つ。だが座高測定の数字を見ただけですぐに何かが分かるものではないという。
1994年には「服を着たままでは測定の誤差が大きい」として胸囲の削除が決まった。衛藤さんによると、そのころ座高も議題に上がったが「子どもの体形が足長の方向に変化がみられているのに廃止するのは問題」などと統計資料の収集を重視する意見が出て継続された。
医学的な意義について小児内分泌学が専門の東京女子医大名誉教授の村田光範さんは「座高(上節長)と足の長さ(下節長)の比をみることで、手足が伸びていかない低身長症や発育異常の早期発見にもつながる」と説明する。
だが、その村田さんも文科省に測定廃止を主張した。「異常を読み取るには専門的な知識が必要で、学校保健で座高測定の結果を活用するのは難しい。養護教員が忙しい現状では身長、体重のデータすら利用されているとは言い難い。座高測定より身長、体重で得られるデータをもっと活用すべきだ」とする。
そもそも座高測定は日中戦争が勃発した1937年に当時の「学校身体検査」に加わった。名古屋学院大教授(学校保健学)の野村良和さんは「戦時体制に入っていく社会情勢があり、強じんな兵隊を育てるために健康な児童生徒の育成が急務と判断された。当時は胴が長い方が健康と考えられており、その確認のため座高測定が始まったといわれています」と解説する。学校保健の専門家が「体重と座高を計算式に当てはめれば栄養状態の判定が可能」などと根拠不明の説明をしていたという。
また、座高測定の理由の一つとして「適切な高さの椅子や机を選択できる」が挙げられてきた。だが現職の教諭で全国養護教諭連絡協議会会長の濁川(にごりかわ)こず枝さんは「実際の学校現場では学年ごとに同じサイズの机や椅子を使っている」と否定する。
78年間も続いてきた座高測定について文科省学校健康教育課の担当者は「なぜ座高測定が現在まで続いてきたのかは定かではありません。廃止については度々議論になったが、胸囲や色覚検査が優先され主要な議論にならなかったようです」と話す。野村さんは「得られた結果をどう子供に還元するかという学校健康診断の本来の目的を軽視したまま漫然と続けられてきた」と指摘する。
測定結果に一喜一憂した座高測定。だが、その割に意味はなかったようだ。