「自分たちも変えられる」 里子ら児童福祉向上へ活動

福祉新聞 2014年08月25日

児童養護施設や里親と暮らした経験のある日米の若者たち10人がチームを組み、ケアや制度を改善させようと活動している。米国の児童福祉を学ぶため日本から6月に渡米したメンバーは、当事者の声を制度に反映させてきた米国の現状を体感し「自分たちも変えていくことができる」と自信がついたという。7月26日にIFCAが都内で開いた渡米報告会で語った。
「今まで19年間社会的養護の中にいて、たくさんの人に支えられてきた。18歳くらいの時、ただ支えられるだけでなく、自分が誰かを支えられるようになりたいと思った」。
乳児院、児童養護施設を経て、現在は里親家庭で暮らす山之内歩さん(19)はこう話した。施設や里親への措置は原則18歳までだが、措置延長で今も里親と生活している。地元では里子同士が集まる会の代表も務める。
NPO法人 International Foster Care Alliance(IFCA、本部=シアトル)は日米で協働し、児童福祉の向上を目指す。東京にも支部がある。米国で20年以上児童福祉に携わってきた粟津美穂さんが2012年に創設した。

活動は
①里親や施設職員向けの事業
②米国で成果のあるトラウマ治療法を日本に広める
③施設や里親のもとで暮らす子どもと自立した若者のための事業
の3本柱。

山之内さんはこの若者向けの事業を担うチームの一員。里親家庭や施設を経験した日米それぞれ5人ずつ、計10人(19~27歳)がいる。当事者が声を発し、違和感のあった制度の改善などを目指す。
13年には米国メンバーが来日。お互いの国の児童福祉を知ることなどが目的で、6月には日本メンバーが渡米した。
報告会で畑山麗衣さん(22)は「米国の当事者は、自分たちの声が届き制度が変わっていると実感していた」と印象を話した。「これまで声を上げる場はあったが、どうすれば制度改善できるのか分からなかった。具体的な方法を知れたのは大きい」と成果を語った。
米国には若者の権利を守るため、法律や政策の改善を目指す団体がある。これまで「どんな人も21歳まで措置延長できる」といった改善を実現してきたという。
瀧澤政美さん(27)は「結果を残している人たちに会い、僕たちにもできると自信がついた」と話す。
メンバーはこのほかにも、自分の体験を効果的に共有する方法、若者の悩みをワンストップで受け止める施設、大学が入学した当事者を支える仕組みなどを報告した。
9月7日には米国メンバーが来日して「日米ユースサミット」を都内で開く予定。チームは日本語でも英語でも読めるブログ「MY VOICE OUR STORY」( http://ifcaseattle.org/youthandalumni/ )を開設し、措置解除の時に感じたことなどをそれぞれがつづっている。

増え続ける児童虐待通告 現場「手いっぱい」

神奈川新聞 2014年8月28日

厚木市のアパートで衰弱死後7年以上経過した男児=当時(5)=の遺体が見つかった事件をめぐり、関係機関の対応を検証した県の「児童虐待による死亡事例等調査検証委員会」は27日、厚木児童相談所(児相)の対応について「支援ケースに対する進行管理体制が不十分だった」などと結論付けた報告書をまとめた。虐待通報件数の増加に伴う過重負担などを要因に挙げ、児相の充実強化とともに、所在不明児のリスクを再認識し「想定外」をも想定して対応するよう黒岩祐治知事に提言した。

「児童虐待の通告件数が増加する中、現場の過重負担に対し、児相の体制の確保が十分に追い付いていない状況が大きな要因だった」。厚木・男児衰弱死事件を検証した県の第三者委員会は、厚木児童相談所による男児のフォローが不十分だった要因をこう指摘した。増え続ける虐待通告に日々追われる県内の児相の担当者は、課題が克服されていない現状に今も向き合い続けている。
保護者の家庭訪問や施設に入所する児童との面談、警察や保育園との打ち合わせ-。継続支援のケース対応にあたる傍ら、新たな通報が飛び込んでくる。県内児相の男性児童福祉司は「虐待を疑う通告が次々と入るため、予定をキャンセルして初期対応に動く。手いっぱいだ」と明かす。
残業は毎日3~4時間。夜に子どもの記録をシステムに入力していると、担当エリアで「子どもが泣いてる」との通告が入り、現場に駆け付けることも。窓が開いている夏場は特に多く、到着すると泣きやんでいて、該当家庭が特定できないことも少なくない。
1人当たり100件弱の継続ケースを抱えるが、深刻度はさまざま。1、2回の訪問で済む場合もあれば、子どもの一時保護から施設入所、家庭に戻って自立するまで関わることも。0歳から18歳までフォローを続けるケースもあるという。
「ここ数年で通告が激増している。早めの通報は悪いことではないが、昔は施設に足を運んで夕食時に担当する子どもと接する時間もあった。でも、今はない。支援する子どもと関わる時間が少ない気がする」
今回の検証報告書は、厚木の事件の反省から「現場の職員に過重な負担を負わせたままでは、児童に必要な支援が行き渡らず、救える子どもの命が守れない事態になりかねない」とし、適切な職員配置を求めた。
児童福祉司を配置する経費は人口に応じて国の地方交付税で手当てされるが、実際の人員配置は自治体の裁量となっている。現在、県所管の児相の児童福祉司は人口4万6千人に1人。報告書は「人口4万人に対し1人を配置することが望ましい」と提言した。県に当てはめると、現在の60人から70人に増やす計算になる。
他県では、被虐待児の一時保護といった専門的分野は児相の仕事としつつ、泣き声を心配した近隣住民からの通報には民間団体が対応して現場に駆け付けている例もある。NPO法人児童虐待防止全国ネットワークの吉田恒雄理事長は「児相が果たすべき仕事に児相の資源を絞り込んでいくことも必要ではないか」と指摘している。

不明児童問題 「国が情報一元管理を」神奈川県の検証委、報告書で提言

産経新聞 2014年8月28日

厚木市のアパート一室で5月、斎藤理玖(りく)ちゃん=当時(5)=が死後7年以上たった白骨遺体で見つかった事件で、行政の対応を検証する県の「児童虐待による死亡事例等調査検証委員会」は27日、所在不明児の情報を国が一元管理することなどを求める報告書を発表した。

報告書では、「楽観的な推測だけで判断すると大きな落とし穴にはまってしまう危険性があることを自覚し、関係する機関が相互に連携して、全ての客観的な情報を集約・共有した上で検討・対応すべきであった」と課題を指摘した。
理玖ちゃんは平成16年10月、自宅近くの路上で、はだしでいたところを保護され、児童相談所が迷子ケースとして扱っていた。報告書によると、児相はこの直後、家庭訪問による調査実施の方針を決定。しかし、実際は19年1月まで家庭訪問は実施されなかった。
報告書では、児童虐待の相談件数が年々増加している現状を指摘。現場の児童福祉司に過重な負担が掛かっていることから、人口4万人に1人の福祉司の配置が望ましいと提言した。
また、理玖ちゃんを優先度の高い虐待でなく、迷子ケースとして扱ったため、組織内の情報共有や援助方針の検討が十分に行われていなかった点も指摘し、相談種別に関係なく支援する全てのケースを管理する仕組み作りの構築も訴えた。
さらに、国への提言として、自治体間で所在不明児に関する情報共有が可能となるよう、国が情報を一元化する仕組みを創設することなども求めた。
黒岩祐治知事に報告書を手渡した委員長の鵜養美昭(うかい・よしあき)日本女子大学教授は「今回の検証結果が単なる報告として終わるのではなく、多くの関係機関、広く社会全体に子供たちが危機的状況にあると認識してほしい」と強調。
黒岩知事は「自治体や関係機関と意見交換をしながら、スピード感を持って対応していきたい。今回明らかになった問題を社会全体の問題として受け止め、国としてもしっかり対応するように働きかけたい」と語った。

里親制度 受け入れ家庭広げたい

東京新聞 2014年8月27日

親と暮らせない子を家庭に迎えて育てる里親をどう増やすか。虐待や養育放棄などを受けた子が増える中で、里親によるケアはますます大切になる。支援のすそ野を広げ、担い手を増やしたい。
親と暮らせない子を原則十八歳になるまで育てる里親は、生活の安定した夫婦などが担い手となる。児童相談所の面接などを経て登録家庭は現在、全国に一万ほど。児相から里親に委託された子どもの数は増え、約四千五百人が三千五百の家庭で暮らす。
日本で社会的養護を必要とする子は四万六千人ほどいるが、欧米と違って、里親に預けられる割合は15%と低い。子どもの処遇を決める児相が虐待への対応に忙しく、調整に手間がかかる里親よりも、乳児院や児童養護施設への委託に偏ってきた事情が大きい。
だが、状況は変わった。虐待の通報件数は過去最高の七万件を超え、ケースの大半は親からの虐待だ。親と長期間暮らせないとみられるなら余計に、集団生活の施設よりも、家庭でのケアが望ましい。特定の大人に愛情を注がれ、安定した関係を築けるからだ。
国は里親への委託率を本年度に16%にし、十数年後に30%への引き上げを目指す。里親への支援体制をどう整えていくのか。
二〇〇八年の児童福祉法の改正で、里親には事前研修が課されるようになったが、問題の多くは子どもを家庭に迎えた後に起きる。
子どもは虐待を受けて心身発達に問題を抱える場合が少なくない。子育てには専門知識も求められ、相談の場や研修機会など、委託後の支援態勢こそ必要だ。児相職員は二、三年で異動になることが多いが、里親支援の専門職員を施設も含めて増やすべきだ。
専門機関と連携の進む自治体は里親への委託率を上げている。
38%と全国で二番目に高い静岡市では、NPO法人「里親家庭支援センター」が、里親を見つけ、子どもとのマッチングや事後のケアまで支援を担う。児相、施設の三者と協力し、「子どもの預け先はまず里親」の姿勢を徹底する。
先進地の福岡市では、里親を支えるボランティアを組織し、新しい担い手の掘り起こしに努めている。
里親会など当事者同士による交流も欠かせない。働く里親なら子どもとの関係を築くための育児休業もほしい。苦労をしてでも他人の子を育てたいと思えるのは、子どもの成長に触れられるからだ。その熱意や意欲を支えたい。

男児白骨遺体、家庭訪問の方針決め4年以上放置

読売新聞 2014年8月28日

神奈川県厚木市のアパートで男児(当時5歳)の白骨化した遺体が5月に見つかった事件で、県の第三者検証委員会は27日、厚木児童相談所(児相)が男児を2004年に保護した後、家庭訪問を行う方針を決めたのに4年以上も実施していなかったことを明らかにした。
同日公表された検証委の報告書によると、厚木児相は04年10月、はだしで路上を歩いていた男児を「迷子」として保護。家庭訪問する方針を決めたが、児相職員が実際に訪問したのは08年12月だったという。この時は保護者に会えず、アパートに居住実態がないと判断。男児が死亡したのは07年1月とみられている。
検証委は、04年当時の担当職員が虐待など約150ケースを抱えていたため、「正常に対応できる範囲を超えていた」と分析。児相の対応については、「組織として適切な確認作業がされず、(虐待ケースの)進行管理の体制が不十分だった」と指摘した。

<広島土砂災害>PTSD防げ…子供の心をケアで支援チーム

毎日新聞 2014年8月27日

広島市北部の土砂災害で大きなショックを受けた子供の心をケアしようと、広島県内の精神科医や児童心理司などからなる「こども支援チーム」が避難所の巡回を始めている。県が医師会や市児童相談所などに呼びかけて結成した。既に精神医療支援に当たっている「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」とは別に、対象を子供に特化。心的外傷後ストレス障害(PTSD)など心の傷の重症化につながらないよう目を凝らす。
「家が流されるといけないから避難所にいこうよ」
甚大な被害を受けた安佐南区八木地区に住むパート女性(35)の自宅は被害を免れた。しかし、小学6年生の次男(11)は雨が降り出す度にこう心配するようになった。中学3年生の長男(14)は風呂に入っても、すぐに上がってしまう。だから雨の日は近くの避難所に寝泊まりする。女性は「ささいなことでも子供の話を聞いていきたい」と心を砕く。
被災した子供をケアする支援チームは、宮城県が東日本大震災後に組織して大きな効果を上げている。同県によると、特に震災後の半年間は、夜泣きや暴力的になるなどPTSDとみられる重い症状についての相談が多かった。
今回の広島県のチームには小児科医や児童相談所職員、大学の研究者らも参加。避難所を普段から回っている保健師から報告を受け、不調な子供のケアや保護者からの相談などに当たる。面談は1人当たり20分ほど。活動初日の25日と26日の2日間で計19件の相談を受けた。症状の重い子供は1年ほどかけて医療的な支援を続ける予定で、県の本広篤子・働く女性・子育て支援部長は「子供はストレスも大人と違う。早く対応することが大切だ」と力を込める。
また、全国的にも今回の災害が初活動となったDPATは27日までに、3チームが避難所7カ所で計26人31件の相談に乗った。家族の死による抑うつ状態やプライバシーのない避難所生活でのストレスの他、雨音などちょっとしたことに過敏になるなどの症状が見られるという。
一方、保護者サイドでも子供を支える自主的な取り組みが始まっている。
避難所になっている梅林(ばいりん)小学校(安佐南区)では25日から、図工室を子供の遊び場として開放した。不安を少しでも和らげたいというPTAの提案を受けたもので、連日約20人がけん玉や折り紙に夢中になり、歓声を上げている。
26日に参加した梅林小4年の山口千結(ちゆ)さん(9)は「同じ学校の子が集まり『みんな無事だったんだ』と安心できた」と話した。【稲生陽、大森治幸、吉村周平】

生活保護費、神奈川3市から不正受給か 静岡県警逮捕へ

朝日新聞デジタル 2014年8月28日

詐欺罪などで静岡地裁で公判中の女が神奈川県の3市から生活保護費計約300万円を不正受給していた疑いのあることが、捜査関係者や自治体への取材でわかった。すでに東京都三鷹市から生活保護を受けていたのに、重複して申請していたという。静岡県警は川崎市から生活保護費をだましとったとする詐欺容疑で、近く逮捕する方針だ。
逮捕されるのは、住所不定、無職春日野美保容疑者(48)。捜査関係者によると、2009年5月から三鷹市から生活保護を受けていることを伏せたまま、昨年2~5月、川崎市に生活保護を申請し、約65万円をだまし取った疑いが持たれている。
春日野容疑者は、相模原市にも生活保護を申請し、12年12月~昨年9月に約176万円をだましとったとする詐欺容疑で今年4月に静岡県警に逮捕されている。6月には、藤沢市からも昨年10月~今年1月に約65万円をだましとったとして同じ容疑で逮捕、起訴されている。春日野容疑者はすでに逮捕された容疑については大筋で認めているという。昨年2~5月は、三鷹、川崎、相模原の3市から同時に生活保護を受けていたことになる。
厚生労働省によると、住民登録がなくても居住実態があれば生活保護の申請はできる。静岡中央署には、神奈川県の3市のほか、都内の5市区からも春日野容疑者が生活保護費を不正に受給した可能性があるとの連絡が入っているという。

難病助成対象に110疾患…重症患者も自己負担

読売新聞 2014年8月27日

難病患者への医療費助成を広げる難病医療法が2015年1月に施行されるのを前に、厚生労働省の専門家委員会は27日、助成対象となる110疾患を決めた。
同省は、助成対象を現行の56疾患から最終的に約300に増やす方針。今秋以降に残りの対象疾患の選定作業を始める。15年夏には本格的に新しい支援制度が始まる見通しだ。
新たに助成対象となったのは、膠原(こうげん)病の一種のシェーグレン症候群や、徐々に腎機能が低下するIgA腎症、自己免疫性肝炎など。助成対象の患者は現在の約78万人(11年度)から約150万人(15年度)に広がる。一方で、自己負担がゼロだった重症患者にも所得に応じて月額1000円~3万円の負担を求める。
同委員会は今月初め、助成対象の候補として示された113疾患について検討を開始。▽客観的な診断基準がある▽原因不明で治療法が確立されていない▽長期療養が必要――といった条件に照らし合わせ、薬害が原因であるスモンや、回復後は慢性化しない劇症肝炎、重症急性膵炎(すいえん)の3疾患は新制度の対象から外した。

わいせつ高校教諭を懲戒免職 現金盗んだ職員、成績改ざんの教諭も処分

埼玉新聞 2014年8月27日

県教育委員会は27日、女子生徒にわいせつな行為をしたとして県北部の県立高校に勤務する男性教諭(24)と、同僚教諭の財布から現金を盗んだとして県南部の高校の男性職員(48)を懲戒免職処分にした。また、生徒の成績を改ざんした県東部の高校の男性教諭(35)を減給10分の1、3カ月の懲戒処分にした。
県教育局県立学校人事課によると、24歳の男性教諭は4月に採用され、同月下旬から7月上旬にかけて、通信アプリ「LINE」を通じて部活の顧問として指導する2年生の女子生徒に「ドライブに行こうね」とほぼ毎日誘い、校舎内で一方的にキスをしたり、服の上から下半身などを数回触った。女子生徒はストレスによる不眠や吐き気などを訴えたが、現在は回復しているという。
男性職員は5月30日午前8時半ごろ、同校の体育館管理室で教諭2人の財布からそれぞれ現金千円を盗み、罰金20万円の略式命令を受けた。
35歳の男性教諭は3年生の生徒2人の推薦合格をかなえようと、複数の科目にわたり10段階評価の成績を最大で2段階上げるなど、延べ10カ所を改ざんした通知表と生徒指導要録を作成した。教諭は生徒2人の1年次からの担任で「(推薦合格を)何とかかなえてあげたかった」と話しているという。生徒2人の入試に影響はなかった。

セクハラの被害を受けた時にまず、すべきこと

@DIME 2014年8月27日

セクシャル・ハラスメントの被害を受けた時、どうすればいいか? その判断は実に難しい。唯一の正解はないかもしれない。今回は、その難しい決断をする前段階で、何をどうするべきかを考えたい。ここ10年ほど取材を通して感じてきたことをもとに、5つの対応策を考えてみた。もちろん、ここに記したことが正しいか、あるいは最善策かはわからないが、多少でも参考になればと思う。

1.まずは情報を集める
まず、自分が受けた・受けている行為が「セクハラ」と呼べるものなのか、そうでないのか、と悩んだら、まずは情報を集めよう。インターネットや労働問題の本などで調べるとよい。ただ、私が確認している限りでは、書籍が情報の精度という点で他のメディアを上回っている。流れとしては、このような本を参照しながら、自らの置かれている状況のアウトラインを把握し、その後、インターネットなどで、例えば、弁護士、法律事務所、あるいは公的な機関のサイトで調べてみよう。弁護士であれば、日本労働弁護団所属の弁護士がおすすめだ。公的な機関だと、各都道府県の労政事務所(東京は東京労働相談情報センター)がよいだろう。

2.相談をするなら労働局雇用均等室へ
現状を知り、明らかに「セクハラ」であると確信をもつことができて、相談に行こうと思ったら、各都道県にある「労働局雇用均等室」に電話をしてみよう。相手は厚生労働省の職員であり、守秘義務を守るといった教育訓練は受けている。情報が会社などに漏れることはない。おそらくその職員は女性である可能性が高い。男性なら、女性に代わってもらうのもいいだろう。女性の場合、女性に話すほうが精神的な負担が少なくなるケースが多い。
「労働局雇用均等室」は、労働基準監督署や労政事務所などよりも、セクハラへの対応がきちんとできる体制になっている。電話をしてみて、「この職員と会い、話を聞いてもらおう」と思ったら、日時を双方で決めて会うのもいいだろう。その際、名刺や身分証明書、セクハラの現状を紙に書き出してまとめたものを持参すると、信用されやすくなるはずだ。

3.即答せず、冷静に対応
相談に行くと、職員から「会社に異議申し立てをしますか」と尋ねられるはずだ。つまり、雇用均等室の職員から会社に電話連絡などをして、話し合ったほうがいいのかと聞かれる。ただし、これは状況いかんで、即答はしないほうがいい。「YES」といえば、雇用均等室から正式に会社に話がいく。その先は、総務や人事部になる可能性が高い。そこから、雇用均等室で会社の総務部などと、職員、さらに本人(セクハラの被害を受けた人)との話し合いが始まる。
私が取材をしてきた経験上、ここまで話が大きくなると、その後、被害を受けた人が何年も会社に残り、仕事をすることは難しくなる。相当に強い意思をもっていないと、職場で孤立をし、精神的に滅入ってしまうケースが多い。セクハラの被害を受けたほうなのに、なぜ、理不尽な扱いを受けるのか、怒りすら覚えるだろう。残念ながら、これは事実であり、納得がいかないという女性も多い。
ここまでの流れを踏まえると、職員から「会社に異議申し立てをしますか?」と尋ねられた時には「少し考える時間をください」と言い、いったん保留して、数日間、考えてみよう。この段階では、職員に話を聞いてもらっただけで、冷静に考えることができているはずだ。

4.決断する前に、今後のことなどを考える
考える際、雇用均等室に仲介に入ってもらった後のことを冷静に考えよう。会社に残るのか、それとも辞めるのか、辞めた後の収入はどうするか、などだ。取材をしていると、セクハラを受けた被害者は相手や会社に復讐をしようとするあまり、冷静にその後のことをあまり考えていない人が多いようにみえる。
仮に、会社に非を認めさせたところで、セクハラの加害者は最終的に会社に残る可能性が高い。さすがに、同じ部署で2人が仕事をする可能性は低いだろうが、結局、体制などは大きくは変わらない。このあたりのことまで含めて、冷静に考えよう。会社の上層部が、「社内の話を第三者(雇用均等室)に持ち出した」として、人事評価などで意図的に低く扱われる可能すらあるということを覚えておきたい。

5.同僚女性に相談してみる
それでも迷ったら、特に同性である女性の社員と昼を食べる時などに、事情を説明し、話を聞いてもらおう。女性社員は巻き添えになりたくないと思い、踏み込んだことは口にしたがらないかもしれない。だが、早いうちにその話を他の女性社員などに話し、ウワサが広まっていくはずだ。それは、好ましい展開といえる。セクハラをする相手も会社員である以上、噂になることを警戒する。被害を受けている側からすると、その噂がどんどん大きくなるほうがいい。その状況を見つつ、今後のことを考えたい。
セクハラは放置しておくと、一段とエスカレートすることがある。早いうちに対処し、1~5までの対応を考えて、一刻も早く対処するように心がけたい。
文/吉田典史