子どもの貧困大綱が決定 指標の改善目標は示されず

福祉新聞 2014年9月8日

政府は8月29日、子どもの貧困対策を総合的に推進するための「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定した。貧困が世代を超えて連鎖しないよう、教育の機会均等を図ることなどを目的とする。重点施策はスクールソーシャルワーカー(SSW)の増員などで、既存の施策の拡充がほとんど。貧困率削減の数値目標は盛り込まれず、ひとり親への経済支援の不足を指摘する声もある。
厚生労働省の調査によると、2012年時点の子どもの貧困率は16・3%で、前回(09年)を0.6%上回った。
大綱は貧困の世代間連鎖解消などを基本的な方針に掲げた。「子供」という漢字表記を推進する文部科学省の施策が目立つ内容になった。
重点施策は教育・生活・保護者に対する就労・経済的支援の主に4分野で示された。
教育分野では、学校を拠点に貧困対策を推進するため、教育と福祉をつなぐスクールソーシャルワーカーの配置を進める。現在約1500人が教育委員会などに配置されているが、15年度から5年間で約1万人に拡充する。
幼児教育無償化を段階的に進め、「高校生等奨学給付金」を14年度予算額28億円から15年度は概算要求額116億円に増額する。
保護者の就労支援では、ひとり親には中卒者が少なくないとして学び直しの支援事業を初めて実施する。文科省や厚労省は15年度予算で拡充を要求する。
対策の効果を検証・評価するため、生活保護世帯の子どもの進学・就職率や高校中退率、ひとり親家庭の親の就業率など、25の指標を明記。打ち出した施策で指標改善を目指す。
当事者や有識者の意見を聞くために政府が設置した検討会は、指標改善の数値目標の設定を提言していたが、大綱には盛り込まれなかった。遺族年金や児童扶養手当の拡充も財源不足などを理由に見送られた。
検討会の提言について、政府が実施したパブリックコメントには約400件の声が寄せられたという。しかし内容は公表されておらず、どの程度大綱に反映されたかは不明。
当初7月中に閣議決定される予定だったが約1カ月遅れた。大綱について政府はおおむね5年ごとの見直しを検討する。
大綱の策定は、13年6月に議員立法で成立し今年1月に施行された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が政府に義務付けている。都道府県には大綱を踏まえて対策計画を作るよう努力義務が課されている。
法案提出者の一人、薗浦健太郎・衆議院議員(自民)は「これがゴールではなくスタートなので、大綱を実効性のあるものにすべく、予算の確保や確実な実施に全力を注ぎたい」と語った。

あしなが育英会奨学生で、政府の検討会の委員も務めた髙橋遼平さん(大学3年)の話
学生の団体や有識者の話を聞いて5月に作った、学生版の大綱案を網羅的に取り入れてくれた。特に高校生の奨学給付金が拡充されたのが一番大きい。一方でひとり親世帯の経済給付について、せめて児童扶養手当の拡充を検討するという文言を入れてほしかった。

湯澤直美・立教大教授の話
大綱の策定によって、社会全体で取り組む第一歩が踏み出された意義は大きい。地方自治体への手厚い財政支援により、地域の実情に即した施策が発展することを期待したい。一度きりの子ども期に、5年先を待てないほどの困窮状況におかれている子どもが多くいる。今回盛り込まれなかった施策については、5年後の見直しを待たずに実現してほしい。貧困率の悪化を解消するため、いかに所得の再分配を機能させるかの検討も必要だ。

生後7か月の長女重傷、虐待の疑いで両親逮捕

TBS系(JNN) 2014年9月9日

北海道旭川市で、先月5日から今月8日までの間に、生後7か月の長女に暴力を振るい、硬膜下血腫などの重傷を負わせた疑いで、女の子の父親の左近具朗容疑者(23)と18歳の母親が逮捕されました。2人は容疑を否認しています。
児童相談所によりますと、3月に病院から「身体的な虐待がある」と通報があり、女の子を一時保護していましたが、先月5日に子どもを帰していました。警察は、日常的に虐待をしていたとみて捜査しています。

里親と子つなぐ一皿 物語そえたレシピ集好評

読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2014年09月09日

「家庭の日常知って」NPO増刷へ
虐待など様々な事情で、親元で暮らせない子供を育てる里親たちが考案したレシピ集が好評だ。東大阪市の支援団体が昨年9月に1000部を発行。里親と里子をつなぐ一皿の心温まるエピソードが反響を呼び、今月、500部を増刷する。(杉浦まり)
レシピ集は、里親支援をするNPO法人「キーアセット」が発行する「まいにちの家庭レシピ」(A5判、43ページ)。野菜が苦手の子供のための「ピーマンの肉詰め」や、おかずと白米がバランスよく食べられる「トロロ丼」など里親の女性6人が考えた12品のレシピと料理にまつわる物語が掲載されている。
東大阪市の辻本真波さん(64)の「ラーメン鍋」は、6年ほど前、里子に迎えた高校生の少年のために作った。少年は、母親の暴力が原因で児童養護施設などで育った。気に入らないことがあると暴力をふるい、帰宅はいつも深夜。注意すると口論になった。
3月のある夜。辻本さんは一人用の土鍋でラーメンとたっぷりの野菜を煮込んだ鍋を出した。辻本さん自身も児童養護施設で育った経験から「自分のためだけに出来たての料理が出てきたら喜ぶだろう」と考えたからだ。
「ご飯はいらん」と言っていた少年が熱々のスープをすすり、「土鍋で一人分だけ作るなんて、おしゃれやな」と照れくさそうに笑った。少年との距離がぐっと縮まったように思えたという。
同NPOが相談会などで販売・配布したところ、子育てに悩む里親から「参考になった」「レシピの料理を作ったら子供が喜んだ」との声が寄せられている。
府などによると、府内で里親と暮らす子供は、児童養護施設などに入所する子供の1割以下の208人。子供の受け皿となる府内の里親登録者(281人)を増やすことが課題だ。
同NPO代表の渡辺守さん(43)は「料理のひと手間で、子供たちは親の愛情や家庭の温かさに気づくことができる。レシピ集を通じて、里親に関心を持つ人が増えてくれたらうれしい」と話す。1冊300円(税込み)。問い合わせはキーアセット(06・6720・6811)へ。

<佐世保女子高生殺害>高校は「少女の問題行動」を警察に通報すべきだったのか?

弁護士ドットコム 2014年9月8日

長崎県佐世保市で今年7月に起きた女子高生殺害事件で、逮捕された少女が通っていた県立高校の校長や職員が、少女の「問題行動」を知りつつ、警察などに通報していなかったことが県などの調べで分かった。
長崎県によると、少女が3月に父親を金属バットで殴って大ケガを負わせたことを、県立高校の職員が3月末から4月始めに把握。校長も4月下旬に報告を受けたが、職員や校長は、「教育的配慮」から、警察や児童相談所に通報しなかったという。
他人をバットで殴れば犯罪だ。公務員には職務上、「犯罪」が起きた事を知ったら、通報・告発する義務を負っている。今回、校長や職員は「通報義務」と「教育的配慮」の板挟みになっているように思えるが、こうした場合、どうすればいいのだろうか。教育問題にくわしい宮島繁成弁護士に聞いた。

教育という「本来の業務」が優先
「法律では、公務員は、職務上犯罪を知った場合は告発をしなければならないとされています(刑事訴訟法239条2項)。
告発とは、犯罪行為と直接関係のない第三者が、犯罪が起きたことを捜査機関に報告し、処罰を求める行為です」
今回、学校側は告発をしなかったわけだが、それはどう考えるべきだろうか?
「犯罪の捜査は大事なことです。
しかし、公務員にはそれぞれ本来の職務があります。学校は、児童・生徒を教育する場です。教師が児童・生徒の問題行動を認めた場合、まず教育のプロセスの中で対応することを考えるのは当然といえます。
こうした教育という『本来の職務』を損ってまで、告発すべき義務があるわけではありません」

「学校が告発するのは難しかったケース」
すると、学校は犯罪が行われていることを知っても、通報すべきではない?
「そこまでは言えません。
たとえば、犯罪の程度が重大であったり、教育や指導では対応できないような場合は、警察に連絡したり告発すべき場合もありえます。
ですので、学校にとって告発は、義務かどうかというより、選択肢の一つとしてとらえるのが適切ではないかと思います」
それでは、今回の学校の選択は妥当だったのだろうか・・・。宮島弁護士は次のように述べていた。
「今回は、事案や生徒の特性について見極めが難しいケースで、被害者である父親を差しおいて学校が刑罰を求めるというのは、実際のところ難しかったのではないかと思います」

人材業界、人手不足時代到来で低迷から一転 “潤う” テンプ最高益、再編加速か

Business Journal 2014年9月9日

2008年のリーマン・ショック以降、市場規模の縮小が続いてきた人材サービス業界に「人手不足」の追い風が吹き、各社の業績が上向いてきている。
総合人材サービス大手テンプホールディングスの2014年4-6月期連結決算の売上高は、前年同期比11%増の957億円、営業利益が44%増の56億円、純利益は74%増の34億円となった。同社は13年4月に、求人広告などを手掛けるインテリジェンスホールディングスを米投資ファンドKKRから510億円で買収した。買収の背中を押したのは12年10月に施行された改正労働者派遣法。派遣先企業は規制強化を懸念して直接雇用に切り替えるなど「派遣離れ」が進み、人材サービス業界は極端に少なくなったパイを奪い合う状態となった。テンプは連結売り上げの8割を人材派遣で稼ぐ。転職支援など人材紹介は手薄で、求人広告は手掛けていなかった。人材派遣事業以外にシフトするため、巨額資金を投じてインテリジェンス買収という大勝負に出た。
この賭けは勝負は吉と出た。景気回復に伴い、事務系や技術者の人材派遣や紹介サービス需要が拡大。4-6月決算でみると、主力の人材派遣事業の売り上げは9%増の671億円、セグメント営業利益は10%増の32億円となり、派遣スタッフの社会保険料の増加や業務の繁忙による人件費増を吸収して好調に推移した。
利益を大きく積み上げたのは買収したインテリジェンスの事業だ。転職サービス(DODA)、再就職支援サービス(an、salida)などのキャリア事業の売上高は79億円と、派遣事業に次ぐ第2の柱となった。セグメント営業利益は17億円と、ほぼ倍増した。15年3月期(通期)の見込みは、売上高は8%増の3900億円、営業利益は13%増の210億円となり、4期連続で最高益を更新する見通しだ。中期計画では、17年3月期の売上高5000億円、営業利益300億円という強気の数値目標を掲げているが、好決算が引き金となり、8月25日の株価は上場来最高値の3840円をつけた。テンプは人手不足で最も潤った企業の一つとなった。

大都市では3社に1社が人手確保に苦慮
厚生労働省が発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から横ばいの1.10倍で、1992年6月(1.10倍)と並ぶ高水準だ。都道府県別で最も有効求人倍率が高かったのは東京都の1.62倍で、売り手市場となった大都市では人手不足が企業経営者の悩みのタネとなっている。
では、どのくらいの数の企業が人手不足なのか。リクルートワークス研究所の調査によると、今年4-6月のパートやアルバイトの採用で、必要な人材を確保できなかった企業は30.5%に上った。正社員の中途採用で必要数を確保できなかった企業も32.1%に達し、景気回復の途上で3社に1社が人手確保に苦慮していることを示している。なかでも小売業(43.8%)と飲食サービス業(42.4%)は、「仕事の大変さに比べて給与水準が低いことが敬遠され」(同研究所)、パート・アルバイトを確保できなかった。

業界再編加速か
こうした背景が、人材派遣会社への派遣要請が増える要因となっている。縮小してきた人材派遣市場は底を打ち、上向きに転じ、長い冬の時代から抜け出す絶好のチャンスを迎えた格好となったが、そもそも人材派遣会社自体が人手不足で苦しんでいる。テンプ傘下のテンプスタッフが運営する求人検索サイト「ジョブチェキ!」上に表示される求人数をみると、年初の約1万人程度から9月には8割増となり1万8000人を超えている。これに対し仕事を求める派遣登録者数は、3割前後しか増えておらず、需給ギャップが広がっている。このギャップを埋めるために、派遣各社はOAや語学、専門事務など分野ごとに派遣登録者のスキルアップを支援することで、囲い込みを図っている。
人材サービス業界における大きなニュースとしては、大手のリクルートホールディングスが10月にも東証1部へ上場する。リクルートは海外に軸足を移しており、人材派遣事業の売上高6124億円のうち国内は前期比4.4%増の3586億円(14年3月期)。これに対して、テンプの14年3月期の売上高はインテリジェンスの買収効果で3624億円と47%の増収。リクルートの国内売り上げを上回り、国内トップに立った。3位はパソナグループの2086億円(14年5月期)。これを世界の3強であるアデコ(スイス)、ランスタッド・ホールディングス(オランダ)、マンパワーグループ(米国)の日本法人が追う展開となっている。
人材派遣事業はリーマン・ショック後、売り上げが激減し、回復が遅れていた分野だ。リクルートは海外企業の買収を加速させ、テンプはインテリジェンスを買収して総合人材サービスに変身した。これまで人材サービス業界はM&Aを重ねてきたが、景気回復による日本企業全体の人材不足を受け、さらに再編は進むとの見方が強い。