震災遺児ら育てる「子どもの村」完成・仙台

河北新報 2014年10月31日

東日本大震災で親を失った遺児らを里親らが家庭的な環境で育てる施設「子どもの村東北」が仙台市太白区茂庭台に完成し30日、記念式典が現地で行われた。すでに2組3人の里親が内定しており、2015年1月以降に子どもの受け入れを始める。
式典には関係者約60人が出席。運営するNPO法人「子どもの村東北」(青葉区)の飯沼一宇理事長は「この場所で子どもたちを幸せに育てていこうと思う」と決意を述べた。
子どもの村は震災遺児のほか、虐待や貧困などの理由で親と暮らせない子どもを児童相談所を通じて預かり、専門の研修を受けた里親が村内の一戸建て住宅で育てる。
法人は市有地約6000平方メートルを借り、住宅3棟と事務棟「センターハウス」を整備。住宅は白を基調とした外観で、広いウッドデッキを備えるなど開放的な造り。最終的に5棟に増やす計画だ。
建設費は約2億7500万円で、大半を寄付金で賄う。1期工事分の約2億3000万円は確保のめどが立ったが、2期工事の建設費や運営費が確保できておらず、法人は引き続き協力を呼び掛けている。
子どもの村は、国際NGOが中心となって世界各地で開設する。国内では10年に開設された福岡市に続いて2カ所目。

子どもの声は「騒音」なのか――東京都「環境条例」をめぐる議論をどう見る?

弁護士ドットコム 2014年11月1日

東京都は、騒音として条例で規制対象になっている「子どもの声」を、規制対象から外す方向で検討を始めた。現在、そのために市区町村から意見を吸い上げているという。
ネットでは、この件についてさまざまな議論が起こっている。ツイッター上では、「子どもがうるさいのは当たり前」「子どもを大事にしない社会に未来はない」など、規制を外すことに肯定的な意見が目立つ。
他方で、「子どもの声が我慢できない」という声も存在する。9月には、保育園の近くに住む70代の男性が「子どもの声がうるさい」として、保育園を運営する社会福祉法人に対して、防音設備の設置や慰謝料の支払いを求める訴えを神戸地裁に起こしたことが報道され、議論を呼んだ。
もし条例が改正され、子どもの声が「騒音ではない」ということになれば、生活にどんな影響があるのだろうか。騒音問題にくわしい村頭秀人弁護士に聞いた。

規制対象から「除外」すれば大きな影響
「東京都の環境確保条例136条は、『何人も』定められた規制基準を超える騒音等を発生させてはならないと定めています。
『何人も』ですから、騒音を発生させる人が誰であるかを問わず、また騒音の種類も問わず、規制対象になります。特に『子どもの声を騒音に含める』という定めがあるわけではありません」
村頭弁護士はこのように述べる。「子どもの声」が条例の規制対象から外れると、具体的にはどういったことが予想されるだろうか。
「これまでは、幼稚園や保育園などから発生する『子どもの声』について苦情が生じた場合に、自治体の公害苦情処理担当者が指導するケースがありました。しかし、騒音でなくなれば、指導は期待できなくなるでしょう」
裁判で争われるケースもあるようだが、影響はあるだろうか。
「ただちに、被害が救済されなくなるわけではありません。
ただ、裁判所は『受忍限度』――社会生活上我慢すべき限度のことです――の判断に当たって、条例の規制対象から子どもの声が除外されていることを重視すると予想されます。裁判所でも、子どもの声による騒音被害が救済されにくくなるでしょう。
このように、子どもの声を条例の規制対象から除外することによる影響は大きいと思われます」

なぜ「子どもの声」だけ特別視するのか?
今回の議論をどう見ているだろうか。
「報道を見る限り、『条例改正がなぜ必要なのか』という点についての説明が、不十分ではないかと感じます。
苦情の原因となる騒音の種類はさまざまです。なぜ子どもの声だけを特別視して、規制の対象外とすべきなのかという点が、十分に説明されているとは思えません。
条例改正を議論するのであれば、その正当化の根拠が十分議論されるべきであると思います」
子どもの声を除外するなら、きちんとした理由付けが必要、という意見だ。単純に「子どもはうるさいものだ」というのでは、ダメなのだろうか?
「『子どもの声』に対する苦情が紛争になるのは、保育園や幼稚園などの子どもが集まる施設が新たに設置されたことで、以前から周辺に住んでいる住民から苦情が生じるというケースが多いと思われます。
こうしたケースで、『先住・後住関係』を考慮せず、『子どもの声なのだから、近隣住民は我慢するのが当然だ』ということは、はたして妥当でしょうか。
条例改正によって、静かな環境で生活してきた住民に『子どもの声』による苦痛を我慢することを押しつけることにつながらないか、疑問を感じます」
村頭弁護士はこのように述べていた。
狭い都心で多くの人たちが共存するためには、時としてお互いの利益を調整する必要がある。ここは落ち着いて、冷静に議論を積み重ねるべきタイミングなのかもしれない。

【社説】公立保育所民営化 家庭支援機能も重視を

神奈川新聞 2014年10月31日

公立保育所の民間移管が全国的に進んでいる。自治体が財政難の中、待機児童解消に向け保育所を新設したり、利用者のニーズに合わせ保育サービスを拡充したりするには、公立よりも比較的運営コストの低い民間への移管が効率的だからだ。
そうした中、横浜市は一定数を公立保育所として残す方針を示した。要支援家庭のセーフティーネットとしての機能や、新設保育所へノウハウを提供し、保育の質の向上につなげる役割などを重視した。
背景には育児環境の変化がある。
同市では、児童相談所(児相)が昨年度に新たに把握した児童虐待件数が、前年度比25%増の1159件に上った。
公立保育所が児相と連携して対応する機会も増え、臨床心理士を配置し、児童虐待の早期発見につなげるモデル事業も展開されている。
障害を抱える子どもも増えている。同市の地域療育センターでは、「分かりにくい障害」とされている発達障害と診断される子どもが、この5年で1・6倍に増加した。
保育所等に通う発達障害児も増えているが、民間保育所の約53%でしか、障害児保育が実施されていないのが実情だ。そのため、1園当たりの受け入れ人数は民間1・9人に対し、体制の整っている公立が4・0人と大幅に多くなっている。
同市は2010年以降の4年間で、認可保育所を1・4倍の611カ所(14年4月1日現在)に増やし、13年4月には待機児童ゼロを達成した。しかし急増する新設保育所の中には、児童虐待や発達障害など特別な配慮を必要とするケースの対応能力を、十分に備えているとはいえない施設もある。
公立保育所が長年蓄積してきた経験や専門知識、児相や地域療育センターなどの公的機関との密接なつながりは大きな強みだ。これらを新設保育所とも共有し、保育資源の全体的なレベルアップのけん引役を務める必要がある。
厚生労働省の保育所保育指針は、その役割として、入所家庭だけでなく、地域の子育て家庭に対する支援も位置付けている。
待機児童解消や保育サービス拡充は重要なテーマだが、困難を抱える家庭を支える保育所の役割も軽視できない。公民双方の強みを生かしてバランスよく整備し、地域の親子をこまやかに見守りたい。

厚生労働省が労災保険における「特別加入」への手続き期間を拡大

保険のニュース 保険市場タイムズ 2014年10月30日

労災保険の「特別加入」への手続き期間が10月より拡大
厚生労働省はこの度、労災保険における「特別加入制度」の手続き期間を、10月1日より拡大したことを発表した。
これにより、「特別加入制度」への手続き期間は、これまでの14日以内から30日以内へと拡大された。

労災保険における「特別加入制度」とは
労災保険は本来、労働者が業務中または通勤中に災害にあった場合に支払われるもの。
しかし、「特別加入制度」においては、業務の実情、災害の発生状況などから考慮して、労働者以外であっても、労働者に準じて保護する必要性を認められた場合に、任意加入ができるようになっている。
これまで、この「特別加入制度」における加入・変更・脱退などの手続き期間は、加入・変更・脱退希望日の14日以内であったが、10月からは、30日以内に変更された。
これにより、余裕をもった手続きが可能となった。

給付基礎日額の変更を検討している人へ
また、厚生労働省では、労災保険に特別加入し、翌年度の給付基礎日額の変更を考えている人に向けて、3月の事前申請を勧めている。
もちろん、給付基礎日額の変更は、平成27年6月1日~7月10日の「年度更新」期間中でも大丈夫だが、万が一、平成27年4月1日から申告書提出日までに被災した場合、27年度の給付基礎日額の変更は不可能となってしまう。
そのため、年度末(3月)に事前申請することが勧められている。
この件についての問い合わせは、都道府県労働局、労働基準監督署にて受け付けられている。

<衝撃証拠>「判断しやすい」「必要ない」裁判員意見割れる

毎日新聞 2014年10月31日

遺体写真とイラスト両方が証拠除外、判決後に3人が会見
骨粗しょう症の母親を蹴って死亡させたとして傷害致死罪に問われた男(39)の裁判員裁判の判決が31日、東京地裁(田辺三保子裁判長)であった。裁判では遺体の写真、イラスト両方が証拠から除外された。判決後に記者会見した裁判員3人は「遺体の写真やイラストがあったほうが判断しやすい」「思い出して気分が悪くなる人もいるので必要ない」と話し、裁判員に心理的負担を与えかねない衝撃的な証拠の扱いについて意見が割れた。
男は起訴内容を認めており刑の重さが争われた。東京地検は、やせ細った母親(当時64歳)を蹴る行為の悪質さを立証しようと、遺体の写真を証拠請求。だが、地裁は写真の提示を拒み、イラストの代用も認めなかった。公判では解剖医が検察側証人となり、人体図を使って遺体や傷の状況を口頭で説明。解剖医は「被害者は身長144.5センチで体重27.8キロ」などと、骨折しやすい状況だったことを証言した。
検察側が懲役5年を求刑したのに対し、判決は懲役3年だった。会見で男性裁判員は「『あばらが浮き出ている』などの証言で状況を十分想像できた」と述べた。一方、別の男性裁判員は「頭の中で遺体をイメージしたが、現実とのギャップがあったのかもしれない。事件によっては写真やイラストを見ることも必要」と指摘した。【島田信幸】