育児放棄に至る母親の心理とは…衝撃のドラマが都内再上映

シネマトゥデイ 2014年11月8日

8日、育児放棄に至るまでの母親の心理を描いた映画『子宮に沈める』の再上映が新宿K’s cinemaで始まり、初日舞台あいさつにキャストの伊澤恵美子、土屋希乃、田中稔彦、緒方貴臣監督が出席。さらに、児童虐待防止を訴えるオレンジリボン運動に興行収入の3%が寄付されることも決まり、理事の平山英夫さんが来場して寄付金授与式も行われた。
同作は、若くして2児の母親となったシングルマザー・由希子(伊澤)が、次第に社会から孤立し追い詰められていく悲劇を描いた作品。『終わらない青』『体温』の緒方が監督と脚本を務めた。昨年11月の同館における東京公開を皮切りに全国でも上映され、厚生労働省が児童虐待防止推進月間と定めている11月に東京で再上映される運びとなった。
映画について緒方監督は「虐待を少しでも身近に感じてもらいたいと思って作りました」と製作意図を語り、「いまだに子供が亡くなってしまうニュースはよく聞きますし無くならないかもしれないけど、僕の中では、周りにそういう事件を減らそうと努力している人たちや、身近に虐待を感じている人が少しでも増えているような気がしています」と周囲の変化を説明。さらに、各地で映画が上映された1年を振り返り、観客の年齢層が30代以上と高めな印象があったことから、「これから親になるような若い人たちにもたくさん観て欲しいです」と呼び掛けた。
また監督と同じく1年を振り返った伊澤は、作品に入り込んだ観客から「あんなことをしたらダメじゃないか」と叱られたエピソードを紹介し「最初は映画として観てほしいという思いもありました。でも、最近はフィクションですけど、映画として追体験してもらえたのだから、それはそのまま受け取ってもらうことも大事な役割なんじゃないかなと思います」と心境の変化を吐露。田中も「こういう映画を観に来てくださるお客様はすごく問題意識が高い方が多いと思います。そういう方とこの映画を共有できたことが幸せです」と思いを明かす。
また平山理事は、監督や観客への感謝と共に「こういった取り組みを全国に広げていくのが目的でもありますので、これを励みにして取り組みを続けていきたいとい思っています」と力強く語った。(中村好伸)

制度外ホームで「拘束介護」 約130人、体固定や施錠

朝日新聞デジタル 2014年11月9日

体の弱ったお年寄りが暮らせる住まいが圧倒的に不足しており、制度も追いついていない。特別養護老人ホームへの入居待ちは、全国で50万人を超える。行き場のない高齢者が制度外のホームに流れている。その一つで、徘徊(はいかい)や事故を防ぐためだとして、約130人の入居者がベッドに体を固定されるなどの「拘束」状態にあった。こうしたホームは行政の目が行き届かず、高齢者の尊厳が侵される恐れがある。
東京都北区に、家賃、介護費、医療費、食費などを含めて月約15万円で生活できるという「シニアマンション」3棟がある。敷金や入居一時金もいらない。有料老人ホームとして自治体に届け出ていない制度外のホームだ。マンション業者は医療法人と提携し、入居するには原則的に医療法人の審査が必要だ。ヘルパーは、医療法人運営の訪問介護事業所から派遣される。
ヘルパーら複数の医療法人関係者の証言と、拘束された入居者の写真や映像によると、8月末の3棟はほぼ満室で、入居者約160人のほとんどが要介護度5か4の体が不自由な高齢者だった。
多くの居室は4畳半程度で、ベッドが大半を占める。ほかに丸イス1脚と収納ボックスくらいしかない。ベッドは高さ30センチほどの柵で囲われ、下りられないようになっている。入居者によっては腹部に太いベルトが巻かれたり、ミトン型の手袋をはめられたりして、ベッドの柵に胴体や手首が固定されている。
居室のドアは、廊下側から鍵をかけられる。「24時間ドアロック」と大きく書かれた紙などを張り、ヘルパーたちにドアの施錠を確認させている。
これらの行為について厚生労働省は「身体拘束」にあたるとして原則禁止している。例外的に許される場合もあるが「一晩中の拘束などは認められないし、24時間はなおさらだ」(同省高齢者支援課)としている。写真や映像、内部資料を朝日新聞が確認したところ、8月末時点で約130人でこうした「拘束」が確認できた。
入居者への介護は最大限でも1回30分または1時間で、1日3~4回。これだけにとどまるのは、自宅にいる高齢者が受ける介護保険制度の「訪問介護」のためだ。要介護度が重い入居者でも、訪問介護以外の時間は原則的に対応しておらず、「拘束」状態が続く。
あるヘルパーは「かわいそうだけど、転倒事故が起きるかもしれない。徘徊などを防ぐために拘束せざるを得ない」と話す。(沢伸也、丸山ひかり、風間直樹)

〈高齢者への身体拘束〉 厚労省の「身体拘束ゼロへの手引き」が示す例では(1)自分で開けられない部屋に隔離する(2)ベッドに体や手足を縛り付ける(3)ベッドを柵で囲む(4)指の動きを制限するミトン(手袋)をつける(5)自分で脱ぎ着できない「つなぎ服」を着せるなどの行為で、これらは高齢者虐待防止法に抵触する。
やむを得ず拘束するにしても、本人などの生命や身体が危険にさらされる「切迫性」、他の手段がない「非代替性」、最小限の時間にとどめる「一時性」という3要件をすべて満たす場合に限るとの考え方を示し、解除に向けて常に再検討するように求めている。

板書をスマホで撮影する大学生が増加 カンニング事例も続々

NEWS ポストセブン 2014年11月8日

スマホが普及し始めた数年前から、大学で教える教員のあいだで「板書をノートに書かずスマホで撮影する学生」の存在がたびたび話題になっている。最近では、レポートをスマホで撮影して画像で送信する学生も出現している。
「出先だったのでPCがないから、スマホで画像にしてメール送信したと話していました。そういう出し方をしようと思いついたことに驚きましたよ。でも、画像だとマトモに読めなかったらしくて、後日、レポート提出した講義のときに先生から『画像だと読めないので、今後は画像で送らないように』と受講生全員へ向けて注意喚起されました」(都内の女子大学生)
最近ではビジネス向けにプレゼンやミーティングでの板書を撮影するとPDF化できるスマホアプリなど、手書きメモをとらないことを目的としたツールも多い。それでも、学習の場面ではノートへ手書きするほうが理解を深め、習熟を高めるには効果が高いと言われている。神奈川大学非常勤講師で情報処理を教える尾子洋一郎さんも、講義の内容を学ぶには、やはり板書は手書きでノートにまとめた方が効果が高いという。
「定期試験の終了直後、受講生にリアクションペーパーを書いてもらうのを恒例にしていますが『ノートをきちんととっておけばよかった』という感想が毎回あります。板書をノートにまとめることで学べるよう工夫していますし、その内容さえ理解できていれば大丈夫な問題ばかりなので、テストで思うように答えられなくなって初めて、ノートにまとめる重要性を実感するのでしょう。それでも毎年、似たような感想を書く学生がいます(笑)。
僕の講義では、情報処理のテクニックだけでなくアナログとデジタル、各々の有用性を実感して学んで欲しいと思っています」
しかし、ノートに手書きでまとめる方が効果的とわかっていても、思わず写真に撮ってしまうような状況も存在するという言い分もある。
「パワーポイントでつくったスライドをものすごいスピードでどんどん切り替えられると、手書きノートで追いつくのは無理です。チョークで黒板に書く板書だって、同じ場所に書いては消し、書いては消しをすばやく繰り返されたら追いつけない。講義を休んだ友だちに頼まれて、スマホで板書を撮って送ることもあります。せっかく便利な道具があるんだから、スマホを使いたくなりますよ」(都内の文系大学生)
学生からの授業評価を実施し、大学といえども教員の授業方法を見直すのが今では当たり前となった。そのため、前述のような板書を記録しづらい授業は減り、代わりに資料を配付されることが多くなっている。この配付資料を読み込みさえすれば、手書きでノートにまとめるコツを自分で編み出さずとも学生は学ぶ内容を理解しテストも通過できるようになっている。
ところが、この懇切ていねいな資料をスマホで悪用する場面が出現している。ある私立大学の大学院生は、定期試験の監督補助についたとき試験どころではない騒ぎに遭遇した。
「ノート代わりの資料をすべてスマホで撮っておいて、机の陰にこっそりスマホを置いておきカンニングしていました。この手口を使うのは留学生に多いという話です。留学生の間で教えあって広まったようですね。試験監督に見つかり、教務からすべての単位が取り消されますとルールを告げられたら、留学したことすべてをぶち壊すのかと全身全霊で大騒ぎされて大変でしたよ」
カンニングのようなルール違反は論外だが、手軽に記録できるスマホで撮影する行為は今後もなくならないだろう。OCR(光学文字認識)機能も向上しており、ますます便利になるのは間違いない。Apple WatchやRing、SmartBandやGoogle Glassなどウェアラブル端末が普及する未来には、学習や記録のためにどのような行動が見られるだろうか。