<児童虐待>「妊娠期から継続支援を」防止策の提言案を了承

毎日新聞 2014年11月28日

厚生労働省の専門委員会は28日、児童虐待防止策の提言案を大筋で了承した。妊娠期からの母子への継続支援のほか、児童相談所(児相)の調査権や体制の強化、市町村の専門性向上などの方向性を示す内容。同省は関係省庁による児童虐待防止の副大臣会合に報告し、同委で議論を詰め、具体策を検討する。
提言案では、虐待の恐れのある妊婦について、受診した医療機関から自治体へ情報提供する体制が必要とした。市町村へ妊娠届を出さず、行政が把握していない妊婦でもNPO法人の活用などで相談できる場を設ける。また、児相と共に虐待の通告先で、対応にもあたる市町村職員には専門性が必要と指摘。市町村を巡回し、助言する児童福祉司を児相に配置すべきだとし、児相には児童福祉司や児童心理司、医師らの人員増が必要としている。【野倉恵】

施設整備優先、保育士不足も=待機児童ゼロ、財源の壁

時事通信 2014年11月28日

政府は28日、待機児童を解消するとした2017年度でも、認可保育所など保育の受け皿が0~2歳児向けで4万6000人分不足するとの見通しを示した。政府は保育施設の整備を優先し、「待機児童ゼロ」の目標を達成させる考えだが、財源の壁が立ちはだかる。消費税再増税の延期で社会保障関係費の財源が不足する中、施設整備を優先すれば、保育士の処遇改善に充てる予算が減り、担い手を十分に確保できない恐れがある。
来年4月から始まる「子ども・子育て支援新制度」では、保育所の利用要件が緩和され、パート勤務者や自営業者の保護者も対象になる。こうした家庭の潜在的な利用ニーズも含め、市町村は保育の需要を調査し、それを基に施設整備計画を作っている。
厚生労働省は「国が市町村の計画を後押しすれば、待機児童ゼロの目標達成は十分に可能」(担当者)とする。しかし、今回の見通しは、市町村がまとめた保育需要調査を全国集計したもので、実際の保育需要に受け皿整備が追い付かない可能性があることを示している。
新制度の財源には、消費税率10%への引き上げによる増収から7000億円を投じ、うち4000億円を受け皿整備に、残り3000億円は保育士の処遇改善などに充てる予定だった。保育士の月給は13年時点で21万3200円。全産業平均の月給に比べ10万円以上低く、これを3%引き上げる方針を固めていた。
だが、消費税再増税の延期により、十分な予算を確保できるかは不透明な状態だ。厚労省関係者は「施設整備はもちろんだが、処遇改善を進めて保育士を確保できなければ、新制度は絵に描いた餅になる」と、危機感を募らせている。

日本は“安楽死”をどう考える? 「メイナードさん安楽死」問題が投じた課題

産経新聞 2014年11月30日

末期の脳腫瘍と診断された米国・オレゴン州のブリタニー・メイナードさん(29)が「安楽死」したことが、日本国内でも波紋を呼んでいる。日本では安楽死は認められておらず、終末期の延命措置の中止といった尊厳死を定めた法律もないため、インターネット上で議論が活発化した。終末期の患者の選択肢をめぐる問題に取り組む専門家は、「『死』のあり方をタブー視せず、考える契機に」としている。

メイナードさんの死に若者からさまざまな反応
「まだ生きられそうな人だったから、違和感がある」「日本も尊厳死を認めるべき」「支持するけど公表することは支持しない」…
メイナードさんが11月1日、医師から処方された薬を服用して亡くなったと報道されて以降、ネットのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)では、主に若年層とみられる書き込みであふれた。
昨年結婚したメイナードさんは、カリフォルニア州で生活していたが、今年1月、脳腫瘍と診断された。4月に余命半年と宣告され、「安楽死」が合法化されているオレゴン州に転居。「11月1日に(医師から処方された)薬を服用して死ぬ」と動画投稿サイトに予告し、予告通り死亡した。
ネット上では「安楽死が認められたら、介護できなくなった夫や妻や親を伴侶や子供が殺してしまう事件も減る」「膵臓(すいぞう)ガンの末期症状の悲惨さを聞いちゃうと安楽死や尊厳死の選択肢もあっていい」など、安楽死をも認めるべきとする発言も目立った。
議論の活発化について、延命治療のあり方の見直しを求めている日本尊厳死協会の長尾和宏副理事長(56)は「メイナードさんの行為は安楽死であり、自殺。自ら命を絶ったことには反対だ」とした上で、「日本ではこれまで、安楽死と尊厳死の違いすらほとんど理解されてこなかった。メイナードさんの死を、若者が同世代の問題としてとらえるようになったことが大きい」とみる。

「尊厳死」と「安楽死」の違いがわかりますか
安楽死と尊厳死の違いは何なのか。日本国内では、メイナードさんのように医師が薬物を用いて死期を早める場合、尊厳死ではなく、安楽死と呼ばれる。尊厳死は、終末期の患者の胃内に管を通し、食物などを流入する胃瘻(いろう)や、人工呼吸器による延命措置を行わない死を指す。
安楽死は自殺幇助(ほうじょ)罪や殺人罪に問われる可能性がある一方、尊厳死は医療現場で定着しつつある。だが、終末期医療に関し、国も明確な基準を示していないのが現状だ。
神奈川県の東海大病院で平成3年、医師が末期がん患者に塩化カリウムなどを注射して死なせた事件があり、医師が殺人罪で起訴され、7年に執行猶予付きの有罪判決が確定した。この判決で横浜地裁は(1)死期が切迫している(2)耐え難い苦痛がある(3)苦痛除去・緩和の手段がない(4)本人の意思表示がある-の4つが、医師による安楽死が許容される要件だと示した。
一方、厚生労働省は19年に終末期医療の指針を策定したが「肉体的苦痛を緩和する重要性を強調し、緩和ケアを充実させることが何よりも必要」との立場から、医師が薬剤の投与などで患者の余命を短縮させる行為を指針の対象外とした。
尊厳死をめぐっては、超党派の議員連盟が、医師が関与しても責任を問われないルール作りとして、法制化を提案。終末期を「適切な医療でも回復の可能性がなく、死期が間近と判定された状態」と定義し、患者本人が書面などで尊厳死を望む意思を示している場合、2人以上の医師による判定を条件とした。
だが、死生観や生命倫理で多様な意見があり、法案提出の見通しは立っていない。
「尊厳死の法制化を認めない市民の会」の呼びかけ人でもある平川克美氏(64)は「法制化は医療費削減という目的が透けて見える。議論することはいいが、終末期をどうするかは法律で決めるものではなく、当事者が引き受けるしかない問題」と話す。

終末期に望む医療の「意思表示」、日本では1割未満
一方、医療の発達で、死をめぐる環境は変化しつつある。日本尊厳死協会によると、死亡場所について「病院」が「自宅」を上回ったのは昭和51年。現在は病院で死を迎える人が約8割前後とされる。
こうした状況下で、長尾氏は「本人が『最期はどうしたいのか』という意思表示を文書でしておき、元気なうちに家族間で話し合っておくことが大切だ」と説く。「日本では、自分では延命治療を望まないにもかかわらず、自分の親に対しては望む人が多い。逆に自分が望んでいても、家族や医師に伝わらなければ意味がない」という理由からだ。
日本尊厳死協会では、尊厳死を望む約12万人が会員登録し、延命治療を不要とする意思を記した「リビングウィル」(尊厳死の宣言書)を作成。財布などに入れ、常に身につけておくことを推奨している。
ただ、こうした準備を行う人は少数派だ。厚労省は昨年、病気で意思表示できなくなった場合を想定し、望む医療と望まない医療を書面化する行為に関する調査を実施。一般国民の約7割が賛成する一方、実際に作った人は1割未満というデータもある。
やがては必ず訪れる死に、どう備えるか。長尾氏は「今回の件で、国民は初めて本当の意味で安楽死、尊厳死という言葉を知ったと思う。リビングウィルの法的担保の議論の前に、死のあり方をタブー視しないで考えるきっかけにしてほしい。メイナードさんの安楽死をもっと日本の議論にも生かすべきだ」と話している。

忘年会シーズン到来 健康にいい、酒の「適量」ってどれくらい?

J-CASTニュース 2014年11月30日

最近では11月にもなれば早くも「忘年会」のお呼びがかかり、ビジネスパーソンには良くも悪くも酒量が増えるシーズンが始まった。適量を心掛ければ「酒は百薬の長」というが、いったい適量とはどれくらいなのか。
そもそも酒を飲むと「酔う」のは、血液中に入ったアルコールが循環して脳に到達すると、アルコールが脳の神経細胞に作用してマヒした状態となるからだ。酔いの程度は、血液中のアルコール濃度によって6段階(爽快期・ほろ酔い期・酩酊初期・酩酊期・泥酔期・昏睡期)に分けられる。

厚労省の指針では、1日ビール中びん1本、日本酒1合
公益社団法人アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02~0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。0.05~0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下していく。0.11~0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなる。さらに、0.41~0.50%は「昏睡期」ともなれば、マヒ状態は脳全体に及び、呼吸困難を引き起こす可能性もあるという。
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、焼酎0.6合(約110ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、ワイン1/4本(約180ml)、缶チューハイ1.5缶(約520ml)となる。なお、純アルコール量は次の計算で求められる。
純アルコール量(g)=酒の量(ml)×アルコール濃度×0.8(アルコールの比重)
また、同協会によると、一般的に、純アルコール量20gを1単位として、2単位までを限度とすることを薦める。つまり、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておくくらいだ。ただし、体格や年齢・性別、体質、飲酒時の体調などの個人差によって異なる。休肝日も必要だ。

適量の酒で「死亡リスク」が低くなる
このように酒の「適量」が定められている背景には、飲酒量と死亡率の相関関係を調べた疫学調査の結果があるからだ。なかでも、米国保健科学協議会が各国の研究機関等の研究報告を分析したレポート(1993年)によって、適量の酒を飲む人は、全く飲まない人や多量に飲む人に比べ、最も死亡率が低いという考え方が広まった。グラフの形が似ていることから「Jカーブ効果」と呼ばれている。
滋賀医科大学の報告(2006年)によると、日本でもアルコール摂取量と総死亡リスクとの間に、Jカーブ減少が見られたという。この研究で、最も総死亡リスクが低かったのは、1日のアルコール摂取量9~12gのグループだった。また、総死亡に対して予防的に作用するアルコール摂取量の上限は、1日あたり42~72gのグループだという結果も出た。これは、アルコールが血中の善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを抑えたことで、心筋梗塞や狭心症などの予防に役立ったと考えられている。
個人差はあるにしても、適度な酒はコミュニケーションを円滑にしたり、緊張やストレスを和らげたりするのだろう。もっとも、ほどほどの酒は「百薬の長」となり健康長寿につながるが、酒席の言動によっては「諸悪の根源」にもなりかねない。酒席では雰囲気を大切にしながら、ほろ酔い程度に楽しむのがよさそうだ。
[アンチエイジング医師団 取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]