<里親制度>委託率全国2位・静岡に見る 普及と課題

毎日新聞 2014年12月23日

虐待などが原因のため親元で暮らせない子どもを家庭で育てるのが里親制度だ。集団生活の施設よりも自然な環境で養育できるため、国は今後15年以内に、里親に委託される子どもの割合(委託率)を現在の15%から「3分の1」に引き上げる方針だ。しかし、自治体間の取り組みの差は大きい。里親委託に熱心で、委託率が4割を超える静岡市を訪ねた。
「子どもは『ママ、ママ』と私にべったりなので、生みの親の存在をどう受けとめるか心配」。「将来『実の親に会いたい』と言われたら、どうすればいいのか」--。
NPO「静岡市里親家庭支援センター」(静岡市葵区)が今年10月に開いた研修会。テーマは「真実告知」で、里親歴30年超のベテランから認定を受けたばかりの里親候補まで25人が参加した。里親が口にした不安について、先輩里親が「うそはつき通せない。大切なのは告知後のフォローで、親の側に心の準備が必要だ」と助言。同センターの里親推進員も「真実告知とは『血縁はなくても大切な家族』と伝えること。独りで悩まずにセンターや児童相談所に相談してほしい」と締めくくった。

専門機関で手厚く
同センターはこうした「里親養育技術スキルアップ研修」を1年間に10講座、開いている。2010年秋に設立され、11年度から、従来は児童相談所が担う里親関連の業務を市から請け負ってきた。その結果、かつて2割未満だった同市の里親委託率は12年度末で38.6%に上昇。全国平均(14.8%)を大きく上回り、全都道府県・政令指定都市の中では新潟県の44.3%に次ぐ2位になった。先月1日時点ではさらに増えて、施設で暮らす80人に対して里子は55人となり、静岡市の委託率は4割を超える。
同センターの活動は啓発、研修、相談・支援の「3本柱」だ。講演会や地元の大学への出前講座、市の広報誌への掲載などで、まずは里親制度をアピール。申し込みがあれば面接やリポート提出などを通じて、里親としてふさわしいか、どのような子どもと相性が良いのかを判断する。市から認定を受けた里親には1~2カ月に1回の家庭訪問や年9回のサロン、親子キャンプなどの機会をもうけ、相談に応じている。里子同士の横のつながりも自然にできるという。里親からは「みんなで子育てをしている感覚で心強い」と好評だ。
同センターの真子義秋理事長(70)は「ここまで手厚い支援は里親専門機関ならでは。児童相談所が業務として行うには限界がある」と話す。真子さんは県児童相談所の元所長で、児童養護施設でも働いた。その経験から「子どもは温かい家庭で養育されるべきだ」との信念を持つ。
一方で、児童相談所は虐待対応で忙しく、職員の異動もある。里親委託は施設に委託する場合と比べて「仕事が3倍になる」とも言われ、推進するのは難しい。多くの自治体が国の方針に反して消極的な理由だ。
そこを同センターが一手に引き受け、里親の開拓とマッチング、委託後のフォローに力を入れることで、親子の関係悪化などで委託を中断する「不調」も防げているという。新規の里親には里親会への加入を義務付け、研修になかなか出てこない里親には同センターの佐野多恵子次長が繰り返し電話して参加を促す。

課題は運営資金
課題もある。市からの業務委託費は約1200万円で、相談員も含めた約10人のスタッフの報酬としては不十分だ。ボランティア同然の人もいる。里親会の真保和彦会長は「スタッフの善意に支えられている。持続可能な仕組みにするには十分な運営資金が欠かせない」と話す。また、対象となる子どもの年齢はさまざまだが、最近は養子縁組を見越して乳児を望む里親が増えたため、マッチングが難しくなっているという。
市児童相談所の内山雅之所長は「里親に委託することは、相性の良しあしといったハイリスクな面がある一方、自立後の精神的な支えになるハイリターンの面もある。また、虐待を受けた子どもの養育には対応しきれない面もある」と指摘する。その上で「児童相談所としては、子どもと面談して家庭での様子を確認するなど里子の支援に取り組む必要がある」と話す。
全国里親会の木ノ内博道副会長は「里親の普及に大切なものは児童相談所と里親との信頼関係。専門機関が間に入ることで双方にメリットがある。全国にも同様の仕組みが普及してほしい」と話す。

山梨では登録制度
信頼関係という点では山梨県の取り組みが珍しい。委託時に成育歴や心理検査の判定、家族状況などのファイルを里親に手渡す。取り扱いは厳重注意とし、里親に署名を求める。同県中央児童相談所は「子どもに必要な援助が明確になったとして里親からは好評だ」という。伝達の行き違いによる双方への不信感もなくなった。また、名刺サイズの里親登録証を発行し、県の里親会では里親手帳を作成。里親が医療機関で身分を証明する際などに役立っているという。【鈴木敦子】

子どもの幸福度も福井県が日本一

福井新聞ONLINE 2014年12月23日

福井の子どもの幸福度も日本一―。慶応大などの研究チームが22日発表した47都道府県の「子どもの幸福度に関する計量分析」調査で、福井県が全国1位になった。五つの項目のうち「健康」「豊かさ」でトップ。教育でも2位だった。福井県は「日本総合研究所」(東京)による都道府県別の幸福度ランキング(2014年度版)でも1位になっている。
厚生労働省が今年7月に発表した子どもの貧困率が過去最悪の16・3%になるなど深刻化する中、「子供の貧困対策に関する大綱」が8月に閣議決定された。子どもの貧困を含めた幸福度に対する注目度が増しているため、同大などが初めて実施した。
既存の統計データ(74指標)を用いて分析。「健康」「地域・家族」「安心・安全」「教育」「豊かさ」の5項目で指標の数値を算定した。子どもは義務教育が終了する15歳以下と定義した。
福井県は、小学校男女ともに体力合計点が1位、中学校男女はともに2位。さらに2500グラム未満の出生数が少ないことなどが加味され「健康」部門は1位となった。「豊かさ」部門でも、子どもが育つ環境に影響する大人の指数でみると、正規就業者率や世帯預貯金残高などが高く1位だった。
算数や数学、国語などの平均正答率が全国上位を占めた「教育」部門は2位。「全国学力・学習状況調査」での家庭環境や地域参加に関連する質問への回答などを基にした「地域・家族」部門は5位、交通事故発生件数や刑法犯総数認知件数などのデータを用いた「安心・安全」部門は11位だった。
福井県は都道府県で唯一、74の指標全てで上位を占めた。研究代表者で慶応大法学部の小林良彰教授は22日、東京都内で開かれた「子どもの幸福度」シンポジウムで「全ての項目でレベルが高かった福井県を参考に、各都道府県が競い合って幸福度を高め、全体の底上げにつながれば」と話した。西川知事は「高い評価をいただき非常に光栄。子育てや教育面で、今後も全国をリードできるような施策を進めたい」と意欲を述べた。
今回の調査では富山が2位、石川が4位、新潟県が5位で北陸が上位を独占した。3位は秋田県。

障害者への虐待 根絶へ周囲の目が重要

北海道新聞 2014年12月23日

虐待を受けた障害者が2013年度、全国で2659人、道内で97人もいることが分かった。死亡者は全国で3人いる。
理由はどうあれ、虐待は許されることではない。弱い立場の人に対してはなおさらだ。
政府は今年1月、障害者権利条約に批准し、16年4月には差別解消法が施行される。
条約や法の趣旨を尊重するのは当然だ。すべての国民が互いに人格、個性を認め合う共生社会を早期に実現しなければならない。
調査は2年前に施行した障害者虐待防止法に基づき、厚生労働省が初めて、通年で実施した。
虐待の種類は、暴行や拘束などの「身体的―」、侮辱的な発言などの「心理的―」、金銭を渡さないなどの「経済的―」、わいせつ行為をする「性的―」など、多岐にわたる。
加害者は、身近にいる家族や福祉施設職員、職場の上司・同僚らだ。被害者の6割は、知的障害者が占めている。
残念なのは、全体の7割が家庭内虐待という現実だ。身体的虐待が大半を占めているが、ネグレクト(放棄・放置)も多い。
他人が入り込みにくい密室が現場だけに、被害実態が表面化しにくい難しさがある。
驚くのは、障害者を守る立場にいる福祉施設職員らによる行為が全体の2割近くを占めていることだ。職員が考える「しつけ」や「指導」が、客観的に見れば行き過ぎたケースが目につくという。
施設側は職員教育を徹底し、利用者の立場に立って、寄り添いの思いを新たにしてほしい。
虐待行為が後を絶たないのは、する方は認識が不足しがちなこと、される方は意思表示がうまくできないことも大きい。
だからこそ、障害者への虐待予防教育も含め、周囲の視線や指摘が大切だ。
障害者虐待防止法は、発見した人には自治体などへの通報義務を課している。問題が深刻化する前に早い段階で発見し、支援につなげる狙いからだ。
国内の障害者は今、身体、精神、知的障害者合わせると700万人を超える。企業で働く人が11年連続で増え、過去最多の43万人に達している。
今後、障害者のさらなる社会進出を支えていきたい。
そのためにも、虐待は根絶しなければならない。身近にいる障害者が苦しんではいないか。温かいまなざしが重要である。

女子高生にわいせつ行為させる サイト掲示板に「高額アルバイト」 風俗店経営者ら3人を逮捕

産経新聞 2014年12月23日

高校2年の女子生徒(16)にわいせつな行為をさせたとして、兵庫県警は22日、児童福祉法違反容疑などで、兵庫県姫路市南車崎、無店舗型風俗店「スイートシーズン」経営の男(45)=同罪で公判中=ら3人を逮捕、送検したと発表した。男は「18歳未満とは知らなかった」と容疑を一部否認、他の2人は認めているという。
送検容疑は4~5月、姫路市内のホテルで、女子生徒に男や別の男性客らを相手にわいせつな行為をさせたなどとしている。6月、女子生徒からの通報で発覚。交流サイトの掲示板に「高額アルバイト紹介」などと書き、少女らを募っていたという。