子どもの声は騒音ですか? 絶えぬトラブル、条例改正も

朝日新聞デジタル 2015年1月26日

保育園や遊び場の子どもの声をめぐるトラブルが絶えない。厳しく騒音を規制する条例がトラブル拡大を招いた東京都では、就学前児童の声を規制対象から外す改正案が2月議会で提出される。一方、保育園と住民が話し合いで歩み寄ったケースもある。

園庭ではひそひそ声
「ネズミさんの声だよ」。東京都練馬区の認可保育所「アスク関町北保育園」。保育士が園庭に出る園児に注意した。壁には「ひそひそ話」のネズミから「思い切り」のライオンまで、動物に例えた声量別の絵が貼られている。

子育て給付、1295万人に=低所得者向けは1875万人―14年末

時事通信 2015年1月26日

厚生労働省は26日、子ども1人当たりに1万円を配る子育て世帯臨時特例給付金について、2014年末時点での支給人数が1295万人だったと発表した。住民税が非課税の低所得者向けに1万円または1万5000円を配る「簡素な給付措置」の支給人数は、1875万人だった。
どちらも消費税増税に伴う経済対策で、同年4月から15年9月までの1年半分として支給。給付対象者の推計人数は、子育て世帯臨時特例給付金が1271万人、簡素な給付措置は2400万人。子育て給付金については結果的に受給者が推計を上回った。
今年10月からは支給額を圧縮し、1年分で子育て給付金は3000円、簡素な給付措置は6000円とする。

「介護福祉士」取得しても待遇は… 仕組みは次々変更

朝日新聞デジタル 2015年1月26日

「介護福祉士」の資格は、待遇を大きく変えてはくれなかった。埼玉県内の介護福祉士の男性(55)は昼はデイサービス事業所に勤め、夕方からはスーパーでアルバイトをする生活が続いている。
介護福祉士は、介護の専門的な知識や技術を持つ人に与えられる国家資格で、1989年に始まった。介護職員の中核になって高齢者を世話する人たちだ。
男性は機械の整備・販売業を営んでいるが、業績が伸び悩んで厳しくなり、約5年前から介護職員として働くようになった。介護福祉士は3年の実務経験があれば受けられるため、昨年春に国家試験を受けて合格した。
ところが、資格をとっても給料は変わらなかった。デイサービス事業所からの月給は手取りで10万円ほど。これでは夫婦2人で暮らせないため、スーパーのアルバイトで月に手取り5万円ほどを稼いでいる。
「実務経験を積み、試験も9割正答したが、なんのための資格かわからない。もっと評価される資格にならないと意味がない」。男性はそう言う。
昨年春に試験を受けたとき、会場に集まった受験者は同じ年配が多かった。若い人は少なかったという。
介護福祉士は国家試験のほか、専門学校などの介護の養成学校を卒業すれば資格がとれる。厚生労働省の検討会は、介護福祉士の質を一定以上にするため、2017年から卒業生にも国家試験を義務づけることができるかを議論してきた。
だが、昨年8月、先延ばしする方針を決めた。関係者によると、養成学校などから、介護を学ぼうとする若い人がさらに減ってしまうという声が出たという。

「段位」登場に現場困惑
資格は本来、就職や昇給に役立つものだ。だが、資格づくりや仕組みの変更ばかりが目立ち、逆に現場をとまどわせる例もある。
12年秋、東日本大震災の被災地で「キャリア段位制度」が始まった。介護職員の技術や能力を七つの段位(レベル)に認定する仕組みだ。
しかし、その年、当時の民主党政権による「事業仕分け」で早々に「廃止」という結論が出た。すでに介護福祉士などの資格があり、ちがいがはっきりしなかったからだ。
それでも段位制度は廃止されず、13年秋からは全国に広がった。入浴や食事、トイレの介助など実技の評価に重点を置くようにして、これまでの資格とすみわけることにしたという。
段位を認定するのは、社団法人のシルバーサービス振興会(東京都)だ。元厚労事務次官の水田邦雄氏が理事長を務めている。
段位はまず、介護施設の職員が振興会の講習を受けて評価者になる。この評価者がほかの職員の仕事ぶりをみて段位を決め、振興会に認定してもらう。
東北地方にある介護施設では、評価者になった職員が昨年5月から同僚1人の評価を始めた。3カ月で終わる予定だったのに、半年以上たったいまも終わるめどさえたたない。
チェックするのは約150項目に及ぶ。たとえば、食事の介助では献立を説明するなどの声かけ、食べたいものを聞いているか、食事や水分の量の記録をしたかなど多岐にわたる。
評価者は自分の仕事をこなしながら、同僚について回ってチェックしなければならない。「ただでさえ人手が足りず、評価の時間をとれない。休日を使って評価することもある。約80人の職員の評価には何年かかるんだろうか」という。
厚労省は、職員の給料を引き上げるなどの待遇改善の条件を満たした施設には、介護報酬に加算をしている。その条件のひとつが段位制度の利用だ。
14年度は、評価者の講習費用などのために振興会に約1億5千万円の予算をつけた。15年度からは予算をつけず、講習費は施設が負担する。振興会に段位を認定してもらうのも、1回につき7100円かかる。
しかし、段位は七つあるのに、いまのところ具体的な基準が整っていて認定を受けられるのは下から4段階までだ。評価に手間もかかるので、振興会が認めた評価者は約8千人いるのに、段位を認定された人は200人余りしかいない。
「段位に応じて給料を上げようにも、手間がかかって昇給できないようでは本末転倒だ」。東京都内にある特別養護老人ホームの施設長はそう指摘する。

<更生園虐待>防止法の理念 施設で共有欠如

河北新報 2015年01月16日

湯沢市が運営する障害者支援施設「皆瀬更生園」で、2人の職員が知的障害者にノートを投げ付けるなどの虐待をした問題が発覚し、秋田県は近く、市に改善計画書を提出するよう指導する。2人とも20年以上勤務する40代のベテランだが、障害の特性に応じた対処法を十分に学んでいなかった。障害者虐待防止法の理念を施設として共有しようする意識の欠如が、虐待の背景にありそうだ。(横手支局・喜田浩一)

<周囲にも恐怖感>
「普通の人は毎日1万歩以上も歩けない。明らかに虐待だ」。女性職員から長時間の歩行運動を強いられていた女性入所者の実態について、秋田県南の障害者施設長はこう憤る。
市などによると、この入所者は他人に迷惑を掛ける行動障害があったため、医師から以前、行動障害を起こす時間の余裕を与えないよう指導されていた。
施設は自由な時間を制限するため、入所者との間で、肥満防止名目の歩行運動と漢字の書き取りを決まり事として口頭で「約束」した。だが、こうした対応は入所者の支援計画書やケース記録に記されず、親族にも知らされていなかった。
秋田県社会福祉士会の和田士郎会長は「医師から指示されたのなら、保護者に説明して同意を得る必要がある」と対応を疑問視する。
一方、男性職員の場合は、入所者を床に伏せ倒し、頬を平手でたたいた。入所者3人に争いがあった後、興奮した1人が向かってきた際の対応だった。
県北の施設長は「平手打ちは、周囲の入所者にも恐怖感を与えたはずだ」と批判する。

<甘い指導認める>
市によると、職員2人とも他の施設で勤務した経験はない。更生園として、2012年に施行された障害者虐待防止法の理念や対処法を共有してこなかった。
立ち入り調査した秋田県障害福祉課の担当者は「更生園として、技能の向上や危機管理の取り組みが不十分だった」と職員の未熟さを指摘する。「障害者が興奮した時の対処法を職員が身に付けていなかった。研修の機会が十分設定されていたのに、職員に周知されていなかった」と話す。
県障害福祉課によると、県内で虐待防止の研修会があっても、出席者が持ち帰って施設内の全職員に周知するとは限らないという。
市福祉課も取材に対し、更生園に対する指導の甘さを認めている。
秋田県知的障害者福祉協会の桜田星宏会長は「全職員や市町村が障害者の権利意識を高める必要がある」と力説する。

[皆瀬更生園の虐待問題]
2013年4月、女性職員が女性の入所者にノートをぶつけて頬を切るけがをさせた。この職員は同じ入所者に対し、平日は1万5000歩、休日は2万歩の歩行運動を達成できないと食事を遅らせることが複数回あった。男性職員は14年4月、男性の入所者を床に倒し、平手打ちをした。市が14年12月、検討会議を開き、一連の行為が身体的虐待、心理的虐待に当たると判断した。