<川崎中1殺害>ネットに「容疑者」情報…名誉毀損の可能性

毎日新聞 2015年3月2日

川崎市川崎区の多摩川河川敷で同区の中学1年、上村(うえむら)遼太さん(13)が刺殺体で見つかった事件で、発生直後からインターネット上に「犯人」に関する情報が書き込まれた。今回の事件で逮捕されていない複数の人物の実名が名指しされる事態になっており、専門家は「名誉毀損(きそん)に当たる可能性があり、訴訟リスクを負うことになる」と指摘している。
「犯人情報」「犯人特定」。2月20日の事件発生後、インターネット上には実名や顔写真、住所などの情報が次々と掲載された。情報が次々とコピーされ拡散が続き、「容疑者」として10人近い人が実名で名指しされている。「誤った情報の可能性がある」と断っているが、実名を載せた同じような情報の書き込みは複数のサイトに残ったままになっている。
ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でも拡散は止まらない。本人だけでなく、家族だとする写真も出回り、掲載されている。関係者を語る人物もいたが、真偽が不確かな書き込みが多いのが実情だ。
ネット上の書き込み問題に詳しい深澤諭史弁護士は、少年事件にもかかわらず「個人の名誉に関わる情報があまりに気軽に書き込まれている」と話す。「この事件と関係の無い人物を犯人と名指しした場合、関係者が訴えれば書き込んだ本人、情報をまとめた人物がプライバシー侵害や名誉毀損に当たる可能性がある。仮に事実であったとしても(加害少年の特定につながる実名などの報道を禁止する)少年法の条項もあり、ネット上だけ実名でいいということにはならない」と説明。さらに「自分が直接書き込まず、コピーやリンクしただけであったとしても名誉毀損に当たるリスクは残る」と指摘する。
事件に関して真偽不確かな情報が際限なく広がっていくネットの世界。対策はあるのか。深澤弁護士は「ネット上で『殺す』『爆破する』という書き込みが大幅に減ってきた。関係機関が取り締まってきたからだ。表現の自由は大事だが、無制限ではない。犯罪を憎むという感情は正しいと思うが、それでネット上に『さらす』行為を正当化することはできない。リスクがある行為だと繰り返し伝えていく必要がある」と話している。

川崎中1殺害:母コメント全文「残忍…涙が止まりません」

毎日新聞 2015年03月02日

川崎市川崎区の多摩川河川敷で同区の中学1年、上村(うえむら)遼太さん(13)の刺殺体が見つかった事件で、上村さんの通夜が2日、川崎市内の斎場で営まれ、親交のあった制服姿の同級生や保護者らが訪れ、その死を悼んだ。上村さんの母親は2日、弁護士を通じてコメントを発表した。全文は以下の通り(表記は原文のまま)。
本日、遼太の通夜を執り行うことができました。
優しい顔で寝ている遼太の姿を見ると、本当に遼太が死んでしまったのか分からなくなります。
今にも起き上がって「母さん、母さん、お腹すいた」と言うのではないだろうか。台所にいると、「ただいま」と元気な声が聞こえ、帰ってくるのではないかと思ってしまいます。
寝ている遼太に声をかけても、遼太が私を「母さん」と呼ぶことも、話すこともできなくなってしまったことが悲しくてたまりません。
遼太は、本当に明るくて優しい子で、友達が多く、まわりの大人たちにもとても大事にされてきました。
中学校1年生で、まだまだあどけなく、甘えてくることもありましたが、仕事が忙しかった私に代わって、進んで下の兄弟たちの面倒を見てくれました。
私自身、仕事や家事に疲れた時、何度も何度も遼太の姿に励まされることがありました。学校を休みがちになってからも、長い間休んでいると、きっかけがないと学校に行きづらくなるから、早く登校するように話してきました。ただ、遼太が学校に行くよりも前に私が出勤しなければならず、また、遅い時間に帰宅するので、遼太が日中、何をしているのか十分に把握することができていませんでした。
家の中ではいたって元気であったため、私も学校に行かない理由を十分な時間をとって話し合うことができませんでした。
今思えば、遼太は、私や家族に心配や迷惑をかけまいと、必死に平静を装っていたのだと思います。
事件の日の夜、一度は外に出かけようとするのを止めることができたのだから、あの時、もっともっと強く止めていれば、こんなことにはならなかったとずっと考えています。顔や体のひどい傷を見て、どれほど怖かっただろうか、どれほど痛かったかと思うと涙が止まりません。小さな遼太に、このようにむごく、残忍なことを行える人間が存在することが信じられません。
犯人が逮捕されましたが、遼太が帰ってくるわけではなく、犯人に対して何も考えることはできません。
最後になりましたが、遼太のために河川敷に献花して下さった皆様、また、昼夜問わず捜査に尽力いただいている警察関係者の方に、厚く御礼と感謝申し上げます。

社説:認知症と身体拘束 介護の専門性を高めよ

毎日新聞 2015年03月02日

認知症の介護で疲弊する家族は多い。特別養護老人ホームなどの介護施設は受け入れを嫌がる傾向が強く、医療機関が認知症の受け皿になっている例は少なくない。精神科病院だけで5万人以上の認知症の人が入院している。
ベッドから落ちないよう縛る。柵でベッドを囲んで行動を制限する。そうした身体拘束を高齢者に行っていたとして、東京都北区の介護事業所が都から改善勧告を受けた。近くの民間マンション3棟で暮らす高齢者に食事やおむつ交換などの介護サービスを提供しており、130人程度に拘束をしていたという。
「医師の指導で行った」と介護事業所は主張したというが、それが本当であれば、医師の指導の妥当性や経緯についても都は調べるべきだ。
身体拘束は高齢者の心身に深刻な影響を及ぼす虐待行為である。徘徊(はいかい)などによる事故を防ぐためとも言われるが、実際は人手不足や支援技術の乏しさが原因であることが多い。
高齢者が長期間身体拘束をされていると、食欲の低下や脱水症状を起こし、関節が硬くなり筋力が低下して寝たきりになりやすくなるという。精神的にもストレスが高じてさらに「問題行動」がひどくなり、生きる意欲を失っていく人も多い。介護保険施設の運営基準で、緊急やむを得ない場合を除いて身体拘束が禁止されているのはそのためだ。
高齢者虐待防止法は家庭内と介護施設内での虐待が対象で、医療機関は調査の対象になっていない。このため、介護に手のかかるタイプの高齢者が医療機関に集まっているとの指摘が以前からあった。
最近は、厚生労働省が精神科病院への認知症の入院基準を厳しくしたこともあり、民間マンションなどで認知症の人を受け入れ、外部の介護事業所がヘルパーを派遣して生活を支える、というやり方が都市部を中心に増えている。介護施設ではないことからチェックの目が届きにくいとも指摘される。
医師や医療機関が介護事業所の経営に関与する例も少なくない。高齢者は複数の持病がある人が多く、医療と緊密に連携を取ることができれば、家族も安心だろう。だが、医療は患者を治療する機能を担っているのであり、認知症の人の生活を支える介護とは本質的に異なる。介護サービスに医療の感覚を安易に持ち込むと、たとえ悪意はなくても、過剰な治療や管理を招きかねない。
身体拘束せずに認知症のケアを実践し、穏やかな生活を支えている介護現場はいくらでもある。これから都市部を中心に認知症の人が激増していく。今こそ介護の専門性を構築しないといけない。

大音量の音楽視聴で世界の若者10億人超に難聴リスク、WHO

AFP=時事 2015年3月2日

【AFP=時事】世界で10億人を超える若者が、大音量の音楽を聞くことによって難聴になる恐れに直面していると、世界保健機関(World Health Organization、WHO)が警鐘を鳴らした。

ポップ音楽、50年で「よりうるさく、単純に」
WHOが先月27日に発表した試算によると、中・高所得国の12~35歳のおよそ半数が、聴覚を損なう恐れのある音量で携帯音楽プレーヤーやスマートフォンを利用していた。また、40%がコンサート会場やナイトクラブで危険なレベルの大音量にさらされていた。
WHOでは、85デシベル(dB)を超える音量では8時間、100デシベル超なら15分で、耳の機能を損傷する危険があると指摘。難聴にならないためには、携帯音楽プレーヤーの音量を下げ、利用時間を1日1時間までに減らすべきだと勧めている。