親の「学び直し」/貧困断つ一歩にはなり得る

河北新報  2015年3月17日

ひとり親家庭に対する支援を抜きにして、貧困対策は語れない。そうした観点に立てば、去年8月の「子供の貧困対策大綱」策定を受け、曲がりなりにも一歩を踏み出すとはいえるのだろう。
厚生労働省は新年度から、ひとり親家庭の子どもだけでなく、親に対しても教育面での支援を強化するという。
高校卒業資格を取得するための講座受講費用を補助する新事業をスタートさせ、親に「学び直し」を促す。
「学び直せば、労働条件が良くなったり、転職の可能性も広がったりする」と、厚労省は暮らしの向上につながることを期待する。
確かにそうなれば、大綱の眼目である、親から子へという「貧困の連鎖」を断つための一歩とはなる。
ただ、日々の暮らしに追いまくられるひとり親に、学習する余裕があるのかどうか。そうした疑問も消えない。
教育・就業支援の実効性を担保するためにも、政府は生活を下支えする経済的支援の充実について検討すべきだ。
政府に大綱策定を迫ったのは、調査の度に悪化する子どもの相対的貧困率だ。平均的所得の半分を下回る世帯で暮らす子どもの割合を示し2012年は16.3%に上った。
その数字が、ひとり親世帯では実に54.6%に跳ね上がる。ひとり親家庭が貧困対策の柱の一つであるゆえんだ。
母子家庭は約124万世帯、父子家庭は約22万世帯(11年度調査)に上る。
いずれも、8割以上が勤労収入を得ているとはいえ、特にシングルマザーは男親に比べ、ワーキングプアが多い。半数近くが非正規で働き、その層の年間就労収入は平均で125万円にとどまる。
しかも、ひとり親の14%は最終学歴が中学卒業か、高校中退という。
新たに始める事業は、高校卒業程度認定試験(旧大検)を受けるための講座受講費用を上限15万円で、最大6割を補助する。学び直しで高卒資格を得て、可能な限り正規雇用へ道を開く、そうした狙いは理解できる。
だが、母親たちは複数の仕事を掛け持ちし、家計のやりくりに追われて子どもとゆっくり話す時間もない。学ぶ意欲はあっても、実行に移せる人は限られるのではないか。
ひとり親の就業支援では既に別の「学び直し」がある。看護師や介護福祉士などの資格を得るため、学校で学習する際、最大で月10万円を2年間支給する。だが、この制度でさえ年平均の支給件数は数百件と、そう多くはない。
暮らしに忙殺される親たちに、新事業を含む教育・就業支援制度について、まずは周知を図ってもらいたい。
同時に、親たちに必要なのは、自らのキャリアアップを考え実行できる経済的、精神的な余裕ではないのか。
大綱決定時、要望が強かった給付型奨学金の創設、18歳で止まる遺族年金や児童扶養手当の延長を含む家計支援策は見送られた。「宿題」として積み残された形だ。
それらは子どもに進学の道を開くとともに、親には余裕を与えるはずだ。実現に向け継続的な検討を求めたい。

普通学級か支援学級か…小学校選びの問題【「発達障害」と呼ばれる子どもたち:その8】

Mocosuku Woman  2015年3月16日

「じっとしていられず、落ち着きがない」「集団行動になじめない」など、さまざまな理由で「発達障害」と診断された子どもたち。
このシリーズでは、そんな発達障害児たちの療育施設での実際を、さまざまな角度からレポートしていきます。

人を突き飛ばしてしまうM君の「クセ」
Tさん(仮名・45歳)は、長男であるM君の「軽度発達知的障害」と診断される特徴に悩まされていました。
そのうえ、児童精神科などの病院や児童相談所へ行っても、「母親の心の問題」と言われ、また夫婦双方の両親からも「母親のしつけが悪いから」と責められてしまいます。
M君を保育所であずかってもらいながら、なんとか仕事を再開したTさんでしたが、保育所の先生からは「M君は他の子どもの迷惑」とまで言われる始末でした。
この頃のM君には、近くに寄ってきた人を突き飛ばしてしまう、という「クセ」がありました。また、電車が大好きなM君は、電車のオモチャや本などを見ると、それ以外は目に入らないらしく、目の前にいる別の子どもを押しのけたり、突き飛ばしたりしてトラブルになることも多かったようです。
やがて、M君は1人で外で遊べる年齢になったのですが、この頃のTさんは家にいても、外で子どもの泣き声や悲鳴が聞こえると、「ウチの子がなにかやったのではないか」と気が気ではなかったそうです。

普通学級か支援学級か
やがて、M君が小学校に進学する時期がやってきました。
Tさんは地域の公立小学校へ行き、M君の特徴を伝えたうえで、進学について先生と話し合いました。
Tさんの希望は、M君が「普段は普通学級(通常学級)に在籍し、授業についていけないときだけ特別支援学級へ行く」というものでした。特別支援学級とは、障害や病気などでサポートが必要な子どものために設けられているクラスのことです。
しかし、小学校の先生の意見はTさんとは正反対の、「M君は基本的に特別支援学級に在籍し、ときどき普通学級で授業を受けるのが望ましい」というものでした。

環境を選ぶことの大切さ
上記の経験からTさんは「親が子どものために環境を選ぶ」ことの大切さを痛感したと言います。
なぜなら、M君のように知的障害や発達障害を持つ子どもの場合、学校や地域によって受け入れる姿勢にかなりの違いが見られるからです。また、公立の学校の場合は、地域によって「加配」と呼ばれる支援の先生の人数が違うことなども影響しているとのことでした。
M君のように人の多い場所でパニックを起こす傾向のある子どもの場合は、静かで自然環境が豊かな場所へ引っ越すことも、選択肢のひとつだとTさんは考えました。
そして、Tさん家族はM君の進学に際して、小中高一貫教育の学校に入学するために、実際に引っ越すことを決意したのです。
※この話は実話を元に、脚色を交えて構成しています。実在の人物や場所などとは一切関係ありません。

危険から子供を守るための連携を

オピニオンの「ビューポイント」  2015年3月16日

不登校で連絡が取れない状態が続いたり、不良グループなどと交際したりする中で、危険な目に遭う恐れのある子供が全国で400人に上るとの調査結果を文部科学省が公表した。
学校は警察や児童相談所など関係機関と協力して子供を守らなければならない。

川崎の事件受けて実施
この調査は川崎市の男子中学生殺害事件を受けて行われた。文科省は①7日間以上不登校が続き、面談などで安全が確認できない②学校外のグループと付き合う中で危害を加えられる恐れがある――ケースについて報告を求めていた。
調査結果によると、不登校で安否が確認できない子供は232人。保護者の協力が得られず面会や連絡ができないという事例が多かった。また、交友関係で危険に巻き込まれる恐れがあるのは168人。年上の兄弟や先輩などを通じて暴走族や非行グループに入ったケースが多く、仲間内のトラブルで暴行された生徒もいる。
ただし子供に危険が及ぶ可能性についての判断は各教育委員会に委ねられ、最多の大阪府が65人である一方、12県は0人と回答した。この数字は氷山の一角とみていい。さらに調査を重ねるべきだ。
今回の調査を受け、文科省は「早急に安全を確保する必要がある」として、警察や児相との連携体制をつくって対応するよう各学校に通知した。川崎市の事件では、学校だけで対処し、関係機関と協力できなかった問題点が指摘されている。悲惨な事件の教訓を生かし、子供を危険から守らなければならない。
殺害された男子中学生は1月以降、不登校が続いていたため、担任教諭は母親に30回以上電話し、自宅も訪問した。だが結局、凶行を防ぐことはできなかった。男子中学生は事件前、暴行を受けて顔を腫らし友人に身の危険を訴えていたが、学校は把握できていなかった。
子供の発信するSOSを見逃さないためには、本人に直接会うことが不可欠だ。ただ本人の素行不良やネグレクト(育児放棄)などがある場合、学校だけでは十分に対応できない。スマートフォンの普及もあって、子供の世界はますます見えづらくなっている。学校と警察、児相によるサポートチームの設置など、子供を守るための実効性ある仕組みが求められる。
事件の再発防止に向けては、学校と関係機関の「橋渡し役」であるスクールソーシャルワーカー(SSW)の活用も重要となる。川崎の事件では要請がなく派遣されなかったが、SSWが関与していれば別の対応を取れた可能性があった。
SSWは教委が委託した社会福祉士など、全国で約1500人が活動する。SSWがそれぞれのケースに応じ、スクールカウンセラーらに割り振ることで被害防止につなげていく必要がある。

体制強化が欠かせない
ただし、SSWの2013年度の配置率は市町村教委で約37%、都道府県教委で27%にとどまる。
不在地域や1人が20人以上の子供を担当するケースもあり、体制強化が欠かせない。

今年度の社会福祉士国試、合格率27.0%-厚労省が合格者発表、累計は19万人超に

医療介護CBニュース 2015年3月16日

厚生労働省は今年度の社会福祉士国家試験(第27回)の合格者を発表した。合格率は27.0%で、前回試験から0.5ポイント下がった。第1回試験からの合格者数の累計は19万2664人となった。【ただ正芳】
今年度の社会福祉士国家試験は今年1月25日に実施され、4万5187人が受験した。このうち合格者は1万2181人で、前回より359人減った。今年度の合格者のうち、福祉系大学などの卒業者は59.6%、養成施設の卒業者は40.4%だったほか、女性が64.7%を占めた。

精神保健福祉士国試の合格率は61.3%
また厚労省は、1月24・25日に行われた今年度の精神保健福祉士国家試験(第17回)の合格者も発表した。同試験の受験者は7183人で、合格者は前回試験より253人多い4402人だった。合格率は61.3%で、前回試験より3.0ポイント上昇した。累計合格者数は7万569人となった。