子どもは「手首」と同じか~アタッチメントと所有

Yahoo!ニュース 2015年3月22日

アタッチメント、安全基地、部分対象
アタッチメントは発達心理学では「愛着」と訳されるそうで、乳幼児期、数名の大人による濃密な関わりが反復される日常において形成されるといわれる。

数名の大人は通常「親」と呼ばれ、1人よりも複数以上いるほうが望ましいそうだ。
通常1人目は「母」であるが、複数が望ましいのは、アタッチメント対象が1人の場合、1人目の状態・状況によって乳幼児は大きく影響を受けるからで、現代社会においては「母」(1人目)はさまざまなストレス環境にさらされるため、これが数名(父ほか)でカバーできれば、よりリスク管理することができる。
が、特に乳児の場合、「他者」の認識力の限界があり、6ヶ月までは周囲の人間の顔の詳細なデザイン・構成まで把握できないという。アタッチメント対象人数も数名に限られるのは、こうした乳児の識別能力とも関係すると思われる。
これらアタッチメント対象は、子どもにとって「安全基地」でもある。安全基地が確保されるからこそ、乳幼児は外部刺激をほどよく受けながら、ゆっくりと発達していく。安全基地が不安定で基地ではなくそれこそ「戦場」だった場合、乳幼児の発達に大きく影響を与える。心理学はこれを愛着障害あるいは反応性愛着障害と呼ぶそうだ。
また、僕の趣味である哲学の分野から論じられるのは「システム」の視点であり、フロイトのいう口唇期(生後数ヶ月)において乳児は自分の身体を「身体全体」として把握することはできず、いわゆる「部分対象」として捉える。
乳児は統一した「自分」がまだないため、乳を飲んでいるときは、「口(と周囲の大人が認識する赤ちゃんの一部分)~口に流れてくる温かな液体(乳)~目の前にある液体を蓄え噴出する暖かな肉(のようなもの/乳房)」といった一連の組み合わせ全体がいわば「乳システム」であり、「自分」という統一した主体/自己のない赤ちゃん世界においては、乳を飲んでいるときは赤ちゃんの「乳システム」を中心にその身体が発動している。

これが、ドゥルーズ~フロイト的な乳児期の親と子のあり方だ。

アタッチメント=「付属品」
素朴な発達心理学においても(安全基地)、諧謔的な現代哲学においても(部分対象とシステム)、周囲の「他」との安定的な関わりが、乳幼児の「破綻しないライフ」を形成すると考えられる。
安全基地を提供し、乳児が求めるときに適宜「システム」を提供する(たとえば「目」のシステムもある~親と赤ちゃん〈赤ちゃんはまだ主体形成以前なので「目」という部分対象が独立する部分的存在〉が見つめあう、その目と目で成り立つシステム)。これが、赤ちゃんにとっての安定したライフにつながる。
ところでアタッチメントは「愛着」とは別に「付属品」という直訳もある。機械や乗り物なんかについている小物等を指し(たとえばこの自転車のアタッチメント等楽天サイクルアタッチメント)、本体に寄り添うようにして本体を支える付属品、これがアタッチメントだ。
自転車という「主体」を付属品として陰ながら支える、あるいは、主体があるからこそその付属品は存在意味がある。こうした、主-助(他)といった意味もアタッチメントにはある。

「子ども」は「手首」と同じか
もうひとつ、児童虐待を考えるときに僕が注目しているのは「所有」という概念だ。最近の哲学では鷲田清一先生(僕は末端ながら阪大の臨床哲学出身なので、まさに「先生」なのだ)が『悲鳴をあげる身体』(PHP新書)で「所有」概念をとりあげているが(自分の「身体」は誰が所有するか)、僕は、「親が子を所有すること」についてこの頃はよく考える。
たとえばリストカットの場合、傷つける手首は自分の手首だから傷つけてよいという理屈が成り立つ。言い換えると、自分が所有する手首は自分だけのものだから好き勝手してよいという理屈だ。
これと同じように、、子どもは「自分のもの」だから(親が所有するものだから)その所有物は持ち主が自由に扱ってよいという理屈もある。
当然これは、「子どもの人権」が確保された近代においては、親のエゴであり許されない。が、それはあくまでタテマエの議論であって、近代の価値以前の価値も当然内包し続ける我々近代人にとって、完全に無視することはできない価値でもあるだろう。

主が他を「飲み込む」=愛
僕は当欄において、虐待してしまう親の衝動を「暗闇」と表現した(虐待という暗闇に我々はどう取り込まれ、その暗闇から我々はどう逃れているか)。
この「暗闇」の根拠のひとつが、今回考えた「アタッチメント」と「所有」にあるのでは、と思っている。おもしろいのは、虐待とは反対概念であるはずのアタッチメントではあるが、そうしたアタッチメントが成り立つ「主(親/子)と他(子/親)」の深い関係性において、主が他を飲み込んでしまう(主は他を自分のものにしていい)という価値が内包されているということだ。
その「飲み込み」は、「所有」という概念(これは古い概念だ)で表すこともできる。また、これは、たぶん「愛」という概念に言い換えることもできる。
愛は、元々は「部分対象」の時代(乳児期)の記憶が元になっているとも思われ、もっとざっくばらんにいうと、「安全基地」の安心感を反復し続けるのが大人になってからの愛だと思う。
このように、安全基地~アタッチメント~所有~虐待(という現象)~愛、これらはまったく別のものではなく、すべて人間の営みとして、つまりは人間の「定義」としてこれらは繋がっている。
だから、虐待は、近代的法の概念からのみ断罪しては説得力を欠く。これら、一連の人間のサガのこひとつとして捉えると、虐待の加害者(親)もセルフヘルプグループに誘い、被害者がハイティーン以上になったあとも支援システム(PTSDや発達障がい)を整え、児童相談所や児童養護施設等の支援機関のハードと人員を再構築することにポジティブになることができる。
これが、これからの貧困層拡大(虐待連鎖)社会を崩壊させないポイントだ。「暗闇」を「暗闇」ではなくそう。

睡眠の専門家が赤ちゃんの夜泣きに悩む母親に提案する「脳育眠」とは

@DIME 2015年3月22日

夜中でも数時間ごとに起きて、おむつ替えや授乳をしなければならず常に睡眠不足…と、赤ちゃんの夜泣きに苦労したというお母さんも多いのではないだろうか。10年ぶりに大幅改良された『パンパース』の新発売を記念して開催された「ママのための“脳育眠”セミナー」には、今まさに子育てに奮闘中のお母さんたちが大集合。セミナーでは、子どもの睡眠に詳しいスリープクリニック調布院長の遠藤拓郎医師、夜泣き専門保育士の清水悦子さんらが登壇、睡眠の専門家の話にお母さんたちは熱心にメモを取ったり、耳を傾けていた。
赤ちゃんの眠り研究所代表でもある清水さんは、理学療法士として病院に勤務したが、出産を機に退職。長女の激しい夜泣きに悩まされ育児ノイローゼ状態に。自身の経験と元医療従事者の視点から、夜泣き=睡眠障害の一種と考え、夜泣きについての勉強を始め、生活リズムを主体とした夜泣き改善方法にたどりつく。その結果、半年間悩まされた夜泣きが5日で改善。その後保育士の資格を取得、経験を活かして子どもの睡眠や夜泣きのサポートを行っている。
「えんたく先生」として親しまれている睡眠専門医の遠藤医師は、2007年にスリープクリニック銀座、2010年にはスリープクリニック青山を開院。現在はスリープクリニック調布の院長を務める。2015年2月には日本初の内科、耳鼻咽喉科、心療内科、精神科、小児科の総合的な子ども睡眠外来「キッズすいみんクリニック」を、スリープクリニック銀座内に開設した。 大人と異なる赤ちゃんや子どもの睡眠パターンを理解すれば、夜泣きや深夜のおむつ替えも軽減できるという。二人の専門家による、睡眠の質を向上させて健やかな子どもを育てる“脳育眠”を紹介しよう。

寝かしつけのポイントは朝にあり
眠りにメラトニンが関わっていることは一般に知られている。メラトニンは脳に働くと眠くなる物質で、年齢を問わずメラトニンは21時ぐらいから出始め、23時ごろには高くなり、朝方に低くなると目が覚める。しかし朝の7時の段階ではメラトニンの量はまだ高く、大人も子どももすっきりと起きることができないことも多いはず。人間の体内時計は25時間で、朝に太陽の光を浴びてリセットされることで、1時間の時差を調整している。
赤ちゃんの寝かしつけに大切なのは夜ではなくは朝。夜に眠くならないといって起きていると、遅寝、遅起きの習慣になってしまうため、朝は大人、子どもを問わず無理やりでも起こすことが大事だ。赤ちゃんも同様で、朝の光を浴びることで、メラトニンの濃度が急激に落ちて目が覚める。朝日を浴びることで14~15時間後にメラトニンが分泌されるため、朝起きたときに夜眠る時間が決まってくる。寝かしつけは朝から始まっていることを意識することが必要だ。
メラトニンは夜の光に弱いため、赤ちゃんを明るいところで寝かせているとメラトニンが出にくくなり、寝つきの悪い状態を引き起こす。寝返りができない赤ちゃんはずっと天井を見ているため、天井の灯りを直視していることになるので、夜の寝かしつけのときに注意したい。
赤ちゃんの体内時計は大人に比べて発達過程のためうまく働かせるには、朝は明るくのびやかに、夜は暗く静かに過ごすという「おひさまリズム」が大事。

ステップ1→朝は7時までに起こす。
ステップ2→お昼寝の時間を調整して日中は活動的に過ごす。
ステップ3→寝る前の30分は赤ちゃんと触れ合う「いちゃいちゃタイム」を取る。朝と昼夜の違いを明確に赤ちゃんに伝えていくことで、赤ちゃんの睡眠の質を上げて夜の覚醒を減らす。

睡眠の質を高めることで、成長ホルモンを促す
生まれてすぐの赤ちゃんは1日16時間ほど寝る。生後4か月だと14時間、5~6歳になると11時間ぐらい。睡眠には夢を見るレム睡眠とほとんど見ないノンレム睡眠がある。ノンレム睡眠には1~4まで段階があり、番号が大きいほど深い睡眠となる。
大人も子どもも眠り始めから3時間の間に深い睡眠に達する。深い睡眠のノンレム睡眠のときに成長ホルモンが分泌して体を大きくさせるので、良い睡眠環境で寝かせて、成長ホルモンをたくさん出させることが大切になる。また、子どもはレム睡眠が多く、レム睡眠の時に心が成長すると言われており、赤ちゃんもただ寝かしつけるだけでなく、睡眠環境を整えることが必要になってくる。
体温が急激に下がる時に寝つきがよくなり、深く眠るので途中で起きなくなる。寝かしつけのときに体温が下がっていると寝付かないので、早く寝かしつけるには、次の3つを行って、いったん体温を上げることが大切。
(1)おっぱいをあげる。おっぱいを飲むと赤ちゃんの体温が上がり、冷えた布団に入れると体温が下がって眠くなる。
(2)お風呂に入れてあげる。
(3)「脳育眠体操」で体を動かす。
赤ちゃんの手足や頭が温かくなってくれば、そろそろ寝るかなというサインになる。温かくなっていなければ、この3つを行って体温を上げるようにしてみる。

夜泣きはなぜ起こるの?
赤ちゃんはなぜ夜に頻繁に起きるのか?それはレム睡眠、ノンレム睡眠のサイクルに関係してくる。睡眠は一定した状態を継続しているわけではなく、浅い眠りと深い眠りの波のリズムを繰り返しながら朝を迎える。赤ちゃんの睡眠は大人より睡眠サイクルが短い。大人の場合、浅い眠りから次の浅い眠りまでは90分と言われているが、赤ちゃんの場合、生後3か月頃だと50~60分のサイクル。また体内時計も発達途上なため、浅い眠りに移行するときに次の眠りにすんなりと行けずにぱっと起きてしまう「半覚醒」になることがある。
また、赤ちゃんは夢を見るレム睡眠の際に、泣いたり、笑ったり、良く動く。赤ちゃんは睡眠の時に体を動かしながら、成長の確認をしていると言われている。完全に覚醒しているのではなく、寝ぼけている状態で動いたり、泣いたりしているわけだが、大人から見ると起きているように感じてしまう。
清水さん自身の経験では、1時間ごとに起きるたびに授乳やおむつ替えを生後6か月まで行っていたという。しかしこれを大人に当てはめると、睡眠中に1時間ごとに食事をさせて、トイレに行かせているのと同じ。寝ているときに起こされるのは大人と同様、赤ちゃんも嫌がっているのだ。

【就寝中のおむつ替えについて】
おむつ替えはできるだけ回数を少なくする。赤ちゃんは寝ているとき1時間半に1回はおしっこをしている。おむつが濡れている度に交換となると、1時間半ごとにおむつ替えをしなくてはならなくなる。生後2か月を過ぎた赤ちゃんは4時間ごとに大きく目が覚める。おむつ替えは1時間半ごとではなく、4時間ごとに1回を目安にするとお母さんもしっかりと眠れる。
4時間ごとのおむつ替えには、3回程度のおしっこをため込んでも維持できるおむつを選ぶことが大切。吸収性がよく逆戻りしない、表面がさらさらなおむつがベスト。素早く吸収して、おしっこ直後の湿気まで吸収するため、最長12時間さらさらの状態を保つ「新パンパース さらさらパンツ」の実験が会場で行われた。

【就寝中の授乳について】
昼間は2~3時間ごとなのに、夜は1時間ごとに授乳するのは、考えてみればおかしな話。夜に泣いたり起きたりするたびに授乳をする必要はなく、わーっと泣いたときは2~3分の間、様子を見ることが大事。泣いてもすぐに次の睡眠サイクルに入っていくこともある。
「最大の寝かしつけのポイントは、毎日同じ時間に寝かせて習慣化させて、夜に自然と眠くなる生活を心がけることです。そして“安心して寝ていいんだよ”というサインを送ることも大切。安心を伝えるには親も堂々と眠りましょう。泣くたびに親がそわそわしていると、赤ちゃんも不安に感じてしまいます。
夜泣き対策としてポイントとなるのは、夜間寝ている赤ちゃんの邪魔をしないということ。赤ちゃんが起きてしまったと思って親が対応していることが、わざわざ赤ちゃんを起こして、もう一度寝かしつけをしなくてはいけない状況にさせていることになります」(清水さん)
調査では1歳半までに6割の母親が夜泣きを経験し、産後うつを抱える母親の約7割が子どもの睡眠に悩まされた経験があるという。子どもの睡眠を理解し、快適に過ごせるおむつを選ぶことで、夜泣きが軽減し、母親の負担も少なくさせることにつながるといえるだろう。

家族や自分の症状が気になる人必見!「もの忘れ」と「認知症」はどう違うの?

Mocosuku Woman 2015年3月22日

厚生労働省の調査によると、平成23~24年の国内の認知症患者は、MCI(軽度認知障害)も含めると、推定860万人。65歳以上の4人に1人に相当します。この傾向は今後ますます進んでいきます。
また、65歳以上の老年性認知症とともに、65歳未満の若年性認知症も、全国で約37800人(推計)、推定発症年齢の平均は51.3歳±9.8歳という統計も公表されています。中高年者にとっては他人事でなくなってきています。
認知症によく起こる「もの忘れ」や「抑うつ状態」は、単なるもの忘れや「落ち込み」とどう違うのでしょうか?

認知症に典型的な症状とは
認知症は、本人が訴えるより家族が先に気がつくことが多いのですが、次のような症状があります。
・同じことを何回も言ったり、聞いたりする
・ものの名前や人の名前が出てこない
・置き忘れ、しまい忘れが目立つ
・以前あった興味や関心が薄れる
・今日の年月日・曜日が出てこない
・時間や場所の感覚が不確かになる
・話している内容が解からなくなったり、つじつまが合わない話になる
・体験したことの全部を、すっかり忘れてしまう
・進行すると、記憶障害や失認・失行などでADL(日常生活動作能力)に支障が出る
・不活発になると、身体機能の衰えとともに、ベッドに仰臥したままになる
とくに、基本症状は「もの忘れ」「見当識障害」「判断力障害」です。
また、興味や関心が薄れてじっとしているなど抑うつ状態も現れます。
※見当識障害とは、今日が何日で、ここがどこかといった状況把握を指します。

「もの忘れ」と「認知症」はどう違う?
単なる物忘れは、「一時的」で思い出すことができる、または人格に影響がないのに対して、認知症は、自覚(病識)がないこと、全部忘れる、基本的な見当識も忘れる、日常生活が困難になる、人格が低下していくなど、大きな違いがあります。

抑うつ状態との違いとは?
自覚症状があるかどうか、実際より訴えが大きいか小さいか、脳の萎縮の有無、知的能力への影響など、こちらも違いのポイントがあります。

きちっと理解し、適切に対応する
認知症にかかる人が増えてくると、上にあげたような兆候から、家族や、むしろ自分が認知症ではないか、という心配にとらわれることもあるでしょう。正しく理解して、適切に対応できるようにしたいものですね。