<施設の子供>職員らの虐待 届け出288件中87件認定

毎日新聞 2015年3月27日

厚生労働省は27日、児童養護施設などで暮らす子供への、職員らによる虐待が疑われる届け出件数が2013年度は全国で288件に上り、そのうち87件が虐待と認められたと明らかにした。いずれも厚労省が集計を取り始めた09年度以降最多だった。前年度は届け出が214件で、虐待件数は71件だった。
厚労省によると、全国の施設などで暮らす子供は約4万8000人で、このうち児童養護施設は約3万人、里親家庭は約4500人。集計の対象は全国47都道府県と、児童相談所がある22市の計69都道府県市で、18歳未満の子供を養育している児童養護施設や、里親家庭などで起きた事例をまとめ、同日あった同省の専門委員会で報告された。
虐待が最も多かったのは児童養護施設の49件(56.3%)で、里親家庭が13件(14.9%)。虐待の種類は身体的虐待が55件と6割以上を占めた。心理的虐待は17件、性的虐待が13件、ネグレクト(養育放棄)が2件あった。
被害を受けた子供は155人(前年度は173人)に上り、小学生が57人と最多。中学生が54人、高校生が23人、就学前児童が18人だった。一方、虐待をした職員や里親は105人で、実務経験年数は5年未満が50人と最も多かった。
09年度施行の改正児童福祉法は、職員らによる子供への虐待防止と対応を明記。虐待を見つけた場合は、関係者が自治体や児童相談所へ届け出ることが義務づけられ、都道府県が毎年公表している。
担当者は虐待件数が最も多かったことについて「届け出制度の周知が図られたことが一因と考えられる。虐待防止の対応策を普及していきたい」とした。【金秀蓮】

もう断酒するしかない? 事件やトラブルを起こす「アルハラ」とは?

Mocosuku Woman 2015年3月27日

お酒を飲んだ上での暴言や暴力をめぐるトラブル・事件は、いろいろな場面で頻発しています。先日も、大河ドラマなどに出演していた俳優が、台湾の空港で係員に暴行を加え、傷害と公務執行妨害の容疑で拘束されたことがニュースとなっています。こうしたトラブルは、家庭をはじめ、公共の場や会社でも起こっており、 それらは近年「アルハラ(アルコール・ハラスメント)」と呼ばれる社会問題にもなっているのです。要因としては、飲酒をして酩酊することで攻撃性が増す直接的な影響と、習慣的な飲酒によるアルコール乱用やアルコール依存症などの疾病からくる間接的な影響とがあります。

お酒が絡んだ暴力で起こる家庭的・社会的問題
家庭内暴力(DV)
厚生労働省よると、刑事処分を受けるほどのDV事件例では、犯行時に本人が飲酒していた割合は67.2%に達していたという報告があります。この数字をみると、激しい暴力においては飲酒との相関がより強いようで、とくに飲酒をして暴力を発生させるのは、男性に多いという特徴が指摘されています。またアルコール依存症者においては、一般的に飲酒をして暴力暴力問題が頻繁にみられ、断酒後には激減することから、依存症レベル では飲酒と暴力に関連があることは、はっきりしたことのようです。
一方で、あまり知られていませんが、アルコール問題を持つ者に対する家族からの暴力もあります。特に女性のアルコール依存症者は、夫をはじめ家族からの暴力を受けやすいようです。しかしDVの原因は飲酒だけではなく、夫婦関係や生活歴など様々な要因が関与しており、飲酒とDVとの因果関係は非常に複雑で、まだよくわかっていない部分も多いのが実態です。

児童虐待
児童虐待とは、18歳未満の児童に対してその保護者が「身体的虐待や性的虐待」「養育の放棄・怠慢(ネグレクト)」「心理的虐待」を行なうことです。厚生労働省の報告によると、児童相談所における児童虐待相談対応件数は、統計の開始された平成2年(1990年)度以降、増加の一途をたどっています。要因はいろいろ考えられていますが、両親の飲酒・酩酊およびアルコール乱用・依存症あがっており、明確な児童虐待に対する飲酒の影響についての調査・研究が急がれています。

高齢者虐待
高齢者への虐待も近年社会問題化しているため、「高齢者虐待防止法」が施行されました。
高齢者虐待の加害者側の要因としても、養護者の飲酒・酩酊およびアルコール乱用・依存症が挙げられます。その理由として、介護疲れから飲酒量が増え、アルコール乱用・依存症へと進行する事例も相当数あると考えられていますが、厚労省によると、児童虐待同様、それについての十分な調査・研究は報告されていない、ということです。

もうひとつの「アルハラ」
「アルハラ」には飲酒による暴言・暴力といった迷惑行為のほか、「イッキ飲み」をさせたり、お酒を飲めない人に無理にお酒を勧めたりといった「飲酒を強要する行為」も含まれます。
お酒を飲んだからといって、すべての人が暴言を吐いたり、暴力を振るったりするわけではなく、こうしたトラブルを起こす人は精神面になにか問題を抱えている可能性が高いといえるでしょう。
お酒には心身の緊張をほぐしたり、人間関係の潤滑剤になったりするようなメリットもあるといわれていますが、心に「トラブルの種」を持つ人にとっては、お酒は理性的な判断力を鈍らせてしまう厄介な存在でもあります。「普段なら絶対にそんなことをしない」という理性によるガードを、アルコールの作用がゆるめてしまうのです。
お酒自体がが人に暴力を振るわせるというわけではありませんが、飲酒がその人の持つ「トラブルの種」に火を点けてしまうケースがあるのは事実といえるでしょう。また、こうした飲酒によるトラブルは、本人や周囲の人に、精神や肉体、社会的な面などにおいて深刻なダメージを与えてしまうことがあります。
お酒の席でトラブルを何度も起こしたり、友人を失ったりといった経験に心当たりのある人にとっては、キッパリとお酒をやめるという決断が、無用なトラブルを避ける上で大切なのかもしれませんね。

地方移住するなら知っておくべき、金、仕事の話

週プレNEWS 2015年3月28日

ここ最近、都会での暮らしに見切りをつけて、田舎で第二の人生を始める人が増えているらしい――。
移住者の数は2013年度で8169人、この4年間で2.9倍に増えたというデータもあるが、NPO法人「ふるさと回帰支援センター」副事務局長・嵩(かさみ)和雄さんによると「それはあくまで自治体の支援策を利用して移住した人の数。自治体を経由せずに移住した人を含めると、実数は2万人近くに膨らむのでは」とのこと。
しかし、興味はあっても都会で生まれ育った人が地方移住の実際をイメージするのは難しいはず。そこで、今回は嵩さんと、『田舎暮らしの本』(宝島社)編集長・柳順一さんのふたりに移住を考えているならまず知っておくべき基本的な知識を伺った。

移住にはどれくらい「お金」がかかるのか?
「まず、移住地選びで複数の候補地を訪れる場合には、料金設定が比較的安い自治体の移住体験ツアーを利用するといいでしょう」(嵩さん)
過去の例では、宮崎県日南市の場合、航空券、宿泊、食事込みで2泊3日3万5千円(大人1名、以下同)、奄美大島は3泊4日3万2500円で、ツアー参加時、アンケートに答えれば1万円が謝礼として戻ってくるお得な料金設定だったという。そして、
「移住先が決まれば住宅取得費や中古住宅の補修費、引っ越し費用などが必要です。目安は出しにくいですが、500万円以上の蓄えがあれば安心かと思います」(嵩さん)

賃貸の場合は?
「賃貸物件は空き家バンクが主で、基本的に不動産業者を通さないので仲介手数料が不要。仮に不動産業者を通しても家賃が安いので手数料は都会より安いです」(柳さん)
ただし、田舎暮らしには欠かせない車の購入費は用意しておいたほうがいいようだ。

移住先に「仕事」はあるのか?
ハローワークに掲載されている田舎の求人情報を閲覧してみると、農林漁業や製造・建設・運送業、サービス業など都会のサラリーマンにはなじみの薄い仕事が目立つ。看護師、保育士、エンジニアといった専門職には好条件な求人も見受けられたが…。
「地元に溶け込んでくると、厚意で仕事を回してくれるようなケースもよくあります。ただし、そもそも求人数自体が都会ほどあるわけではないし、特に事務・営業職のようなホワイトカラーの仕事は非常に少ないです」(柳さん)
「その結果、正社員雇用を諦めてフリーターとして食いつなごうとして、結局、家族を養うことができず都会に舞い戻っていく移住者も多いんです」(嵩さん)
そこで今、田舎の働き口として注目されているのが、総務省が音頭を取る「地域おこし協力隊」。09年に始まったこの制度は、都会の住民が過疎地に移住し、地域活性化に携(たずさ)わりながら働く仕組み。
「隊員になれば毎月15万円から20万円程度の給与が保証されるばかりでなく、最長で3年間、任期中の住居は受け入れ先の自治体が無償で提供するケースも多いんです」(柳さん)
14年度は全国で1500人が隊員として活動したが、安倍政権は今後3年で3千人まで増やす目標を掲げる。予算増に伴い、目下、農山村を中心に隊員募集を呼びかける自治体が急増中だ。
総務省の調査によれば、任期を終えた隊員の定住率は56%と高く、任期後1年以内に活動地で起業する際はひとり当たり100万円の支援金を受け取れる制度もできた。
「地域再生に携わる仕事は地元自治体や住民からの期待度も高く、やりがいがあります。都会の若者の間で、移住の手段として地域おこし協力隊を目指す人は今後ますます増えるでしょう」(嵩さん)

移住先で注意すべきことは何か?
最後に、移住先でうまくやっていくためのコツはあるのだろうか?
「都会では隣人の顔も知らないのが普通ですが、濃い人間関係がベースの田舎でそれはあり得ません。むしろ、受け入れる側にとって、移住者ははなから“有名人”。『この人はきちんと付き合いをしてくれるのだろうか?』と警戒心を持って注目されます。そこで居住する地域の区長や地区役員、隣近所へのあいさつ回りを怠ろうものなら、『なんだアイツは、なっちょらん!』と孤立していくこともあります。
そうならないよう、“1にあいさつ、2にあいさつ”です。また、人口が少ない地域であれば特にお祭りや町内の一斉清掃といった地区の行事には積極的に参加する姿勢が大切で、地元の消防団にも極力入団したほうがいいでしょう」(柳さん)
一方で、地域にのめり込みすぎるのも禁物だという。
「例えば、近隣にゴルフ場の建設が持ち上がった場合、その村は賛成派と反対派に二分されます。すると、双方から『オマエはどっち派なんだ?』と詰め寄られる。特に選挙期間中はこうした政争に巻き込まれるケースも多いですが、そこであまりのめり込むと“村八分”同然の仕打ちを受けることにもなりかねない。政治活動からは一線を置くことです」(嵩さん)
都会のルールと田舎のルールは別モノだということを念頭に置きながら慎重に移住先を見極めてほしい。
(構成/興山英雄)