“1回当たり11時間で費用2万5000円”…高額でも増えるベビーシッター利用者

産経新聞 2015年4月5日

自宅で子供を保育してもらうベビーシッターの利用者が増えている。子供の急な発病などで預け先に困り、欠勤が続いた結果、仕事を辞めざるを得なくなるケースもある。子供が病気の時や休日、夜間にも利用できるシッターは、働く母親の強い味方。自治体がシッターを派遣する事業も始まっている。(村島有紀、写真も)

仕事を何とか続けられた
「育児休業から復帰した直後に子供が急性脳症にかかり、会社を休むことが多くなった。介護休暇や有給を使っても足らず、仕事を続けるかどうか迷うこともあった。ベビーシッターに預けることで何とか続けることができた」と話すのは、夫と共働きで3歳の長女を育てる東京都江戸川区の会社員、前田陽子さん(33)。
前田さんは、「こども未来財団」(東京都港区)が発行するベビーシッター割引券を使っていた。会社を通じて申し込むと、1回の利用料金のうち1700円が国から補助される制度だ。同財団によると、利用件数は年々増加し、26年度は約3000人が約10万枚を使用したとみられる。
補助制度は3月末に廃止された。しかし、利用者らから「女性が活躍する社会に必要」という声が上がり、国は新たな補助制度を検討。公益社団法人「全国保育サービス協会」(新宿区)を通じて割引券を発行する準備を進めている。
企業などから会費を集め福祉厚生サービスを代行する「ベネフィットワン」(渋谷区)でもシッターなどの利用に1日最大1400円を補助する「育児補助金」の利用者が4年ほど前から増加。26年度は25年度の1・4倍、約1万6千件の利用があった。

シッターが自宅で保育も
シッター事業は民間で行われており、利用料金は1時間1500円~2500円が相場だ。前田さんの場合、1日11時間の利用で料金は約2万5千円。昨年度は10日以上病児シッターを利用した。「高額だが子供は大きくなれば丈夫になる。今が一番大変な時期」と自分に言い聞かせ、残業も含め責任ある仕事を続けた。
秋田県出身の前田さんには、近くに頼れる親戚もいない。脳症の既往症があるため、自治体が設置した病児保育室の利用も難しい。前田さんのようにシッターに頼らざるを得ない家庭では、公的補助への期待が大きいのだ。
こうした状況の中、新たに居宅訪問型の育児支援サービスを始める自治体も出てきた。
大阪市では昨年9月から、都島区などの一部の地域で、子供の病時に看護師や保育士らを自宅に派遣する「居宅訪問型病児保育」を開始した。対象は0歳から小学6年生まで。1日の利用料金(午前8時~午後5時)は7800円で、ひとり親家庭などの場合は減額する。
また、4月スタートの「子ども・子育て新制度」により、保育士や保育士と同等の能力があると自治体が認めたシッターが、自宅で保育を担う事業も始まった。一時預かり対象は、0~2歳の病児▽障害児▽夜間に保育が必要なひとり親家庭▽離島などで他に一時預かり所がない地域の子供-など。国と自治体は4時間未満の利用で1回当たり4100円、4時間以上で同8200円を補助する。
ただ、4月から事業を始める自治体は少なく、内閣府の担当者は「自治体は住民のニーズを捉えて適切なサービスを提供してほしい」と話している。

眠りすぎも危険!? 「うつ病かも?」と疑ったときの判断基準はコレ

nikkanCare.ism 2015年4月6日

“うつ病”という言葉は、現在ではとてもメジャーなものです。しかしながら、それが実際にはどのような原因で、どのような症状が現れるのか、ということはしっかりと把握できていない人もいるのではないでしょうか。
ここでは、うつ病の原因と症状について、厚生労働省の「うつ病とは」から見ていきます。

「悲しいことがあったからうつ病になる」これって本当?
「うつ病になった」というと、多くの人が、「悲しいことがあったからだ」と考えます。
実際、肉親の死や過剰なストレスによってうつ病が起こることは多く、これが主要な原因の一つになっていることは確かです。
しかしうつ病の場合、これらのような特段の理由がなかったとしても、発症することがあります。
“幸せホルモン”と呼ばれているセロトニンの働きが悪くなることでも起こると考えられているからです。その原因に関しては研究途中であるため、はっきりとした結論が出ていません。
そのため、「特に思い当たる節がないのにうつ病になったと言っている。甘えているんじゃないの?」「あの人の周りでは、特につらいことがなかったはずなのに、どうしてあんな風になっているの?」という意見や疑問が出てきてしまうのです。

うつ病の症状とは
うつ病の症状というのは、いくつかあります。まず、誰もがイメージしやすい、「虚無感を感じたり気力がなくなる」「自殺願望」「楽しいはずのことを楽しいと思えない」などの症状があげられます。不眠などが現れることもあります。また、食欲が落ち、痩せてしまう姿も想像しやすいものでしょう。
しかし、うつ病の場合、ときには上記のようなイメージに当てはまらない症状が出ることもできます。「何とかしないと」という極度の焦燥感に駆られたり、眠りすぎたり、逆に体重が増えすぎたり、といった症状です。
後者の場合、前者に比べてうつ病だと認知されることが遅れる場合もあります。また、「他の病気じゃないの?」というように、誤解されてしまうこともあるのです。

「うつ病かも?」基準は2週間続くかどうか
ただ、上記の症状が出たからといって、「うつ病だ!」と決めつけてしまうのも間違いです。
ショックなことが起これば、誰でも落ち込んだり一時的な睡眠障害に悩まされたりすることは、極めて一般的なことです。
そのため、ごく一時的にこのような症状が出た、というだけでは、うつ病とは診断されません。
基本的には「2週間以上、このような状態が続く」ということが、うつ病だと診断される条件の1つと言われています。
逆に言えば、2週間を超えてもなお、あなたの周囲の人が、このような症状に悩まされているのなら、病院への受診をおすすめします。
「底につけばそのうち浮き上がってくる」「焦らずに見守ることが必要だ」というのも確かですが、うつ病であった場合、治療にとりかかるタイミングが遅くなれば遅くなるほど、完治が難しくなるからです。

まだまだ正しく理解されていないうつ病。「自分は大丈夫」と思う方も多いかもしれませんが、上記のように2週間以上続く症状があるようであれば、早めに病院にかかるようにしましょう。

ピロリ菌や肝炎ウイルス がん予防、感染症にも注意

日本経済新聞 2015年4月5日

がんと感染症は一見関係なさそうな病気だが、一部のがんは病原体の感染が原因になる。例えばヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんに、肝炎ウイルスが肝がんにつながる恐れがある。専門家がまとめた最新版のがん予防法でも感染の検査をすすめている。
「機会があればピロリ菌感染検査を」。国立がん研究センターがん予防・検診研究センターが作る「日本人のためのがん予防法」は今年1月の改訂でピロリ菌検査を予防法に加えた。除菌まですすめているわけではないが感染のチェックを推奨した。
世界保健機関(WHO)の関連機関が昨秋に発表した胃がん対策の報告書を受けた改訂だ。報告書はピロリ菌除菌についてがん予防効果がある程度みられると認めたが、各国の事情に合わせて対策をするようにという結論だった。

菌がリスク高める
「ピロリ菌が胃がんのリスクを上げる傾向があることは知られているので、自身の感染の有無は知っておいた方がよい」と同センター予防研究部の笹月静部長は解説する。感染していた場合は禁煙し、塩分取りすぎや野菜・果物不足にならないよう注意する。
昨年12月の研究報告によると、男性は野菜の摂取量が多いと日本人に多い下部胃がん(下部3分の2)のリスクが下がる傾向があった。女性では、果物の摂取量が多いと分化型という組織タイプの胃がんでリスク低下がみられた。
抗酸化作用成分に富む野菜や果物はピロリ菌などによる細胞のDNAへのダメージを抑える働きが期待されるという。もともと野菜・果物は胃がんリスクを下げる可能性があるとされていたが、従来の研究報告も踏まえ、改訂では不足を避けるようすすめた。
感染ではB型・C型肝炎のウイルスが肝がんのリスクを上げる。今年1月、厚生労働省の予防接種基本方針部会はすべての0歳児にB型肝炎ワクチンを定期接種すべきだとの意見をまとめた。早ければ2016年度から定期接種が実施される可能性がある。
これまでも妊婦の感染が見つかった場合、赤ちゃんにワクチン接種などをして母子感染をほぼ抑えているが、「他の感染経路を含めてB型肝炎のウイルスの感染をゼロに近づけるのが狙いだ」と部会長の岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は話す。
B型肝炎のウイルスは血液や体液を介して感染し、母子感染する場合もある。感染していると中高年で慢性肝炎や肝硬変を発症する可能性があり、さらに肝がんの原因になる恐れもある。予防接種をしておけば、これらの病気の予防につながるという。
「全員が接種し感染拡大をみんなで防ぐことが大事だ」と岡部所長は指摘する。日本で急性のB型肝炎は年間数百例見つかり、20~30代の性感染による例が多い。子どものときの接種は一生効果があるわけではないが、思春期以降になったときの感染予防につながる。基礎免疫と呼ぶ免疫ができ、大人になって再び接種したときに効果が高まる。

専門医に相談を
ウイルスをすでに持っている大人は誰かにうつしてしまう心配があるが、周囲が免疫を持つようになれば心配も減る。免疫を持っていない人が流行している海外の国・地域に長期に出かける際も、予防接種をしておいた方がよい。
日本人のためのがん予防法ではB型・C型肝炎のウイルスのリスクを指摘、検査をして感染している場合は専門医に相談するようすすめている。感染とがんではほかに、ヒトパピローマウイルスが子宮頸(けい)がんのリスクになる。特に予防法には入っていないが、詳しい解説部分で触れている。
がん予防法は研究成果に伴い年2回改訂されるので最新版をチェックするとよいだろう。昨秋の改訂では体形の目標で肥満度指標のBMI(体格指数)を中高年期女性について従来の「19~25」から「21~25」に変更した。「肥満だけでなく、やせすぎにも注意してほしい」(笹月部長)
予防研究部では「がんリスクチェック」も提供する。インターネットで項目を入力するとリスク数値などが示される。予防法のうち感染を除く5つの健康習慣で判断するメニューも今年始まった。これですべて決まるわけではないが、生活習慣見直しの参考になりそうだ。
(賀川雅人)