20年間で児童虐待の相談は70倍増。児童虐待の相談等に対応する「児童相談所」ってどんな場所?

現代ビジネス 2015年4月20日

近年児童虐待をニュースで見ることが増えてきました。毎年夏頃に報告される児童虐待相談対応件数ですが、実はこの数字は10年以上毎年最高記録を更新し続けています。平成25年度の児童虐待相談対応件数はついに7万件を超え、20年ほど前の平成2年の約70倍に上りました。私たちが日ごろニュースで目にする量をはるかに超える数の相談の対応が日常的に行われていることがわかります。単純計算で、1日に約200件もの児童虐待に対応している状況なのです。
そして児童虐待の報道がなされる度に、「親は何をしてたのか」という批判とともに非難の対象となるのが児童相談所です。児童虐待の発見や対策、防止を担っているのが児童相談所ですが、児童相談所がいったい何を担っているのか、児童相談所の職員である児童福祉司はいったい児童虐待を見過ごしてしまったのか、その原因や現状についてはあまり語られることがありません。今回は児童虐待という命や子どもの健全育成などに関わる仕事を担う、児童相談所やそこで働く児童福祉司の現状について触れてみたいと思います。

児童相談所の負担は10年で3倍増に?
児童虐待の相談件数が毎年何千件単位で増えている中で、この児童虐待の相談に応じる児童相談所の児童福祉司の数は、たった2倍にしか増えていません。この間、児童虐待相談件数は7倍増になりました。単純に考えて1人の児童福祉にかかる負荷は3倍以上増えたことになります。
もともと人が十分にいて、3倍になってちょうどよくなったということであれば問題ないと思います。しかし、児童相談所は慢性的な人手不足の状態であり、毎年児童虐待の相談件数が増えていくと、1家庭に割ける時間はどんどん少なくなってしまっているのが現状です。

児童福祉司は一度に30家庭の相談を担う?
平成22年の「児童虐待の防止等に関する意識等調査結果」によれば、1人の児童福祉司が常時受け持っている児童虐待事例の件数は、平均で31件だといいます。児童相談所の役割としては、相談があった人と話すだけでなく、以下の図のように、定期的に家庭訪問をしたり、心理士や病院などと連携し必要な対策を考え遂行したり、子どもを家庭から保護したりと多岐にわたります。
さらには、児童虐待などで児童養護施設に入所が決まった子どもたちの状況を児童養護施設と連携してサポートするなど、単発では終わらないケースが多くあります。児童福祉法によると保護者への指導等も、児童相談所の仕事として位置づけられています。
31件を常時対応している状況では、1か月20日勤務だとすると、1家庭に割けるのは丸1日もない状況となってしまっています。ニュースなどで、児童虐待で命をなくした子どもの報道がなされた際に、度々「児童相談所が家庭訪問していた家庭にも関わらず、なぜ未然に防ぐことはできなかったのか」などといった表記がされることがあります。しかし、実態としては、十分に家庭の状況を知り、継続的に点検していく人手が足りていないのが現状なのです。また、現場に近い方に、30件どころか、手が離れたようで離れていなく、頭の片隅に入れて定期的にチェックしなくてはいけない家庭等も入れると100件を超えるという話も聞いたことがあります。
児童相談所が扱う相談内容としては、以下の5つに大別されるといわれていますが、どれもすぐには解決策が出ない重たい問題です。

養護相談: 父母の家出、死亡、離婚、入院などによる養育困難、被虐待児など。
保健相談: 未熟児、虚弱児、小児喘息など。
心身障害相談: 障害児、発達障害、重度の心身障害など。
非行相談: 虚言、家出、浪費癖、性的な逸脱、触法行為など。
育成相談: 性格や行動、不登校。
もしみなさんが、30人を超える友達から、上記のような相談をされていたとしたら、小さなサインに気づいたり、適切な対応をすることができるでしょうか。それに加えて、最近は随分落ち着いたように見えるけど、気にかけている人がさらに70人いたとしたら、相談内容の重さは様々だとしも、またそれが本業だとしても、私にはとても一つひとつに適切に対応できるようには思えません。それが児童相談所の実態、と言っても過言ではないのです。
実際に児童相談所に務めている児童福祉司の91%は「あなたは、児童虐待により施設に入所した児童や継続的に援助を行う必要がある児童に対する支援に困難を感じることはありますか。」という問いに「ある」と答えています。さらに、その要因として88%が「児童福祉司や児童心理司の一人当たりのケース受持件数が多いなど人員配置に余裕がなく、児童に対してきめ細かなケアを行う時間がないから」と答えています。
「常時受け持つ児童虐待事例の件数は、一人当たり何件程度が妥当だと思うか。」という質問に対しては、6割が20件未満と答えています。

時間や量だけではない!ベテラン職員不足の現場
先ほどの質問で、児童の支援に困難さを感じる要因のもう一つに、児童福祉司の質の問題があります。要因のうち、「児童福祉司や児童心理司の人事異動が多いた め、継続的な対応が難しくなっているから」が約37%、「経験の長いベテランの児童福祉司や児童心理司 が少なく相談できる相手がいないから」が約17%となっています。
そもそも児童相談所は、都道府県や政令指定都市に設置されている行政機関なので、児童福祉司は地方公務員になります。なので、児童福祉司になるには、各自治体が実施している公務員試験に合格し、一般行政職として採用された後に配属されるか、定期の人事異動によって配置が決まります。つまり、児童福祉司を希望したとしても、配属によっては必ずしも児童福祉司として児童相談所へ配属されるとは限らないのです。

【児童福祉司になるには】
ただ、一部の自治体では専門職としての採用要項を設けているところもあります。また、希望する人が少ないため、実際には高確率で児童相談所に配属されるという話を聞いたことはあります。一方で、もともと児童福祉司を希望していなくても、大学で一定の学部を受講しているだけで条件を満たしてしまうため、専門性がなくても人事異動の一環で、児童相談所に配属されることがあるのです。その場合、ソーシャルワークにおける基礎的な教育を受けていないことに加え、移動のサイクルが極端に短く、個人においても組織においても専門性が蓄積されないという問題があるといわれているのです。

【児童福祉司になるための条件】
1. 厚生労働大臣の指定する児童福祉司または児童福祉施設の職員を養成する学校、その他の施設を卒業、または厚生労働大臣の指定する講習会の課程を修了した者
2. 大学で、心理学、教育学もしくは社会学を専修する学科またはこれらに相当する課程を修めて卒業した者
3. 医師の免許を有する者、または社会福祉士の資格所持者
4. 社会福祉主事として2年以上、児童福祉の仕事に従事した者
5. 1~4の条件に準ずる者で、児童福祉司として必要な学識経験がある者
上記は、児童福祉法第13条2項によって定められています。

社会保障給付費の内、子どもにまつわる予算はたったの4%
児童虐待の相談や支援を行う児童相談所の現状を見ただけでも、児童福祉における人の質・量の課題がたくさんあることがわかるかと思います。児童虐待相談件数は7万件を超えていますが、児童虐待には目に見えやすい身体的虐待だけでなく、ネグレクト(育児放棄)・心理的虐待・性的虐待を含んでおり、実際に相談や発見に至っているものはそのごく一部だとも言われています。また地域間のつながりが減って、「よそに干渉しない」というのが当たり前になっている中で、虐待の早期発見・早期対応はしづらくなってきており、発見された際には非常に深刻化しているケースも少なくないといわれています。
一方で、社会保障において、「児童・家族関係給付費」はたったの4%となっているのが現状です。ほとんどは高齢者・年金に充てられています。
さらにこの4%には、児童虐待だけでなく、児童手当や保育サービスに関わる費用も含まれているのです。そもそも児童福祉には、障害児、孤児、1人親家庭などといった、特別に支援を必要とされる児童に対する施策である狭義の児童福祉と、すべての家庭において児童が健全に育成されること、また児童を産み育てやすい社会環境を整えるための施策である広義の児童福祉があります。核家族化が進んだり、女性の社会進出、地域とのつながり等の減少の中で、どの家庭においても、家庭だけでは子育てが難しい状況になってきていることに加え、少子化が進行し、少子化対策の一環で、児童福祉が広義で語られることが増えてきているといわれているのです。
参考までに、2012年度の社会保障給付費は109兆円ですが、虐待等によって家庭で育てることが難しく社会的養護が必要とされる子どもたちに対する予算は1,073億、母子家庭等自立支援・DV対策は2,298億となっており、狭義の児童福祉の分野にさかれている割合は1%もないことがわかります。

3.6日に1人の子どもが命を亡くす現状を打破するために
昔は地域や近所の「誰か」がやってくれるだろうと期待できる時代があったかもしれません。その場合、税金をかけるなどして、仕組みを整える必要性はすくなかったかもしれません。しかし、今は親ができないと、誰もやってくれない時代になってきました。いち早く、仕組み化していかない限り、虐待によって命をなくす子どもたちは増えていくのではと感じています。今すでに年間約100人の子どもたちが児童虐待によって命を落としているのです。
高齢者のサポートも、「誰かやってくれるだろう」では済まなくなり、たくさんの仕組みができました。高齢者問題や、障害者問題、また広義の児童福祉は、当事者の代わりにその家族が声を上げるので仕組み化が早いといわれています。一方で、児童虐待等による問題は、家族にまつわる問題ともリンクしているため、当事者も、当事者の家族も声をあげないことが多く、命にも関わりうる、大切な問題にも関わらず、仕組み化には非常に時間がかかってしまっているのが現状です。
この連載を通じて、少しでも多くの人が、虐待等に苦しむ子どもたちに代わって声をあげ、他の福祉同様に、仕組み化がもっと早く進んでいくことを切に願っています。また、行政任せにするのではなく、本業であるNPOを通じて、ボランティアや寄付といった、昔の地域に代わる、草の根の力を借りて、子どもたちの現状を訴え、サポートできる仕組みを増やしていけたらと思っています。

<ずっと支えたい 発達障害者支援法10年>(上) 仕事を続けるには

中日新聞 2015年4月20日

軽快な十六ビートのリズムに乗って、愛知県西尾市の会社員伊藤透さん(29)が、仲間たちと激しく体を動かしていた。
同市を本拠地とする知的障害者たちのヒップホップチーム「mixjam」(ミックスジャム)の一員。毎週木曜夜と土曜午後に一時間ずつ練習を重ね、本番のステージに向けて仕上げていく。
「うまいねって言われるとうれしい。気持ちが一番大事だと思っています」。知的障害を伴う自閉症で、込み入った話は苦手だが、人なつっこい笑顔と礼儀正しさで、職場の人気者だ。
小中学校は主に特別支援学級で過ごし、県立豊田高等特別支援学校(同県豊田市)に進んで、自宅近くの自動車部品製造会社に障害者枠で就職した。伝票を見て、さまざまな部品を運ぶのが主な仕事。自動車運転免許を苦労しながらも取得して、車で通勤している。月十数万円の給料から四万円をお小遣いにして、ダンスやボウリング、野球観戦などの趣味に使う。料理も好きで、テレビの料理教室の本を毎月買う。給料の残りと障害年金は、将来に備えて貯金する。
父・兼重さん(66)は「負けず嫌いで頑張り屋なので、ダンスも中二の時に自分からやりたいと言いだし、続いている」と成長を喜ぶ。
仕事に行くのを嫌がった時期もあったが「お金がないとボウリングやダンスにも行けないよって言うと、がんばれました。お金を稼ぎ、使うことを覚える意味でも、余暇の充実は本当に重要ですね」と母・富江さん(68)は振り返る。
発達障害者支援法は、幼少期から学齢期、就労へと、途切れのない支援で自立できる人を増やすことが大きな目的だ。しかし、いったん就職しても、伊藤さんのようには続かないケースも多い。
日本発達障害ネットワーク理事の辻井正次・中京大教授は「支援法によって取り組みが進んだ部分は多い」と評価しつつ、大人になってからの課題について次のように指摘する。
「就労できる子が増えたが、その後を見守る仕組みが難しく、仕事が続かない子はかなり多い。余暇の充実が大事と分かっていても、支援できる市民団体は少数だ。友達にだまされて、犯罪に手を染める人もいる。その人の“困り具合”に焦点をあてた支援が必要になっている」

<ずっと支えたい 発達障害者支援法10年>(中) 医師の診断能力

中日新聞 2015年4月21日

「時間の流れを、目で見えるように形にするのがこつです」。発達障害児の母親に、早川星朗医師(47)が説明する。手には、着替えや通院、帰宅など、日常の行動を絵にしたスケジュール表。言葉の指示をよく理解できず混乱しやすい子が、先の見通しを付けやすいように、家庭で簡単に作れる支援ツールだ。
名古屋市緑区にあるロイヤルベルクリニックの発達障害外来。早川さんは初診で一時間かけて保護者から話を聞き、別室で臨床心理士や言語聴覚士が子どもの行動を観察する。綿密な診断評価書を作成し、次回の受診で再び一時間かけて診断の根拠を説明。その子に合ったコミュニケーション支援の方法を教える。
新たなツールの開発は目覚ましく、待つことが苦手な子には「残り時間」が分かるタイマー。学習障害の子が漢字の練習をするパソコンソフトなどが作られ、成長の手助けになってきた。
発達障害の子を診る医療機関も増え、かつてのような「初診まで一年待ち」といった状況はなくなった。ただ「その子の特性や、抱えている不安をきちんと診られる医師が増えたかは疑問」と早川さんは話す。
医師の榊原洋一お茶の水女子大副学長(小児神経学)も、医療界全体で診断能力は上がってきているとしながらも、「発達障害の診断は医師による行動観察が必要で、障害と考える範囲や薬物治療に関する考え方など、医師によって診断に幅があるのが現実。結果的に患者が混乱に陥りやすい」と課題を指摘する。日常生活支援への視点も重要なため、医師が学校で子どもの様子を見る機会を積極的に持つ必要があるという。
愛知県心身障害者コロニー中央病院(同県春日井市)の小児精神科医吉川徹さん(42)は「発達障害の人が統合失調症患者の数倍いる現状を考えれば、一部の専門医だけで対応できる時代ではなくなった」として、医師向けの研修会を開くなど質の向上に努めている。
一方、吉川さんが気になるのは薬の問題だ。混乱して暴力を振るったり、自傷行為に走ったりするような強度行動障害につながる問題が起きたとき、教師や福祉関係者が対応できる技術を持っていないと「薬を出してほしい」と医師に求めることが多い。診断に不慣れな医師ほど、安易に処方してしまい、大量投与に結びつくこともあるという。ただ、昨年度から強度行動障害の支援者養成研修が全国で始まっており、「薬への過剰な期待は、これから減っていくのでは」と話す。
精神科でも成人の発達障害を診る医療機関が増えてきた。「いま感じている生きにくさは発達障害が原因かも」と受診する大人が増えたこと、成人期の注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療薬が二〇一二年に保険適用されたことが要因だ。
だが北里大精神科の宮岡等教授は「発達障害が注目されすぎて、診断の混乱が起きている」と指摘する。同大東病院(相模原市)には成人の発達障害の専門外来があるが、クリニックなどから紹介されてくる患者のうち「発達障害の診断がつくのは一、二割程度」という。治りにくいうつ病の患者を「発達障害」と誤診する医師もいる。
宮岡さんは一三年、児童精神科医の内山登紀夫・福島大教授とともに「大人の発達障害ってそういうことだったのか」(医学書院)という対談形式の本を出版し、大きな反響を呼んだ。
「一般精神科医が児童を診る、児童精神科医が大人を診るといった交流を大学病院などの教育施設で進めていくことが、重要だと思う」と話す。

怖い! 「骨の老化」は20代からどんどん進む

東洋経済オンライン 2015年4月21日

「骨祖しょう症」と聞くと、高齢者の生活習慣病というイメージを持っている人も少なくないでしょう。ですが近年、高齢者だけでなく、若年層の「骨密度」の低下が問題視されています。
「骨密度」は、骨の強度を表す値。成人で80%以上が正常とされ、70%以下まで低下すると「骨粗しょう症予備軍」となってしまいます。ただ、一般的な健康診断の項目にはないので、自分の値を知らないという人が多いのではないでしょうか。
骨密度低下の原因は、主にカルシウム不足と運動不足。ちなみにカルシウム不足は、イライラの増幅、集中力の低下など、精神面にも悪影響を来たしますので、併せてケアしておきたいですね。

骨は知らないうちにどんどん老化する
成人の体は、全体重の約1%がカルシウムでできています。そのカルシウム量の99%が骨や歯の材料となり、残りの1%が血液や筋肉の形成、そして集中力などにかかわる精神安定のために使われます。
骨の形成は、成長期とともに最盛期を迎え、20歳を過ぎると早くも減少に転じます。その後は、日々のカルシウム食品の摂取で骨量が減らないよう努力しなくてはなりません。また、骨は動かすことによって鍛えられるという特質があるので、オフィスにこもりきりのビジネスパーソンは要注意。「年齢に関係なくどんどん老化する!」と、肝に銘じましょう。
運動時間を取れない方は、通勤の際、一駅先まで徒歩や自転車で行くようにしたり、駅ではエスカレーターではなく階段を利用するようにしたり、意識的に骨を動かす機会を増やしましょう。
とはいえ、やはり食事面は最重要。厚生労働省の調べでは、働き盛りの20~50代(男女)の1日のカルシウム摂取量は、いずれも400mg台です。国の推奨量は成人男性の場合、20代が 650mg、30~40代は550mg、50代は600mg、成人女性は20~50代いずれも550mgとなっています。どの年代も大幅にカルシウム量が 足りていないのが現実ですね。
骨はカルシウムが主な材料ですが、それだけでは生成されません。カルシウムはマグネシウムとセットで働くので、マグネシウムが不足している場合も、骨密度は高まらないのです。ほかにビタミンCやD、ビタミンB群、タンパク質などの摂取も重要になってきます。
人間の皮膚の奥にはコラーゲンが網目状になって張り巡らされていますが、このコラーゲン、肌だけでなく、カルシウムが骨に沈着して骨密度を高めるお手伝いもしてくれます。それにはタンパク質とビタミンC、そしてコラーゲンの劣化を防いでくれるビタミンB群を摂る必要が出てきます。以下の食材を目安にしてみてください。

・カルシウム … 干しエビ、牛乳、小魚、魚介類、ヨーグルト、モロヘイヤ、小松菜、ひじき、ごま、わかめ
・マグネシウム … アサリ、青背魚(いわし、さんま、サバなど)、ごま、アーモンド
・ビタミンD … キノコ類、鮭
・ビタミンB群 … キノコ類、レバー
・ビタミンC … 野菜・果物全般
・タンパク質 … 肉類、魚介類、大豆食品
・クエン酸 … 梅、オレンジ、レモン

コンビニで見つかる「骨密度アップ食」は?
カルシウムの不足は、骨密度の低下だけでなく、イライラ、集中力の低下にもつながるので、くれぐれも不足しないよう、選ぶメニューに気を配ってみましょう。

〈みわ子流、骨の老化に対抗するコンビニ飯! 〉
・エビと青菜のパスタ + アーモンド
エビからカルシウムとタンパク質、青菜からビタミンCが摂取できます。おやつにアーモンドを食べればマグネシウムも揃います。
・ボンゴレパスタ + ミニサラダ + ヨーグルト
たっぷりのあさりでマグネシウムとタンパク質を補給しておきましょう。ヨーグルトからもカルシウムが補給できます。ミニサラダを加えればビタミンC摂取に。
・ゆで卵 + カフェラテ + キノコサラダ(ごまドレッシング)
食欲がない時にオススメの組み合わせ例です。カフェラテなら牛乳を使用しているのでカルシウム補給に。キノコサラダにごまドレッシングをかければマグネシウム補給になります。キノコ類はビタミンDやB群、ゆで卵からタンパク質補給、サラダでビタミンCを。軽い食事でもこれだけ揃えられます!
・お弁当選びのポイント
幕の内弁当系なら、鮭と梅干し、ごま、ヒジキの煮物なのが定番ですね。これだけで骨密度 アップには理想的なお弁当。ひじきや鮭からカルシウム、ごまからマグネシウム、そして鮭にはタンパク質とビタミンDも含まれます。カルシウムの吸収をよくす るクエン酸も梅から摂取できます。お弁当を選ぶときは鮭と梅干し、ごまをキーワードに選んでみましょう。

昔から、折れない精神の持ち主を「気骨があるやつ」、とにかく一生懸命働くことを「粉骨砕身」と言ったりしますが、骨はそれだけ、人間にとって重要な組織だということではないでしょうか。知らないうちに老化させないよう、丈夫な骨と精神を日頃の食事で養っておきましょう。

タバコを吸う人の片手にはいつもコーヒー 相性がいいワケと健康リスクとは?

Mocosuku Woman 2015年4月21日

酒類、タバコ、コーヒー、お茶は「嗜好品(しこうひん)」と言われます。生命を維持するのに必要な食品とは違って、おもに「楽しみ」としてとるのが嗜好品です。なかでも、タバコとコーヒーは相性がいいようで、喫煙所では、必ず缶コーヒー片手に煙をくゆらせる姿が見受けられます。実際、喫煙者に聞くと「この2つは欠かせないでしょ」との回答。このコンビが好まれるのは、どうしてなのでしょうか?

タバコとコーヒーってどうして相性がいいの?

疲労回復と興奮剤 脳内のドーパミンが双方から刺激される!
脳疲労を癒し、瞬時に元気にしてくれるのが「嗜好品」です。タバコはニコチンに薬理作用があり、少量では興奮、多量だと鎮静の、両方の作用があります。
コーヒーにはカフェインが含まれ、眠気が覚め、頭が冴え、やる気と元気が出る興奮作用があります。また、缶コーヒーには製品によって原材料に砂糖が使用されているものも多く、白砂糖を摂取するとすぐに酵素によってブドウ糖に分解され、血液によって脳に運ばれ、エネルギー源となります。
ですから、タバコとコーヒー(とりわけ砂糖の入った缶コーヒーなど)は、互いの相乗効果で、瞬時にして疲れを取り去り、元気でやる気にさせ、気分を向上させてくれるのです。タバコとコーヒーの相性が良いと感じるのはこのためと言えるでしょう。「脳内快楽物質」と呼ばれるドーパミンの働きによるからです。

あなたの脳はどんな状態?
仕事では、厳しいノルマを課せられながらもスピードと効率を高めるよう駆り立てられるる私たち。仕事で多忙なスケジュールをこなしながら、家庭でも父親や母親としての責任を果たそうと頑張っています。また、インターネットではさまざまな通信機能が発達し、なかなかonとoffの切り替えができなくなってきています。1日でさまざまなことをしなければならず、生活時間も乱れがちに。脳が慢性の疲労状態に陥っていることも少なくないでしょう。

脳疲労のセルフ・チェック
□ イライラしたり、怒りやすくなっている
□ 夜型の生活が中心で、朝、起きるのが辛いと感じている
□ 夜中や夜明け前に目が覚めることが多い
□ コーヒーやお茶を飲まないと、一日が始まらない
□ 頭にどんよりと雲がかかったような感じがしている
□ 集中できないことが多い
□ 元気を出すのに、甘いもの、カフェイン、タバコが必要
□ 疲れを感じることが多い
□ 砂糖がたっぷり入った食品や、カフェイン、タバコで頭痛が治まる
□ スリルでドラマティックな展開を期待している

以上に当てはまるものが多いほど、あなたの脳は疲労しています。

耐性や依存性の問題
タバコやコーヒーのとりすぎで問題視されるのは、ドーパミンの過剰分泌による「依存性」です。タバコもコーヒーも、一時的な疲労回復や元気・気分の向上には役立ちますが、常習化したり、過剰摂取が続くと、ドーパミンを枯渇させ、以前より大量に摂取しないと効果が出なくなり(耐性)、ついには、それなしにはいられない「依存症」に発展するリスクがあります。
また、タバコには肺がんや心臓病などの健康リスクと精神的依存、コーヒーの飲みすぎ(1日5杯以上は過剰という見解もあります)は、頭痛・不整脈・イライラなどの離脱症状(禁断症状)や、記憶力の低下などが指摘されています。
タバコがカフェインの効きを悪くするという知見もあります。

「たしなむ」に留まる
タバコもコーヒーも、適度・適量を「楽しむ」という、嗜好品本来の「たしなみ」に徹していればよいのですが、ハマってしまうと、以上にあげた健康リスクを抱えることになってしまいます。飲まずにはいられない状態から、生活習慣を改善して、適度に飲むことをエンジョイしたいですね。

井上 愛子(いのうえ あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士
株式会社とらうべ社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン