虐待で「脳が傷つく」衝撃データ 2割近い萎縮も〈AERA〉

dot. 2015年4月30日

子どもへの虐待事件があとを絶たない。虐待は心はもちろん、脳にも深い傷痕を残すことが分かってきた。
厚生労働省によると、児童養護施設に入所する子どもは約2万9900人(2013年2月時点)。そのうち59.5%が虐待を受けていた。内訳はネグレクト(育児放棄)が63.7%ともっとも多く、身体的虐待(42%)、心理的虐待(21%)、性的虐待(4.1%)と続く。
子どもの時に受けた虐待が、その後の発達にどう影響するのか。福井大学教授の友田明美さん(小児発達学)の研究が注目されている。
03年からの9年間、友田さんは米ハーバード大学と共同で、虐待と脳の関係を研究した。米国に住む18~25歳の約1500人を集め、その中から幼少期に虐待を受けた経験のある人とない人を対象に、知能検査と磁気共鳴断層撮影(MRI)検査を実施。虐待によって脳が傷つくこと、虐待のタイプによって傷つく部位が次の4パターンに分かれることを明らかにした。
(1)激しい体罰による前頭前野の萎縮──幼少期に激しい体罰を長期にわたり受けると、感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮する。
(2)暴言虐待による聴覚野の拡大──幼少期に暴言による虐待を受けると、会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大する。
(3)性的虐待による視覚野の萎縮──幼少期に性的虐待を受けると、視覚をつかさどる「視覚野」が約18%萎縮する。
(4)両親のDV目撃による視覚野の萎縮──幼少期に頻繁に両親のDVを目撃すると、視覚野の一部が約6%萎縮する。
虐待が脳に影響を与えるメカニズムを、友田さんはこう説明する。
「過酷な体験に適応するよう、それぞれをつかさどる脳の部位が過敏に変化していると考えられます」

13歳が親の財布から金を盗んで「ゲーム課金」 家族間の窃盗は「犯罪」にならない?

弁護士ドットコム 2015年4月30日

13歳の息子が、親の財布から金を取ってネットゲームで課金していた・・・。そんな内容の書き込みが、ネットの掲示板に投稿された。親が買い与えたスマホで、人気ゲーム「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」に金をつぎこんでいたという。
年齢から中学生と思われる「息子」は、父親の財布から1000円ずつ抜き取っていたようで、発覚したときは、総額で2万円に達していた。投稿者は妻と話し合い、息子に「ゲームのデータ消去とスマホ3ヵ月間没収の刑」を科すことにした。
しかし、本来なら人の物を盗むこと、つまり「窃盗」は、懲役刑を科されることもある犯罪だ。家族間で金を盗んだ場合も、犯罪になるのではないのだろうか? 東山俊弁護士に聞いた。

家族間で物を盗んだら犯罪にならないの?
「まず、家族間で物を盗んだ場合でも『窃盗罪』となります。しかし、14歳未満の者の行為は犯罪になりません。このケースで盗んだのは、13歳の息子さんですから、犯罪として罪に問われることはないのです」
東山弁護士はこのように説明する。では、子どもが14歳以上の場合はどうか。
「『窃盗罪』が成立します。ただし、刑法には『親族相盗例』という規定があり、被害者が夫や直系血族(祖父母、両親、子ども、孫など)、同居の親族の場合は、刑が免除されます。そのため、『窃盗罪』で処罰されることはありません。
家庭内の問題は、法律で解決するよりも、家庭内で解決するほうがいいという考えから、このような規定が設けられています」

「少年審判」で処分される可能性も
そうすると、家庭内で子どもが盗みを働いても、全く処分を受けないのだろうか。
「子どもが成人している場合には、処分を受けません。しかし、子どもが成人していない場合には、『親族相盗例』と関係なく『少年審判』を行うことができます」
この「少年審判」とは、非行を犯した少年に対して、非行の内容や個々の少年の問題性に応じた適正な処分を選択するための手続だ。親や教師の同席のもと行われ、少年の反省の程度などによって、「不処分」「児童相談所に送る」といった決定がなされる。
「実際にはほとんどないでしょうが、『少年審判』により、『保護観察』や『少年院送致』といった処分がされることもあり得ます。なお、10歳くらいになれば『少年審判』を行うことが可能と考えられていますので、13歳の息子さんにも、処分がされる可能性があります」
東山弁護士はこのように述べていた。

性同一性障害巡り、学校の対応例通知 文科省

日本経済新聞 2015年4月30日

文部科学省は30日、心と体の性が一致しない性同一性障害の児童生徒に対する学校での対応例をまとめ、全国の教育委員会などに通知した。学校生活では男女別の規則や活動も多いため、服装、髪形、授業などでの配慮や支援の具体例を提示。「先入観を持たず、児童生徒の状況に応じた支援を行うことが必要」と強調した。
文科省が2013年度に初めて実施した全国調査によると、自身の身体の性別に違和感を訴える小中高校生は少なくとも606人いた。このうち性同一性障害と診断されたのは165人だった。
今回の通知では、該当する児童生徒がいる学校で実施されている例として、身体は「男性」でも本人が「女性」と自認している場合、女性の制服の着用を認めたり、水泳の授業で上半身が隠れる水着の着用を認めたりする対応を紹介。「君」「さん」といった呼称、男女別の名簿での扱いなどで配慮している例も挙げた。
就職時などに必要となる卒業証明書については、卒業後に戸籍上の性別を変更した場合に変更後の性別や名前に合わせて発行し直すことも可能だとした。
周囲の偏見をなくし、学校の対応への理解を求めるため、保護者と十分話し合い、他の児童生徒にも配慮するよう要請。医療機関や児童福祉施設、ソーシャルワーカーなどと協力した「サポートチーム」の設置も必要だとしている。
LGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛者、トランスジェンダー)と呼ばれる性的マイノリティーの児童生徒への対応についても初めて言及。教職員に対し、性同一性障害や性的マイノリティーに関する心ない言動を慎み、一方的に否定しないよう求めた。
文科省の担当者は「研修などを通して教職員の理解を深めていき、性同一性障害などに悩む子供が生き生きと学校生活を送れる環境を作っていきたい」と話している。

性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 2015年4月30日

性同一性障害に関しては社会生活上様々な問題を抱えている状況にあり、その治療の効果を高め、社会的な不利益を解消するため、平成15年、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「法」という。)が議員立法により制定されました。また、学校における性同一性障害に係る児童生徒への支援についての社会の関心も高まり、その対応が求められるようになってきました。
こうした中、文部科学省では、平成22年、「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」を発出し、性同一性障害に係る児童生徒については、その心情等に十分配慮した対応を要請してきました。また、平成26年には、その後の全国の学校における対応の状況を調査し、様々な配慮の実例を確認してきました。
このような経緯の下、性同一性障害に係る児童生徒についてのきめ細かな対応の実施に当たっての具体的な配慮事項等を下記のとおりとりまとめました。また、この中では、悩みや不安を受け止める必要性は、性同一性障害に係る児童生徒だけでなく、いわゆる「性的マイノリティ」とされる児童生徒全般に共通するものであることを明らかにしたところです。これらについては、「自殺総合対策大綱」(平成24年8月28日閣議決定)を踏まえ、教職員の適切な理解を促進することが必要です。
ついては、都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対して、都道府県にあっては所轄の私立学校に対して、国立大学法人にあっては附属学校に対して、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体にあっては認可した学校に対して、周知を図るとともに、学校において適切に対応ができるよう、必要な情報提供を行うことを含め指導・助言をお願いいたします。

1.性同一性障害に係る児童生徒についての特有の支援
•性同一性障害者とは、法においては、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信をもち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」と定義されており、このような性同一性障害に係る児童生徒については、学校生活を送る上で特有の支援が必要な場合があることから、個別の事案に応じ、児童生徒の心情等に配慮した対応を行うこと。
(学校における支援体制について)
•性同一性障害に係る児童生徒の支援は、最初に相談(入学等に当たって児童生徒の保護者からなされた相談を含む。)を受けた者だけで抱え込むことなく、組織的に取り組むことが重要であり、学校内外に「サポートチーム」を作り、「支援委員会」(校内)やケース会議(校外)等を適時開催しながら対応を進めること。
•教職員等の間における情報共有に当たっては、児童生徒が自身の性同一性を可能な限り秘匿しておきたい場合があること等に留意しつつ、一方で、学校として効果的な対応を進めるためには、教職員等の間で情報共有しチームで対応することは欠かせないことから、当事者である児童生徒やその保護者に対し、情報を共有する意図を十分に説明・相談し理解を得つつ、対応を進めること。
(医療機関との連携について)
•医療機関による診断や助言は学校が専門的知見を得る重要な機会となるとともに、教職員や他の児童生徒・保護者等に対する説明材料ともなり得るものであり、また、児童生徒が性に違和感をもつことを打ち明けた場合であっても、当該児童生徒が適切な知識をもっているとは限らず、そもそも性同一性障害なのかその他の傾向があるのかも判然としていない場合もあること等を踏まえ、学校が支援を行うに当たっては、医療機関と連携しつつ進めることが重要であること。
•我が国においては、性同一性障害に対応できる専門的な医療機関が多くないところであり、専門医や専門的な医療機関については関連学会等の提供する情報を参考とすることも考えられること。
•医療機関との連携に当たっては、当事者である児童生徒や保護者の意向を踏まえることが原則であるが、当事者である児童生徒や保護者の同意が得られない場合、具体的な個人情報に関連しない範囲で一般的な助言を受けることは考えられること。
(学校生活の各場面での支援について)
•全国の学校では学校生活での各場面における支援として別紙に示すような取組が行われてきたところであり、学校における性同一性障害に係る児童生徒への対応を行うに当たって参考とされたいこと。
•学校においては、性同一性障害に係る児童生徒への配慮と、他の児童生徒への配慮との均衡を取りながら支援を進めることが重要であること。
•性同一性障害に係る児童生徒が求める支援は、当該児童生徒が有する違和感の強弱等に応じ様々であり、また、当該違和感は成長に従い減ずることも含め変動があり得るものとされていることから、学校として先入観をもたず、その時々の児童生徒の状況等に応じた支援を行うことが必要であること。
•他の児童生徒や保護者との情報の共有は、当事者である児童生徒や保護者の意向等を踏まえ、個別の事情に応じて進める必要があること。
•医療機関を受診して性同一性障害の診断がなされない場合であっても、児童生徒の悩みや不安に寄り添い支援していく観点から、医療機関との相談の状況、児童生徒や保護者の意向等を踏まえつつ、支援を行うことは可能であること。
(卒業証明書等について)
•指導要録の記載については学齢簿の記載に基づき行いつつ、卒業後に法に基づく戸籍上の性別の変更等を行った者から卒業証明書等の発行を求められた場合は、戸籍を確認した上で、当該者が不利益を被らないよう適切に対応すること。
(当事者である児童生徒の保護者との関係について)
•保護者が、その子供の性同一性に関する悩みや不安等を受容している場合は、学校と保護者とが緊密に連携しながら支援を進めることが必要であること。保護者が受容していない場合にあっては、学校における児童生徒の悩みや不安を軽減し問題行動の未然防止等を進めることを目的として、保護者と十分話し合い可能な支援を行っていくことが考えられること。
(教育委員会等による支援について)
•教職員の資質向上の取組としては、人権教育担当者や生徒指導担当者、養護教諭を対象とした研修等の活用が考えられること。また、学校の管理職についても研修等を通じ適切な理解を進めるとともに、学校医やスクールカウンセラーの研修等で性同一性障害等を取り上げることも重要であること。
•性同一性障害に係る児童生徒やその保護者から学校に対して相談が寄せられた際は、教育委員会として、例えば、学校における体制整備や支援の状況を聞き取り、必要に応じ医療機関等とも相談しつつ、「サポートチーム」の設置等の適切な助言等を行っていくこと。
(その他留意点について)
•以上の内容は、画一的な対応を求める趣旨ではなく、個別の事例における学校や家庭の状況等に応じた取組を進める必要があること。

2.性同一性障害に係る児童生徒や「性的マイノリティ」とされる児童生徒に対する相談体制等の充実
• 学級・ホームルームにおいては、いかなる理由でもいじめや差別を許さない適切な生徒指導・人権教育等を推進することが、悩みや不安を抱える児童生徒に対する支援の土台となること。
•教職員としては、悩みや不安を抱える児童生徒の良き理解者となるよう努めることは当然であり、このような悩みや不安を受け止めることの必要性は、性同一性障害に係る児童生徒だけでなく、「性的マイノリティ」とされる児童生徒全般に共通するものであること。
•性同一性障害に係る児童生徒や「性的マイノリティ」とされる児童生徒は、自身のそうした状態を秘匿しておきたい場合があること等を踏まえつつ、学校においては、日頃より児童生徒が相談しやすい環境を整えていくことが望まれること。このため、まず教職員自身が性同一性障害や「性的マイノリティ」全般についての心ない言動を慎むことはもちろん、例えば、ある児童生徒が、その戸籍上の性別によく見られる服装や髪型等としていない場合、性同一性障害等を理由としている可能性を考慮し、そのことを一方的に否定したり揶揄(やゆ)したりしないこと等が考えられること。
•教職員が児童生徒から相談を受けた際は、当該児童生徒からの信頼を踏まえつつ、まずは悩みや不安を聞く姿勢を示すことが重要であること。