児童虐待の時効見直し=性的被害対象、成人時まで停止―自民検討

時事通信 2015年5月10日

自民党は、児童虐待に関する時効の在り方の見直しを始めた。幼少時に受けた性的虐待が対象で、民事、刑事両面で成人になるまで時効を停止する案を軸に立法措置を検討する。幼いころに虐待された被害者が、成人しても加害者の責任を問えるようにするのが狙い。支援体制の強化も併せて議論し、政府に提言する。
検討しているのは「女性の権利保護プロジェクトチーム(PT)」(馳浩座長)。先月開いた初会合で幼少期に親族から性的虐待を受けた女性のヒアリングを実施。今後は関係省庁と調整しながら、具体案づくりに向けた作業を進める。
厚生労働省によると、2013年度に全国の児童相談所に寄せられた相談件数のうち、性的虐待は全体の2.1%にとどまる。性的虐待の実態に詳しい寺町東子弁護士によると、幼い被害者が虐待の意味を理解するのは早くて思春期以降。加害者が親や兄弟、親族の場合、相談相手もいないことから、表面化していない虐待もあるという。
さらに成人後、虐待を原因とする心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症しても、既に民事で損害賠償請求権が消滅する除斥期間(20年)、刑事で公訴時効(強制わいせつ罪7年)の期間がそれぞれ経過していれば、被害者が「泣き寝入り」するしかないケースもある。
このためPTは、民法や刑法で加害行為の発生時となっている時効の起算点を、被害者が20歳を迎えた時点に変える案を軸に検討。民法や刑法を改正するか、児童虐待防止法の改正で対応するかも今後協議する。時効見直しに関しては、証拠の散逸や関係者の記憶の薄れに伴う誤判を招きかねないとの声もあり、対応策が課題となりそうだ。

児童虐待の時効見直しを自民党で検討、ネットは賛否両論

IRORIO(イロリオ) 2015年5月10日

馳浩衆議院議員が座長に
時事通信の報道によると、自民党で児童虐待に関する事件について、被害者が成人するまで時効を停止する案が検討されていることが分かった。
議題になっているのは、自民党内の女性活躍推進本部にある「女性の権利保護プロジェクトチーム」の会合で、4月17日に発足して以降、馳浩衆議院議員を座長に、三原じゅん子参議院議員、猪口邦子参議院議員らが参加している。

時効の変更と救済施設の設置
馳議員や三原議員のブログによると、会合では、こうした事件に取り組んできた弁護士だけでなく、被害者からも意見を聞いたとある。
三原議員はブログ4月18日投稿分「魂の殺人」で「泣き寝入りしているであろう多くの被害者に対して申し訳ない気持ち、、、そしてまた、このような女性をどう守れるか等様々な思いが交差して涙が溢れました」とつづっている。
また馳議員のブログでは、大きな問題点として次の2点を挙げている。
・性的虐待被害者支援のために、公訴時効と民法第724条の20年間の除斥期間の起算点を、20歳からにする
・性暴力被害者の救済のためのワンストップセンターを全都道府県に整備し、児童相談所と連携すること
報道によると、プロジェクトチームでは、幼少時の虐待について時効の起算点を被害者が20歳を迎えた時点に変える案を中心に検討しているとのこと。さらに具体的な法改正については継続して協議していくとある。

強姦罪の厳罰化も
また馳議員のブログによると、出席した弁護士から次の発言があったそうだ。

“そもそも強姦罪は性の自己決定権・性の自由の侵害罪という趣旨であり、強盗罪よりも刑が軽い。おかしい。人間の尊厳を侵害する大きな概念の罪ではないか。根本的に性暴力犯罪について議論すべき!”
こうした犯罪の厳罰化は、松島みどり前法務大臣が提案したこともあり、既に議題になっている。今後、多方面から検討が進められそうだ。

ネットでは賛否両論
こうした動きについて、ネットユーザーの反応を見ると、賛成の意見が多く、中には「遅すぎる」との意見もあった。
その一方で、長い期間が過ぎたことによる証拠や証言の難しさから、冤罪や誤審を心配する意見もある。
日本における刑事訴訟では、起訴された場合の有罪率は99%を超えている。そのため有罪が決まるまでは無罪とする「推定無罪」の原則に反して、裁判では訴えられた側が無罪であることを立証する必要に迫られることが多い。
反対意見は、そうした司法制度の欠陥を指摘しているようだ。
ただヨーロッパやアメリカでは、こうした事件に対して時効を延長する方向で進んでいる。欧米から多少遅れるかもしれないが、日本でも同じ動きになりそうだ。

小2生活科「生い立ち授業」に戸惑い 里親「子ども負担大きく」

@S[アットエス] by 静岡新聞 2015年5月8日

学習指導要領に基づき、生活科で児童が自らの生い立ちを振り返る小学2年生の授業について、虐待などさまざまな理由で親と暮らせない児童を養育する里親らから戸惑いの声が上がっている。「一律の取り組みが、大きな負担になっている子どももいる」。切実な訴えに、専門家も「家族が多様化する中、学校側に配慮が必要」と指摘する。
「本当につらい作業だった」―。小学3年の女児を養育する静岡県中部の里親は、女児が2年生だった今年2月に取り組んだ生活科の授業に苦しんだ。担任から「名前をつけた理由」「1歳の時に初めてできたこと」などの質問が書かれたプリントを宿題で配られた。絵本の形にまとめるため、思い出の写真などを準備するようにも言われた。
女児が里親の元にやってきたのは小1の時。写真はあったが、実の親と連絡は取れない。担任に相談すると「ありきたりなことでいいから書いて」と返ってきた。名前の由来や乳幼児期の様子など「想像で書くしかなかった」と里親は話す。女児は直接的な拒絶の言葉こそ口にしなかったが、しばらくは表情が暗く、怒りやすい状態が続いたという。
教員向けの指導書によると、この授業は「これまでの自分の歩みを振り返ることで自身の成長を実感し、今後につなげていく」のが狙い。別の学校では、親への手紙などと合わせ、参観会で発表するケースもあるという。
ただ、里親家庭や児童養護施設で暮らす児童に配慮する学校もある。学区内に児童養護施設「静岡ホーム」(静岡市葵区)がある市立安西小では、生い立ちに固執せず、ここ1年間にできるようになったことを振り返りの中心にする。昨年度、2年を担任した教員は「施設の子どもに限らず各家庭にさまざまな事情がある。生い立ちを追わなくても、自身の成長を感じられれば授業の目的は達成されると思う」と話した。

「2分の1成人式」など 任意行事にも課題
小学校で自らの生い立ちなどを調べ発表する機会には、小学2年の生活科のほか、小学4年時、各学校がキャリア教育の一環などとして任意で行う行事「2分の1成人式」がある。実施する学校数については、県教委も把握していないという。
内容は「10歳証書」の贈呈、合唱の発表などさまざまだが、児童が生い立ちを巻物にして発表したり、親に宛てた感謝の手紙を読んだりする例もある。
生活科や「2分の1成人式」などで児童が生い立ちを振り返る活動について、静岡大教育学部の石原剛志教授(46)=児童福祉=は「極めて個別的な配慮が必要。やり方によっては子どもを大きく傷つける可能性がある。里親家庭に限らず、虐待、貧困、シングルなど多様な家庭があることを前提に行う必要があり、教師に力量がなければ成り立たない活動だ」と指摘する。

<メモ>小学校生活科の学習指導要領には「自分自身の成長を振り返り、多くの人々の支えにより自分が大きくなったこと、自分ができるようになったこと、役割が増えたことなどが分かり、これまでの生活や成長を支えてくれた人々に感謝の気持ちをもつとともに、これからの成長への願いをもって、意欲的に生活することができるようにする」との記載がある。小学2年の生い立ちを振り返る授業はこの記載をもとに実施されている。

着服金で大量ブランド品、園長室に鍵かけ保管

読売新聞 2015年5月8日

大阪府高槻市の私立保育園(園児約160人)の女性元園長(62)(4月15日付で懲戒解雇)が在職中、少なくとも4900万円の運営費を着服した問題で、元園長が運営費を流用していた私的な買い物の詳細が、園関係者への取材でわかった。
2006年頃から領収証を改ざんするなどして購入費を捻出。大量の品々は「自宅に持ち帰ると夫に叱られる」と園長室に鍵をかけて保管していた。

手当たり次第
園関係者によると、元園長は「高級ブランドの装飾品や化粧品などを手当たり次第に買った」と説明。園側が調べたところ、ブランドはグッチやアルマーニが多いことが判明。園長室には、クリスタルのトップブランド「バカラ」のグラス3点や、10万円のウイスキー、きり箱入りの純米吟醸の日本酒などもあった。
このほか、十数万~数万円の絵画15、16点も。中には、仏教美術のテーマになることが多い「風神雷神」の絵があり、園関係者は「キリスト教系の園に無関係であることは明らかで、元園長が購入したとしか考えられない」と話す。
また、園とは無関係の自動車整備業者の領収証もあり、園側は、元園長が自身や家族の車の整備代を園に回していたとみている。

自室代わり
流用の手口は、大半が領収証の改ざんだ。例えば、保育用品などを購入した額面「5万5000円」の領収証に、「5」という数字を書き足して「55万5000円」に変え、50万円を作り出す方法だった。
園の規則では、決裁権者が園長で、会計責任者と出納職員を別に置くことになっているが、元園長は実質的にすべてを兼務し、通帳や印鑑も管理。領収証に書き加えられた数字は、理由は不明だが、「5」と「6」が多く、改ざんのほか、私的物品の購入時に園宛ての領収証を書かせていたこともわかったという。
元園長は1979年から保育士として勤務。園長になった2年後の06年頃から「衝動的に買い物がしたくなる気持ちを止められなかった」と説明。「園長室を自分の部屋代わりにしていた」とも言い、保育士らとは別室で会っていた。
園は13年度、園児数などで決まる運営費など約1億7000万円を市などから受給。3月に内部告発を受けて調べたのは08年以降の分で、流用額は膨らむ可能性がある。元園長は4500万円を返金したが園側は刑事告訴を検討している。