50,000人の子どもたちが親元で暮らしていない今。子どもたちが暮らす8つの形態、全て言えますか?【前編】

現代ビジネス 2015年6月2日

前回は児童虐待が発見された後どうなるのか、児童相談所の役割や現状について書かせていただきました。今回は保護された後に、子どもたちが家の代わりに暮らす児童養護施設や里親をはじめとした「社会的養護」というものについてです。普段なじみがない領域である分、より多くの方の目にとどまるようにNAVERまとめ風にタイトルをつけてみたのですが、センスの問題か、少し攻撃的なタイトルになりました(苦笑)。

「社会的養護」って知ってますか?
さて、社会的養護とは、保護者のいない児童や被虐待児など、家庭環境上の理由で養護を必要とする児童に対して、公的な責任として養護を行う事を指します。つまり、家庭に代わって、社会保障費(我々の税金等)で子どもたちを育てることを指します。
社会人になるまで親と暮らすことがなんとなく当たり前だと思って暮らしている人も多いと思いますが、実は約50,000人の子どもたちが、そのほとんどは親がいるにも関わらず、親元で暮らすことができていない状況です。東京だけでいうと約4,000人の子どもたちが親と暮らしていません。
以下が、虐待等で保護された子どもたちがその後に暮らす社会的養護の各種形態になります。

芦田愛菜ちゃんが主演した『明日ママがいない』(日本テレビ)や、ランドセルを匿名で寄付する「タイガーマスク現象」などによって「児童養護施設」の認知度は上がったかもしれません。しかし、その中身を詳しく知る人は少なく、また児童養護施設以外の施設についてはほとんど聞いたことがないのではないでしょうか。「里親」についても、googleなどで検索すると、ペット里親がトップにあがってきます。ペットではない、子どもの里親制度について日常生活で耳にすることはほとんどないのではないでしょうか。海外のドラマや映画、里子を受け入れているブラッドピットとアンジェリーナジョリーのゴシップニュースで聞く頻度の方がおそらく多いのではないかと思います。
しかし、約50,000人の子どもたちはほとんどの大人が知らない、この社会的養護下で現に暮らしているのです。社会的養護といえども、(金銭的なもの以外は)あまり社会が育てている状況ではなく、子どもたちが困ってSOSを出しても、そのSOSが届かない距離で私たちは暮らしています。
これは児童養護施設等の慢性的な人手不足や、子どもの安全のための個人情報の保護などの理由もあり、私たちが興味を持てばよいという単純な話ではないありません。しかし、いずれにせよ大人や社会側の都合ではあるので、本来は言い訳にしてはならず、一刻も早く解消していくべき点だと個人的には思います。とはいえ、単純な話ではないということは現場近くにいて感じています。

「家庭養護」の2つの形態?①里親
社会的養護は、家庭の中で育てる「家庭養護」と、施設の中で育てる「施設養護」の2種類に分かれます。日本の場合、保護されたほとんどの子どもたちが施設養護の形態で暮らすことになります。先ほどの社会的養護の表からも、約5万人のうち、家庭養護で育つ子どもたちは5千人ほどで1割程度となっています。以下は家庭養護の内、里親の下で暮らす子どもの割合を海外と比較した図です。いかに日本の状況が特殊かがわかるデータではないでしょうか。
里親と養子縁組の違いがわかりづらいという質問を受けることがあるので、ここで簡単に説明します。養子縁組は戸籍上も子どもとして育てることであり、実子として受け入れる制度を「特別養子縁組」と呼び、養子として受け入れる制度を「普通養子縁組」と呼びます。普通養子縁組は「家の存続等」が目的の制度で、特別養子縁組は「子どもの福祉、利益を図る」ことが目的の制度となっています。つまり、子どもの養子縁組という場合には、「特別養子縁組」のことを指すことが一般的です。
それに対して里親は行政から養育費をもらいながら、わかりやすくいえば、個人で子育ての委託を受けながら育てている形を指します。里子の場合、戸籍上は何も影響はありません。
里親の中にも個人間の同意で行う「私的里親」、児童福祉法の下で行う「養育里親」と「専門里親」、3親等以下の親族が行う「親族里親」があります。また、一般的に里親のくくりからは外れますが、児童養護施設などから週末だけ家庭を体験するために訪れる「週末里親」という制度もあります。近年は「里親」というと、一般的に「養育里親」を指します。
「養育里親」と「専門里親」は、里親となる本人がどのように思い育てているかは別として、仕組みとしては自分の子どもとして育てるのではなく、委託を受けて育てている制度であるため、「里親手当」と、各種経費(生活費、教育費)が支給されます。養育里親の場合には月額7万2千円(2人目以降は3万6千円)で、専門里親の場合には月額12万3千円(二人目以降は8万7千円)となっています。また両方とも、生活費が1人当たり約5万円(子どもの年齢によって異なります)と、学校に通う等の教育費が基本的には実費で支給されます。
里親手当の金額の違いは、専門里親の場合、子どもの問題に対処するため専門知識・資格・実務などがある人が里親ということです。資格などがなくても、養育里親の経験がある人が、発達障害や、非行・問題行動が目立つ子どもを育てる仕組みになっています。要するに、制度上は、責任や難易度が上がったことによる「昇給」という位置づけといえるかもしれません。
ここまで書くと里親はドライに仕事として子どもを育てている印象を持つかもしれませんが、あくまで制度上の話であり、実際はわが子のように育てている里親は少なくありません。
そして里親委託数は、ここ数年で少し増加ぎみにあるものの、戦後の大きな流れで見ると減少しています。その理由には諸説ありますが、里親が減り始めた1950年代から児童福祉施設を作るための補助が充実し、収容人数という視点から児童福祉施設のニーズが増えたことで、社会的養護の主な担い手が児童福祉施設に代わったままになったとのことです。

「家庭養護」の2つの形態?②ファミリーホーム
2009年4月に制度化された新しい家庭養護の形です。こちらは概念としては、すでに夫婦などで暮らしている家に、養育補助者を1人以上を置いて、合計3人以上で、5,6人ほどの子どもを預かる制度です。大規模里親制度といえるかもしれません。里親同様に、職業として運営できるよう人件費をまかなえる費用を行政が支払います。その金額は子ども1人当たり月約20万円となっています。5人以上を育てるので、月約100万円ほどで、こちらに3人の人件費や子どもたちへの生活費なども含まれるといった形です。
ファミリーホームを運営するのは、夫婦に親族やアルバイト等を雇って運営する家族経営型と、法人などが複数のファミリーホームを運営する法人経営型があります。5人以上の子どもが暮らせる住居が必要であったり(修繕費などは出るもののそれだけの土地を持っている人も少ない)、色んな用件や書類を提出しなくてはいけないことから、現実的には家族経営は厳しいともいわれています。そうすると、法人が経営する児童養護施設などにも6人ほどが家庭に近い住居でグループホームとして暮らしている場合も多く、ファミリーホームとの違いがあいまいになってしまうことも問題視されています。

性的児童虐待の「時効」20歳から起算へーー与党改正案で「泣き寝入り」を防げるか?

弁護士ドットコム 2015年6月3日

児童への「性的虐待」について、時効の壁による泣き寝入りを防ぐため、与党・自民党が時効の見直しを始めたことが報じられた。民事・刑事両面で、被害者が成人になるまで時効を停止する立法案を検討しており、幼少時に受けた性的虐待が対象になる。
現在の法律では、性的虐待を受けた児童が泣き寝入りするケースが多いといわれる。たとえば、虐待が原因で心的外傷後ストレス傷害(PTSD)を発症しても、民事では、被害者が損害を知ったときから3年(時効)、あるいは加害行為から20年(除斥期間)を過ぎると、損害賠償の請求権が消滅する。刑事でも、公訴時効(強制わいせつ罪の場合は7年・加害行為があった日から起算)が定められている。
このため、見直し案では、時効の起算点を「成人になったとき」として、幼少時に性的虐待を受けた被害者が訴えを起こしやすいようにする。「時効」見直しの背景や今後の課題について、児童虐待問題にくわしい榎本清弁護士に聞いた。

被害後、何年もたってからPTSDを発症することも
「これまで、現実と、時効に関する法規制の間には、大きな不整合がありました。子どもが被害を受けてから、提訴・告発まで相当、長期間が経過してしまいますが、民事上では被害者が損害を知った日、刑事上は加害行為があった日から時効が起算されます。今回の見直しがなされた背景には、これをただすことがあります」
提訴・告訴まで時間がかかるのは、どんな背景があるのだろう。
「幼いときには、性的虐待の意味も分かりません。たとえ分かったとしても、他人には言えない状況におかれています。ですから、この段階で訴え等を起こすことはできません。
また、子どものときに性的虐待を受けると、長期間絶った後でも、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病等という形で、深刻な影響を受け続けるケースがあることが、研究で明らかになってきました。
しかし、大人になってから、こうした症状が出ても、その原因が児童期の性的虐待であると認識することは、医学的な診断でもされない限り、難しいのが現状です」
となると、成長後でも、告訴などができるようになるまでには、かなり時間がかかりそうだ。
「しかし法律は、一律に不法行為のときや、犯罪行為が終わったときから一定の年数で、時効や除斥期間により、損害の請求や裁判を起こせなくなることを定めています。子どもに対する性的虐待被害に特有な問題には、配慮していません。
このため、性的虐待の被害者が損害賠償請求などをしようと思っても、実際には時効・除斥期間の壁にぶつかってしまうことが多いのです。実際、最近の裁判で、時効などを理由に被害者の請求を棄却する判決もでて、大きく報道されました。
その後、高等裁判所の判決で、逆転勝訴となりましたが、現在も最高裁判所で裁判は継続中です。この裁判と、裁判をめぐる世論が今回の見直しに直接的な影響を与えているのです」

被害者、加害者ともに立証が課題
今回の見直し案は、時効などの進行を、被害者が成人するときまで停止するというものだが、どう評価しているのか。
「子ども時代の性的虐待の被害者が、加害者に対して損害賠償請求をしたり、告訴したりということが、時効等の壁により断念させられるという問題は大幅に解決されます。
先に述べた裁判の高裁判決のように、法律の解釈で被害者保護を図ることもできますが、それにも限界があります。抜本的に解決するためには、法律自体の見直しが最善です。
ただ長期間の経過で、証拠が失われたり、関係者の記憶があいまいになって証言が得られなくなったりするということも課題です。加害者側が十分な防御ができなくなる可能性もあるという点にも配慮して、検討を進める必要があるでしょう。
また、被害者としても、同様に長期間の経過で立証が困難になれば、結局、損害賠償請求等が認められないことになってしまいます。
これは今回の見直しでは、解決される問題ではありません。やはり、性的なものも含め、児童虐待においては、早期発見と被害者に対する保護・支援体制を充実させることが重要です」
榎本弁護士はこのように話していた。

保育施設のスタッフ、大半が無資格外国人 都が公表

産経新聞 2015年6月2日

「英語で保育」をうたい、人気を集めていた東京都豊島区の認可外保育施設「トムインターナショナルスクール」(赤堀道子代表)が、長年にわたり保育士を置かず、改善勧告にも従わなかったとして、東京都が1日、施設名を公表した。スタッフ約30人のほとんどが、フィリピン出身など無資格の外国人だったという。
同施設では平成25年2月、インフルエンザに感染した2歳男児が搬送先の病院で死亡する事故があり、都が立ち入り調査を行うなど指導を強化していた。
都によると、同施設は20~26年度まで、保育士や看護師の資格を持つ常勤職員を1人も置かず、都は2月25日に2人を配置するよう改善勧告を出したが、十分な改善が図られなかったという。速やかに改善されない場合、都は23日に開かれる児童福祉審議会に諮り、事業停止か施設閉鎖命令の措置に踏み切る方針。