育休で上の子退園、所沢市が方針 親「違法」申し立てへ

朝日新聞デジタル 2015年6月20日

親が出産して育児休業に入った場合にそれまで保育園に通っていた子どもを3カ月後までに退園させる。そんな埼玉県所沢市の新たな方針は違法だとして、10人あまりの保護者が近く、市に退園させないよう求める仮差し止めをさいたま地裁に申し立てる。育休中も従来通り、在園できるよう求める。25日に記者会見して発表する。
同市は今年3月、母親の出産に伴い、保護者が育休を取った場合、保育園に在園する0~2歳児は双子、病気の児童などを除き、下の子が生まれた翌々月末までに退園させる方針を通知。4月から始めるとしていた。
市はこれまで園長の裁量を認めて、育休を理由とした退園は求めてこなかった。だが、国の子ども・子育て支援の新制度で4月から、入園調整を市が一括して管理することになったのに伴い、「育休中は家庭での保育が可能。園での保育の必要性が認められない」として厳格運用に転じた。
これに対して、保護者らが反発。育休を予定する保護者たちが申立人となり、市に在園児を退園させないよう仮差し止めを求めることにした。申立書では、育休は単なる休暇ではなく復帰の準備期間で、就労の一形態▽保護者に育休の取得を萎縮させる――などと主張。市の方針は「育休中であっても保育園の在園を認められるとした子ども・子育て支援法の施行規則などに反し、違法だ」と訴えている。
市は親が復職する際に申請すれば、再入園の選考時に加点して同じ保育園に通えるよう配慮する制度を設けた。藤本正人市長はこれまでの取材に対して、「子どもは2歳までは『お母さんと一緒にいたい』と言うはずだ。この制度変更はとてもいいものだと思う」と話している。(戸谷明裕)

「2人目を阻もうとしているとしか…」
所沢市で方針変更が初めて保護者らに伝えられたのは昨年9月。今年3月に具体的な変更内容を知らされると、有志らが「育休退園」の撤回を求める要望書を市に出した。「安心して子育てできる街にしたい!!会」を5月に結成し、同月下旬に開いた抗議集会には約300人が集まった。

<困窮家庭>子どもの貧困対策センター設立 孤立に支援を

毎日新聞 2015年6月19日

経済的に困窮する家庭の子どもを支援する一般財団法人「子どもの貧困対策センター『あすのば』」が19日設立された。理事に就任した宮本みち子・放送大副学長(社会学)は東京都内での記者会見で、「貧困に苦しむ子どもにはネグレクト(親の子育て放棄)や不登校など社会的孤立が同時に生じており、その後の人生に影響している」と、センターの必要性を訴えた。
日本では子どもの6人に1人が貧困状態にあるとされ、同センターは実態調査や政策提言のほか、入学準備金支給など直接支援にも取り組む。代表は元あしなが育英会職員の小河光治氏が務め、理事には学識経験者、NPO代表に加え、母子家庭や児童養護施設で育った学生3人も参加し、当事者に近い視点を活動に反映させる。【山田麻未】

センターの専従スタッフになる村尾政樹さん(24)も父子家庭で育ち、アルバイトや奨学金で大学に進んだ。センターは高校時代からの志をとげる場所になる。「自分と同じ境遇の子どもの力になりたい」と語る。
小6の時、母は精神的な病を抱えて自死した。その1週間前、2人で祭りに行った時に「写真を撮ろう」という母の誘いを断っていた。どうしてあんなことを言ったのか、と苦しんだ。仕事に追われる父に3人の子育ての余力はなく、小1の弟は姉や自分と別れ児童養護施設に行った。
あしなが育英会から奨学金を受け、居酒屋などでアルバイトをしながら商業高校に通った。心の底に、いつも「独りぼっち」という思いがあった。だが、育英会のキャンプに参加して見方が変わった。親を失った同世代の仲間が何百人もいた。
勇気がわくと同時に、仲間の言葉に打ちのめされた。母子家庭という高校3年生は言った。「私は進学できないから最初で最後のキャンプになります」。この時「仲間の力になろう。そのために大学に行っていろんな経験をしよう」と思った。
北海道大に進む。入学金などはバイトの貯金を充てた。入学して自死遺児学生らが集う団体を設立。卒業し子どもを支援する札幌市の団体で働いていた時、センターに誘われた。
高校時代、バイト先の居酒屋の店長が「私も若いころ母を亡くしたから」と親切にしてくれたことが忘れられない。いろいろな人に助けられ、支える側になった。そんな生き方を広げたい。自分流に言うなら「『恩送り』の循環をつくりたい」。
救われるかどうか、周囲の善意の有無で決まるような社会であってはならない、と考える。「誰もが幸せな人生を歩めるようにする。それが子どもの貧困対策です」【山田麻未】

<祖父母殺害少年>救えた機会何度も 支援に結びつけられず

毎日新聞 2015年6月16日

虐待を繰り返す親と各地を転々とし、学校にも通っていなかった当時17歳の少年(18)=1審で懲役15年=が、祖父母を殺害して現金を奪ったとして強盗殺人罪などに問われた事件の控訴審が17日、東京高裁で始まる。関係者らの証言をたどると、多くの大人が少年の不遇な環境に気付きながら、支援に結びつけられなかった経過が見えてきた。【山寺香】

モーテル滞在2年 管理人相談、警官無関心
1審判決や関係者の話では、埼玉県で母と暮らしていた少年は小学5年の頃、母の再婚を機に静岡へ転居。母と義父は旅館の住み込みの仕事を始めたが数カ月しか続かず、住民票を残して埼玉に戻った。少年は学校に行かなくなり、行政が居場所を把握できない「居所不明児」となった。
一家はその後の2年以上をさいたま市のモーテルで過ごす。義父が日雇いの仕事で得た収入は部屋代と両親の遊興費に消えた。少年は毎日チェックアウト時間の午前10時にモーテルを出ると、ゲームセンターなどで夜まで時間を潰した。
「よく電子レンジを借りに来た。必ず『ありがとうございました』とあいさつする礼儀正しい子だった」。管理人だった70代男性はそう話す。男性は子連れの長期滞在を不審に思い、月に1度立ち寄る警察官に伝えた。だが、警察官は関心を示さなかったといい、保護の機会を逃した。

横浜の公園で野宿 児相面会、親が保護拒否
2010年春、一家は横浜に移り、公園で野宿する。母は数カ月前に女児を出産し、13歳になった少年が世話した。ベンチでうとうとすると、すさんだ生活にいら立っていた義父から殴られ、前歯が4本折れた。それを見た母は笑っていた。
10年夏、「野宿している一家がいる」と連絡を受けた横浜市中央児童相談所の職員が面会に来た。子供たちの一時保護を両親はかたくなに拒否した。保護は見送られ、同市中区の簡易宿泊所が一時的な住居に決まった。

フリースクール通う 交流したそうだったのに
区が学籍を復活させ、少年はフリースクールに通った。無口で人と打ち解けなかったが、本当は交わりたいように見えたという。生活保護を受け、最低限の安定を得ていたはずなのに、一家は11年3月に宿泊所から姿を消す。母が役所に保護費の使い方を注意されるのを嫌がったためだ。少年は再び居所不明児になった。フリースクールのスタッフは「支援を本格化させる矢先だった」と悔しがる。
一家は埼玉県内の塗装会社の寮に入る。12年秋に義父が失踪すると、16歳になった少年が代わりに働いた。母は浪費を続け、少年は給料を前借りした。それもできなくなり、金を借りに訪ねた祖父母宅で事件は起きた。
少年は1審判決後に書いた手記に「絶望と恐怖だけだった。『死ねたら楽だろうな』と思い続けた」とつづった。ただ、周囲に助けを求めた形跡はない。野宿生活などを振り返り、横浜の児相の担当者に伝えたことがある。「自分にはどうしようもない。親についていくしかない」
1審判決は、少年が母から「殺してでも金を借りてこい」と言われたことを認めたうえで、「殺害は母親の指示」との弁護側の主張を「借金を確実にさせるための言葉にすぎなかった」として退けた。弁護側は、2審でも少年が母に逆らえない心理状態にあったと訴えるという。

事件の概要
2014年3月、埼玉県川口市の無職男性(当時73歳)と妻(同77歳)を刺殺し現金などを奪ったとして、孫の少年(当時17歳)が強盗殺人容疑などで逮捕、起訴された。検察側は無期懲役を求刑、さいたま地裁は不遇な環境を考慮して懲役15年としたが、弁護側がこれを不服として控訴した。少年の母(42)も、祖父母から金を奪った行為で少年と共謀したとして強盗罪などで懲役4年6月が確定した。

無戸籍者、全国で626人に 10日時点 法務省まとめ

日本経済新聞 2015年6月20日

法務省は20日までに、民法の「嫡出推定」規定などが原因で戸籍のない人が6月10日時点で全国で少なくとも626人いると発表した。昨年9月に初めて発表した集計では279人だったが、その後実態の把握が進んだ。法務省は戸籍のない人の住民票や婚姻の有無なども調査し、無戸籍状態の解消を目指す。
法務省は昨年7月から集計を開始。これまでに市町村や各地の児童相談所から合計で740人の無戸籍者の情報が寄せられた。このうち112人はその後戸籍に記載され、2人は既に死亡したという。
戸籍のない人に対し、無戸籍状態を解消するための手続きなどの情報提供も強化する。

水遊びに危険が? 子どもを“夏のウイルス感染症”から守る方法3つ

マイナビニュース 2015年6月19日

ママからのご相談
インフルエンザなどの流行期間が終わり、感染症などに対して一安心していたものの、幼稚園でまた風邪がはやっていて困っています。夏の風邪対策にはどんなものが有効でしょうか?

A. 夏は風邪以外にも発症しやすい感染症がありますので、夏ならではのウイルス対策をご紹介します。
こんにちは。ご相談ありがとうございます。ママライターのmomoです。
冬には冬の感染症が、夏には夏の感染症がありますから、ママたちは気が抜けないですね。今回は、実際のデータをもとに夏のウイルス対策についてご紹介していきます。

夏に気をつけたいウイルスとは
厚生労働省の『感染症発生動向調査』によると、夏に発症しやすいウイルスの感染症として、
・咽頭結膜炎
・手足口病
・ヘルパンギーナ
・日本脳炎
などが挙げられています。

夏の感染症を予防する方法3つ

(1)タオルを共有しない
咽頭結膜炎や流行性角結膜炎になる主な原因として、夏ならではの“水遊び”があります。
混雑したところでは、プールに入る前や出た後にしっかりとシャワーを浴び、お友達や家族とタオルを共有しないようにしましょう。また、プールや水遊び以外でも、汗をかいたときなどにタオルの貸し借りをすることは避けた方が良いでしょう。

(2)蚊などの虫よけ対策
日本脳炎は蚊によって媒介されるため、しっかりと虫よけ対策をしておくことが大切です。
日本脳炎だけでなく蚊はいろいろな感染症を起こすキッカケにもなります。「たかが蚊でしょ?」と思わず、虫よけスプレーを用意したり、蚊のいるような場所・時間になるべく行かないようにするなどの対策をとりましょう。
緑が多い公園などに行くときは特に気をつけましょうね。

(3)清潔を保ち、免疫力を高めておく
手足口病やヘルパンギーナなどのウイルスは、36?37度の気温に最も繁殖しやすいと言われており、日本の夏はそれらのウイルスが好む最適な環境とも言えます。
まずは、ウイルスに負けないために食事・睡眠を十分に取り、外から帰ったら必ずうがいと手洗いをするようにしましょう。また、家の中の換気をしっかりと行い、ウイルス・菌の繁殖を避けましょう。窓を開けるだけではなく、夏はエアコンの除湿機能をうまく利用することも大切です。

冬には冬の、夏には夏のウイルス対策があります。楽しい夏を過ごせるように、規則正しい生活習慣と夏ならではの生活習慣を確立し、家族で気をつけていきたいですね。

性器クラミジア:最も広がる性感染症 不妊症の原因にも

毎日新聞 2015年6月20日

性器クラミジアは、国が指定する5種類の性感染症の中で患者数は突出しており、国内の性感染症の中で最も広がっているとみられる。致命的ではないが、不妊症の原因になるほか、妊婦が感染すると流産、早産につながる可能性がある。
厚生労働省は1999年に施行した感染症法に基づき、性器クラミジア、性器ヘルペス、尖圭(せんけい)コンジローマ、淋菌(りんきん)については全国約1000の定点医療機関での患者数を、梅毒については診断された全ての患者数を、それぞれ毎年集計している。
集計によると、性器クラミジアの感染者は2002年の4万3000人超をピークに減少。14年は約2万5000人となった。5種類の患者総数約5万人の半数を占める。しかし、札幌医大の熊本悦明名誉教授(泌尿器科学)によると、性器クラミジアに感染した女性の8割、男性の半数は無症状のため、受診しない人が多い。熊本さんは「外来患者を調べただけでは分からない。症状がない感染者は広がっているのではないか」と指摘する。
男性の治療は泌尿器科や皮膚科、女性は産婦人科で行う。パートナーがいる場合は同時に治療を受けることが重要。原因菌のクラミジア・トラコマチスに効く抗生物質を服用する。性行為の際の適切なコンドーム使用が予防に有効だ。口を使う性行為により、のどにも感染することがある。(共同)

「週60時間以上」働く人を5%以下にーー厚労省「過労死防止法」大綱の意義は?

弁護士ドットコム 2015年6月20日

厚生労働省は、過労死や過労自殺を防止する対策を国の責務とした「過労死防止法」(過労死等防止対策推進法)の基本方針となる大綱の案を発表し、6月11日からパブリックコメントを受け付けている。この案には、2020年までに週60時間以上働く人の割合を5%以下にすることや、有給休暇取得率を70%以上にすることなどの数値目標が盛り込まれている。
大綱の案は、過労死遺族や労働組合、経営者、学識者などで構成される過労死等防止対策推進協議会が昨年12月から検討を進めてきた。今後、パブリックコメントの結果を踏まえたうえで、閣議決定される予定だ。過労死をめぐっては、人権問題などを扱っている国連の社会権規約委員会が、日本政府に対策を講じるよう勧告するなど、その対策が世界的にも注目されている。
今回の大綱は、過労死を防止するうえで、どんな意味があるのだろうか。長年、過労死問題に取り組むとともに、過労死防止法の制定に尽力し、過労死等防止対策推進協議会の委員も務める岩城穣弁護士に聞いた。

「国民自身が自らの職場・意識を変えていくことが重要」
「大綱は、過労死防止法に基づき、過労死防止対策を総合的に推進するために、政府が作成する政策文書です。
今後数年間、国はこれに基づいて防止対策を推進し、毎年その結果を『過労死白書』のような形で国会に報告することになります」
岩城弁護士はこのように述べる。政府の打ち出した数値目標は、現実的なのだろうか?
「政府が具体的な数値とその期限を掲げる以上、国はその達成のために具体的な取り組みを行うとともに、毎年その進捗状況を確認していくことになります。『絵に描いた餅』にならないよう、国民もしっかり監視していく必要があります」
過労死をめぐる現状は変わるのか。
「過労死の現状が変わる可能性は十分にあると思います」
なぜ、そう思うのだろう。
「(1)まず、国がこのような過労死に関する詳細な政策文書を作成し、普及させること自体が画期的であり、影響は大きい。
(2)また、現行法令や通達の遵守・徹底なども『啓発』の一環として進めていくことになっていますので、監督指導が強化されることになります。
(3)さらに、過労死防止対策は、省庁の壁を超え、官民が協力・連携しあって、いわば国民的な運動として進めていくことになっています。
そうした運動の中で、労使を含めた国民全体の意識も変わっていくと期待されています」
岩城弁護士はこのように期待を込めた上で、次のように語っていた。
「過労死防止法は理念法です。一日の労働時間の上限など、具体的な労働条件を直接規制するものではありません。この大綱も、そうした意味で限界があります。
それでも、今回の大綱には、大きな効果が期待されていると言えるでしょう。何よりも、労働者・国民自身がこの法律や大綱を学び、自らの職場・意識を変えていくことが重要です」
厚労省は、電子政府サイトで、過労死防止法の大綱について、7月10日までパブリックコメントを募集している。意見がある人は、コメントを書き込んでみてもいいかもしれない。