[岩手中2自殺] なぜ訴えが届かぬのか

南日本新聞社社説 2015年7月14日

少年は何度も何度も助けを求めるメッセージを送っていた。その声はなぜ届かなかったのか。徹底的に究明する必要がある。
岩手県矢巾町の中学2年生男子が5日、列車にひかれて亡くなった。町教育委員会はいじめを苦にした自殺とみている。
少年は、担任に提出する生活記録ノートで同級生からの暴力や自殺を示唆していた。
「ついにげんかいになりました。もう耐えられません」「市(死)ぬ場所はきまっている」。書き連ねた言葉から、苦しい心中が伝わってくる。
ノートだけではない。5月と6月にあった悩みを尋ねる調査にも、「悪口を言われた」「いじめられている」と書いていた。
深刻なSOSにもかかわらず、学校は適切な対応をとることができなかった。最悪の事態を防げなかったことが残念でならない。
ノートのやりとりから、担任はいじめを把握していたとみられる。問題なのは、それが学校全体で共有されなかったことだ。
学校が町教委に報告したいじめの件数は、少年の入学後、「0件」が続いていた。
教育長は「認知がなければ(防止の)成果が上がっているという考え方が学校や町教委にあった」と述べている。
「いじめがない」ことが学校や教師の評価につながっていなかったか。それが周囲に相談できない原因だったとしたら、本末転倒と言うほかない。
2013年に「いじめ防止対策推進法」が成立した。きっかけは大津市の中2男子の自殺だった。このときも、複数の教員がいじめに気付きながら、学校全体で情報が共有されていなかった。
推進法は学校と教職員に、保護者や地域住民、児童相談所などの関係者と連携を図りつつ、学校全体でいじめの防止や早期発見、対処を求めている。
学校には、未然防止や対応などを盛り込んだ「いじめ防止基本方針」づくりを義務づけ、岩手の中学校も策定していた。
しかし、いくら制度ができても、現場の意識が変わらなければ絵に描いた餅でしかない。
岩手の中学校の校長は、学校側の非を認め、詳細な調査を約束しているという。町教委は学校による調査と遺族への説明が終わり次第、検証のための第三者委員会を設置する方針だ。
教師や学校だけで問題を抱え込むのはやめよう。いじめを社会の問題としてとらえ、二度と悲劇を繰り返さない覚悟で、事件を検証してほしい。

待機児童が減らぬ理由 保育園のブラック化や住民の開園反対も

NEWS ポストセブン 2015年7月14日

埼玉県所沢市で4月から始まった「育休退園制度」が物議をかもしている。第2子が生まれて育休を取ると、保育園に通っている上の子は退園しなければいけないという制度だ。
育休退園制度の導入理由となった待機児童は1990年代から社会問題になり、いまだ深刻なままだ。2014年4月の時点で、保育園の定員は234万人で、待機児童数は2万1371人。徐々に改善されているが、問題解決にはほど遠い。
なぜ、待機児童問題は解決しないのか。まず挙げられる理由は共働き夫婦の増加だ。1986年の男女雇用機会均等法施行以降、経済状況の悪化やライフスタイルの変化などで、働く母親が急増した。
「保育園の定員も増えていますが、共働き世帯の子供の入所希望者がそれを上回る規模で増えています。国は40万人の受け皿を用意すれば2年後に待機児童が解消すると予測していますが、見通しが甘すぎるのでは」(待機児童の問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さん)
また、保育士不足も理由に挙げられる。厚生労働省は2017年度末までに約7万人分の保育士が不足すると試算している。昨年12月の保育士有効求人倍率は全国平均で2.06倍、東京で5.37倍と圧倒的な売り手市場だ。猪熊さんはその理由として彼らの待遇の悪さを指摘する。
「保育士の平均月収は21万円で、全産業の平均と比べると約9万円も低い。認可外保育所では月給14万円程度のところもあります」(猪熊さん)
給料が低い一方、仕事はハードだ。
「親が働く時間がどんどん長くなるのに応えて、朝7時から夜10時半まで預かる保育園もあるほどです。正規職員の割合もどんどん減っています。長時間勤務で“ブラック企業化”しているところも少なくありません」(猪熊さん)
実際、保育士の資格がありながら保育士として就職しない“潜在保育士”は、全国で70万人以上いるという。
そして、保育園建設場所の確保の困難さも解決を妨げる理由のひとつだ。2014年4月時点で待機児童数が全国で最も多い東京・世田谷区では昨年、地域住民の反対で、認可保育園の開園が遅れるという騒動があった。
「待機児童解消」を掲げる世田谷区の保坂展人区長が言う。
「世田谷区では長い間、子供の数が減る一方でしたが、現在は5才以下の子供が毎年1000人ずつ増えています。区では公務員住宅の跡地などに保育園の建設を進めています。しかし子供の声のない静かな環境が長く続いたので、騒音が心配だという声があがり、事業者が建設を躊躇するケースがあります。近隣住民のかたには粘り強く理解を求めていきたい」
これは世田谷だけの問題ではない、と猪熊さんが言う。
「杉並区や大田区でも、住民の反対で保育園の開園が延期されました。開園法人が行政と共に丁寧に説明して住民の理解を得ないといけません」

受診券不明:施設入所の子ども用65枚 /広島

毎日新聞広島 2015年7月11日

県は10日、児童養護施設などに入所した子どもが医療機関を訪れる際に示す「受診券」計65枚の所在が分からなくなっていると発表した。受診券には、子どもの氏名や入所施設名などが記されているが、県によると、これまでに悪用する被害は確認されていないという。
受診券は、虐待を受けたり、障害があったりしながらも家庭での養育が難しい場合、県の判断で施設に入所した子どもを対象に交付。医療機関で健康保険証とともに提示すると医療費が全額助成される。入所期間が終わると施設が返還する。
県によると、今年4月、入所期間の過ぎた子どもの保護者が施設への再入所の相談で県こども家庭センターを訪れた際、受診券を持っていたことが判明。県が県内86カ所の施設を対象に、過去5年間に発行した受診券の返還状況を調べたところ、計65枚が所在不明となっていた。県は、子どもの入所手続きと受診券の発行を別々の担当者が管理していたことなどが原因と分析。再発防止策として、一元的に管理する体制に見直した。【山田尚弘】

改めて整理!児童ポルノ禁止法の概要と問題点

The Huffington Post Japan 2015年7月14日

明日、7月15日で改正児童ポルノ禁止法の施行から1年が経過します。本日14日で、児童ポルノの性的目的所持の罰則猶予が終わることから、いくつかのサイトではニュースになっていますが、改めてここで児童ポルノ禁止法の概要と問題点について触れてみたいと思います。
児童ポルノ禁止法は1999年に成立し、2004年、2014年にそれぞれ改正されています。この法律は「児童の権利を擁護すること」を目的としており、具体的には児童買春の禁止と児童ポルノに関する行為、これらの被害を受けた児童の保護をうたっています。
これらの目的について、私は行政としてやるべきことであると思っていますし、必要であれば立法も行うべきと考えています。しかしながら、現状の法律にはいくつかの大きな問題を抱えており、それらの問題について触れておきたいと思います。特に今回、児童ポルノについて、性的目的の単純所持について罰則化という、持っているだけで犯罪者となりえるようになったことから影響は大きいと思っています。
以下が、この児童ポルノ禁止法について考えている主な問題点4つです。それぞれ説明したいと思います。

?問題点1 何を持っていると犯罪者となるのかが明確でない
?問題点2 どう思うかによって犯罪となったりならなかったりする
?問題点3 エンターテイメントの表現者が萎縮してしまう可能性がある
?問題点4 知りたい情報が得られなくなってしまう可能性がある

問題点1 何を持っていると犯罪者となるのかが明確でない
法律では予め、何を侵したら犯罪かを予め明確にしなければなりません。(罪刑法定主義/明確性の原則)しかしながら、この法律では「裸または服を一部着ない児童の写真や動画で、特に性的部位が露出していたり、強調されているもの」を児童ポルノとして定義しています。
このまま考えると、例えば、ティーン男性アイドルの上半身裸の写真などは定義に当てはまりそうです。あるいは、自分の幼稚園の頃の水泳写真などはどうなるのでしょうか。
しかしこれまでの説明では、これらの写真などが児童ポルノとなることは無さそうです。法文を見ると明らかに児童ポルノなのに、実際はそうではない。この法律を見ただけでは、何を持ったら、犯罪者となるのかが、分かりません。これでは、捜査当局の恣意的な判断で、「逮捕」と「見逃し」を選別することになりかねません。
もっと定義を明示してくださいという要望を政府に提出し、本日にもその回答が閣議決定を経てかえってきます。しかし、おそらくゼロ回答でしょう。そして、本当は、法律の目的に照らせば、性的な虐待を受けた時の画像や映像を児童ポルノとするべきなのです。
現行法では、例えば性虐待中の顔のみの動画や、動物の性器を触らせられている写真などは児童ポルノの定義の対象となりません。当初の目的に照らして本当におかしなことです。

問題点2 それをどう思うかによって犯罪となったりならなかったりする
今回の単純所持罪については、むやみに児童ポルノを持つことを禁止していますが、罰則がついているのは「自己の性的好奇心をみたす目的」の場合のみです。
しかし、捜査機関は持っていた人の心を読み当てることが出来るのでしょうか。絶対に出来ないはずです。そして、内心の自由は憲法で最大限保証されている自由です。たとえ、あなたが誰かを殺そうと強く思ったとしても、この国の法律ではあなたは罰せられません。
また、あなたが自分が子どものころの裸の写真をいくつか持っていたとします。一般的には自分自身の昔の裸に性的好奇心を持つことは少ないですから、あなたは罰せられないでしょう。ところが、国会答弁では、所持していることが明らかで目的や理由が不明な段階でも捜査を行う可能性があるということでした。あなたは警察に捜査されてしまうかも知れません。
また、あなたにとっては児童ポルノではなくても、他人にとっては児童ポルノという場合があります。あなたが持っていたような写真を複数集めているコレクターがいたとします。その写真をコレクターがSNSで勝手にダウンロードしたり、気軽に手渡したりしたら、もしかしたら、あなたは被害者のはずなのに、なぜか児童ポルノの提供罪で罰せられるかも知れません。
実際に国会答弁では、自画撮り画像でも、要件にあうものをネットにアップしたら提供罪が成立しえるとなっています。
このように、その対象物をどう思うかで児童ポルノになったり、ならなかったり、本当におかしな法律なのです。

問題点3 エンターテイメントの表現者が萎縮してしまう可能性がある
この法律が過去の改正タイミングで大きな反対運動が話題となったのは表現の自由との兼ね合いからです。最初の改正案ではエロチックなマンガやアニメなどの追加規制の検討項目が入っていたことでも大きな話題となりました。
マンガなどのエロチックな表現が気に入らないということは、十分理解できます。しかし、全ての自分の嫌いなものを法律でしばるという考え方は間違っていると思っています。法律はあくまでも最終手段です。出来るのであれば、多様な価値観・文化として許容できる社会が望ましいと思っています。嫌いだからと法規制するということは、たとえ少数派でもそれを好きだと思う人の権利を侵害するからです。
※今回の法規制ではマンガやアニメ・ゲーム・フィギアなどが児童ポルノとなることは原則ありません。
また、同時に表現者の萎縮の問題もあります。問題点1・2にもあったように定義が曖昧であることもあります。また、18才以上の人が18才未満の演技を行うことも萎縮してしまうのではないでしょうか。17才であっても自らの希望で(必ずしもエロティックでない)演技をしたいといっても、法律を考えると萎縮してしまうこともあるかもしれません。
自分の意思で各種イベントに参加している18才未満のコスプレイヤーたちが児童ポルノに該当する自撮りの画像をネット上にあげれば、法律的には被害者(児童)であり加害者(提供者)となってしまう可能性などもあります。もちろん、仮に過激なものであれば、刑法の174条(公然わいせつ罪)で取り締まれば良いだけです。

問題点4 知りたい情報が得られなくなってしまう可能性がある
私は、インターネットは基本的人権だと思っています。インターネットという大発明は知りたい情報をだれでも発信でき、手に入れることが出来るようになった革命です。これは基本的人権として、誰でも自由に使うことが出来るべきものだと思っています。
今回の児童ポルノ禁止法改正案ではプロバイダーに対し、児童ポルノのブロッキングに対する努力義務が課せられています。また、3年後の検討事項として、インターネットの閲覧制限が課せられています。現在でも児童ポルノのインターネット等を使った提供罪については、単純所持より重い罰則がついています。こちらを活用すべきであり、ブロッキングやフィルタリングなどは極力避けるべきです。
インターネットは基本的人権だということは、国民の表現の自由、そして、知る権利を最大限保障することだと思っています。この基本的人権は極めて限定的に制限されるべきであると思っています。

最後に
以上、大きく4つの点に渡って、この児童ポルノ禁止法の概要と問題点をまとめてきました。実は、これ以外にも大きな問題が潜んでいますが、それは下のメルマガや過去記事、毎週水曜日の動画番組「さんちゃんねる」などからご覧下さい。
私は憲法21条(表現の自由と通信の秘密)を守る議員として、これからもがんばって行きたいと思っています。
参議院議員 山田太郎