<養子縁組>記録永年保存の児相7割 出自知る権利に影響

毎日新聞 2015年7月22日

子どもの福祉や利益を目的にした養子縁組が成立したケースで、理由や実親に関する記録を永年保存している児童相談所(児相)が全体の7割弱にあたる135カ所にとどまることが厚生労働省研究班(代表研究者=林浩康・日本女子大教授)の調査で分かった。厚労省は子供が出自を知る権利を保障するため、養子縁組をする民間事業者には記録の永年保存を指導しているが、児相で徹底されていない実態が判明した。
児相の養子縁組あっせんを巡る全国調査は初めて。調査は昨年8~9月、全児相207カ所に質問を郵送し、197カ所から回答を得た(回収率95.2%)。養子縁組後の記録保存については、子供の年齢や縁組成立後の年数によって有期保存しているところが53カ所(26.9%)、無回答が9カ所だった。
厚労省は児相に対し記録の「長期保存」を通知しているが、民間事業者のように「永年」は求めていない。厚労省雇用均等・児童家庭局総務課は「民間と児相で記録保存に差をつけている認識はない」と説明し、児相の記録保存について「今後見直すかどうか検討する」としている。
一方、2013年度に、家裁の許可を得て法律上の親になる特別養子縁組を前提に里親委託をした児相は約6割の114カ所で件数は276件。うち267件は特別養子縁組が成立した。最高裁の司法統計によると、13年度の特別養子縁組成立件数は474件で、56%を児相があっせんしたことになる。
里親委託や養子縁組を担当する専任の常勤職員がいる児相は56カ所で、148カ所が他の業務と兼任する常勤職員、99カ所が専任の非常勤職員を配置していた(複数回答)。縁組成立後も養親支援を継続しているのは128カ所(65.0%)で、66カ所(33.5%)は行っていなかった。
公益財団法人全国里親会の池上和子主任研究員は「里親委託や養子縁組あっせんに専念する職員体制を充実させ、子の知る権利や養親の心理的ケアなど総合的な支援を整えるべきだ」と話している。【金秀蓮、古関俊樹】

特別養子縁組
実親による養育が困難か適当でない原則6歳未満の子どもと、25歳以上の夫婦の間で、実親の同意、家庭裁判所の許可を得て成立する。普通養子縁組と違い縁組後は子と実親の関係は消滅し養親の実子となる。実親と養親の間をつなぐ「あっせん事業」は児童相談所と民間事業者が担う。

難聴、生後すぐ検査を 早期療育で言葉の発達に効果

朝日新聞デジタル 2015年7月22日

生まれてすぐの赤ちゃんに対して難聴の疑いがないかを調べる「新生児聴覚スクリーニング検査」。難聴に早めに気付いて療育を受ければコミュニケーション能力が高まるとの報告がある。ただ、実施率には地域差があり、学会などは全ての赤ちゃんが検査を受けられるよう国に働きかける。
絵が描かれた紙を手に言語聴覚士が女児(3)と男児(4)に「これは何?」と問いかける。2人は「スイカ」と元気よく答える。富山県高志通園センター(富山市)で実施されている難聴の子どもたちの療育だ。
2人は誕生直後の聴覚検査(新生児聴覚スクリーニング)で精密検査が必要と判定された。耳鼻咽喉(いんこう)科での詳しい検査で難聴と判明。男児の30代の母親は「生後3日で告知を受け、泣き崩れた」と振り返る。
難聴の場合、まず補聴器をつけて様子を見る。補聴器で十分に聞き取れないと判断されると音を電気信号に変換して聴神経に伝える装置「人工内耳」を検討する。2人は1~3歳のときに両耳に人工内耳を取り付ける手術を受けた。
同センターには0歳から通う。聞こえるのはもともと機械的に合成された音なので言葉として認識するには訓練が必要だ。療育では、遊びながら言葉を聴いて話すことを繰り返し、人との会話を実践していく。
2人の母親は「ここまでコミュニケーションをとれるようになった。不安もあるが、さらに伸ばしてあげられるようにサポートしたい」と口をそろえた。
生まれつき難聴の赤ちゃんは2千人に3人ほどの割合でいると言われる。ただ、4、5歳になって気付くこともある。難聴の原因は約半数が遺伝性。妊娠中に母親が風疹になった場合や原因がわからないこともある。
検査は生後2~4日に行い、専用の機器で耳に音を流し、脳波や返ってくる音を調べる。痛みはなく、数分~10分ほどで終わる。
2007~11年度に319人の難聴児を対象にした厚生労働省の戦略研究では、生後半年以内に療育を始めると、言葉を使うコミュニケーション能力の指標が高くなる確率が3倍以上になるという結果が出た。

知ってた? 心の不調は精神科、体調不良があれば「●●●科」!

Mocosuku Woman 2015年7月22日

訳もなく憂うつな気持ちが続く、不安な気持ちが晴れない…。もしかして心の病気かも? と思ったとき、精神科と心療内科のどちらを受診したらよいのか迷ったことはないだろうか。書籍『精神科・心療内科の上手なかかり方がわかる本』(講談社)の監修者である、赤坂診療所(東京都港区)の渡辺登所長に話を聞いた。

心の不調は精神科、体調不良があれば心療内科へ
「大きく分けると、精神科ではうつ病、統合失調症などの心の病を専門的に治療します。それに対して心療内科は、胃潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)、気管支喘息(ぜんそく)などといった、体の不調に心理的な要因が関わっている場合(心身症)が対象となります」と渡辺所長。自分では単なる体の不調だと思って内科を受診しても、症状の出るきっかけや治りにくさに心理的な原因がある場合は、内科から心療内科の受診を勧められることもあるという。
本来は、精神科と心療内科は専門分野が異なり、それぞれ精神科医、心療内科医が診察しているが、実際にはどちらを受診しても、心身症やうつ病などの治療はしてもらえるのが現状だ。
「患者さんの中には、精神科を受診することに心理的ハードルを感じる人が多いため、ほとんどの精神科医は診療科名に『心療内科』を併記しています。精神科医は心身症の診察もできるので、どちらにかかっても大丈夫です」と渡辺所長は話す。

クリニックや総合病院なども使い分けを
診療科名以外にも、総合病院や大学病院、クリニックなど、医療機関の形態・体制の違いに戸惑う人も多いかもしれない。
「精神科に限りませんが、医療機関によって規模、機能、体制に違いがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。継続して通うことを考えて、通いやすさやほかの病気の有無、入院の可能性などをよく考えて、自分に合った医療施設を選ぶことが大切です」(渡辺所長)

精神科医を選ぶ目安「精神保健指定医」
最後に、精神科医選びの目安についても聞いた。「精神科医を選ぶときの目安となる資格に『精神保健指定医』があります。これは、診療の経験と、精神障害の診断・治療に一定以上の経験を持つ医師のうち、厚生労働省から指定された医師のみが得られる資格です。国が、ある一定のレベルをクリアしていることを認めているという点で、医師選びの際の参考になると思います。この資格を持っている医師は、看板などに診療科名とともに明示しているので、その辺りもチェックしてみてください」と渡辺所長は助言している。

暴力団、新たな“貧困ビジネス”…ホームレス標的に臓器売買

産経新聞 2015年7月22日

臓器売買に絡み、またも暴力団幹部が逮捕された。今回、暴力団幹部が臓器を買い取るために臓器提供者(ドナー)の標的としたのは、ホームレスの男。警察当局は、生活保護費の詐取など“貧困ビジネス”にたけた暴力団が臓器売買にも触手を伸ばしたとみて警戒を強めている。
臓器移植法違反などの疑いで逮捕された為貝雄一容疑者は平成18年ごろから、ホームレスとして東京・JR池袋駅西口にある公園に寝泊まりしていた。
その近所にいた組幹部の吉田昭容疑者が現れたのは24年ごろ。ドナー候補として目を付けられているともしらず、為貝容疑者は食事をおごってもらうなど吉田容疑者にかわいがられた。
捜査関係者によると、吉田容疑者は知人の男が腎臓を患っているのを知り、ドナーとして為貝容疑者を男に紹介して養子縁組させた。
臓器売買が摘発されたのは今回で3例目だ。23年には臓器売買を仲介したとして、警視庁が暴力団幹部や医師を摘発。いずれの事件でもドナーと患者の関係を親族と装っていた。
日本移植学会の倫理指針で生体間臓器移植は原則、倫理委員会の審査が必要とされているが、親族間の場合は不要だ。厚生労働省の担当者は「親族間の生体間臓器移植は一般医療に当たり、住民票などの書類さえ整えば、医師には確認のしようはない」と説明する。
患者に残された選択肢は、海外移植か、ドナーを自ら確保しての生体間移植だ。臓器をカネで確保する事件は、こうしたドナー不足から生まれている。
捜査関係者は「ドナーを見つけるのはハードルが高く、臓器売買は“組織的なビジネス”としてはまだ成立していない」としながらも、「既存の制度の隙をつくのが暴力団。警戒が必要だ」と指摘している。