第三者卵子で受精卵 NPO法人が国内初 年内にも不妊女性へ移植

産経新聞 2015年7月28日

早期閉経などで卵子がない女性に第三者の卵子を提供する「卵子バンク」を立ち上げたNPO法人「卵子提供登録支援団体(OD-NET)」が27日、2人のドナーから卵子提供を受け、受精させることに成功したと発表した。匿名の第三者からの提供は国内で初めて。早ければ年内にも出産を望む女性に移植する。岸本佐智子代表は「提供者には感謝してもしきれない。これからは自分たちががんばる番だと思っている」と移植を受ける予定の女性の手紙を読み上げた。
OD-NETによると、ドナーはともに子供がいる30代女性で、移植を受けるのはともに出産を望む早期閉経の30代女性。すでにドナーから複数の卵子を採卵し、移植を受ける女性の夫の精子と受精させ、受精卵が分割してできる胚を凍結。ウイルス感染がないかなどを確認した上で、早ければ年内に胚を移植する。
OD-NETは平成25年1月に登録をスタート。子供のいる35歳未満の女性を条件にドナーを募り、移植を希望する女性とマッチング。10組について、治療に向けたカウンセリングなどが行われている。このうち医学的に条件が合った2組について、不妊治療クリニックでつくる「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」の倫理委員会が治療実施を承認したと今年4月に明らかにしていた。
第三者の卵子提供による出産はこれまでも行われているが、親族や友人からの提供が中心で、見ず知らずの他人からの提供例はないという。日本の民法は精子や卵子提供について想定しておらず、出産した女性を母親とみなす判例があるが、親子関係を明確には規定していない。

「出自を知る権利」など課題
OD-NETが卵子を無償で提供するドナーの募集を始めると発表してから2年半。見ず知らずの他人へ無償で卵子を提供するドナーの獲得は難しいと見込んでいたが、OD-NETにはこれまでに、ドナーを希望する250人近くから問い合わせがあったという。提供する相手との組み合わせが決まりカウンセリングに進んだのは10組にとどまるが、そのうち2組で治療が始まり、第三者の卵子提供による出産が一気に現実味を帯びてきた。
一方、“産みの母”と“遺伝上の母”をどう扱うかなどの法整備は緒に就いたばかりだ。第三者の卵子提供をめぐっては、厚生労働省の審議会が平成15年4月、法に基づく指針を国が示すことを求める報告書を出した。その後、10年以上手つかずだったが、自民党のプロジェクトチームは今年6月、卵子提供や代理出産で出産した場合、産んだ女性を母親とする民法特例法案の骨子を了承した。
しかし、卵子提供や代理出産などに関する規制やルールづくり、遺伝上の親を知る「出自を知る権利」についての法整備は今後の検討課題となっている。OD-NETの岸本佐智子代表は「国がしっかり法を整備し、その決まりの中でやっていくことが卵子を提供する人、される人を守ることになる」と話す。法的裏付けがないと、ドナーに健康被害が出た際の民間保険による補償が難しいという。何より、生まれてくる子供を守るため、環境整備は待ったなしだ。(道丸摩耶)

命に関わるアレルギー症状「アナフィラキシーショック」と、生死を分けるかもしれない「エピペン」

Mocosuku Woman 2015年7月28日

実は、スズメバチの毒は人を死に至らしめるほど強くはありません。「ハチに刺されて死亡した」という場合の多くは、毒そのものの作用ではなく、ハチ毒に対するアレルギー症状が原因なのです。このように、生死に関わるような急激かつ重度な反応のことを「アナフィラキシーショック」と言います。ここでは、アナフィラキシーショックとその対処法について説明しましょう。

アナフィラキシーはアレルギー反応の一種
「アナフィラキシー」とはアレルギーの原因となるもの(アレルゲン)が体内に入ることで、極めて短時間のうちに全身にアレルギー症状が出る反応のことを指します。
アナフィラキシーの症状にはかゆみ、くしゃみ、喘息と言ったさまざまなものがあり、重症の場合には呼吸困難や意識障害を引き起こすことさえあります。命に危険が及ぶ状態です。
アナフィラキシーによって生命が危険な状態に陥ることを、特に「アナフィラキシーショック」と呼びます。これは、ハチに刺された時のほか、重度の食物アレルギーや薬物アレルギーによっても引き起こされることがあります。
アナフィラキシーショックに陥った時は、速やかに対処しなければ死亡してしまう可能性があります。正しい知識を持って、日頃から備えておきたいところです。

アナフィラキシーの3大原因
厚生労働省が2011年に発表した人口動態統計によると、アナフィラキシーの原因は食物が最も多く、続いてハチ毒、薬物となっています。
また、100人に1人は何らかの食物アレルギーを持っていると言われており、3大アレルゲンと呼ばれる牛乳・鶏卵・小麦のほか、そばやピーナッツ、甲殻類など、さまざまなものが原因となり得ます。
また、虫刺されや薬物以外にも、ゴム製品に含まれるラテックス、運動、日光といった刺激がアナフィラキシーを引き起こすこともあり得ます。

5分で心停止も! 命に関わるアナフィラキシーショック
アナフィラキシーの特徴のひとつは、短時間で症状が現れることです。アナフィラキシーが原因で心停止に至った例では、心停止までの平均時間が薬物で5分、ハチ毒では15分、食物では30分と言われています。
もちろん、アナフィラキシーがすべて心停止に至るわけではありませんが、万が一アナフィラキシーショックとなった場合は、迅速な対応が求められるのです。なお、厚生労働省によれば、2011年に日本でアナフィラキシーで死亡した人の数は71名だそうです。

緊急手段としての「エピペン」
アナフィラキシーが疑われる場合は、すぐに医療機関を受診しなければなりません。しかし、強い症状が現れてからでは間に合わない可能性もあります。個人でできる対策のひとつとして「エピペン」があります。
エピペンは、あらかじめ注射器に針がセットされているかたちで、中にアドレナリンという物質が充填されている緊急用の自己注射薬キットです。これまで食物や薬物、ハチ毒でアナフィラキシーを起こしたことがある人や、アナフィラキシーを発現する危険性の高い人は、希望すれば病院で処方してもらえる場合があります。

アドレナリンがアナフィラキシーを緩和
アドレナリンには心臓の働きを強め、血圧を上昇させたり、気管支を拡張させたりする作用があります。エピペンはこの働きにより、アナフィラキシーが起こった際に症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療薬として有効とされているのです。
エピペンはあくまで初期対応として使うものであり、医療機関の治療の代用となるものではありません。しかし、アナフィラキシーショックを起こす危険の高い人にとっては、常備しておいて損のない薬剤と言えるでしょう。

エピペンはどうやって手に入れる?
エピペンはアレルギー症状に対し効果を発揮する一方、他の病気を患っていたり使用を誤ったりすると、逆に危険にもなり得る薬剤です。そのため、エピペンは必ず医師の診察に基づいて処方されます。
また、医師側もエピペン処方医師として登録する必要があり、どこの医療機関でも処方してもらえるわけではありません。さらに、処方された人は自分で注射を打てるよう、病院での指導を受ける必要があります。
具体的には、ペン形になっているキットを太ももに押しつけて薬剤を注射する方式になっており、練習用のエピペントレーナーを使って、安全に注射する方法を教わります。

正しい使い方を覚えておく
夏休み、子供が屋外に出ることが増える時期です。夏から秋にかけては、スズメバチが活発化する時期でもあります。エピペンについて詳しく知りたい場合は、まずは、かかりつけの医療機関で取り扱いを確認してください。
決して過信していいものではありませんが、非常時にこれがあれば最悪の事態を免れる可能性はあります。そのためにも、エピペンを入手するだけでなく、正しい使い方を学んでおきましょう。

手足口病、2011年に迫る大きな流行

TBS系(JNN) 2015年7月28日

「手足口病」の感染がさらに広がっていて、過去最多だった2011年に迫る大きな流行となっています。
「手足口病」は、手や足、口の中に水疱状の発疹ができるウイルス性の感染症で、主に夏場に幼い子どもを中心に感染が広がります。
国立感染症研究所によりますと、今月19日までの1週間に全国の医療機関から報告された患者の数は、1医療機関あたり10.16人で、前の週のおよそ1.4倍に増加しました。これは過去11年で最も多かった2011年に迫る患者の数です。
都道府県別で多いのは、福井県が23.32人、埼玉県が20.53人などとなっています。
手足口病は、治った後でも便などからウイルスが排泄されることがあり、厚生労働省は、手洗いの徹底などを呼びかけています。

がん治療の特効薬となるか?話題の「免疫チェックポイント阻害剤」とは

@DIME 2015年7月28日

免疫チェックポイント阻害剤とはズバリ、がんに対して自分の免疫力を発揮させて治療する薬のこと。理論的には、どんながんにも治療効果が期待できるという。その画期的な治療法とは、いったいどんなものなのだろうか。

不治の病と怖れられるがん。患者は全国で85万人にも上る
人々が怖れる病気のトップクラス、がん。国立がん研究センターによると、2015年3月に発表した全国のがん罹患数は、男性が約50万人、女性が約35万5000人の計85万5000人にのぼるという(2011年集計)。多くの患者が外科治療や放射線治療、抗がん剤投薬などの治療を行っており、かつてのような“不治の病”という意識は低くなってきているが、厚生労働省による死因の順位で、心疾患、肺炎などを抑えて死因のトップ(死亡総数に対して約3割)である危険な病気だ。

自分の免疫で治せる画期的な薬が誕生
がん治療の代表格が化学療法だ。しかし、副作用が強く、また薬効が続きにくいことが課題であった。その化学療法にがん治療の主役とになれるかもしれない最先端の薬が登場した。それが免疫チェックポイント阻害剤だ。
従来の化学療法はがん細胞を攻撃するとき、間違って健康な細胞も攻撃してしまい、副作用を引き起こす原因になることが多かった。また、がんそのものが変質して、抗がん剤の効果が続かなくなるという欠点もあった。それに対して、免疫療法はリンパ球の一種のT細胞でがん細胞を殺すもの。理論的には副作用も少なく、効果も長続きするはずだが、残念ながら免疫療法は今まで、がんには効かないと思われていた。
それは、がん細胞がT細胞の働きを停止させていたからだ。T細胞には自分自身を攻撃しないため、必要以上の攻撃を止めるブレーキ、PD-1というタンパク質がついている。それをがん細胞がPD-L1というものを使い、勝手にブレーキをかけてしまうのだ。免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞が持つPD-1を始めとするタンパク質のブレーキをがん細胞に押させないようにする薬なのだ。
発想のターニングポイントはT細胞の攻撃を強めるのではなく、ブレーキをかけさせないこと。免疫でがんを治せないのではなかったのだ。免疫の力をがんにより止められていたのだった。

3週間に一度の点滴で治療する「オプジーボ」
免疫チェックポイント阻害剤は2014年7月にメラノーマという悪性の皮膚がんへの薬事承認が行われ、「オプジーボ(一般名はニボルマブ)」という名前で世界初の製造販売が認証された。黒色腫は皮膚の色素を作る細胞やほくろの細胞(母班細胞)が悪性化した腫瘍で、皮膚がんの中でも悪性度の高いがんのひとつとされている。治療は3週間に一度、成人には1回2mg/kgを点滴する。体重60kgの人ならオプジーボ120mgを処方するわけだ。

治療できるがんの種類が今後は増える
オプジーボの治療は現在、根治切除不能なメラノーマに限られている。しかし、4月22日に小野薬品工業は切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(非扁平上皮がんを除く)に対して、効能追加承認申請を行った。また、同社がライセンス契約を行っているブリストル・マイヤーズ スクイブと共に、腎細胞がん、非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)、食道がん、胃がん、頭頸部がんなどの臨床試験をおこなっており、今後はオプジーボで治療できるがんの種類が増えることを期待されている。

免疫チェックポイント阻害剤の課題と可能性
副作用が弱くて長い間治療の効果が持続するという、免疫チェックポイント阻害剤。しかし、弱点はないのだろうか?まず、副作用は残念ながら存在する。間質性肺疾患、肝機能障害、甲状腺機能障害などが、患者さんによっては起こりうる。
それから自己免疫機能のT細胞が弱ってしまっている患者も多く、その場合は免疫効果が出にくい。また、PD-1以外にもブレーキとなるたんぱく質もあり、オプジーボだけで全てをカバーするのは難しいといわれている。そこで現在、効果を上げるために新たな治療法が試されている。それは他の治療と組み合わせるもので、T細胞の力を増す薬などと組み合わせる臨床試験が、すでに始まっているという。
気になる治療費はどうだろうか。小野薬品工業は20年にわたり地道な研究開発を行ってきた。1992年に現 京都大学 医学部の本庶佑客員教授の研究チームがPD-1を発見し、以来同社は共同研究を進めてきた。長い時間と人々の努力と手間がかかる新薬は、どうしても高価になってしまうのだ。
厚生労働省が算定したオプジーボの薬価は20mg入りで15万200円、100mg入りで72万9849円である。体重60kgの成人であれば1回の投薬量は120mgとなり、88万49円かかる。先進医療はやはり、費用がかかるものである。それに対応する医療保険への加入は、将来のために今から考えておくべきことだろう。
しかし、化学療法のひとつの柱になりうる、免疫チェックポイント阻害剤によるがん治療には大きな期待がかけられており、その高い実力が次々と証明されている。今後、適用されるがんの種類が増えたり、市場拡大することで、薬価再算定を受けた場合に価格が下がる可能性があるだろう。そして科学的に有効性が確認された治療法として、患者のがん克服への大切な道になるのだ。がんが“不治の病”と呼ばれなくなる日は、そう遠くないのかもしれない。