「少子化」進む“根深い”理由-子ども忌避する社会構造

Yahoo!ニュース 2015年7月29日

本格的な人口減少時代を迎えた今日、国をはじめとして多くの地方自治体が人口減少への危機感を露わにしている。しかし、少子化を食い止めるために、社会全体で出産や子育てを応援しようという雰囲気が余り感じられないのは、なぜだろう。
私の家の前の小学校では、今年も恒例の夏休みラジオ体操が始まった。早朝から大勢の子どもたちの歓声が響き渡るが、近年では子どもの声も騒音とみなされることがあり、ラジオ体操の存続が危ぶまれる地域もあるそうだ。
また、通勤電車などに小さな子ども連れの人が乗車してくると、車内には迷惑そうな気配が広がることもよく経験する。確かに街や建物のバリアフリー化が進み、小さな子ども連れにとっても外出しやすい物理的環境は整いつつある。
しかし、駅のエレベーターを必要とするベビーカー利用者などの移動制約者がいても、必ずしも優先的に使えるわけではない。
厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」(平成27年7月)では、独身者が子どもを希望しない割合は、過去10年間に男性は8.6%から15.8%へ、女性は7.2%から11.6%へ上昇している。
意識のバリアフリー化が余り進んでいない状況下では、若者たちが子どもを産み育てようと思わないのも当然かもしれない。
先日の本欄に、現代社会の少子化の主な要因は、婚姻件数と夫婦の完結出生児数の低下だと書いた。その背景としては、非正規雇用の増加や仕事と子育ての両立の難しさなどの社会経済要因が大きいが、少子化が進むさらに“根深い”理由は、現代の子どもを忌避する社会構造にあるのではないだろうか。
本田和子著『子どもが忌避される時代~なぜ子どもは生まれにくくなったのか』(新曜社、2007年)には、日本では「子どもを産み育てる」営みが、「家制度」の崩壊と共に成人になるための基礎条件から計画と選択の可能な私的行為になり、子どもを持つことが費用対効果で評価され、非効率な子育てを忌避することも当然になった、とある。
少子化を止めるためには、従来の「家のため」や「国家のため」ではなく、新たな子どもの「公共的な位置づけ」を取り戻すことが肝要だと記述されている。
新たな子どもの「公共的な位置づけ」とは何だろう。将来の社会保障制度の維持や経済成長を支える労働力の確保だろうか。
「子どもを産み育てる」営みが大きなリスクを孕む今日、子どもの存在意義は曖昧になり、時に子どもは忌避される存在になった。しかし、学校の校庭に響く子どもの歓声を聞くと、私は大人として明るい未来と希望と大きな責任を感じる。
対症療法的な少子化対策にとどまらず、子どもが社会の大切な構成員として包摂される社会が根源的に求められているのではないだろうか。

社説[3歳女児虐待死]一時保護が必要だった

沖縄タイムス 2015年7月30日

児童相談所が、非常に強力な行政権限である「職権による一時保護」を決定するほど切羽詰まった事案にもかかわらず、幼子の命を救うことができなかった。自治体や警察も虐待を把握していたのに悲劇は繰り返された。痛ましく悔しい事件だ。
3歳の長女に暴行を加えて死亡させたとして、宮古島市に住む建設作業員の父親(21)が傷害致死の疑いで逮捕された。
一家は夫婦と子ども4人の6人家族。亡くなった女児を含む上の3人は妻と前夫の子である。2月に神奈川県から沖縄市へ転居し、1カ月半ほど前に宮古島市へ引っ越したばかりだった。子連れの再婚家庭で両親は若く、養育能力や生活環境に問題があったのではないかと推測される。転居を繰り返す中、地域社会からも孤立していたのだろう。
父親は、妻(23)へのDV(ドメスティックバイオレンス)を繰り返し、ほかのきょうだいも虐待していたことが分かっている。虐待の背景にはさまざまな要因があるが、DVと児童虐待が同時に進み、深刻な事態に発展するケースが少なくない。
コザ児童相談所が虐待事案として対応したのは4月下旬で、5月初めには父親と子どもを分離する一時保護を、6月半ばには同意を必要としない職権による一時保護を決定している。虐待リスクが高い家庭と判断したからだ。
にもかかわらず女児が亡くなる今月27日まで一時保護は実施されていない。児童相談所の対応はちぐはぐで疑問が残る。

速やかに一時保護に踏み切らなかった理由を、県は「宮古島の祖母宅にいるということでリスクが軽減されると考えた」と釈明する。結果的に危険性を過小評価し、子どもを救う機会を逃してしまった。
安全確認をしたという宮古島市や宮古島署の対応はどうだったか。児童虐待に対する正しい知識がなければ、本当の意味での安否確認はできない。関係機関で情報が共有されず、危機意識が薄く、支援が不十分だったことが課題として挙げられる。
2005年、那覇市内で起きた父親による1歳女児虐待死事件を受けて、県は「児童虐待防止に向けての緊急提言」を発表した。今回同様、児童相談所が関与しながら命が奪われたことを猛省してのことだ。
提言には、子どもの安全確保を最優先し、関係機関の連携強化を図ることなどが盛り込まれた。なぜこの教訓が生かされなかったのか、徹底的に検証してもらいたい。

3歳というと、おしゃべりも上手になる、かわいい盛りである。その小さな女の子が、父親の理不尽な暴力にさらされた恐怖を思うといたたまれない。
沖縄社会は経済的に苦しい家庭が多く、若年出産や離婚率も高く、DV被害が深刻である。児童虐待と無縁ではない問題だ。
児童虐待は幼い子ほど生命に関わる危険性が高いが、SOSを発することができない。子どもの命を守る一時保護を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。

課題山積み、「朝型勤務」は成功するのか?

ZUU online 2015年7月28日

政府は、7月と8月の2か月間、出先機関を含めた国家公務員の始業時間を通常より1~2時間早める「朝型勤務」を導入した。退庁時間を早めることにより、慢性化する長時間労働の是正と民間への波及を期待するのが狙いというが、果たして思惑通りの効果が得られるのか。

首相肝いりの「日本版サマータイム」
「生活スタイルを変革する新たな国民運動を、政府を挙げて展開する」。安倍首相は3月下旬の閣僚懇談会でそう述べ、夏季期間中の国家公務員の朝方勤務を指示した。通常は午前8時半~9時半の勤務開始時間を7時半~8時半に早め、夕方以降の会議は設定しない。早朝出勤した職員の終業時間は、午後4時15分~5時15分にするという。
朝方勤務の狙いは、明るい時間が長い夏に朝早くから働き始めることで、夕方を家族などと過ごす「オフ時間」に充ててもらうことだ。働き方の見直しから、ワークライフバランスの実現を目指している。

「女性活用」に思わぬ矛盾も
朝方勤務については、塩崎恭久厚労相も経団連に対し、各企業でも取り組むように要請。経団連の担当者は「労働力不足が現実となる今、優秀な人材にとどまってもらうには長時間労働など会社風土の改革が急務。各社の経営陣は相当の危機感を持っている。朝型勤務は働き方を変えるきっかけになるかもしれない」と要請を前向きに受け止めている。
けれども、通勤時間が早まれば、子育て世帯には早朝保育の活用を迫られる可能性が大きくなる。また、定時に帰れないなどこれまで以上の残業を招く恐れもあり、安倍首相の掲げる「女性活用」とは裏腹に、母親たちからは「子育て疲労に陥りそう……」といった困惑の声も聞こえてくる。

時間外勤務が減少したケースも
無論、こうした朝型勤務の導入が成果を挙げているケースもある。大手商社の伊藤忠商事 <8001> は、国内の本社、支社、支店勤務の正社員約2,600人を対象に、午前5時~9時までの間に働いた時間の賃金を高く設定。さらに、午後8時以降の残業を原則禁止にした。
同社の広報担当者によると、「朝型勤務は社長が発案し、経営陣から社員へとその本気度が伝わった。最初は経営面でマイナスとなることも覚悟していたが、残業が減るなど、働き方改革につながり、予想以上の効果が出た」のだという。

子育て世帯と、それを支える保育所への対応がキーに
始業時間が早まれば、必然的に対応を迫られるのが、子育て世帯とそれを支える保育所だ。入所児童の約3割の親が都心への通勤者だという千葉市の認定保育所は、「早朝預かりが増えれば、午前7時としている開所時間を6時からに変更しなければならないかもしれない」と気を揉む。
その場合には保育士をさらに増やす必要が出てくるが、「どこの保育所でも保育士不足は深刻。人が集まるかどうか……。集まらなければ、今いる人員で対応することになるが、通勤時間に1時間かかる先生もいる。家を出る時間が朝4、5時となる可能性もあり、保育士全体としても長時間労働につながりかねない」と、事態は深刻だ。

子どもたちの心の成長にも影が
影響は大人ばかりではない。当然ながら、子どもたちの生活リズムも早くなる。現状でさえ朝食を食べていない子どもが多くいる中で、さらに時間が早まれば、子どもたちの健康に影響を及ぼし、ひいては心の成長に影を落とす危険すらあるのだ。
いずれにせよ、朝型勤務には検討すべき課題と対策が山積している。単なる「思いつき」がヒットを呼ぶテーマとはかけ離れていることを踏まえた上で、その是非について、個別要素を今一度広範に分析する必要がありそうだ。(ZUU online 編集部)

ドライシロップのタミフル、小児用に備蓄を-厚労省作業班が提言まとめる

医療介護CBニュース 2015年7月29日

厚生労働省の新型インフルエンザ対策に関する小委員会「医療・医薬品作業班」は29日、抗インフルエンザウイルス薬として現在備蓄しているカプセルタイプのタミフルと吸入薬のリレンザに加え、ドライシロップのタミフルを速やかに備蓄するよう求める提言を取りまとめた。タミフルのカプセルを開けて粉末を小児に投与する場合、苦みが強いことが問題視されていた。【丸山紀一朗】
厚労省は同日、これまでの作業班の議論を基に、ドライシロップのタミフルを速やかに備蓄するよう提案。その理由について、カプセルタイプのタミフルの苦みに加え、新型インフルエンザ発生時は薬局が混乱していることが想定されるとし、カプセルを開けるといった対応ができない可能性を挙げた。作業班もこうした考えを了承した。
また、患者の年齢や投与経路によって適する薬が違うことを踏まえ、静注薬のラピアクタや吸入薬のイナビルについても一定量の備蓄を求めた。一方で、アビガンは有効性・安全性のデータが不足しているとして見送った。