児童虐待防止策 要員態勢の抜本見直しを【西日本新聞・社説】

西日本新聞 2015年8月5日

政府は児童虐待防止に向けた新たな政策を年末までに取りまとめる方針だ。児童相談所(児相)など現場の態勢や緊急時対応の強化を検討する。児童虐待防止法の施行から今年で15年。状況の変化を踏まえた政策作りを望みたい。
現状を象徴する事例がある。
児童虐待に関する通報、相談を24時間受け付ける児相の全国共通ダイヤル「189」の運用が7月から始まった。専門職員に「いちはやく」連絡を取ることで、虐待の未然防止や早期発見につなげる狙いだ。夜間休日の緊急相談にも対応するため、児相への情報提供は大きく増えると予想される。
評価できる取り組みだが、日本子ども虐待防止学会は懸念を示している。現状でも児相や市町村の要員態勢は不十分なのに、必ずしも緊急性の高くないケースを含む情報提供が増えると、結果的に深刻なケースへの対応がおろそかになりかねない-というのだ。
児童虐待に対する社会的認識の高まりに現場の力が追い付いていない。全国の児相が2013年度に対応した虐待件数は約7万3800件で10年前の3倍に近い。
児童虐待防止法は当初、虐待を受けている子どもの発見、保護に力点があった。今は保護した後のケアや支援まで自治体に求めるよう改正された。ところが、通報から48時間以内に子どもの安全を直接確認するルールができたため、こうした初期対応だけで手いっぱいの児相も少なくないという。
このままでは非行や障害児への対応といった児相が担当する他の業務にも支障が出る。そう心配する専門家もいる。要員態勢の抜本的な見直しが必要だろう。
虐待を受けて育った人が自分の子を虐待してしまう「世代間連鎖」を断つことも大きな課題だ。それには虐待で保護された子どもへの支援が重要な意味を持つ。
里親や養子縁組が主体の欧米に比べ、日本は児童養護施設などでの集団養育が大半だ。こうした施設で子どもたちに寄り添う職員の専門性の向上や待遇改善にも、政府は十分目配りしてほしい。

<不登校>震災後に深刻さ増す

河北新報 2015年8月7日

宮城県内では中学生の不登校割合が全国に比べ高く、東日本大震災後はさらに深刻さを増している。被災地で子どもが学校に行かなくなる要因や講じるべき対策について、県子ども総合センターの本間博彰所長に聞いた。(聞き手は報道部・相沢みづき)

震災は子どもたちにどう影響しているのか。
「復興の遅れから先を見通せない現状がある。大人の不安や喪失感は子どもに伝わるものだ。中学生になると将来について考える機会が増え、それだけ不安も強く表れるようになる」
「もう一つは心の傷。子どもたちの周囲は震災を思い出させ、心の傷を刺激する風景や人間関係であふれている。自分を守るために刺激を避けようとし、学校に行かなくなってしまう」

中1から不登校になる生徒が半数を占めるという県教委のデータがある。不登校の理由に「無気力」を挙げる生徒が多い。
「中1より中2、中3で学校に行かなくなる生徒が多い地域もある。環境の大きな変化による『中1ギャップ』は当たり前で、そればかりが不登校の要因とは言えない。思春期はエネルギーをたくさん使う。無気力はエネルギー不足ということ。周りの支えがあってエネルギーはたまる」

県内では震災前から不登校が多い。教育現場や行政に求められる対策は。
「宮城で不登校が多い理由ははっきりしないが、その割合は学校が役割を果たしているかどうかのバロメーターとも言える。被災が甚大で、一時的に教師が多く配置されたような学校では不登校の子どもはあまり見られない」

「教師は子どもたちの心の傷に寄り添い、一人一人が抱える問題に個々に向き合っていくしかない。行政は、教師や学校の取り組みを後押しすべきだ」

不登校2年連続増加 2014年度県内

佐賀新聞 2015年08月07日

小学生の割合、過去最高
佐賀県の小中学生の不登校者数は2014年度、858人で2年連続で増加した。小学生は前年度に比べて21人増の152人、中学生は37人増の706人に上った。全児童・生徒数に占める割合は小学生が0・32%、中学生が2・64%で、小学生の不登校率は年間30日以上の欠席者を集計するようになった1999年度以降で最も高くなった。
県統計分析課が6日、文部科学省の学校基本調査(5月1日現在)の速報値を発表した。病気などを含む長期欠席者は、小学生が前年度に比べて11人増えて370人、中学生は65人増えて1039人となっている。
不登校者数の増加について県学校教育課は「分析が必要だが、病気として数えていた事例を学校現場で『不登校』と捉え直すケースが増えたのでは」と推測する。「『不登校』と認識すれば、組織的な支援にもつなげることができる」と説明し、スクールカウンセラーや福祉的な支援をするスクールソーシャルワーカー、訪問型支援のNPOなどと引き続き連携する。
基本調査は、小中高校の在学者数の減少傾向が続いている現状も示した。小学生は前年度比0・8%減の4万7427人、中学生は2・0%減の2万6255人、高校生は0・9%減の2万5470人。
今回から幼保連携型の認定こども園の統計が加わり、県内の園児数は36園で5950人だった。これに伴い、幼稚園数が前年度から34園減少して70園になり、園児数も4003人減の5562人になった。
14年度の中学卒業者(8977人)の高校進学率は97・6%で、前年度を0・1ポイント上回った。高校卒業者(8239人)の大学進学率は前年度を1・5ポイント上回る43・5%、就職率は0・2ポイント下回る32・0%だった。

全国では12万人 フリースクール一因か
2014年度に病気や経済的理由以外で年間30日以上欠席した「不登校」の小中学生は、前年度より3285人増の12万2902人で、2年連続で増加したことが6日、文部科学省の学校基本調査(速報値)で分かった。小学生は1691人増の2万5866人で、全児童に占める割合は0・39%(255人に1人)と過去最高となった。
小中学生の不登校は08年度から5年連続で減っていたが、13年度から増加に転じた。全小中学生に対する割合は82人に1人に当たる1・21%だった。これまでで最も多かったのは01年度の13万8733人。
文科省は増加の原因を詳しく調べる方針だが、子どもを無理に登校させず、フリースクールに通学させるなど選択肢が広がる傾向にあることも一因としてありそうだ。5日公表の同省調査では、今年3月時点でフリースクールなどに通う義務教育段階の子どもは4196人いた。
中等教育学校を含めた中学生の不登校は1594人増の9万7036人で、全中学生に対する割合は2・76%(36人に1人)だった。
1年以上所在が分からない小中学生は今年5月1日時点で123人。文科省が調査の徹底を通知した11年には1191人だったが、各教育委員会が警察や福祉部局などと連携して把握を進めて減少を続けている。
また、今春の大学卒業生のうち、非正規を含めて就職した人の割合は、5年連続増の72・6%。70%を超えたのは、1994年以来となった。進学も就職もしていない人の割合は10・3%に下がり、景気回復で雇用環境の改善がうかがえる結果となった。

世界一寝ていない日本女性の体調管理術

オズモール 2015年8月6日

「世界一寝ていない」なんて言われることもあるほど、日本の女性は睡眠時間が短いとか。OECD(経済協力開発機構)の2014年の国際比較調査によると、日本の女性の睡眠時間は加盟している26カ国の男女別平均のなかで最も短いそう。厚生労働省は「健康づくりのための睡眠指針2014」で、企業に社員の昼寝や仮眠を推奨しているけれど、実際には、堂々と昼寝できる会社はまだ少ないのが現状だし…。
「色々なことに気を使い過ぎて、本人も気づかないうちに睡眠時間を削ってがんばってしまう女性も少なくないようです」と言う、スリープクリニック銀座院長の渋井佳代さんに、十分な睡眠時間が確保できない女性におすすめの体調管理術を聞いた。
「昼休みに15分程度の仮眠を取れれば理想的ですが、無理ならしばらく目を閉じるだけでも構いません。あまりにも寝不足のときは緊急措置として、通勤電車や移動時間などに10分程度の睡眠を繰り返しましょう」(同)
また、女性ホルモンの影響で体温が上がる月経前は、眠りが浅くなりやすいのだとか。
「そもそも睡眠の質は、体温のリズムと連動していて、本来は夜床に入ると深部体温が下がって深い眠りに入り、その後少しずつ体温が上がり始めて目覚めるようにできています。ところが月経1週間前くらいから夜間の体温が十分に下がらずに眠りが浅くなったり、日中の体温がふだんより上がって強い眠気を引き起こしたりします」(同)
月経前に限って、仕事中に眠かったり、注意力が散漫になったりする場合は、女性ホルモンの影響かも。そんなときはどうすればいいの?
「寝る前にぬるめのお風呂にゆっくり入って体を温めましょう。その後に体の熱が放出されるので、体温が下がって深い眠りを得やすくなります。意識して日中に光を浴びることでも、体温のリズムにメリハリがついて、夜ぐっすり眠れるように。寝付くまでに時間がかかったり、途中で目覚めたりする人は試してみてください」(同)
いい睡眠を得るには、時間だけでなく質も大切。できることから実践してみて。【オズモール】

いじめ防止対策推進法に基づく組織的な対応及び児童生徒の自殺予防について(通知)

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 平成27年8月4日

平素より,文部科学行政に対する御理解・御協力を賜り誠にありがとうございます。
標記については,これまでもいじめ防止対策推進法(以下「法」という。)等に基づき,学校において,いじめの問題への取組の徹底及び児童生徒の自殺予防の取組の充実に積極的に取り組んでいただいているところです。
しかしながら,最近においても,岩手県矢巾町において中学生がいじめの疑いにより自殺する事案が発生するなど,依然として児童生徒が命を絶つ痛ましい事案が生じているところです。
ついては,特に,長期休業日が終了した学期始め等の時期にあっては,児童生徒の心身の状況や行動に変化が現れやすいことから,貴管下の学校において教職員等が連携・協力し,法及び法に基づく国の基本方針に沿って対応していただくようお願いします。
貴職におかれては,下記の事項について御留意いただき,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対し,都道府県にあっては所轄の私立学校に対し,国立大学法人にあっては附属学校に対し,株式会社立学校を認定した市町村担当部課にあっては認可した学校に対し,周知を図るとともに,この夏季休業期間中にしっかりと対応いただきますよう御指導をお願いします。併せて,各設置者におかれては所管の学校より対応状況について報告を求め,その結果に基づき必要な措置を執っていただくなど,本通知に基づく適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。

1.法に基づく組織的な対応に係る点検について
学校におけるいじめの防止等の対策のための組織(以下「いじめ対策組織」という。)については,いじめの未然防止・早期発見・事案の対処を実効的に行うための組織であるという法及び国の基本方針の趣旨を適切に踏まえた体制や取組が措置されていること。  特に,ささいな兆候や懸念,児童生徒からの訴え等,いじめの疑いに係る情報があった際には,特定の教職員で抱え込まずに,いじめ対策組織を活用し速やかに組織的に対応すること。
各学校で定める学校いじめ防止基本方針(以下「学校基本方針」という。)  が法及び国の基本方針を適切に踏まえたものとなっているか検討を行うとともに,学校基本方針に沿った対応ができているか,  また,以下の事項については,たとえ学校基本方針に記載がなくても取り組む必要があると考えられるので,取組がなされているか点検するとともに,これらの点検の結果として,必要に応じ学校基本方針を見直す等の措置を講ずること。

・いじめに当たるか否かの判断に当たっては,当該行為を受けている児童生徒が現に心身の苦痛を感じているかという視点に立ち,いじめられた児童生徒本人や周辺の状況等を客観的に確認して総合的に判断すること。また,いじめが解消していたとしても,いじめに関する情報共有や報告を積極的に行うこと。いじめられた児童生徒が心身の苦痛を感じているかどうかが明確ではない場合であっても,「心身の苦痛を感じている」との要件が限定して解釈されることのないよう,いじめられた児童生徒に寄り添った視点に立つこと
・いじめ対策組織が,いじめが起きにくい・いじめを許さない環境づくりを実効的に行うために,その存在及び活動が児童生徒から認識され,学校が組織的にいじめの問題に取り組むに当たって中核的な組織として機能していること
・いじめ対策組織の年間を通した取組を通じ,全ての教職員がいじめを受けた児童生徒を徹底して守り通し事案を迅速かつ適切に解決する相談・通報の窓口と児童生徒から認識され,適切に対応していること。全ての教職員がささいな兆候や懸念,児童生徒からの訴えを抱え込まずに全ていじめ対策組織に報告・相談するとともに,いじめ対策組織において適切な情報の集約と複数の教職員による共有がなされていること
・いじめ対策組織が,学校の実情に応じ,管理職のみならず,主幹教諭,生徒指導担当教員,学年主任,養護教諭,学級担任や部活動指導に関わる教職員など複数の教職員や,必要に応じて,心理や福祉の専門家,弁護士,医師,教員・警察官経験者など外部専門家等が参画した実効性のある人選となっていること。また,いじめの未然防止,早期発見,教職員の資質や同僚性の向上に資するため,児童生徒に最も接する機会の多い学級担任や教科担任を始め全ての教職員がいじめ対策組織に一定期間参画するなど,適時適切に構成員の見直しが図られていること
・学校基本方針が,いじめ対策組織の取組による未然防止,早期発見及び事案対処の行動計画となるよう,年間を通した活動が記載されていること
・定期的なアンケート調査等の,いじめの早期発見・対処に関する取組や校内研修が,学校基本方針のとおりに計画的・組織的に実行されていること
・学校基本方針において,いじめに向かわない態度・能力の育成等いじめが起きにくい・いじめを許さない環境づくりのために,年間の学校教育活動全体を通じて,いじめの未然防止に資する多様な取組が体系的かつ計画的に措置されていること
・学校基本方針に従った組織的な対応ができるよう,全ての教職員がその内容を把握していること
・いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく,日頃からの児童生徒理解,未然防止や早期発見,いじめが発生した際の,問題を隠さず,迅速かつ適切な対応,組織的な取組等が評価されることが教職員に周知されていること

2.児童生徒の自殺予防について
平成21年3月に「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」を配布し,研修教材等として活用すべきことをこれまでも周知しているところであるが,改めて各学校で適切に活用し,研修等を行うよう周知徹底すること。
また,平成26年度の自殺対策白書でも指摘されているとおり,18歳以下の自殺は,8月下旬から9月上旬等の学校の長期休業明けにかけて急増する傾向があることに留意し,組織的に対応できる体制を整え,児童生徒への見守りを強化するなどして重点的に対応すること。

3.その他
各学校には,学校基本方針の策定やいじめ対策組織の設置が,法で義務付けられていることを踏まえ,現在も対応がなされていない場合は,この夏季休業期間中に措置すること。
また,国のいじめ防止基本方針に「策定した学校基本方針については,学校のホームページなどで公開する。」とあるように,ホームページへの掲載その他の方法により,保護者や地域住民が学校基本方針の内容を容易に確認できるような措置を講ずること。
各地方公共団体にあっては,各学校の取組に資するよう,地方いじめ防止基本方針が法及び国の基本方針に沿ったものとなっているかどうか検討し,必要に応じ適切な見直しを行うこと。

小中一貫教育制度の導入に係る学校教育法等の一部を改正する法律について(通知)

文部科学省初等中等教育局長 平成27年7月30日

このたび,「学校教育法等の一部を改正する法律(平成27年法律第46号)」(以下「改正法」という。)が,本年6月24日に公布され,平成28年4月1日から施行されることとなりました。
今回の改正は,学校教育制度の多様化及び弾力化を推進するため,小中一貫教育を実施することを目的とする義務教育学校の制度を創設するものです。
また,併せて義務教育学校の制度化に係る行財政措置として,公立の義務教育学校に関する教職員定数の算定並びに教職員給与費及び施設費等に係る国庫負担については,現行の小学校及び中学校と同様の措置を講ずることとするとともに,義務教育学校の教員については,原則として,小学校の教員の免許状及び中学校の教員の免許状を有する者でなければならないこととしております。
改正法の概要及び留意事項は下記のとおりですので,十分に御了知の上,事務処理上遺漏のないよう願います。
各都道府県知事及び都道府県教育委員会におかれては,域内の市区町村教育委員会,学校,学校法人に対して,国立大学法人学長におかれては附属学校に対して,構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては域内の株式会社立学校及びそれを設置する学校設置会社に対しても,本改正の周知を図るとともに,適切な事務処理が図られるよう配慮願います。
なお,改正法は,関係資料と併せて文部科学省のホームページに掲載しておりますので,御参照ください。また,関係する政令及び省令の改正については,追ってこれを行い,別途通知する予定ですので,あらかじめ御承知おき願います。

第一 学校教育法の一部改正(改正法第1条)
1 改正の概要
(1)義務教育学校の創設(第1条)
我が国における学校の種類として,新たに義務教育学校を設けることとしたこと。
なお,本条に規定されることにより,他の学校種と同様,設置者(第2条),設置基準(第3条),設置廃止等の認可(第4条),学校の管理及び経費の負担(第5条),授業料の徴収(第6条),校長及び教員の配置並びにその資格(第7条,第8条及び第9条),生徒等の懲戒(第11条),学校閉鎖命令(第13条),名称使用制限(第135条)等に係る規定の適用があることとなること。

(2)義務教育学校の設置等に係る認可等(第4条)
私立の義務教育学校の設置廃止等について,私立の小学校,中学校と同様に,都道府県知事の認可事項としたこと。

(3)義務教育学校における授業料の徴収(第6条)
国立又は公立の義務教育学校について,小学校,中学校等と同様に,授業料を徴収することができないものとしたこと。

(4)就学義務(第17条)
保護者がその子を就学させる義務を果たすための学校種として,義務教育学校を追加したこと。

(5)設置義務(第38条)
市区町村は,教育上有益かつ適切であると認めるときは,義務教育学校の設置をもって小学校及び中学校の設置に代えることができるものとしたこと。
なお,公立の義務教育学校は,地方自治法第244条の公の施設であり,その設置については条例で定めることを要すること。(同法第244条の2第1項)

(6)教育事務の委託(第40条)
市区町村は,従前の小学校・中学校と同様,義務教育学校についても,その設置に代えて,学齢児童の全部又は一部の教育事務を,他の市区町村又は市区町村の組合に委託することができることとしたこと。

(7)義務教育学校の目的(第49条の2)
義務教育学校は,心身の発達に応じて,義務教育として行われる普通教育を基礎的なものから一貫して施すことを目的とすること。

(8)義務教育学校の目標(第49条の3)
義務教育学校における教育の目標として,小学校教育及び中学校教育と同様に,法第21条に規定する義務教育の目標を達成するよう行われるものとすること。

(9)義務教育学校の修業年限並びに前期課程及び後期課程の区分(第49条の4及び第49条の5)
義務教育学校の修業年限は9年とし,小学校段階に相当する6年の前期課程及び中学校段階に相当する3年の後期課程に区分したこと。

(10)前期課程及び後期課程の目的及び目標(第49条の6)
義務教育学校の前期課程においては,義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを実現するため,小学校における教育と同一の目標を達成するよう行われるものとするとともに,後期課程においては,前期課程における教育の基礎の上に,義務教育として行われる普通教育を施すことを実現するため,中学校における教育と同一の目標を達成するよう行われるものとしたこと。

(11)義務教育学校の教育課程(第49条の7)
義務教育学校の前期課程及び後期課程の教育課程に関する事項は,義務教育学校の目的・目標並びに前期課程及び後期課程のそれぞれの目的・目標に従い,文部科学大臣が定めるものとしたこと。

(12)準用規定等(第49条の8)
生涯学習と学校教育との関係(第30条第2項),体験活動の充実(第31条),教科用図書の使用義務(第34条),出席停止(第35条),学齢未満の子の入学禁止(第36条),校長・教頭・教諭等の職務(第37条),学校評価(第42条),学校による積極的な情報提供(第43条),私立学校の所管(第44条)に関する現行の学校教育法上の諸規定を義務教育学校に準用することとしたこと。

(13)義務教育学校卒業者の高等学校入学資格(第57条)
義務教育学校の卒業者について,中学校の卒業者等と同様に,高等学校への入学資格を有するものとしたこと。

(14)その他の事項(第74条,第81条,第125条,附則第7条関係)
義務教育学校における特別支援学級の設置,専修学校高等課程における教育の対象者,特別の事情がある場合の養護教諭の必置義務の免除について所要の改正を行ったこと。

2 留意事項
平成18年の教育基本法改正,平成19年の学校教育法改正により義務教育の目的・目標が定められたこと等に鑑み,小学校・中学校の連携の強化,義務教育9年間を通じた系統性・連続性に配慮した取組が望まれる。
このたびの義務教育学校の創設については,これを踏まえつつ,地域の実情や児童生徒の実態など様々な要素を総合的に勘案して,設置者が主体的に判断できるよう,既存の小学校・中学校に加えて,義務教育を行う学校に係る制度上の選択肢を増やしたものである。また,今回の制度化は,小中一貫教育を通じた学校の努力による学力の向上や,生徒指導上の諸問題の解決に向けた取組,学校段階間の接続に関する優れた取組等の普及による公教育全体の水準向上に資するものと考えられる。
以上のことから,各設置者においては,今回の改正を契機として,義務教育学校の設置をはじめ,小学校段階と中学校段階を一貫させた教育活動の充実に積極的に取り組むことが期待される。

(1)義務教育学校の名称
「義務教育学校」という名称は,法律上の学校の種類を表す名称であり,個別の学校の具体的な名称に「義務教育学校」と付さなければならないものではないこと。
小学校・中学校と同様に,公立学校であれば,設置条例で法律上の正式な名称(義務教育学校)を明らかにした上で学校管理規則等の教育委員会規則により,私立学校であれば寄附行為により,義務教育学校以外の個別の名称を用いることは可能であること。

(2)義務教育学校の設置の在り方
1)地域とともにある学校づくりの観点から,小中一貫教育の導入に当たっては,学校関係者・保護者・地域住民との間において,新たな学校作りに関する方向性や方針を共有し,理解と協力を得ながら進めて行くことが重要であること。
2)市区町村における義務教育学校の設置は,小学校・中学校の設置に代えられること(第38条)を踏まえ,市区町村立の義務教育学校は就学指定の対象とする予定であること。(学校教育法施行令の改正)
3)就学指定は,市区町村の教育委員会が,あらかじめ各学校ごとに通学区域を設定し,これに基づいて就学すべき学校を指定する制度であること。したがって,その指定に当たって入学者選抜は行わないものであること。
4)いわゆる「学校選択制」は,あくまで就学指定の手続の一つとして行われるものであり,特定の学校に入学希望者が集中した場合の調整に当たっては,就学指定の基本的な仕組みを踏まえ,入学者選抜は行わないものであること。
5)「学校選択制」の導入に当たっては,通学する学校により格差が生じるとの懸念を払拭する観点から,小学校・中学校の場合と同様,市区町村が児童生徒の実態や保護者のニーズを踏まえ,対外的な説明責任にも留意しつつ対応する必要があること。
6)域内に義務教育学校と小学校・中学校が併存する場合は,小中一貫教育の実施を通じて蓄積される様々な知見を既存の小学校・中学校にも積極的に普及を図ること。

(3)義務教育学校の目的
1)義務教育学校は,小学校・中学校と同様の目的を実現するための教育活動を行うものであり,義務教育を施す点においては,小学校・中学校と義務教育学校は同等であること。
2)義務教育学校は,小学校・中学校の学習指導要領を準用することとしており,学習指導要領に示された内容項目を網羅して行われることになるため,小学校・中学校と異なる内容・水準の教育を施す学校ではないこと。

(4)義務教育学校の修業年限並びに前期課程及び後期課程の区分
1)小中一貫教育においても,子供の成長の節目に配慮するような教育課程の工夫が重要であること。
2)義務教育学校は,9年の課程を前期6年,後期3年に区分することとしているが,義務教育学校においては,1年生から9年生までの児童生徒が一つの学校に通うという特質を生かして,9年間の教育課程において「4-3-2」や「5-4」などの柔軟な学年段階の区切りを設定することも可能であること。
3)この場合の「学年段階の区切り」とは,前期課程,後期課程の目標を達成するための課程の変更を意味するものではなく,カリキュラム編成上の工夫や指導上の重点を設けるための便宜的な区切りを設定することを想定していること。
具体的には,例えば,
・教育課程の特例を活用して小学校高学年段階から独自の教科を設け,当該教科が導入される学年を区切りとすること
・従来であれば中学校段階の教育の特徴とされてきた教科担任制や定期考査,生徒会活動,校則に基づく生徒指導,制服・部活動等を小学校高学年段階から導入して,この学年を区切りとすること
などの工夫が考えられること。
4)義務教育学校の課程は,前期6年,後期3年に区分することとしているが,組織としては一体であり,義務教育学校の教職員は一体的に教育活動に取り組むこと。

(5)義務教育学校の教育課程
1)義務教育学校の教育課程については,前期課程及び後期課程に,それぞれ小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領を準用することを省令において定める予定であるとともに,教育課程の特例や配慮すべき事項については,省令等で定める予定としていること。
2)具体的には,学習指導要領に示された内容項目を網羅すること,各教科等の系統性・体系性に配慮すること,児童生徒の負担過重にならないようにすること等を前提とした上で,小中一貫教育の円滑な実施に必要となる9年間を見通した教育課程の実施に資する一定の範囲内で,設置者の判断で活用可能な教育課程の特例を創設することを予定としていること。
なお,創設される本特例の内容については,今後,教育課程特例校制度の対象としない予定であり,詳細については,別途御連絡する教育課程特例校の申請手続に係る事務連絡を参照すること。
3)「6-3」と異なる学年段階の区切りを設けている学校や,教育課程の特例を活用する学校においては,転出入する児童生徒に対して,学習内容の欠落が生じないようにするとともに,転校先の学校に円滑に適応できるようきめ細かに対応する必要があること。
具体的には,例えば,
・指導要録に,当該児童生徒が先取りして学習した事項や学習しなかった事項等を具体的に記載するとともに綿密な引継ぎを行うこと
・通常の教育課程との違いを分かりやすく示した資料をあらかじめ備えておくこと
・転出入に際して,必要に応じて個別ガイダンスや個別指導を行うこと
などが考えられること。

(6)義務教育学校の設置基準
1)義務教育学校の設置基準については,前期課程については小学校設置基準,後期課程については中学校設置基準を準用することをはじめ具体的な内容については,省令等において定めることを予定していること。
2)義務教育学校の施設については,同一敷地に一体的に設置する場合だけでなく,隣接する敷地に分割して設置する場合(施設隣接型)や隣接していない異なる敷地に分割して設置する場合(施設分離型)も認められること。ただし,施設分離型の義務教育学校を設置する場合,設置者において,教育上・安全上の観点や,保護者や地域住民のニーズを踏まえ適切に判断することが求められること。

(7)小中一貫型小学校・中学校(仮称)の扱い
平成26年12月の中央教育審議会答申で示された「小中一貫型小学校・中学校」(仮称)については,法律上の学校の種類としては通常の小学校と中学校であるため,今回の学校教育法の改正事項には当たらないが,小中一貫した教育課程やその実施に必要な学校間の総合調整を行う際の組織運営上の措置等に関する具体的な要件については,省令等において定めることを予定していること。

第二 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正等(改正法第2条・第3条)
1 改正の概要
(1)公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部改正(改正法第2条)
1)公立の義務教育学校に係る学級編制及び教職員定数の標準は,前期課程については現行の小学校と,後期課程については現行の中学校と同等の標準としたこと。(第3条及び第6条関係等)
2)義務教育学校においては,学校段階間の接続を円滑に行う必要があるなど管理機能の充実が必要であることから,副校長又は教頭を一人加算することとしたこと。(第7条第1項第2号)

(2)市町村立学校職員給与負担法の一部改正(改正法第3条)
市区町村立の義務教育学校の教職員の給料その他の給与等について,都道府県の負担としたこと。(第1条)

(3)義務教育費国庫負担法の一部改正(改正法第3条)
市区町村立の義務教育学校の教職員給与費等を国庫負担の対象としたこと。(第2条)

2 留意事項
小学校及び中学校を廃止して義務教育学校を設置する場合を含め,義務教育学校において小中一貫教育が円滑に行われるよう,都道府県教育委員会等においては,義務教育学校に係る教職員定数の標準を踏まえた適切な教職員配置に努めること。

第三 義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律の一部改正(改正法第4条)
1 改正の概要
1)この法律における「義務教育諸学校」の定義に義務教育学校を加えたこと。(第2条関係)
なお,本条に規定されることにより,公立の義務教育学校について,施設整備基本方針等(第11条),交付金の交付等(第12条)に係る規定等の適用があることとなること。
2)公立の義務教育学校の校舎及び屋内運動場の新築又は増築に要する経費を,公立の小学校・中学校と同様に国庫負担の対象に加えたこと。(第3条,第5条,第6条関係)

2 留意事項
小中一貫教育に適した学校施設の計画・設計における留意事項については,文部科学省が開催する有識者会議「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」(平成21年6月19日大臣官房長決定)での検討を踏まえ,関係者に周知する予定であること。

第四 教育職員免許法の一部改正(改正法第5条)
1 改正の概要
1)義務教育学校の教員については,小学校の教員の免許状及び中学校の教員の免許状を有する者でなければならないものとしたこと。(第3条関係)
2)小学校の教諭の免許状又は中学校の教諭の免許状を有する者は,当分の間,それぞれ義務教育学校の前期課程又は後期課程の主幹教諭,指導教諭,教諭又は講師となることができるものとしたこと。(附則第20項関係)

2 留意事項
1)都道府県教育委員会は,他校種免許状の取得のための免許法認定講習の積極的な開講やその質の向上等により,小学校及び中学校教員免許状の併有のための条件整備に努めること。
2)都道府県教育委員会は,免許状の併有を促進する場合において,併有の促進が教員の過度な負担につながらないよう配慮すること。

第五 施行期日等について
1 改正法の概要
(1)改正法は,一部の規定を除き,平成28年4月1日から施行することとしたこと。(改正法附則第1条)
(2)義務教育学校の設置のために必要な行為は,改正法の施行の日前においても行うことができることとしたこと。(改正法附則第2条)
(3)私立学校振興助成法の一部改正その他所要の規定の整備を行ったこと。

2 留意事項
(1)改正法における経過措置
義務教育学校の設置のために必要な行為について規定した改正法附則第2条の施行日は,公布の日(平成27年6月24日)であることから,私立の義務教育学校の設置認可の申請及び認可,公立の義務教育学校の設置のための条例制定等の準備行為は,公布の日から行えるものであること。

(2)その他
1)コミュニティ・スクールの推進
義務教育9年間の学びを地域ぐるみで支える仕組みとして,学校運営に地域住民や保護者等が参画するコミュニティ・スクールは有効であり,子供たちの豊かな学びと成長を実現できるよう,小中一貫教育も含め,コミュニティ・スクールの推進が期待されること。
2)小学校・中学校の適正規模・適正配置との関係
義務教育学校の制度化の目的は,各地域の主体的な取組によって小中一貫教育の成果が蓄積されてきた経緯に鑑み,設置者が,地域の実情を踏まえ,小中一貫教育の実施が有効と判断した場合に,円滑かつ効果的に導入できる環境を整備するものであり,学校統廃合の促進を目的とするものではないこと。
今後,少子化に伴う学校の小規模化の進展が予想される中,魅力ある学校づくりを進める上で,児童生徒の集団規模の確保や活発な異学年交流等を意図して,小学校・中学校を統合して義務教育学校を設置することは一つの方策であると考えられるが,その場合,設置者が地域住民や保護者とビジョンを共有し,理解と協力を得ながら進めて行くことが重要であること。
なお,公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引きの策定について(26文科初第1112号)も参照のこと。
3)校務運営体制の見直し
小中一貫教育の導入に当たっては,校長は,一部の教職員に過重な負担が生じないよう,校内での連携体制の構築や校務分掌の適正化など校務運営体制を見直し,校務の効率化を図る必要があること。
また,学校における校務運営体制の見直しに係る取組が促進されるよう,学校設置者が適切な支援を行う必要があること。
4)義務教育学校以外の教育課程の特例を活用する学校
第一2(5)3)に記載している転出入する児童生徒へのきめ細かな対応については,義務教育学校に限らず,研究開発学校や教育課程特例校など教育課程の特例を活用する学校全般において留意すべきであること。