子どもの貧困は大人と社会の責任!? 親の『学び直し』を支援する取り組みとは

Mocosuku Woman 2015年8月7日

昨年5月に制定された「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に続いて「子供の貧困対策に関する大綱(※1)」が、同年8月に閣議決定されました。この大綱等を踏まえ、内閣府を中心に文科省、厚労省、日本財団と協力して今後「子供の未来応援国民運動」を展開するとのことです。どのような内容なのでしょうか。子どもの貧困の原因と合わせてご紹介しましょう。

子供の貧困とは
子どもの貧困は、言い換えれば「親の貧困」が原因といえます。貧困家庭で育ってしまった子どもは、親を反面教師として自力で踏ん張って道を切り開く子がいる一方、経済的なハンディキャップなどを乗り越え切れずに、貧困の連鎖に陥ってしまう子がいることも確かです。
数年前、ある定時制高校の先生から実際に聞いた話です。
「生徒の保護者の中には、生活保護を受けながらパチンコに興じ、生徒が稼ぐアルバイト代を当てにして生活している」という、にわかに信じがたい事例があったそうです。これでは子どもが真っ当に働く意欲を失ったとしても無理はありません。
子どもの貧困は、子どもには何の責任もありません。かといって、そのすべての責任を保護者に押し付けてしまうのはあまりにも酷といえます。健康上の理由などにより「働きたくとも働けない」という深刻な問題を抱えていたり、母子(父子)家庭にみられる「働いても時間の制約があって不安定な雇用形態・低賃金を強いられる」、あるいは「技能・経験不足に起因した低賃金」というワーキングプア現象、それ以外にも様々な原因で貧困家庭は広がってしまいます。

親の「学び直し」!?自助努力を支援する取り組みとは
冒頭の「子供の貧困対策に関する大綱(※1)」では、子どもに対する学習支援や生活支援、経済支援と様々なメニューが並んでいます。その中で注目したいのは、「自立支援教育訓練給付の活用等により、親の学び直しを含めた就業支援を推進する」との部分です。
自立支援教育訓練給付とは、既に各自治体で実施している制度のことで、雇用保険の教育訓練給付金の受給資格を有していない母子(父子)家庭を対象に、資格取得講座の受講費の一部や看護士・保育士など一定の資格を取得するための高度技能訓練促進費、および入学支援修了一時金が受給できる制度です。(※2一部実施していない自治体もあるようですが、詳しくは居住地の自治体で確認して下さい)
この制度は、母子(父子)家庭が対象で、親が学び直してスキルアップを図ることで、収入増に結び付けるのが狙いです。必ずしも子どもの貧困家庭のすべてが利用できる制度ではありませんが、可能な範囲で自助努力をすることは欠かせません。何より、親が必死になって学ぶ姿は、その姿を見た子どもに必ずや好影響を与えるに違いありません。まずは、親が子どもに見習われるように襟を正すことも大切です。

「子どもの貧困」は社会全体の問題でもある
その一方で、子どもの貧困率悪化という事態に対して当事者でなくとも、他人事として聞き流すことなく「自分はなにができるのか」と考えてみる必要性を感じます。親族あるいは友人・知人、職場の同僚、ご近所などの様々な立場で「相談を聞き必要に応じて助言をする」という共助も欠かせません。
しかし、注意したいのは、それがたとえ「よかれ」と思っての金銭の貸借であっても、まったく別の新たなトラブルに発展しないとも限りませんので、あえて慎むのも共助の考え方だと思います。
子どもの就学支援という公助の部分では、経済的な理由(生活保護世帯・一定水準を下回る所得の世帯)により就学困難な小学生および中学生に対して、学用品、給食費、通学交通費、修学旅行費、医療費などを支援する制度(※3)や高校生への奨学給付金(※4)、大学・専門学校生への奨学金の貸与(※5)という仕組みがあります。詳細は、居住地の自治体などに確認して下さい。

かの「タイガーマスク現象」、現在は?
2010年12月に「伊達直人」と名乗る人物から、児童養護施設にランドセルが送られたことを記憶している方も多いと思います。これを皮切りに全国各地の養護施設へ善意の寄付が相次ぎ、あわゆる「タイガーマスク現象」としてマスコミに大きく取り上げられました。
ところがその後、善意の寄付は途絶えてはいないものの、この輪が大きく広がっているわけではないようです。養護施設に限らず、子どもの貧困問題に対して自助・共助・公助を駆使して社会全体で支え合う仕組みが、今求められます。

学童保育利用者、初の100万人超え 待機児童も過去最多 民間団体調査

産経新聞 2015年8月7日

ひとり親や共働き家庭の小学生を放課後に学校内などで預かる「学童保育」について、5月1日時点での利用児童数が101万7429人(前年同期比8万3894人増)となり、過去最多を更新したことが7日、民間団体「全国学童保育連絡協議会」の調査で分かった。100万人を超えたのは平成18年の調査開始以降、初めてという。
協議会は、今年4月の児童福祉法改正により、利用対象者が「おおむね10歳未満」から小学6年生まで拡充されたことが要因とみている。
一方、学童保育の待機児童数も1万5533人(同6418人増)と大幅に増加した。厚労省が昨年、学童保育の人数を「40人以下」とする基準を示し、大規模施設が分割。このため施設数も前年同期比3445カ所増の2万5541カ所に増えたが、協議会は「分割により入れなくなった児童もおり、必要とされる施設数には足りていない」としている。

夜勤の心得は「時計はそのまま、眠気に対処」

ナショナル ジオグラフィック日本版 2015年8月7日

就労人口の約2割が夜勤、その約半数が睡眠問題で悩んでいる――
睡眠研究という仕事柄、夜中に検査や実験をすることが多い。一段落ついて家路につくと深夜になることもしばしばだ。

私が研修医だった20数年前は、コンビニの数も少なく、夜中に開いているスーパーやファミレスなどごくわずか。小腹がすいてもカップラーメンをすするのが関の山であった。今では夜間営業の店が至る所にある。深夜だろうが、明け方だろうが、食べ物に困ることがない。
ほかにも、映画館、カラオケ、漫画喫茶、銭湯や美容院などなど業態も実に多種多様。このような便利生活を支えているのが夜勤(交代勤務)の従事者である。今や就労人口の約3割が何らかの交代勤務に就いている。そしてその約3分の2が22時から5時にかかる、いわゆる夜勤に従事している。24時間、365日、いつでも誰かが誰かのために働いている。働く人がいればその子供をみる深夜保育の職員もいる。まさに夜勤の連鎖である。深夜保育士の子供はダレが面倒をみているのだろう……。
講演会などでは24時間社会、夜型社会への警鐘を鳴らすこともあるが、我ながら「建前論だなぁ」と思う。この便利な生活を捨てられるかと問われれば、全く自信が無い。昨晩だって深夜2時過ぎだというのにコンビニに搬入されたばかりのおにぎりとサンドイッチを「夜中にお仕事、お疲れ様でーす」と感謝しつつ購入したばかりだ。
欲しいときに手に入る便利さを知ってしまった以上、もはや以前のように大部分の人が「昼に働き、夜中は寝る」社会に戻ることはないと思う。だとすれば、労働者の健康にとってできるだけ優しく、持続可能な働き方を模索した方が現実的なのだろう。
では「どうすれば安全かつ効率的に夜勤を行えるか?」
この命題については多くの研究が行われてきた。そして得られた結論は「よい方法など無い」。なんとも身も蓋もない話であるが、日勤と遜色なくとはいかないまでも、ある程度リスクを低減することは可能である。もう少し詳しく解説しよう。

長期間夜勤を続けた女性の乳癌が労災認定されたケースも
夜勤が健康に与える影響には中長期的なものと短期的なものの2種類ある。
中長期的な影響の中で最も深刻なのは生活習慣病やがんに罹患するリスクの増大だ。夜勤に従事してから5~10年ほどで糖尿病や高脂血症などの生活習慣病のリスクが、10年以上の勤務で直腸がん、子宮がん、乳がん、前立腺がんなどのリスクが高まるとされる。2007年にWHOの関連機関である「国際がん研究機関」は「交代勤務に発がん性あり」と認定したので一時大騒ぎになった。
デンマークでは長期間夜勤に従事した女性が乳癌に罹患した際に労災認定されたことも話題になった。ただし、中長期的な影響については発症メカニズムや対策法など今後さらに調査研究が必要である。対象となる労働者の数が莫大であるため、パンドラの箱になりかねない。24時間社会の抱える公衆衛生上の問題として座視できない問題として急浮上しつつある。
一方、短期的な影響には勤務中の眠気や夜勤明けの不眠のほか、作業能率の低下による産業事故の問題などがある。夜勤従事者の約半数がこれらの睡眠に関連した問題で悩んでいる。短期的とは短期間しか持続しないという意味ではなく、夜勤に入ると即時的に現れてくる健康問題という意味である。夜勤が続く限りこれらの問題から逃れることはできない。今回は夜勤者にとって身近な眠気の問題について考えてみる。
このコラムでは何度も説明しているが、しっかりした目覚めや質の良い睡眠を得るためには、就床時刻と睡眠を支える自律神経やホルモン分泌など数多くの生体機能のリズム(タイミング)がうまくマッチしている必要がある。
体内時計は「夜に眠気が強くなる」、「昼に目が覚める」ように常に脳と体に働きかけている。したがって夜間時間帯に効率よく仕事をしようということ自体、無茶な話である。であればと、「夜勤の日だけ体内時計の時刻を昼夜逆転できないか?」という対策が頭に浮かぶ。睡眠問題をよく勉強している労務管理の担当者の方々からも質問を受けるのだが、これは非常に難しい。
最大の理由は体内時計の調整にはかなり時間がかかること。夜勤時間帯に眠気もなく活発に仕事ができるようにするには丸々12時間近くも体内時計をずらす必要がある。夜勤に体内時計を合わせるには3週間程度を要するのだ。
眠気や睡眠に大きな影響を及ぼす深部体温(脳の温度)を例にして説明しよう。

眠れていても睡眠の質は低下している
日勤時には勤務中の深部体温が高く、睡眠中に低くなる(「図」上段)。そのまま夜勤に入ると、就業時間中に深部体温は低下してしまう(「図」中段)。これでは眠気が強く、能率も上がらない。逆に夜勤明けの睡眠時には横になったことで若干体温は下がるが(見かけ上の低下で体内時計はまだほとんど動いていない)、日勤時の夜のように大きな体温低下が生じないため睡眠の質も悪くなる。
体調不良を我慢して、3週間ほど夜勤を続けていると、ようやく深部体温リズムが12時間ずれて夜勤に合わせたコンディションが概ね完成する(「図」下段)。それでもまだ完全には体内時計の時刻は逆転していない。夜勤後半になると軽度ながら深部体温の低下が認められている。かように体内時計というのは“頑固”なのである。
そもそも、3週間も夜勤を続ける人がどれだけいるだろうか。さらには、夜勤向けに整えられた体内時計の顛末は如何に?

これが夜勤の心得5カ条
海外では数週間~数カ月間続く恒常的な夜勤シフトもあるものの、日本ではかなり珍しい。2交代や3交代など夜勤のパターンによっても異なるが、月に5~8回(週に1~2回)程度の夜勤が一般的である。そのような散発的な夜勤に合わせて体内時計を動かそうとしても到底間に合わない。強い光を特定の時間に長時間浴びるなど、もう少し速く時刻を合わせられる特殊な方法を用いても最低数日かかる。
たとえうまく体内時計を夜勤時刻に合わせられたとしても、夜勤明けが問題である。1週間の大部分は昼に起きて夜に寝ることになるので、かえって不都合が生じる。1晩か2晩しか続かない夜勤のために体内時計を調節するのは合理的ではないのである。
悩ましいのは中途半端に長い夜勤である。ある自動車メーカーでは1週間の日勤と夜勤を交代で行っていると聞いた。これは珍しいスケジュールである。いろいろな理由があるのだろうが、睡眠医学的にはよろしくない。
1週間もあれば体内時計がそれなりに夜勤に合わせて動いてしまうが、その効用が十分に得られる前に日勤に戻ってしまうからである。日勤時も夜勤時も中途半端な時差ボケ状態が持続する最悪のコンディションになりかねない。その地域の多くの関連企業が自動車メーカーに合わせて同じシフトを組んでいるとのことで影響は甚大である。
そこで、最も一般的な週に1~2回程度の夜勤に従事する際の心得としては、

1)体内時計は日勤に合わせて固定する
2)夜勤時の眠気には仮眠やカフェインで対処する。特に若者には仮眠が効果大
3)夜勤中の仮眠は体内時計の時刻を安定化させる効果もある
4)ただし眠気がとれてもパフォーマンスも向上しているとは限らないことに留意する
5)夜勤明けの運転も要注意