虐待に追われる児童相談所 養子縁組に手が回らず 実親記録の保管も不十分

産経ニュース 2015年8月17日

生みの親が育てられない乳幼児と、血縁関係のない大人が法律上の親子関係を結ぶ「特別養子縁組制度」。国が制度を推進する一方、平成25年度に縁組を仲介した児童相談所(児相)は全体の約6割にとどまることが厚生労働省研究班の調査で分かった。また、3割近い児相が、実親などに関する記録を一定期間後に廃棄していたことも判明。調査からは、虐待対応で仲介に手が回らないうえ「出自」を知る権利も十分に保障されていない実態が浮かび上がった。

低調な児相の実績
特別養子縁組制度は昭和63年から開始。養子は6歳未満、養親は結婚した夫婦で25歳以上が原則とされる。「普通養子縁組」とは異なり、成立すれば養親の実子として戸籍に記載され、実親との親子関係がなくなることが特徴だ。児相のほか、都道府県に届け出をした民間団体・個人が仲介やあっせんを行うことができる。
この特別養子縁組について、厚労省研究班(代表は林浩康日本女子大教授)が初めて全国調査を実施。昨年8~9月、全国207の児相を対象に質問を郵送し、197の児相から回答を得た(有効回答率約95%)。
その結果、平成25年度に特別養子縁組を前提とした里親委託があった児相は計114(約57・9%)。内訳は1件が46児相、2件が34児相、3件以上が34児相で、計267件の特別養子縁組が成立した。これに対し、委託実績がなかったのは78児相(約39・6%)、5児相(約2・5%)が無回答だった。
司法統計によると、25年度に成立した特別養子縁組は474件。ここ10年はおおむね300~400件台で推移している。
厚労省は児相が仲介した特別養子縁組の統計をとっていないが、15の民間団体・個人が仲介した件数は最新の24年度のデータで115件と、5年で5倍超に増えている。裏を返せば、児相経由での縁組成立はまだまだ低調といえる。

専任職員も3割弱
児相の仲介が伸び悩む背景は何か。元愛知県刈谷児童相談センター所長の萬屋(よろずや)育子・愛知教育大教職大学院特任教授(65)は「生命に直結し、一刻を争う可能性のある児童虐待への対応が優先されてしまう」ことを要因の1つに挙げる。
全国の児相が25年度に対応した児童虐待の件数は前年度比で10・6%増の7万3802件。調査を始めた2年度から23年連続で増加している。萬屋教授によると、近年は夫が妻にドメスティック・バイオレンス(DV)を行う際、傍らに子供がいるようなケースも「心理的虐待」にあたるとみなされるようになった。特別養子縁組に関する会議中でも、通報が入ると2~3人で現場へ急行せざるを得ないのだという。
養子縁組は妊婦らから相談を受けて意思確認を重ねた上で、登録した養親希望者とのマッチングが必要で、職員にも高い専門性が求められる。だが、調査結果によると、児相のうち里親や養子縁組を担当する専任の常勤職員を置いているのは56児相と、全体の3割弱にとどまっている。
厚労省は「養親希望者が少ない地域もあり、一概に職員配置と成立件数が比例すると限らない」(雇用均等・児童家庭局総務課)とする。しかし、市内の児相1カ所に、専門職の正規職員3人と非常勤職員2人の計5人を配置している大阪市では25年度、16件と多くの特別養子縁組を成立させているという実績もある。調査班代表の林教授は「マッチングは長年の経験が重要で、マニュアル化は困難。長期での勤務が可能となるよう職員を専門職化するなど、児相の体制強化が必要不可欠だ。制度活用のためには民間事業者と児相が連携を深め、どう共存していけるかということも検討事項の1つだろう」と指摘する。

「出自を知る権利」意識低く
調査ではもう1点、児相の「不備」が明らかになった。「出自」を知る権利の問題だ。
実親の名前や委託した経緯、保育記録などを「永年保存している」と回答したのが135児相だった一方、53の児相が「有期保存」と回答(無回答は9児相)。「有期保存」とした児相の保存期間は異なるが「子供が25歳になるまで」が30カ所と最も多かったという。
真実告知は養親が子供に対し、幼少期から丁寧に行うことが理想だ。民間の事業者では告知を里親登録の条件とする団体もあるが、必ずしも告知が義務付けられているわけではない。実際、調査では18の児相で子供から出自に対する問い合わせがあったことが確認されたが、このうち6児相が「情報提供しなかった」と回答していた。林教授は「子供自身が成人後、養親以外からもルーツを確認したいと思ったが、すでに記録が破棄されていたというケースも含まれていた」とみる。
厚労省は児相に対し、記録の長期保存を求める通知を出しているが「『長期』の認識が児相によって異なり、子供の知る権利の意識が低かった」(雇用均等・児童家庭局総務課)としており、今後、記録保存を見直す方向で検討する方針だ。研究班では記録の永年保存とともに、児相によって提供される情報が異なることがないような態勢作りを提言している。

帰宅困難者受け入れ計画、39出先機関が未策定

読売新聞 2015年8月17日

国とその出先機関の計178機関のうち、39機関で首都直下型地震など大規模災害時の帰宅困難者の受け入れ計画を策定していないことが、総務省の調査で分かった。
計画を策定していても、受け入れ場所や受け入れ可能な人数が明確に定まっていない機関も49あった。総務省は15省庁に是正勧告をした。
府省の本庁舎については今年4月1日現在、出先機関は昨年12月1日現在の状況を調査した。計画が未策定の39機関は、総務省、財務省、厚生労働省など6省庁の出先機関で、未策定の理由については、「自治体からの要請がない」(横浜公共職業安定所など)や「帰宅困難者の発生を想定していない」(千葉税関支署など)といった回答が多かった。

「公共性欠如のNHKはいらない」 民放だけが映る“アンテナ”が人気

産経新聞 2015年8月17日

筑波大の視覚メディア研究室が、NHKだけ受信しない装置を開発、昨年7月からネット通販で販売したところ、全国から問い合わせが殺到している。設置でNHKが見られなくなったテレビは受信料を支払わなくてもいい可能性があるためだ。実際に支払わなくていいかは今後の司法判断を待つ必要があるが、同研究室は「NHKのあり方を議論するきっかけにしたい」と意気込んでいる。(平沢裕子)

周波数帯を阻害する
この装置は、NHK放送の周波数帯のみを阻害する回路を加えたアンテナフィルターで、商品名は「iranehk(イラネッチケー)」。NHKはいらない-をもじっている。直径21ミリ、長さ75ミリの筒状で、テレビ背面にあるアンテナ入力端子などに取り付けて使う。周波数帯域は地域によって異なるため、現在は関東地域の地上波とBS波に対応したものだけだが、これまでに合わせて約250個が売れた。全国から「ほしい」との声が寄せられており、今月末から大阪版と中京版の販売も開始する予定で、価格はいずれも約5000円。
装置は筑波大の研究室に所属する学生が平成25年度の卒業研究として開発。技術的に難しいものではなく、電子工学系の大学生なら作成可能なレベルという。販売はこの学生が立ち上げたベンチャー企業が行っている。掛谷英紀准教授は「近年、NHKの公共性を疑わせる事案が多数発覚している。装置の開発は、テレビを所有しながらNHKと受信契約しない自由を国民に提供するのが主な目的だ」と説明する。

慰安婦問題がきっかけ
掛谷准教授がNHKの公共性に疑問を抱いたのは、ユーチューブにアップされた国会中継映像をめぐるNHKの対応がきっかけだ。25年3月8日、いわゆる従軍慰安婦問題について、辻元清美議員(民主)と中山成彬前議員(当時は日本維新の会)が逆の立場から国会で質問。いずれもユーチューブにアップされたが、NHKの要請で真っ先に削除されたのが中山前議員の映像だった。
従軍慰安婦をめぐる正反対の意見の一方のみが削除されたとして、この問題は当時、ネット上で大きな話題になった。国会でも亀井亜紀子前議員(当時はみどりの風)が問題視し、同月20日の参議院総務委員会で質問、これに対し、NHKの石田研一理事(当時)は辻元議員の動画もその後削除したと答弁した。
「公共放送として公平・中立が求められるNHKの立場を考えれば、削除に時間差が生じた理由を丁寧に説明するのが筋ではないか。この件で、NHKの中立意識の欠如が浮き彫りになった」と掛谷准教授。

大阪は4割が不払い
NHKの公共性と受信料をめぐる問題は、元朝日新聞記者の本多勝一氏が昭和52年に出版した著書『NHK受信料拒否の論理』(未来社)で指摘したのが有名だ。同書では、見てもいないのに受信料を強制的に払わせるNHKの姿勢を強く批判している。受信料問題は多年にわたって議論されている。
一方、NHKによると平成26年度末の受信料の推計世帯支払い率は75・6%。電波環境に問題のある沖縄(46・8%)を別にすれば、大阪59・7%、東京64・2%と都市部で支払い率が低い。掛谷准教授は「受信料不払いの場合は(NHKが視聴できないように)スクランブルをかけることが技術的に可能な時代。今の制度は、テレビで民放だけを見たい人はもちろん、受信料を払っている人にとっても不公平な制度だ」と指摘する。政府の規制改革会議も平成17年、NHKの地上波とBSをスクランブル化し、将来は受信契約でなく有料放送とするよう求める方針を出している。
これに対し、NHKは公式ホームページの「よくある質問集」コーナーで、「(スクランブルをかけることは)全国どこでも放送を分けへだてなく視聴できるようにする、という公共放送の理念と矛盾し、問題がある」と説明している。

受信料問題、法廷へ
放送法64条は「協会(NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」は、協会と受信契約を結ばなければならないと定めている。イラネッチケーを設置したテレビはNHKが受信できなくなるが、受信料は支払わなくてもいいのだろうか。NHKは「フィルターを取り外せばNHKが見られるので、受信契約の対象だ」とする。開発者側によると、取り外せなくする方法もあるという。
これに対し、千葉県船橋市の立花孝志市議が今年6月、「イラネッチケーでNHKが映らなくなったため、NHKに請求されている受信料は発生していない」とする債権不存在訴訟を起こしている。9月には第1回口頭弁論が東京地裁で開かれる予定だ。NHKと市議のどちらの言い分が通るのか、今後の司法判断が注目される。
掛谷准教授は「現行の受信料制度は多くの問題をはらんでいる。装置の開発が、国民にとってより公正で有益なNHKのあり方を本格的に議論するきっかけになれば」と話している。

欠勤届に「ごめんね」スタンプ LINEで社内業務連絡は「あり」?

J-CASTニュース 2015年8月16日

職場での「LINE」を使った業務連絡に賛否両論が寄せられている。
LINEの国内登録者数は、いまや5800万人を超え、日本の人口の45.7%を占めている。手軽な連絡手段として、職場を含め、さまざまなビジネスシーンで利用したいと考えている人は少なくないようだ。

「仕事の連絡をLINEでするなんて…」
職場に欠勤や遅刻の連絡をするとき、「LINE」を使う人が増えているらしい。なかには、職場に「『体調不良なんで休みます』の言葉とごめんねスタンプが届いた」という例や、LINEで退職届を送ってきたツワモノもいるようだ。インターネットには、
「これはないですね。社会人として非常識すぎます」
「ありえん。世の中舐めてる」
「仕事の連絡をLINEでするなんて…」
「これは服装や言葉遣いと同じ、ビジネスマナーの問題。それがなってないってこと」
「退職願をLINEでするなんてもってのほか!」
と、呆れぎみなコメントが目立っている。どれもLINEの仕事での利用には否定的だ。
一方、日本ビジネスメール協会が2015年7月1日に発表した、仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査2015」(有効回答数は1500)によると、「仕事で外部の人から初めて連絡をもらうとき、失礼だと思う手段はありますか」の問いに、50.87%の人が「LINE]と答えた。「失礼だと思う」連絡手段の第1位で、「Twitter」(41.73%)、「Facebook」(35.00%)が続く。
2011年以降、仕事で周囲とコミュニケーションをとる主な手段は、「メール」が98.33%、「電話」が92.67%、「会う」は82.27%と変わらないが、「一部のビジネスシーンではコミュニケーション手段として使われているソーシャルメディアですが、(LINEは)仕事で外部の人への初めての連絡には避けたほうがよいといえます」としている。
メールでのコミュニケーションが一般的になるなか、一方で仕事のメールをスマートフォンや携帯電話でやり取りする人は増えている。スマートフォンの普及で、外出先でもPDFファイルなどを閲覧しやすくなったほか、複数のアカウントを管理できるメールサービスが広がったことが背景にある。
日本ビジネスメール協会の調べでは、ビジネスメールの送受信で主に利用している機器は「パソコン」が99.27%と圧倒的だが、「スマートフォン」も34.53%を占める。タブレット端末や携帯電話とあわせると、6割弱を持ち歩きに便利な携帯端末が占めるようになった。
若者層を中心に、LINEは多くの人がすでに使い慣れているツール。LINEをビジネスで利用したいというニーズが出てきても不思議ではない。

大手企業でのLINE利用はむずかしいが…
ビジネスシーンで「LINE」を使うメリットとして考えられているのは、グループごとに意見交換したことを履歴として閲覧できることや、「既読」が表示されるので伝わったことがわかること、メールと同様に相手の状況にかかわらず伝えられることなどがあげられる。なによりも、手軽で便利に使えることがある。
インターネットに寄せられた、LINEの利用を支持する人からは、
「パソコンや携帯電話のメールと何が違うの」
といった声があるのも事実だ。
企業アナリストの大関暁夫氏は、ビジネスのLINEの利用について、「一概にダメとはいえない」という。そのうえで、「大手企業の場合、会社が支給しているパソコンやタブレットなどは、SNSが利用できないようになっているはずで、おそらくLINEも使えないでしょう。1番の理由は、やはりセキュリティーに対する企業の考え方があります」と話す。
情報漏えいはもちろん、情報の拡散でもSNSの威力は大きい。また、一般的にSNSは親しい人とのコミュニケーションの場で使われているので、「ビジネスにはなじまないといった考え方や、マナーの部分、とくに公私の区別ではなかなか使い方がむずかしい」としている。
ただ、中小・零細企業は別。たとえば、少人数で切り盛りしている飲食店などは従業員同士がLINEでつながっていて、急な欠勤や出勤をLINEでやり取りして職場に穴をあけないようにする。こうしたやり取りはLINEのほうが早くて便利かもしれない。
大関氏は「もちろんプライベートで使っている端末を利用するのですから、セキュリティーや使い方には気をつけさせる必要があります」とクギを刺すが、ニーズは少なからずあるとみている。

「カルトだ」ブラック企業対策の研究者が狙われた 言われなきネット中傷の恐怖

産経新聞 2015年8月17日

ブラック企業など若者の労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」の代表らを中傷するメールを繰り返し送ったとして、名誉毀損(きそん)の疑いで男が書類送検された。これらのメールにたびたび引用されていたのが、NPOや代表を中傷する書き込みを取り上げたインターネットの「まとめサイト」だ。真偽不明の情報ながら、広まることでいつの間にか“事実”と誤信されることがあるネット社会。広まった情報を回収するのは不可能で、失った名誉を取り戻すのは容易ではない。2年以上にわたりネット中傷を受け続けてきたPOSSEの今野晴貴代表は「こうした被害は誰にでも起こりうる」と警告する。

著名人の書籍を利用するなどの仕掛け
POSSEによると、最初にネットの中傷が確認されたのは、平成24年末ごろ。ツイッターの書き込みをまとめるサイトに「【新左翼】NPO法人POSSE(ポッセ)に注意!【京大政経研】」など複数のタイトルで公開された。「今野氏は特定の政治団体と関係しており、それを隠して活動しているので注意するように」と呼びかける内容だ。サイトには著名な大学研究員の書籍の文章が引用されるなど信用度を増大させる仕掛けがなされ、まるで著名人がPOSSEをカルトだと指摘しているように読み取れたという。
サイトだけで終われば目に触れる人も少なく、被害はまだ少ないが、そうはいかないのがネットの怖いところだ。このまとめサイトを見た著名なブロガーや研究者が、ブログやツイッターでサイトを紹介。さらに、今野氏の周辺には、サイトのURLを張った中傷メールが送られてくるようになったのだ。
そのメールを送ったとされるのが、警視庁が名誉毀損の疑いで6月に書類送検した横浜市の30代の自称フリーデザイナーの男だ。警視庁などによると、男は25年5、6月、「POSSEはカルト法人だ」「オルグ(勧誘)される前に学生は逃げろ」などとするメールを東京大学関係者など約50カ所に送り、今野氏らの名誉を毀損したとされる。
今野氏によると、中傷メールが送られたのは今野氏が所属する大学の教員や学生、今野氏が出演したテレビ番組の共演者とスタッフ、今野氏が講演した大学の事務職員など、分かっているだけでも100人をゆうに超える。悪質なのは、その中には実在する著名な評論家になりすまして送られたメールがあったことだ。メールを送られた人物の中にはアドレスを公開していない人も含まれ、今野氏は「どうやってアドレスを調べたのか。非常に怖い」と話す。

実生活にも影響
中傷が繰り返されることで、今野氏の実生活にも悪影響が出始めた。「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」(文春新書)などの著書がある今野氏は、大学や研究機関などでたびたび講演をしたり、テレビに出演したりしてきた。しかし、講演や出演の予定を公開すると、主催する関係者や他の参加者、メディア関係者に前述のメールが送られてしまう恐れがある。そのため、講演や出演の宣伝を自粛せざるを得なくなったという。
「POSSE」が行っている労働相談でも、中傷サイトを見て不安になり、相談をやめる人が出た。また、研究者として9年間所属してきた大学院に対しても繰り返し中傷が行われ、学内で噂の的に。「今野の授業の様子を見に行く」などの書き込みがなされるまでに至り、大学院を2年間、休学することになってしまった。今野氏の家族に対しても、情報をうのみにした親類から非難の声が寄せられた。会員1人の推薦があれば入れるはずの学術団体にも、ネット上の情報を理由に入会を断られた。
今野氏は「10年にわたり、若い人の労働相談や貧困者の相談にかかわってきた。それまで積み上げてきた努力や成果を、勝手な思い込みや書き込みで無にできてしまう」と話す。「直接の取材活動に基づく言論よりも、『2ちゃんねる』などの書き込みが重視される場面を目の当たりにして衝撃を受けた」という。

拡散行為にも「責任」
ネット犯罪に詳しい岡村久道弁護士(大阪弁護士会)は「最近はツイッターのつぶやきをまとめる『まとめサイト』が増えた。一度まとめられてしまうと、それがまたツイートされて広がる悪循環に陥る」と指摘する。「ネットで話題になりそれを新聞が取り上げ、ネットとリアルが“こだま”して大きくなっていく現象も起きている」という。
一向にやむ気配のない中傷メールと、ネットで広がり続けるまとめサイトに、ついに今野氏らは昨年、名誉毀損罪で警視庁に告訴。警視庁が男を書類送検する事態となった。調べに対し、男は「今野氏とは面識がない。学生に注意を促したかった」などと多数のメールを送った動機を話したという。
岡村弁護士によると、誤った情報であってもそれを真実と思い込み、懲らしめようと話を広めてしまうことはネット社会ではよくある。「悪意を持ってやっている場合は別だが、情報を広めている本人に悪気がないことも多い。表現の自由もあり、プロバイダーが安易に削除することもできない」(岡村弁護士)。
こうした現状を、今野氏は「事実でない内容を一方的に拡散されても、個人はあまりに無力だ」と嘆く。情報をうのみにして拡散させてしまう行為にも大きな責任があること、そのことによって他人の人生を回復不能にしてしまうことを知ってほしい、と今野氏は訴えている。