高槻中1殺人:決定的に足りなかったのは、子どものための安全な居場所

みわよしこ フリーランス・ライター 2015年8月22日

高槻市の中1女子・男子生徒が行方不明になった事件は、殺害された二人の遺体が発見されるという最悪の結末になりました。
容疑者の男性には、過去にも少年を監禁して逮捕された前歴があると報道されています。
再発防止には何が必要なのでしょうか?
被害者家族の側から、被害者の側から、加害者の側から、考えてみます。

親御さんを責められますか?
この事件の発端は、犠牲者の一人である中1の少女・Hさんが、家にいたくなかったことにあるようすです。

大阪の中心部まで京阪電車で二十分。寝屋川市駅近くのベッドタウンにHさんの家がある。二人は一学期は皆勤で、それぞれ部活も熱心に取り組んでいた。だが、小学校からの友人は「Hさんは家族との関係に悩んでいた」と明かす。Hさんは七月中旬、二人が寝られる大きさのテントを購入し、友人たちと何度か屋外にテントを張って泊まることがあったという。
出典:大阪 中1女子殺害 「家族との関係に悩み」 毎日新聞 2015年8月19日 朝刊

激しい「あるある」感を覚える記述です。
近所づきあいが密なようで、互いに警戒心いっぱい、ウワサ話や陰口が渦を巻くこともあるベッドタウン。
同じ年頃の子どもがいる家庭どうしならば特に、互いに子どもたちの様子を「ウチより上では」「ウチの方が上」という形で気にかけあい、爪はじきされないように地域の行事に付き合う一方で、気持ちの面では孤立していることが少なくないベッドタウンの母親たち。
家庭の悩みごと、子どもの悩み事を隣近所で相談しあうなど、ありえない世界。
……Hさんのご家庭やその周辺が、実際にどうだったのかは知りません。しかし、中1の少女がテントを買って外泊を繰り返すほどの家庭環境とは。誰にどういう原因があったのかはともかく、こじれており、家庭内での解決が既に困難な状況であったのは間違いないでしょう。
親御さんが何を思い、どう考えていたのかは、現在のところは分かりません。しかし、見てみないふりをしていたとしても、内心は気が気でなく、無事に帰ってきた娘を見るたびに「ああ、良かった」と思っていたのではないでしょうか。
「原因は、この親子関係にある」という自覚があっても、どうすればよいのか、誰にどう助けてもらえばいいのかの見当もつかないまま、このような結末を迎えてしまったのではないでしょうか?
今、お子さんを失った上に、自責の思い止まないであろう親御さんが、まずは落ち着いて休息を取られることを願います。

「子どもを外に出すな」で済みますか?
とはいえ、中1の少女がテントを買って外泊を繰り返すという状況は、もちろん放置できるものではありません。ネット空間では、出歩かせた親御さんに対する批判も高まっています。
しかし「家出する」「家に帰らない」は、家庭の中で追い詰められた子どもにとって、生き延びるための最後の手段である場合もあります。
家を出て、帰らずにいて、もしも善意の第三者に救い出される機会があれば。
家出少女たちは、たいていは、そのような望みとともに家を出ます。しかしながら、善意とはいえない人々に絡め取られることが実に多いのです。詳しくは仁藤夢乃さんのご著書『難民高校生』などが参考になるかと思います。仁藤さんは「女子高校生サポートセンターColabo」の運営にもあたっています。
少女たちは、決して安易な気持ちで家を出ているのではありません。決死の覚悟で、辛すぎる場所から脱出しようとしているのです。私も、ビジネスホテル高騰に伴って仕方なく泊まったユースホステルで、父親から内田春菊さんの『ファザーファッカー』も真っ青の虐待を受けていた女子高生と出会ったことがあります。最後の一泊分のお金でネットカフェではなくユースホステルを選択した彼女の賢明さに、支援者・支援団体との接点豊富な私が偶然いたという幸運が重なり、彼女は無事、支援団体のシェルターに保護されました。
この幸運が、家出少女・少年たちの「あたりまえ」にならなくては、と思います。
どんな親にも、子どもとの関係が辛いものになってしまう可能性はあります。どんな家庭にも、「ここにいたくない」と思われる場面はあります。「ちょっと逃れる」が関係改善の糸口になることもあれば、「逃げないと殺される」というところまで問題がこじれることもあります。
家を離れる自由そのものは、むしろ必要なことではないでしょうか。

家出はむしろ、賢明な選択だったのでは?
中1のHさんは、家の居心地の悪さから、家出して事件に巻き込まれ、殺されることになってしまいました。これは愚かな選択だったのでしょうか?
私はむしろ、Hさんの家出という選択、さらに「テントで野営」という逞しさに対して、「すごい!」と賞賛したい気持ちです。
Hさんの家庭状況の詳細は知りません。しかし、誰にどういう原因があったのかはともかく、中1に野営させるほどの困難があったことは間違いないでしょう。その場面での「家出」という選択は、自殺や親殺しに至ってしまうまでガマンを重ねることと比べれば、むしろ賢明だと思います。
問題は、Hさんが考えるほど安全ではなかったことにあります。では、安全に家を離れる方法はあったでしょうか?
中1女子が安全に家を離れる手段は、児童相談所に相談して一時保護を受けるくらいしかありません。親類やご近所に
「親とケンカした」
と行ける関係のお宅があれば、「テントで野宿」の代わりに選択されていたでしょう。
では、児童相談所に連絡すれば一時保護が受けられるでしょうか? もしかすると、Hさんは相談したことがあるのかもしれません。いずれにしても、一時保護施設や児童養護施設はどこも、今すぐに助けの必要な子どもたちで一杯です。それに、一時的にせよ「親から子どもを取り上げる」という判断は、容易に行えるものではありません。「暴力を受けて骨が折れている」「性虐待を受けており、今はっきりわかる証拠がある」など、どう考えても親の権利を優先すべきでない状況でなければ、まず「今から保護してほしい」という子ども(あるいは第三者)の申し出を受け入れることは無理でしょう。
自殺でも親殺しでもなく家出を選ぶ賢明さと、テントで野営する逞しさを持ったHさんは、もしかすると児童相談所にも相談してみて、「自分の役には立たない」と判断していたのかもしれません。
おそらくは今、苦しい状況にある中高生の「ちょっと今、居場所がほしい」という時のための場、福岡市にある(一社)ストリート・プロジェクトの「ごちハウス」のような場が、全国に数多く必要とされているのだろうと思います(後記:このような場が数多くあれば、一緒に家出して殺された男子中学生Hさんの悲劇も避けられたでしょう)。今すぐ整備するのが困難なら、「ユースホステルなど一定の信頼を置ける場に限定したクーポン券を、中高生全員に無償配布する」という方法も考えられてよいのかもしれません。
ちなみに米国内のユースホステルは、社会教育施設の一つとして位置付けられ、昼間は近隣の小中学校の移動教室に利用されています。宿泊設備は、審査待ちの難民に住まいとアセスメントの機会を提供する場・火事などで住まいを失った人のための一時宿泊の場としても利用されています。
日本でも、若い国内難民ともいえる家出希望者を視野に入れて、同様の運用を行うことは可能でしょう。運営の困難に直面する各地のユースホステルに対しては、安定収入の一端ともなりえます。また、ユースホステル憲章の「簡素な旅行によって、見聞を広める」という機会を、若い人々に対して提供するのにも役立つことでしょう。さらに、そこに支援者・支援団体へのホットラインがあれば!

容疑者の「再犯防止」に何が足りなかったのか?
しかし、いかに個人が賢明であり、居場所の選択肢がたくさんあったとしても、
「世の中には怖くて悪い人がウヨウヨしていて」
という問題は解決しません。
この事件の容疑者は、過去にも少年相手の監禁事件を起こして逮捕されたことがあると報道されています。

Y容疑者は2002年4月にも、男子中高生を狙った監禁事件で大阪府警に逮捕された。
府警によると、同府寝屋川市の路上で、男子中学生に「寝屋川市駅はどこか」などと声をかけ、車中で手錠をかけて監禁した容疑などで逮捕された。他にも、複数の男子高校生らを粘着テープで縛って監禁した疑いなどでも再逮捕された。
いずれも道案内を依頼して少年を車で連れ回す手口だった。ライターで顔に火をつけられ、けがをした生徒もいた。
出典:大阪・高槻の中1殺害:容疑者、中高生監禁で02年に逮捕歴 毎日新聞 2015年08月22日 東京朝刊

逮捕・再逮捕された後はどうなったのか、現在までの報道では分かっていませんが、起訴までの選択肢は、監禁・傷害となれば
•不起訴(責任能力なし)
•起訴(責任能力あり)
のいずれかでしょう。
2003年以後ならば、精神障害を理由として責任能力なしとされた場合、触法精神障害者として医療観察法(Wikipediaページ)の対象となり、期限の定めのない閉鎖病棟への入院が行われる可能性がありますけれども、2002年なら対象外でした。
2002年の逮捕の後、誰がどのように容疑者に関わっていたのかは、未だ明らかにされていません。しかし「再犯防止」という効果につながっていなかったことは、再犯がより重大な形で起こってしまったことから、明らかというべきでしょう。
再犯は、なぜ起こるのか? 何がどのように行われれば防止できるのか? 犯罪に対する懲罰を、教育や治療と両立させることはできるのか? 再犯防止のためとはいえ、教育や治療を本人の自発によらず行うことは許されるのか?
世界的に、数多くの検討と試行錯誤が行われていますが、未だ、決め手となりうる方法は見つかっていません。
しかし、少なくとも単なる「社会から隔離する」「どこかに閉じ込める」は再犯防止につながらないだけではなく、妥当な懲罰なのかどうかも不明と考えられるようになりつつあります。
亡くなられた中学生のお二人のご冥福と、残されたご家族のご健康とお心の平安と、容疑者の方が自他とも納得する今後を送られることを、最後に心より願います。

【子どもの命、どう守る?】~「こども@ホーム」キックオフイベント~

Japan In-depth 2015年8月23日

大阪では、夏休み中の中学1年生2人が殺害される非常に痛ましい事件が発生した。
事件の動機や背景についてはまだ不明な点が多いが、幼い命を守るために、家庭、地域、学校、行政が何をすべきだったのか、子どもの為に何ができるのか、今一度考えなければならないだろう。
夏休みも残り10日、東京都墨田区では「こども@ホーム推進員会」のキックオフイベントが開かれた。「こども@ホーム推進委員会」は、児童擁護に関する正しい政策を提案し実現していこうと、都議会議員など地方議員や地域住民、行政や医療関係者など専門家らで設立したネットワークだ。
設立を記念したこの日は「すべての子どもたちに、温かい家庭を!」と題し、里親や特別養子縁組をテーマにした。会場には、若い世代の母親など120人が詰め掛けた。
まず講演したのが、愛知県の児童相談所で30年以上、赤ちゃんの特別養子縁組に取り組んできた社会福祉士の矢満田篤二さん。新生児の遺棄事件が後を絶たない実態や、特別養子縁組が進まない国内の状況など問題点を指摘した。また里親連絡会の事務局長・竹中勝美さんは、日本の施設擁護が国連の子どもの権利委員会から勧告を受けていることや、諸外国と比べ、日本の里親委託率が極めて低い現状が報告された。
「実の親が育てられない子どもは、施設ではなく、里親や養親のもと温かい家庭で育てられるべきではないか?」会場に集まった人々からも多くの声が上がった。
特別養子縁組を目指し里親登録をしたものの、行政からは「新生児を迎えることは難しい」と言われた女性。小さい頃から親子として生活したいと願うが、新生児のほとんどが里親家庭ではなく、乳児院に入所する実態を訴えた。
里親として数年養育したのち、特別養子縁組したという母親は、養子となった子どもから「もう一生ここにいてもいいんだよね?悪いことをしても児童相談所が怒りにこないんだよね?」と言われた経験を涙ながらに話した。
経済的な事情や、虐待などによって実の親と暮らせない子どもたち。家庭にも学校にも居場所がなく、夜の街をさまよう中高生。これらの子どもに対する大人の支援が、全く十分とは言えないというのが「こども@ホーム推進員会」の抱く危機感だ。
児童養護施設にいる子供たちはおよそ4万人。乳児院にいる赤ちゃんは3000人に上る。一人でも多くの子供たちが暖かい家庭で育つことができるようにするためには、政治の力が不可欠だ。このネットワークに、地域に密着した地方議員が多く参画していることは評価できる。今後の活動を見守りたい。

「生活が苦しい…」子どもを持つ世帯の実情 専門家が解説

ラーニングパーク 2015年8月23日

育児費や教育費など、子どもを持つ家庭には経済的な負担が重くのしかかる。厚生労働省がまとめた2014(平成26)年「国民生活基礎調査」によると、子どもを持つ世帯の約7割が経済的に「生活が苦しい」と訴えていることがわかった。子どもを持つ世帯をめぐる状況は、現在どうなっているか、ベネッセ教育情報サイトでは、教育ジャーナリストの斎藤剛史氏に解説してもらった。
調査は、昨年6~7月に全国から世帯を無作為抽出して実施し、約4万6,800世帯から回答を得ました。生活が「苦しい」(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)を感じているのは、全体の62.4%に上り、18歳未満の子どもを持つ「児童のいる世帯」に限って見ると、約7割にも達しています。子どもを持つ世帯の平均所得は、全世帯の平均所得を上回っていますが、子どもの教育費負担などが大きく、いくら働いても家計が楽にならないのが実情といえそうです。
また、世帯全体に占める65歳以上の「高齢者世帯」は24.2%、これに対して「児童のいる世帯」は22.6%で、初めて高齢者世帯の割合が子どもを持つ世帯を超えました。また「児童のいる世帯」の子どもの人数は平均1.69人で、過去最低を更新しました。「児童のいる世帯」の世帯構成を見ると、「夫婦と未婚の子のみ」が71.6%、「ひとり親と未婚の子のみ」が7.4%で、合計すると79.0%となり、約8割が親と子どもだけの核家族ということになります。
子どもを持つ世帯の約半数が「一人っ子」、約8割が核家族という、現在の状況のなかで、子育ての苦労や教育費負担の重さが、子どものいない世帯の人々からは見えづらいのかもしれません。育児や教育費の負担は、「自己責任」と見る風潮も強まっている気がします。しかし、将来に向けて健全な社会を保つためにも、保育支援の充実、保護者の教育費負担の軽減などが強く求められます。

文科省 いじめ自殺予防で点検を通知

教育新聞 2015年8月24日

文科省はこのほど、坪田知広初中局児童生徒課長名で「いじめ防止対策推進法に基づく組織的な対応及び児童生徒の自殺予防について」と題する通知を、各都道府県・各指定都市教委指導事務主管部課長などに向けて発出した。
岩手県矢巾町で、中学生がいじめの疑いによって自殺するなどの事案が生じている。その中で、夏季休業期間中やいじめや自殺が多く発生する夏季休業明けにも、しっかりと対応できるよう求めた。18歳以下の自殺は、8月下旬から9月上旬などの学校の長期休業明けにかけて急増する傾向があることが、平成26年度の『自殺対策白書』でも指摘されている。
そのために、いじめ防止対策推進法と各学校で定めている「いじめ防止基本方針」に基づく組織的な対応について、次の点検内容を挙げている。この点検結果から、問題点や課題が見つかった場合には、必要に応じ学校の基本方針を見直すなどの措置を、すみやかに講ずることを求めた。
学校経営の視点や人材を育成する上で、なによりも、児童生徒の命を守るために、点検は不可欠だ。
点検内容は、次の通り――(一部抜粋)。
・いじめに当たるか否かの判断に当たっては、当該行為を受けている児童生徒が現に心身の苦痛を感じているかという視点に立ち、いじめられた児童生徒本人や周辺の状況等を客観的に確認して総合的に判断すること。また、いじめが解消していたとしても、いじめに関する情報共有や報告を積極的に行うこと。いじめられた児童生徒が心身の苦痛を感じているかどうかが明確ではない場合であっても、「心身の苦痛を感じている」との要件が限定して解釈されることのないよう、いじめられた児童生徒に寄り添った視点に立つこと。
・いじめ対策組織が、いじめが起きにくい・いじめを許さない環境づくりを実効的に行うために、その存在および活動が児童生徒から認識され、学校が組織的にいじめの問題に取り組むに当たって中核的な組織として機能していること。
・いじめ対策組織の年間を通した取り組みを通じ、全ての教職員がいじめを受けた児童生徒を徹底して守り通し、事案を迅速かつ適切に解決する相談・通報の窓口と児童生徒から認識され、適切に対応していること。全ての教職員がささいな兆候や懸念、児童生徒からの訴えを抱え込まずに、全ていじめ対策組織に報告・相談するとともに、いじめ対策組織において適切な情報の集約と複数の教職員による共有がなされていること。
・いじめ対策組織が、学校の実情に応じ、管理職のみならず、主幹教諭、生徒指導担当教員、学年主任、養護教諭、学級担任や部活動指導に関わる教職員など複数の教職員や、必要に応じて、心理や福祉の専門家、弁護士、医師、教員・警察官経験者など外部専門家等が参画した実効性のある人選となっていること。また、いじめの未然防止、早期発見、教職員の資質や同僚性の向上に資するため、児童生徒に最も接する機会の多い学級担任や教科担任をはじめ、全ての教職員がいじめ対策組織に一定期間参画するなど、適時適切に構成員の見直しが図られていること。

離婚後の「養育支援」に取り組む明石市長「養育費と面会交流の決定を義務化すべき」

弁護士ドットコムニュース 2015年8月23日

離婚後の親子の「面会交流」や「養育費」の支払いといった問題に、全国の自治体に先駆けて取り組んでいる兵庫県明石市の泉房穂市長が8月22日、東京都内で講演した。面会交流の促進を求める団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」が主催した。
泉市長は、かつて弁護士として離婚案件を取り扱っていた際に、「子どもの面会交流や養育費を取り決めないまま離婚できる日本は遅れている。子どもの権利が守られていない」と疑問を感じるようになった。そうした約20年前からの思いが、市長に就任してからの取り組みの原点となっているという。
現在の日本の法律では、未成年の子どもをもつ夫婦が離婚するとき、親権者がどちらになるのかを決める必要があるが、面会交流の方法や養育費の金額について決めることは義務づけられていない。だが、泉市長は、子どもの権利を守るためには、「離婚の際に、面会交流や養育費について取り決めることを、原則必須にすべきだ」と主張する。
その段階に至るには、法律が改正されなければいけない。そのため、明石市としては「現行法の枠内でできる限りのこと」をしていく方針だという。

天文科学館を親子の「面会交流」の場に
明石市が2014年に開始した取り組みの柱は、次の3つだ。
(1)弁護士資格や社会福祉士、臨床心理士の資格を持っている常勤職員らが、相談に応じる体制をつくった。
(2)離婚時に交わす養育費や面会交流の合意書について、参考となる「ひな形」をつくり、配布した。
(3)明石市と法テラス、関連団体による連絡会議「明石市こども養育支援ネットワーク」をつくった。
このとき明石市がつくった「こどもの養育に関する合意書」や「こどもと親の交流ノート(養育手帳)」などのひな形文書は、明石市のサイトからダウンロードできるという。泉市長は「どこでも通用するように、市内外の専門家に協力を仰ぎ、知恵を出しあってつくった。他の自治体の方にもどんどん利用・配布してもらいたい」と話す。
明石市は、その後も次々と施策を追加している。その一つは、明石市立・天文科学館を、親子の面会交流の場として無料で使えるようにしたことだ。同館にはプラネタリウムがあり、イベントの優先予約にも対応する。また、今年8月には、親が離婚・再婚・別居している小4〜中3の児童生徒を対象とした、交流キャンプを実施したという。
泉市長は「自治体として本来すべきことの1割もできていない」として、取り組みはまだ始まったばかりだと強調。次のように今後の展望を語っていた。
「今後は、面会交流の実効性を担保するために、面会交流センターを立ち上げたい。また、離婚時に取り決めをした人へのインセンティブや、公正証書の費用負担など法的手続にかんする支援も考えていきたい」