誰も語らない、子どもの「性的虐待」の現実

東洋経済オンライン 2015年9月9日

あまり知られていませんが、日本の子どもは高い頻度で性虐待、性被害に遭っています。大人が見て見ぬふりをして、被害経験に耳を傾けないため、子どもたちは被害届も出せず、親にも言えないまま成長し、死にたい気持ちを抱えていることが多いのです。
被害者の体験談を基にショートフィルムを制作したジャーナリストの植田恵子さんと、弁護士として性虐待被害者の話を数多く聞いてきた寺町東子さんに対談していただきました。驚くべき実態を伝えるとともに、被害者救済策を考えます。

日本における、子どもの性被害の実態

植田さんは7月初旬、「届かぬ声 『性被害』 ほんとうのこと」という5本のショートフィルムをネット上に公開しました。被害がごく幼いときに起きていて、学校の校長先生やそろばん塾の先生が加害者である例、親に援助交際を強要されている例にショックを受けました。自分は大人なのに、何も知らなかったんだ、と思いました。植田:私自身、取材をするまで知らないことが多く、映像を見てくださる方と同じです。性被害の取材をしたきっかけは、テレビ番組の制作でした。ショートフィルムにも登場するNPO BONDプロジェクト代表の橘ジュンさんの活動を撮影したのです。 BONDは、渋谷など繁華街にいる女の子たちに声をかけたり、「生きづらい」と感じる女の子の電話相談に乗ったりしているNPOです。ジュンさんに取材をする中で「これから、こういう女の子に会いに行くんだけど、一緒に来る?」と声をかけていただくようになりました。
取材を続けるうちに、学校でのいじめや、親が厳しいことなどを「生きづらい」と表現していた子が、関係が深まるにつれ性虐待の過去を語り始めることがありました。家や学校に居場所がなく、繁華街やインターネット上をさまよう子が被害に遭うなど、女の子たちにとって性被害が、とても身近で頻度の高い問題だと感じるようになりました。
日本初の大規模調査(日本性科学情報センター「『子どもと家族の心と健康』調査報告書」1999年)によると、18歳未満の女の子の39.4%、男の子の10%が性的被害を受けています。13歳未満で見ても、女の子の15.6%、男の子の5.7%が被害に遭っています。詳しくは『子どもと性被害』(吉田タカコ著、集英社新書)や『子どもへの性的虐待』(森田ゆり著、岩波新書)などに書かれています。

起きてはいけないことが、こんなに高い率で起きているのですね。DV被害者支援に取り組むNPO法人シェルターネットの調査によれば、圧倒的多数の加害者が実の父親(「DV家庭における性暴力被害の実態/性暴力被害に遭った子どもたちのサポートマニュアル」特定非営利法人全国女性シェルターネット)ということで、これもショッキングな事実です。 ところで植田さんは、最初から「性犯罪被害者の取材をして短編映像を作ろう」と思って企画したわけではなかったのですね。
植田:そうです。最初はジュンさんの活動を追いかけていたので、期せずして女の子たちが抱えているもの、性被害の深刻さ、それが身体と心をどれほど傷つけているか、知ることになりました。

被害を隠し、追い詰められていく女の子たち
被害者の女の子たちの話を聞いて驚いたのは、家庭内で性的な被害を受けていても隠したり、学校では元気なフリをしていること。そして私たちのインタビューに「平気」とか「慣れているから」と話すことです。無理をしている反動で暴れて記憶を失くしたり、リストカットをして、腕を切り刻んだりしていました。
彼女たちの話を聞くうちに「自分が子どもの頃、クラスに被害を受けている子がいたかもしれない」と思いました。「私が気づいていなかっただけかも」と。

周囲の人が被害に気づくのは難しいですか。
植田:たとえば、いわゆる非行や、服を脱ぐことを極端に嫌がることもサインのひとつであると気づきました。自傷、自殺未遂、摂食障害や精神的な不調という形で現れることもあります。
ただ、被害に遭ったことを本人が言うのは、現状ではとても難しいですね……。たとえばショートフィルムの中に、小学6年生のとき、そろばん塾の先生にレイプされた女の子が出てきます。彼女は私が取材で撮影するときまで、本当のことが言えませんでした。 彼女の妹も同じ人から被害に遭っているのですが、レイプではなく、触られた。それを親に言ったら「けがらわしい」と言われてしまった。それを見て「自分はもっとけがらわしいことをされた」と思って、親に言えなくなったそうです。彼女はその後、男性恐怖症になり、男性が近くに来るとパニックになって手首を切って病院に運ばれることもありました。
何も事情を知らない学校や周囲の人に、彼女は「大変な子」と映ったでしょう。でもレイプされていたと知ったら、どうでしょう。レイプは本当に深刻なPTSDをもたらします。法務省の性犯罪の罰則に関する検討会で資料として使われたアメリカの大規模調査(1995年刊行の論文“Posttraumatic Stress Disorder in the National Comorbidity Survey”に詳細あり。15~54歳、5877人を対象に行われた調査)では 、戦争よりレイプのほうがPTSDの発症確率は高いことが実証されています 。
寺町:確かにレイプ被害者は「魂の殺人」という言葉をよく使います。私が代理人を務めた北海道釧路市の事件の被害者は3歳から8歳まで、叔父からレイプを含む性虐待を受けていました。彼女は「殺してくれればよかった。殺してくれたら、警察も動いてくれたのに」と言っていました。■ 釧路市の事件の壮絶な実態
この事件は昨年秋、札幌高等裁判所で被害者の訴えの大半が認められ、約30年前の事件でしたが、被害認定されました。その後、今年7月上旬に、最高裁判所で被害者の勝訴が確定しました 。
先ほど植田さんは「記憶をなくす」とおっしゃいましたが、性犯罪の被害者に多い症状です。解離性障害とか解離性同一性障害とか言われますが、もうひとり自分がいて斜め上から見ている感覚があるという方や、多重人格になって「自分には十数人の人格がある」という方もおられます。
釧路の事件の被害者は、解離症状で出てきた「もうひとりの自分」と「本当の自分」と、どっちの自分が本当に生きているのかわからない感覚の中で時を過ごしてきました。今、治療過程にあって、今まではつらさや痛みを引き受けてきてくれていた「もうひとりの自分」が統合されてきて、逆に「本来の自分」が全身に激しい痛みを感じるようになってつらいそうです 。
彼女の苦しみを目の当たりにし、人を殺したら罪になるのに、子どもを強姦して、その子が長い年月生きているか死んでいるかわからないような苦しみを背負っても、黙っておけば何らペナルティを受けないという現状は、間違っていると思います。それは、その子の魂を殺すに等しい行為なのですから。

ひどい犯罪の被害者なのに、被害者が救われない現状は、社会も法制度も問題だらけですね。
植田:被害は認識できて初めて被害になると思います。でも、子どもだと、何が起きているのかわからないことが多いのです。勇気を振り絞って親や友達に話しても、嘘だと思われ信じてもらえなかったり、「汚い」と言われたり 、ますます傷が深まって本当のことが言えなくなる。被害者は口をそろえて「普通の子でいたい」「重いからと引かれたくない」と言うのです。被害を受けた側が周囲に気を使っている。
幸運にも、話を聞いてくれる人を見つけたとしても、被害者本人と支援者の間には溝も大きいのです。たとえば同居の親が加害者であれば、支援者は全力でその子を逃がそうとします。でも、本人は逃げられない。逃げてはいけないと思っていたり、そんな親でも愛していたりする。
逃げたい気持ちとそれでも家族を愛する気持ちの間で迷っているときに「逃げろ」と言われると、逃げたい気持ちを引っ込めて親をかばってしまうことがあるのです。本来、すぐにでも親から引き離すべき虐待なのですが、本人の気持ちが混乱している状況で「逃げろ、逃げろ」と言うことは、時に被害者をよくない方向に追い詰めることになります 。
いろいろなハードルを越えて、逃げたり訴えたりしようと考えても、びっくりするほど支援のリソースがない。小さな子どもはすぐに保護されても、10代後半になると保護されにくくなります。自分の意思で動けるようになると、本人の意思に反してさらうように保護するのは難しい。仮に児童相談所に尋ねられても、本人が「何もされていない」とうそをついてしまったり、保護されても自分から親のところに戻ってしまったりすることもあります。
被害者が何に苦しんで何をひとりぼっちで抱え込んでいるか、現実を知りたくて撮影を続け、何が起きているのか、多くの人にわかってほしくて、このショートフィルムを作りました。

被害の傷跡は何年、何十年も消えない

「犯罪白書」(平成24年版)では、強姦の加害者に占める親族の割合は4.6%、強制わいせつの場合、1.6%となっています。これは検挙された事件に限った統計なので、植田さんが取材された女の子たちのように、実際は、何年も言えずにいる被害者が多いのでしょうね 。寺町さんは弁護士として、子どもの頃、性虐待を受けた被害者に多く接しています。被害者は何を求めていますか。 寺町:被害者が弁護士に相談しよう、と思えるようになるまで、何年も、いえ、何十年もかかることが多いです。
たとえば成人女性からは「子どものとき、叔父や兄から性被害を受けた。今から訴えられないか」という相談を受けることがあります。
また、相続が発生したときに「過去に受けた性的虐待の事実は相続分を決める際、関係ないのか」とか、かつて自分に性虐待を行った加害者が困窮しているので扶養してほしい、という通知を自治体から受け取り「こんなひどいことをされたのに、自分に扶養義務があるのか」といった相談もあります。
民法の規定で、直系だと強い扶養義務(生活保持義務)がありますが、傍系だと弱い扶養義務(生活扶助義務)しかないので断れますよ、直系でも過去に受けた虐待の事実を説明すれば考慮されますよ、とアドバイスしますが……。
ほかには「加害者と縁を切りたい」とか「名前を変えたい」といった要望もあります。日本には絶縁の制度はないので、加害親族が追いかけようと思うと、追いかけてこられることが問題です。

児童施設長、入所少女にみだらな行為 京都、容疑で逮捕

京都新聞 2015年9月8日

施設に入所していた少女にみだらな行為をしたとして、京都府警少年課と下鴨署は8日、児童福祉法違反の疑いで、京都市左京区下鴨宮崎町、児童養護施設「迦陵(かりょう)園」施設長の男(54)=同区新間之町通二条下ル=を逮捕し、同園を家宅捜索した。
下鴨署によると、男は「全く身に覚えがない」と容疑を否認している、という。
逮捕容疑は、昨年8月5日夜、同園のキャンプ行事で訪れた長浜市内の宿泊施設で、当時高校生だった少女が18歳未満と知りながら、みだらな行為をした疑い。
下鴨署の説明では、松浦容疑者は当時、「テレビを見に来ないか」と少女を自身の部屋に誘い出したという。少女に打ち明けられた保護者が昨年末、市に相談して発覚した。
迦陵園の森和己総務部長は「状況経過を確認している。子どもたちに不安を与えないよう配慮したい。職員に聞き取りするなど、今後調査することを検討したい」と話した。

病的な痩せと健康的な痩せの違いは?

Mocosuku Woman 2015年9月9日

「肝内胆管がん」の手術を受けたことを発表した川島なお美さんの激ヤセが話題になっています。現在は回復傾向にあり、舞台の稽古にも励んでいるとのことですが、あまりの痩身ぶりに見ていて心配になります。一般に、大病を患った人は病気の深刻度と比例して体が細くなる印象がありますが、やせていても十分に健康な人もいます。病的な痩せと健康な痩せとはどこが違うのでしょうか?

20代女性の半数は「痩せ過ぎ」
「痩せ」にもさまざまなタイプがあります。厚生労働省が2015年に行った国民栄養調査によると、20代の女性の半数が「病的に」痩せているという報告があります。
医学的な基準では、身長160cmの女性で体重が45kg以下ならば痩せ過ぎと考えます。肥満が不健康であることはしばしば取り上げられますが、過度の体重減少も身体にとっては有害です。
日本人の女性は、痩せている=美しいと考える傾向があり、太っていなくてもダイエットに取り組む人が少なくありません。中にはそれが行き過ぎて拒食症や過食症などの摂食障害になる人もいます。摂食障害は精神疾患の一種であり、治療が必要です。
ほかにも、特に痩せる努力はしておらず、食事も普通に摂っているのに身体が段々痩せくる、という場合があります。過労や睡眠不足、精神的ストレス、運動のしすぎなどが理由であればあまり心配はいりませんが、何らかの病気があって痩せてくる場合もあるので注意が必要です。

痩せ過ぎとは
では、「痩せ過ぎ」は具体的に何が問題なのでしょうか? 痩せ過ぎは、体力がなく衰えやすい状態です。鉄分不足の貧血により頭のふらつきを覚える人も少なくありません。
痩せ過ぎだと身体に疲労が溜まりやすく、すぐ疲れてしまいます。室内と外気の温度差が激しい時には自律神経が乱れて立ちくらみを起こします。
また、脂肪や筋肉が少ないので、骨格が歪みやすく体型を維持しづらい状態でもあります。このため猫背の人や足を組む人が多く見られます。また、多くの人が頚椎や脊椎などのずれ、ストレス、眼精疲労などによって肩こりに悩んでいる人が多いようです。

体格の指標BMI
日本肥満学会では、適正体重の基準をBMI値に求めています。BMI(Body Mass Index)とは体格を表す指標で、次の式で算出します。

BMI=体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]
統計的には、BMIが22の時、ヒトは最も病気にかかりにくい状態だと言われています。BMI=22となる体重を標準体重とされるのはこのためです。BMI=19.8未満は痩せているとされます。
逆にBMI=22にするために、自分の適性体重が何kgなのかは、次の計算式で求めることができます。

適正体重=身長[m]×身長[m]×22
公式データによれば、川島なお美さんの身長は158cmですから、彼女の場合は1.58×1.58×22=54.9208、つまり55kgくらいが適正体重となります。川島さんの現在の体重は明らかになっていませんが、ネットの報道では30kg台前半という話もあります。仮に35kgだとしても、適正値より20kgも少ないことになります。

痩せる原因
不健康な痩せは、代謝を維持する甲状腺ホルモンの一種の分泌量が極度に低下して起こります。この状態が起こる疾患としては、がんのほかに糖尿病、甲状腺機能亢進症、胃や腸の疾患、悪性腫瘍、精神疾患、結核などがあります。
がん以外の病気の場合は痩せる以外にもさまざまな症状が出ますが、がんの場合には、痩せることだけが主な症状である場合があります。

痩せ過ぎの人に見られる症状
上記のような病気を発症しているかどうかに関わらず、痩せ過ぎの人には身体に次のような症状が現れます。

【無月経】
体重が減ってエネルギーが不足すると、私たちの身体は生命維持に必要な機能を優先させて、身体を守ろうとします。これにより、女性の場合、生殖機能がストップします。短期間に体重が10%以上減ると、女性ホルモンが分泌されず、排卵が起こらなくなると言われています。このため、痩せ過ぎのサインとして無月経は見逃せません。
【胃腸のトラブル・食欲低下】
痩せ過ぎの人には、胃が痛い、重い、気持ちが悪い、お腹があまり空かない、お腹を壊しやすいといった症状があります。食欲が減退してきて痩せてきた場合は、主に胃腸や肝臓、膵臓など消化器系の病気の可能性があります。胃腸の働きが低下すると食物の消化吸収が低下して痩せてきます。

◆死亡率
最近の研究で、男女ともに太っているよりも痩せているほうが、死亡率が高くなることがわかってきました。また、米国のワシントン大学の研究グループの発表では、65歳以上の高齢者で、痩せ過ぎのほうが死亡率は高くなり、健康上の問題が多いということが指摘されています。
2009年には日本の厚生労働省も、成人後に体重が増えた人よりも減った人のほうが、中高年での死亡リスクが高いと発表しています。栄養不足による免疫力低下などが影響している可能性があるということです。