【ルポ】子どもたちの貧困~夢なんて持てない。「社会からの偏見」と「進学格差」 子どもを絶望させる社会に未来はない!

現代ビジネス 2015年9月20日

身近にある子どもたちの貧困
「大人の勝手な都合で不幸になる子どもたちをこれ以上増やさないでほしい。辛い思いをするのは俺たちだけで十分だ。僕はごくごく普通の家庭を築きたい。公園で家族と手をつないで歩いてみたい」
渡辺隆さん(仮名、専門1年生)は7歳のときに両親が離婚。父と家を出たが住む場所がなく車生活を余儀なくされた。3年間学校へも行けず、生活をするために盗みもした。
そんな生活のなかである日父が病に倒れ、その1年半後に亡くなる。ガリガリに痩せた渡辺さんは、やがて保護され児童養護施設で暮らすようになった。「俺が父ちゃんを苦しめたからだ」と自分を責め続け、1人布団の中で泣いた。
日本には虐待や育児放棄、親の貧困や精神的な病などが理由で、親と暮らせない子どもたちが約47,000人いる。そのうち約3,0000人の子どもたちが児童養護施設で生活する。
18歳になると子どもたちは施設を退所しなければならない。状況が改善し家庭に戻るケースもあれば、他の福祉施設に措置変更がなされることもあるが、そのほとんどが18歳で社会に出て自活を余儀なくされる。
「18歳は、大人ですか?」―そんな問いを投げかけ、児童養護施設の子どもたちの自立をサポートするNPOブリッジフォースマイルは、施設の子どもたちの夢を応援する「カナエール~夢スピーチコンテスト」を2011年から毎年開催している。
今年6月末に開かれた東京公演で、トップバッターとして舞台に立った隆さんは、「オリンピック選手のスポーツトレーナーになる」という夢を語った。

社会からの偏見
「施設にいることがコンプレックスでずっと隠していました。自分が気にしすぎているだけかもしれませんが、みんなが離れていくんじゃないか、怖いんです。
“親に捨てられたかわいそうな子”という目で見られるだけで深く傷つきます。その偏見は社会から消えることはないと思います。
施設にいる子たちはなにも悪くないのに、自分たちはみんなと違う、普通じゃないと思わされてしまうんです」
児童養護施設で暮らす安部美咲さん(仮名、高校3年生)は淡々と思いを言葉にした。
日本にはいま全国に約600の児童養護施設があり、その形態によって生活環境は異なる。
近年は、施設においてもより家庭的な環境を整えることが重要視され、小規模化が進められているが、現状は約6割の施設が「大舎制」となっている。そこでは、一つの大きな建物に、食堂や浴場があり、子どもたちは個室~8人部屋で生活をしている。
子どもの親代わりとなる施設職員は、日常生活の世話から学校行事への参加、進路相談などを行う。日本における施設職員の配置基準は、児童5.5人に対して1人となっている(平成27年4月より児童と職員の割合を4:1にした場合、その分補助金が加算される)。三勤交代で5.5人の親代わりとなる仕事はハードであるがゆえ、3年で退職する職員は54%にのぼる。
「施設は大人たちにとっては職場でも私たちにとっては家です。誰にも言えないような相談を“きまりだから”と観察日記に書かないでほしい。私たちは居場所がないからここ(施設)にいるんです。ルールが守れないなら出ていけと言われても、どこにも行く場所なんてない。
団体行動ではなく、一人で過ごすことができる、友達を呼ぶことができる、自分の家を持てるように自立したい」
語学や異文化を学ぶことが好きだという美咲さんは、もっと広い世界を知りたいと大学進学に向けて受験勉強に励む。その傍ら、入学資金等を稼ぐために日々アルバイトもこなす。

圧倒的な進学格差
児童養護施設退所者の大学進学率は約20%で全国平均75%を大幅に下回る。一方、大学進学後の中退率は30%と、その数は全国平均の約3倍。大学に進学しにくく中退しやすい、その一番の要因は「お金」だ。
児童養護施設退所者は、大学の学費に加え住居費も生活費もすべて自分で賄っていかなければならない。ある学生は、月120時間をアルバイトに費やしているがそれでも生活は苦しいという。
親を頼ることもできず、高校卒業と同時に施設に帰ることもできない18歳の若者にのしかかるその負担は、経済的にも精神的にも大きい。結果、児童養護施設出身者のうち、進学し卒業までするのは全体の14%となる。
ブリッジフォースマイルが児童養護施設で生活する高校生1,079人に行った調査によれば、進学希望率36.2%に対し、進学予想率は27.9%と下回る。「進学はしたいが、資金が足りないのでまず就職して、お金を貯めてから学校にいきたい」といった回答も数多く見られた。進学格差が、将来に対する「希望格差」を生み出している。

施設の子どもたちだって夢を持ってもいい
「児童養護施設の子たちは、自分が置かれた環境から、大学に進学するのは贅沢だ、夢なんて持ってはいけない、と思い込んでいる傾向にあります。
やりたいことを考える余裕がなかったり、得意なことがあったりしても、希望よりも給料や条件のいい安定を求めてしまいます。もちろんそれも選択肢の一つですが、初めからあきらめる必要はないし、無言の圧力のようなものをとっぱらいたいんです。施設出身者だって夢を持ってもいい。それが叶わなかったとしても、やり直しができる、ということを知ってほしいんです」
ブリッジフォースマイルの代表・林恵子さんはそんな思いをもって、4年前に「カナエール」を始めた。カナエールは、施設の子ども1人に対して大人3人がサポーターとなりチームを組んで、120日間準備を重ね、大衆を前に夢を語るスピーチコンテストだ。
出場した学生には、奨学金として一時金30万円と卒業するまで毎月3万円が支払われる。その奨学金は1口月2,000円(年24,000円)の継続的な個人の寄付で賄われている。15人のサポーターが集まると1人の学生を支援することができる。特徴は「顔が見える支援」をすること。
「児童養護施設の子どもたちの存在を知ってから何かしたいと思ったのですが、いまいち顔が見えなくて何をすればいいかわからなかったんです。施設で暮らす子はどんな子なのか、どんな支援を必要としているのか。
当時の私のように支援したい人がいて、支援を求めている子どもたちがいる。両者の顔の見える支援ができる仕組みを作りたいと思ったんです」(林さん)
実際にやってみると、支援をしたい人と求めている人を“ブリッジ”するのは思った以上に困難だったと林さんは振り返る。ブリッジフォースマイルは2014年、他のプログラムも含め467名の子どもたちを支援してきた。カナエールの奨学金継続寄付者数は東京と横浜で175人、福岡で151人となる。
「私たちはこのプログラムに参加する子たちを施設における“エリート”だと思っているんですが、それでも、初めは自分のことを振り返りたがらないし、施設にいることも認めたがらない。サポートする大人たちを前に心を閉ざしてしまう子も多いんです。
でも120日間のプログラムのなかで、自分の話を聞いてくれる人がいるんだ、と徐々に心を開き距離が縮まっていきます」
カナエールの運営をするブリッジフォースマイルの植村百合香さんはプログラムを通じて子どもたちの変化を目にしてきた。
「子どもたちは学校に行ってバイトもして、22時くらいから打ち合せをしたりするのでとても大変なんですが、その分、舞台に立ったときの達成感は大きいでしょう。約500人の前で自分の夢を語るなんて、大人でも緊張してしまうことですから。プログラムを通して、卒業するまでに意欲と自信を持ってもらいたいんですね」(植村さん)
今回のカナエール東京公演では、10人の学生たちから、声優や料理人、ジャーナリスト、検察事務官やブライダルプランナー、教師など多様な夢が飛び出した。舞台に立つ学生の後ろには、それぞれ3人の大人たちが見守る。奨学金をサポートする人たちを中心に約500人が集まった会場では、みな学生の言葉にしっかりと耳を傾け、涙する人もいた。まさに、顔の見える大人たちが、子どもたちの夢を支えている。

頼れる大人と、身近なロールモデルを
「6歳のときに父は家に帰ってこなくなり、11歳のときに母は亡くなりました。18年間これでもか、というくらい大切なものを失ってきた。家に帰っても誰もいない、そんな日でも習っていた機械体操に行けば居場所がありました。
そこで自分を見ていてくれる一人の大人がいたんです。『帰れ! 』と泣かされたこともあったけど、『お前はずっと俺の教え子だから何かあったらいつでもこいよ』と言ってくれた先生がいたからがんばれます」
子どもたちと向き合うジュニアスポーツ指導員になりたいという土屋あずささん(仮名、大学1年生)は、自分を支えてくれる大人の存在の大切さを訴えた。
「1歳2ヵ月で施設に預けられたので親との思い出はありません。僕にとっては施設での生活が当たり前でした。施設の先生たちが自分の親代わりになって、自転車の練習に付き合ってくれたり、授業参観に来てくれたり、いつもそばで支えてくれました。もし僕が一般の家庭に生まれていたとしたら、先生たちに出会うことはなかった。そう思うと施設育ちでよかったと思います」
子どもたちのお腹も心も満たす料理人になりたいという岩崎康祐さん(仮名、専門1年生)は、施設で育っても夢は叶えられると、後輩たちに伝えたいと意気込む。
カナエールで語られる一番多い夢は、施設職員や先生だという。子どもたちの身近にいる大人たちの影響力は大きい。
「まだまだ身近な大人以外のロールモデルが少ないんですね。一緒に施設で暮らしていた先輩が、大学を卒業して就職をして本当に自立した姿を見せてくれれば、次の世代も続いていくと思います。同じ環境にいたほうが説得力もありますから。施設出身者から多様なロールモデルを出していくことがカナエールの一つのゴールです」(林さん)
カナエールでは、会場に見に来ていた子どもたちが翌年のプログラムに参加するケースもあるという。少しずつ、自らの夢を叶えている若者たちも増えてきている。
今年10周年を迎えたブリッジフォースマイルの記念パーティーには、40人を超える施設出身者とボランティアサポーターや施設関係者、合計170人が集った。施設退所者にとって、ブリッジフォースマイルとそこに関わる大人たちの存在は、育った施設以外の一つの拠り所になっている。
「施設出身者が抱える大きな問題は、やはりお金と人間関係。退所して、そこでつまずいてしまう子たちが多いんです。私たちは小額でも奨学金を払うことで、子どもたちと継続的に関わりを持つようにしています。奨学金は、金銭面だけではなく、その子を一人にしないためのものでもあるんです。
施設も退所後の子どもたちのケアに努めていますが、職員が忙しいことはそこで育った子どもたちが一番わかっているから、頼らないケースも多いんですね。実家にも頼れないなかで、トラブルに巻き込まれたり失敗したりしたときに、どう自分の体制を整えられるか。一番大事なのは、危うい状況になったときに最後の拠り所があるかどうか、なんです。」(林さん)
私たちの気づかないところで、どこにも居場所のない子どもたちが苦しんでいるかもしれない。ブリッジフォースマイルはカナエール以外にも、施設を出る直前に生活スキルを磨く「巣立ちプロジェクト」や退所後のネットワーク「アトモプロジェクト」などにも取り組む。
「児童養護施設が、子どもの生活の場所として当たり前になって、偏見もなく、社会に出るときもなんのデメリットもないし、チャンスもある…そういう場所になったら私たちの活動はいらなくなるでしょう。必要とする施設の子たちがいる限りやり続けます。」(林さん)

保育士になって「良かった」「ちょっぴり後悔した」エピソード

@DIME 2015年9月20日

保育士や幼稚園教諭の人材紹介サービス「保育のお仕事」を展開する、株式会社ウェルクスは、同社が運営するサイト「保育のお仕事レポート」にて、読者を対象に行ったアンケートに基づいた独自のコンテンツを発表した。これは主に保育士や幼稚園教諭として働く人に対し、仕事のやりがいと大変さについて聞いたもの。アンケート結果によれば、回答者の97%が「保育士になって良かった」と思った経験を持っていると同時に、64.1%は「保育士になって後悔した」経験も持っていることがわかった。まず「今までに保育士や幼稚園教諭になって良かったと感じた経験があるか」を聞いたところ、回答者の97.4%が「ある」と回答する結果となった。また、「この仕事に就いて良かったと感じたのはどのような時か」聞くとところ、最も多かった回答は「子どもの成長を感じたとき」で46.0%、次いで「保護者から感謝されたとき」が30.2%となった。
自由回答からは、次のようなエピソードが集まった。
・ひとつひとつ子どもたちがやる気をもって取り組む姿勢が見られたり、昨日できなかったことが今日はできたり…子どもの成長が見られると、なって良かったなと思う。(20代女性)
・「うちの子は先生が大好きで、先生がここまで育ててくれた!ぜひ、戻ってきて下の子も見て欲しい」と言っていただいた時は本当に嬉しかった。(20代女性)
・まだ言葉が話せない0歳の子どもたちが自分の顔をみてニコニコと微笑んでくれる姿を見ると保育士になってよかったなと思う。(20代女性)
一方、保育士や幼稚園教諭になって後悔した経験の有無についても伺ったところ、「経験がある」と回答したのは全体の64.1%で、半数以上の人はなんらかの場面で、保育士や幼稚園教諭になったことを後悔した経験があるようだ。また、「後悔したのはどのような時か」を聞いてみたところ、最も多かった回答は「職場の人間関係上のトラブルがあったとき」と「給与など待遇面での悪さを感じたとき」で29.3%、次いで「業務量などに負担を感じたとき」が24.4%となった。

自由記述で書かれた内容は下記の通り。
・上司とあわず、パワハラで自分が壊れそうになった。(40代女性)
・上がらない給与… 微々たる昇給額は、住民税に消えていきます。(30代女性)
・サービス残業は当たり前、持ち帰りも毎日で家に帰っても休めない。(20代女性)
今回の調査結果からは、やりがいを感じつつも処遇や業務量、人間関係の点で悩みを抱えている保育士が多いという、保育業界の現状が伺える。

■アンケート調査概要
・実施期間:2015年5月21日~5月30日
・実施対象:保育士(80.8%)・幼稚園教諭(6.4%)・その他保育関連職(5.1%)・主婦/その他(離職中など7.7%)
・回答者数:78人(平均年齢:30.1歳)
・男女割合:女性/96.2%・男性/3.8%
・回収方法:facebookおよびLINE@で告知

「もう一発いったれ」暴行の一部始終が動画に…7歳男児が被害 中学生の姉弟の犯行

産経新聞 2015年9月19日

京都市西京区の路上で今年8月、小学生の男児(7)が殴られる事件があり、京都府警右京署は18日、暴行の疑いで、中学3年の少女(15)=京都市西京区=を逮捕した。男児が殴られる様子が動画撮影されていたという。
逮捕容疑は8月27日午後5時20分ごろ、中学1年の弟(12)と共謀し、同区の路上で京都市内の小学生の男児(7)の顔を殴ったなどとしている。
同署によると、男児を直接、殴ったのは弟だったが、少女が「殴ってこい」と命じたことや、暴行の様子を携帯音楽プレーヤーで約1分間にわたり動画撮影していることなどから、共犯として逮捕に踏み切った。同署の調べに、少女は「動画を撮影しただけ」と容疑を否認しているという。
撮影された動画には少女が「もう一発いったれ」と弟をけしかける様子や、暴行後に男児の顔を撮影しながら「その顔いいよ」と話す様子も録画されていたという。
姉弟と被害にあった小学生の男児に面識はなかった。弟は「テレビ番組で体の大きな人が暴行する様子を見ていたら、面白そうだと思って、自分も殴ろうと思った」と説明しているという。
同市右京区内で、同様の事件が9月にも1件発生しており、関連を調べている。また、暴行容疑を認めている弟について同署は児童相談所への通告などを検討しているという。

誰がデモをつくったのか

オルタナ 2015年9月19日

安全保障関連法は19日未明に採決されたが、連日国会議事堂前や全国各地で反対のデモが開かれている。デモに集まる人は無数におり、来た理由もさまざまだが、このデモをつくりだしているのは、誰か。私たちはどのような社会をつくってきたのか。(オルタナS副編集長=池田 真隆)
学生団体SEALDs(シールズ)などは9月18日、国会議事堂前で安全保障関連法案に反対するデモを開いた。複数の団体が反対の声をあげるなか、シールズよりも若い高校生の団体がいた。その団体を立ち上げた高校2年生は、「大学生が声をあげる姿がかっこよかった。高校生でも何かできないかと思った」と話す。
高校生からなる団体の名称は、T-ns SOWL(ティーンズソウル)。代表は高校2年生で16歳のジョーさん(仮名)。ジョーさんは友人に連れられて、安保法デモに参加したとき、「声をあげる姿がかっこいいと思った」と話す。高校生世代としても動きたいと思い、7月初旬に団体を立ち上げた。SNSを使ってメンバーを募り、今では60人弱が所属する。
「安保法は、大学生よりも高校生にとって重要な気がする。冷笑しているだけではあぶない」と一人ひとり考えて、声をあげることを同世代に訴えた。

6人に1人が月14万円の家庭
ジョーさんは「首都圏高校生ユニオン」の立ち上げにかかわったメンバーの一人。首都圏高校生ユニオンでは、高校生からアルバイトに関する悩み相談などを行う。アルバイトでノルマを求められたり、強制的にシフトを入れられたり、賃金の不払いなど、高校生の無知につけこむ「ブラックバイト」へ対抗する。
高校生からなる労働組合(ユニオン)ができたのは初めて。このような組織ができた背景に、貧困がある。働く高校生たちの多くは、一人親家庭で、経済的な事情を抱えている。ネット上では、「アルバイトなのだから辞めたらいいのに」という意見もあるが、家庭の経済的事情を抱える高校生からすれば、「親の負担をできる限り軽減させたい」と、毎月の収入が途絶えることは厳しい。
日本の子どもの貧困は、16.3%(厚生労働省)で、年々割合は増えている。貧困の基準は、親と子どもの2人世帯で年に173万円(月約14万円)で、このような収入で暮らしている子どもが6人に1人いる。この割合は先進国の中でもトップクラス。子どもの貧困は次の世代にも連鎖し、少子高齢化など社会問題を生み出している。
国からの支援も乏しく、対GDP比における公的教育支出は、2005年から2011年までOECD(経済協力開発機構)のなかで、最も低い。
デモに集まる人の理由は、「戦争反対」だけではない。「民主主義のあり方を問いたい」という人もいれば、「友人に誘われたから」「今日仕事が早く終わったから」などという人もいる。そして、その無数にある理由の背景の一つに、「貧困」がある。デモをつくっているのは、誰だろうか。