産めない母と育てられない母 「特別養子縁組」で子どもを授かるという選択

現代ビジネス 2015年9月22日

「私は産めなかったから。自分にはできないことをしてくれたという気持ちが大きいんですよねえ。この子と出会わせてくれた実母には、本当に感謝ですよ。この子を産んでくれなかったら、私は母にはなれなかったので」
村田晴美さん(仮名、44歳)は、5年間にわたる不妊治療を経て「特別養子縁組」によって長女・絵美里ちゃん(仮名、2歳)と親子になった。2人に血のつながりはない。
特別養子縁組は、6歳未満の児童を対象に、家庭裁判所が「子どもの利益のために」必要だと判断した場合、実親との親子関係を消滅させ、養親の実子とする養子制度だ。
家を守るためなどを理由に親族間で行う「普通養子縁組」と違い、戸籍上も「養子・養女」ではなく「長女・長男」と記載され、離縁も認められない。つまり、血のつながらない子どもを家族として受け入れるための制度となる。

産めなかった母~血のつながらない子を育てられるのかという不安
35歳で結婚した晴美さんは、37歳のときに不妊治療を始めた。男性の精子を子宮内に人工的に注入する「人工授精」から、子宮から卵を取り出しシャーレの中で精子と受精させて再び戻す「体外授精」まで、5年間不妊治療を続けたが授精することはなかった。
不妊治療を重ねれば重ねるほど、子どもがほしいという気持ちが膨らんでいく。でももう不妊治療をこれ以上続けるには、精神的にも、身体的にも、金銭的にも限界がある。
気分転換にと夫婦で出かけた旅行でも、ひょんなことで夫の明義さん(仮名、46歳)と大喧嘩に。追いつめられた晴美さんの頭に浮かんだのが「特別養子縁組」という選択肢だった。
「不妊治療を続けるなかでその存在は知っていたんです。でもやっぱり、血のつながらない子どもを家庭に受け入れるには、抵抗、というか不安があって。本当に自分の子どもとして育てられるのか、主人や両親、世間から理解してもらえないんじゃないか、偏見をもたれて子どもと傷つくんじゃないかって。でも、旅行での大喧嘩でどこか投げやりになって、勢いで児童相談所に駆け込んでいました」
特別養子縁組をするには、まず国が管轄する児童相談所か民間のあっせん団体に申請し、研修や家庭調査などを経て、認定・登録をしなければならない。申請要件や研修内容は自治体や団体によって異なる。
たとえば東京都では、25歳以上50歳未満の婚姻している夫婦であること、居室の広さが2室10畳以上あること、収入が生活保護水準を上回っていることなどが条件として挙げられる。年齢、夫婦関係や経済力も含む家庭環境のほか、受け入れる心構えも条件のひとつとなるため登録の前にも研修を行う。
気持ちが傾くものの研修があっさりしていていまいち決断ができなかったという晴美さんは、特別養子縁組を望まない「養育里親」の事前研修を受けた。そこでも「子どものための制度」であること、障がい児童や虐待児の育てにくさなどが強調され不安が拭えない。
そんななか、子育ての面白さを語る1人の里親に出会い、泣きながら思いをぶつけたことがきっかけでようやく決心がついた。
「実子3人と里子2人を育てる里親さんが『子育てって本当に楽しいから、ぜひみなさんにも経験をしてほしい。子どもを受け入れたいと思う親の気持ちだって大切にしていいと思う』とおっしゃっていて、背中を押されたんです。
その後は主人を巻き込むため、研修には必ず2人で参加して説得しました。初めは面倒くさそうでしたが、研修で児童養護施設に一泊2日で滞在したときには、私よりも子どもと仲良くなって『連れて帰りたい』と寂しそうでしたね」
こうして村田夫妻は自治体が求める条件を満たし、子どもを迎え入れる体制を整えた。養親組希望里親に登録をしてからすぐ、児童相談所から子どもの紹介があり夫婦で乳児院に駆けつけた。
生後3ヶ月の絵美里ちゃんと面会。抱いた瞬間に、不妊治療で大変な思いをしたことも忘れるくらい温かい感情がこみ上げて涙が出た。この子の親になる。踏み切れなかったのが不思議なくらい自然と強い気持ちが湧いた。

育てられなかった母~親子の縁を切るのは怖い
特別養子縁組は、子どもと面会してから1~3ヵ月の交流を経て、家庭裁判所に申し立てる。この時点では親権は実親にあるため、家庭裁判所が調査を行い、裁判で親権を養親に渡すかどうかを判断する。
判決後、2週間公示され、異議申し立てがなければ特別養子縁組が成立する。
村田夫妻は乳児院に通い絵美里ちゃんと交流を重ね、家庭裁判所に申し立て、調査員と親になる準備を進めた。しかし、順調にはいかなかった。
特別養子縁組の対象となる子どもの母親の多くは、学生という立場、風俗やレイプ、不倫などによる予期せぬ妊娠、パートナーの裏切りや貧困、病など、子どもを自分で育てられない複雑な事情を持つ。実母にどんな事情があったかはわからないが、絵美里ちゃんには父親の認知がなかった。
家庭裁判所が実母に特別養子縁組の話を持っていったが、対応することがないまま連絡がとれなくなってしまった。親権者の同意がなければ、特別養子縁組は成立しない。絵美里ちゃんを家族として受け入れられるという喜びもつかの間、家裁による調査が止まってしまった2週間はめまいと吐き気がしたと晴美さんは振り返る。
「そのときはただ待つしができなくて、正直、実母さんに対して育てられないのに『いまさらなんで?』という気持ちがありました。でも、実際に私も母親になって、たとえ育てられない事情があったとしても手放すのは怖い、親子の縁を切りたくないという気持ちがわかります。自分がもし絵美里を育てられない事情が出てきてしまったら……と考えても署名はできないですよ。」
家裁の調査員が実母の祖母に連絡をする等粘り強く交渉をし、村田夫妻と絵美里ちゃんの特別養子縁組は成立した。
絵美里という名前は実母がつけたもの。村田夫妻は自分たちで新しい名前をつけることも考えたが、絵美里という名前で育てることを決めた。
「ちょっと複雑な思いもあったんですが、実母さんが絵美里に残した唯一のものだから」
村田夫妻は2歳の絵美里ちゃんに少しずつ、自分たちが産みの親ではないことを伝える「真実告白」をしている。
「絵美里はまだよくわからないと思うけれど、隠すつもりはありません。自分が産んでなくても、絵美里は私たちの子どもで、私たちの家族には変わりはないので。」
少し離れた場所で夫の明義さんと戯れる絵美里ちゃんを見つめながら微笑む晴美さん。血のつながりがないとは思えないほど、3人はどこか似た雰囲気のある家族だった。

特別養子縁組で0歳児に満たない命を救う
村田夫妻が行った特別養子縁組は、1988年の民法改正で新設された。そのはじまりは、ある産婦人科医による乳児の出生届の不正が発覚した事件だった。
人口中絶に疑問を抱いていた菊田昇医師は、中絶を希望する妊婦に出産することを薦め、子に恵まれず悩む夫婦に乳児を養子として出した。その数は100組以上にのぼるという。菊田医師は実母が出産した経歴が戸籍に残らないよう、養親が実子として育てられるよう、出生届を偽装していたのだ。不正とはいえ、100名以上の小さな命を救ったことに多くの人が賛同し、のちに民法が改正された。
日本ではいま、虐待で命を落とす子どもたちが年間約100人、そのうち約4割は0歳児だ。望まない妊娠により人工中絶が年間20万件以上ある一方で、子を望む不妊治療(体外受精)の実施件数は年間20万件を超える。そのうち実際に生まれた命は3万件に満たない。
こうした問題点から、乳児が生まれた病院から直接養親の家庭に行く「愛知方式」と呼ばれる“赤ちゃん縁組み”を行う自治体もあるが、まだまだそのケースは少ない。特別養子縁組もマッチングのやり方等も多く、年間400件以下にとどまっている。
少子化が叫ばれるなか、子どもの命がないがしろにされる日本。「特別養子縁組」を進めることはその現状を打破する一助になるかもしれない。

札幌児童相談所、男児を保護せず

ロイター 2015年9月21日

札幌市手稲区で父親に殴られたとして4歳男児が死亡した事件で、市の児童相談所が今月1日、病院から虐待の可能性を指摘されながら「けがが軽く、虐待を裏付けられない」などとして男児を一時的に保護するなどの措置を取っていなかったことが21日、分かった。
児相は「痛ましい結果となり、深刻に受け止めている。今後、児相として対応が正しかったかを検証する」としている。
事件では17日午前1時半ごろ、手稲区のアパート一室で宮北海人ちゃん(4)の腹を殴り、出血性ショックで死なせたとする傷害致死の疑いで、父親の明容疑者(24)が20日に逮捕された。

がんより怖い“低栄養”…65歳以上の6人に1人!100日後生存率50%!

週刊女性PRIME 2015年9月22日

しっかりと朝昼晩食べているつもりなのに、なぜか栄養が足りてない「低栄養」状態。最新の厚生労働省の調査によると、65歳以上の約6人に1人、85歳を超えると約3人に1人が、低栄養傾向という危険に直面している――。

タンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足
「高齢者においては、タンパク質、エネルギーの欠乏が大きな問題です。最初のうちは、体内の貯蔵栄養素を利用することで代謝を維持し、体力を保持しようとしますが、それが長引くと、体重の減少、骨格筋の筋肉量や筋力の低下、体脂肪の低下、感染症などを起こしやすくなります」
そう危険性を説明するのは、南大和病院の栄養部長、工藤美香先生だ。高齢者の場合、食事摂取量の減少が、低栄養の大きな原因になるという。
「身体を動かさないのでお腹が空かない、噛む力や飲み込む力が弱まり食事の量や回数が減る、消化機能の低下、味覚の低下、食べたことを忘れたりする認知機能の低下などの要因が関係しています」と工藤先生は指摘。
何を食べるか、そのひと箸ひと箸も、低栄養に影響する。
「麺などツルッとしたものや軟らかいものばかりを好んだり、果物や生野菜、肉類を食べなくなると、タンパク質やビタミン、ミネラルなどが不足する。固いものや繊維質の多いものを食べるのが難しくなるため、食物繊維が足らなくなることもあります」

ガリガリにやせ細った人ばかりではない
食事量が減る→やせる→低栄養、という図式に当てはまらない“隠れ低栄養の人”がいることも、周囲の気づきを遅くさせているという。
医療法人社団悠翔会理事長で診療部長の佐々木淳先生は、「低栄養でもガリガリにやせ細った人ばかりではないのです。普段から高齢者を診ている看護師でも、見逃すことも」と、外見だけでは見誤ってしまう可能性を指摘。
「低栄養状態を測る指標として、MNA(簡易栄養状態評価表)というスコアリングシートがあります。ネットで検索すれば、すぐシートが出てきます。質問に答えていくと、栄養状態がいいかどうかのスクリーニングができますので、ぜひやってみてください」と呼びかける。
緑風荘病院の栄養室・健康推進部主任の藤原恵子先生は、低栄養かどうかを見分ける家庭でもできる判断基準として、
「体重が6か月間に2~3kg減少した、または1~6か月の体重減少率が3%以上である場合、もしくはBMI《体重(Kg)÷[身長(m)×身長(m)]》が18.5未満である場合」と説明。

低栄養に潜む深刻なリスク
前出の工藤先生は、知らず知らずのうちに低栄養になると、さまざまな発症リスクが高まってしまうと強調する。
「貧血、脳出血、肺炎や結核、転倒した際の骨折リスクが高まり、さらには脳梗塞、がん、呼吸器疾患、肝臓疾患、腎疾患などの疾病につながることがあります。一番怖いのは、最終的に寝たきりの要介護状態になってしまうことです」
前出の佐々木先生が、在宅の高齢患者を対象に調査した興味深い結果がある。そこから浮かびあがるのは、低栄養に潜む、実に深刻なリスクだ。
「高齢者の一番の死因である肺炎になっている人を診ると、約87%が低栄養、要介護の一番の原因となる骨折した人を診ると、約74%が低栄養でした。低栄養と、筋肉量が減少する『サルコペニア』、筋肉が脆弱になる『フレイル』という3つがオーバーラップして、悪循環に陥るんです」
低栄養が命に直結していることを示すデータもあるという。佐々木先生が続ける。
「高齢者のうち、栄養状態が良好の人と低栄養の人が退院後どれだけ生きるかを調べると、前者は3年後も約8割が生きています。後者は100日後には2人に1人が亡くなり、3年後は5人に1人しか生きていない。手術不可能な膵臓がんの人より低栄養の人のほうが生存率は低いんです」
では、どうしたら防げるのか。

おすすめは“乳和食”“ちょい足し食事法”
放置しておけば、死を招く低栄養だが、栄養状態をよくするだけで治るのもまた低栄養である。
例えば、骨や筋肉のもとになるビタミンDなら、牛乳や卵を摂取すれば改善される。それらを日常的に使った『乳和食』を提唱しているのは、前出の藤原先生だ。
「乳和食とは、牛乳と和食を組み合わせた食事のこと。煮物や汁物などの和食に牛乳のうまみ成分を加えることで通常の和食より少ない塩分でコクを出せます。カツオ節や昆布だしを使わなくても、おいしく仕上がります。魚料理の生臭さを消す効果も。病院でも多いと週に4~5回は出しますが、みなさん“言われないと気づかないよ”と驚きます」
前出の工藤先生は“ちょい足し食事法”をすすめる。ご飯や麺類など単品摂取をしがちな人に、特に効果的という。
「例えば、ご飯にシラスをプラス、味噌汁に豆腐と野菜をプラス、ざるうどんには大根おろし、ねぎ、ツナ缶をプラス、牛乳を飲むときは卵と砂糖を加えてミルクセーキにしてみる、など。面倒な調理工程がいらないので、取り入れやすいと思います」

地域のサービスを積極的に利用する
さまざまな食材をいただき、体重を頻繁にチェックすることによって「低栄養状態にいち早く気づくことが、やはり非常に重要なこと」と藤原先生と工藤先生は口をそろえる。2人はそれぞれ、次のような低栄養予防策をすすめる。
「最近はドラッグストアなどに管理栄養士がいることも増えていますし、医療・介護保険制度の中に、管理栄養士が自宅にうかがい栄養相談を行う『在宅訪問栄養食事指導』もあります。都道府県栄養士会が運営する地域住民のための食生活支援活動の拠点『栄養ケアステーション』が、地域の特性に応じさまざまな事業を展開しています。配食サービスも多様化しています」
と、工藤先生。藤原先生は、
「孤独に過ごすことを避け、ご家族と離れて暮らす方は特に、地域サービスを積極的に利用しましょう。料理教室や市民のための公開講座などを病院と市が連携して行っているところもあります」
サービスをうまく利用することで、適切な栄養相談、チェックを受けられる機会がグンと増えるという。正しい知識を得たうえで、「タンパク質を意識しながらおいしく食べ、身体を動かすことがとても大切」と説くのは佐々木先生。食べることにも身体を動かすことにも億劫にならないよう呼びかける。

携帯各社の新料金プランは、どこが得なのか

東洋経済オンライン 2015年9月21日

今月25日に控えるiPhoneの新機種 「6s」と「6s Plus」の発売に先駆けて、KDDIは新たに月額1700円の音声定額プランを11日に発表した。1回の通話時間が5分を超過すると、1700円に加えて30秒につき20円がかかるといった制限はあるが、従来プランより1000円安い。「長電話をほとんどしない」「データ通信がメイン」といったユーザーの支持を集めそうだ。
KDDIは昨年、ドコモの月額2700円の音声定額プランに同額で追随したが、田中孝司社長は「本音を言うと少し高い気もしなくはない」などと漏らしており、社内でも「割高ではないか?」という議論があった。また、auショップ店頭からも「電話をほとんど使わないのに月2700円は高い」といった声が寄せられていたという。iPhone発売に向けて新プランを提供することで、料金に不満を持つユーザーの獲得に打って出たわけだ。
ソフトバンクは同日、ドコモは16日にKDDIと同じ1700円の音声定額プランを発表した。しかし、データ通信について、2社のプランはKDDIと大きく異なる。データ通信料金を合わせた総額が既存プランより高額になるのだ。

KDDIの最安プランは300円値下げ
KDDIの場合、既存プランは6500円から利用できる。(音声定額2700円+2ギガバイトのデータ通信料金3500円+ネット接続料300円)。一方、新プランの場合は6200円だ。(音声定額1700円+3ギガのデータ通信料金4200円+ネット接続料300円)。組み合わせるデータプランが従来の2ギガではなく3ギガ以上となるにもかかわらず、総額では多少安く利用することができる。
ところが、ソフトバンクとドコモの場合、既存プランは同じく6500円から利用できるが、新プランでは7000円にハネ上がる。(音声定額1700円+5ギガのデータ通信料金5000円+ネット接続料300円)。組み合わせるデータプランが5ギガ以上と決まっているためだ。もともと5ギガ以上のプランを利用していたユーザーは値下げになるが、それ以外で「音声定額の料金を安くしたい」と考えるユーザーはむしろ値上げになってしまう。
現在の最安プランはデータ通信量2ギガのプランが対象だが、5ギガに引き上げた理由について、ドコモは「スマホユーザーの月間平均データ使用量が2.9ギガ(4~6月期)であることや、ユーザーの7割超が5ギガ以上のプランを利用しているため。通話が少なくデータ量が多いユーザーを対象としている」(広報部)とコメント。ソフトバンクは「戦略について詳細は申し上げられない」(広報室)としている。
なぜKDDIのように値下げできなかったのか。ソフトバンクとドコモの悩みは共通している。ユーザー獲得のためには追随しなくてはならないが、1契約当たりの通信料収入を下げるわけにはいかないのだ。
ソフトバンクは今期、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが非連結化となり、米国スプリントも回復半ば。ヤフーもアスクル連結による評価益などが発生するが、実質的な大幅成長は望めない。グループ業績の牽引役であるモバイル事業が新プランに足を引っ張られるわけにはいかないのだ。
ドコモも単価下落を避けなければならない事情がある。今期は値引きサービスの負担増加を押さえることや、より高額なデータプランへユーザーを移行させること、さらには徹底したコスト削減によって3期連続の営業減益から復活の兆しを見せる年だ。加藤?・社長は営業益予想6800億円について「コミット(約束する)の数字。結果にこだわって事業を推進したい」としている。iPhone商戦期にユーザーの流出は避けたいが、KDDIの値下げプランまでは踏み切れない。そこでソフトバンクのプランと同じ内容で追随したわけだ。

新色のローズゴールドが大人気
各社とも既存プランについては今後も提供する。データ通信を多く使っているユーザーにとっては新プランが割安になる場合はあるが、「なるべく安く使いたい」というユーザーは既存プランが無難、といった点は押さえておくべきだろう。
現時点では目立った高額キャッシュバックの話題もなく、静かに立ち上がった印象のiPhone商戦だが、3社とも予約台数については「堅調に積み上げている」と回答している。
中でも新色のローズゴールド(ピンク色に近い)が大人気のようだ。「女性が待ち望んでいた色で、予約台数も多い」(販売店関係者)。新・音声定額プランの微妙な違いは、携帯3社の顧客獲得競争に影響をもたらすのだろうか。秋のシルバーウイークに突入し、予約合戦はさらに熱を帯びそうだ。

川崎・老人ホーム連続転落死 暴行、虐待、窃盗も続々と発覚 施設で何が起こっていたのか?

産経ニュース 2015年9月19日

80~90代の入所者3人が相次いで転落死した川崎市幸区の介護付き有料老人ホーム。市は「短期間に3件も起きたのはあまりに不自然」とするが、同施設では、他にも暴行や窃盗などの事件が相次いでいたことが明らかになった。問題発覚後、入所者の家族の話からは、他にもあざをつくったり、亡くなった状況に疑問を抱くような事案、不適切な問題があったことが浮かび上がる。「なぜ急に亡くなったのか」「職員を怖がっていた」…。信頼して大切な人を預けた家族からは、真実を求める声が上がる。(小野晋史、那須慎一、古川有希)

目立つ“特異性”
転落死が相次いだのは、川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」。
市や施設によると、昨年11月4日、4階に暮らしていた男性=当時(87)=が転落。12月9日に4階の同じ部屋から女性=当時(86)=が転落した。同31日には、6階の女性=当時(96)=が転落死した。いずれも未明に転落したとみられている。
県警は事件と事故の両面から経緯を慎重に調べているが、市の高齢者事業推進課の関川真一課長は「昨年まで少なくとも数年間、高齢者が入る(他の)市内の施設で転落死はない」としており、同施設の“特異性”が目立つ形となっている。

足骨折の対応の遅れに「不手際だった」
「すぐに連絡してほしかった。自分たちで判断したかった」
こう話すのは、母親を同施設に預けていたきょうだい(姉と弟)。認知症を患っている母親が今年8月に大腿骨を折ったときのことだ。職員が午前2時ごろに骨折に気付いたが、意識はあるなどとして様子見の対応が取られ、病院搬送されたのは午前9時すぎてから。家族に「緊急性はない」と、施設から連絡があったのもその時だった。
施設の当直日誌には「頭部を出血したが、すぐに止血。足が痛い」と書かれており、対応の遅れに不満を抱いて施設側を問いただすと、「不手際だった」と非を認めたという。
母親の骨折は全治4週間。その後のリハビリには、さらに3カ月かかるとして入院を続けている。
「施設の男性職員が来ると、怖がったり、嫌がったりすることがあった。暗い感じだった」
入所していたときの様子を振り返るきょうだいは、母親が入院後に笑うようになったことに気付いた。
「アミーユにいたときには、私たちが帰ろうとすると、『自分も一緒に帰りたい』と言っていた」
退院後の母親を同施設に戻すつもりはなく、別の施設を探しているという。

行政の“後手後手ぶり”
昨年12月に母親を施設で亡くした男性も、今回の問題発覚後、亡くなった状況が疑わしく思えてきた。
「認知症でほとんどトイレに行くこともなく、夜はおむつを着けていると思っていた。夜中にトイレ内で倒れるという状況は…」
市高齢者事業推進課に電話し、当時の状況を調査してくれるよう頼んだが、「時間はかかる。何か分かったら電話します」と言われたのみ。家族に寄り添うべき行政の「後手後手ぶり」は、真実を求める気持ちをさらに募らせている。

同事業者の他施設でも
「Sアミーユ川崎幸町」では、男性職員4人が入所者の女性(86)に暴言を吐き、頭をたたくなどの暴行を加えていたことや、女性入所者から現金を盗んだとして男性職員が逮捕される事件もあった。
ところが、こうした相次ぐ不祥事は、同施設だけに止まらなくなってきている。3人の転落死発覚後、事業者が同じ横浜市と東京都三鷹市の別施設で、入所者が負傷して虐待が疑われたり、職員が入所者に暴行するケースがあったことが明らかになった。
さらに、事業者の親会社が大阪府豊中市で運営する施設では、30代の男性職員が入所している70代女性の首を絞めるなどの虐待をし、負傷させていたことが判明した。
施設を超えて広がりを見せる入所者への暴力、虐待、事件…。今回の一連の事案の背景には、まだ見えていない根深い問題が潜んでいることもうかがえる。
川崎の施設の運営事業者「積和サポートシステム」の中坪良太郎取締役(37)は、入所者家族からの訴えや、相次いで発覚する問題について「入所者や家族に不安や不信を与えて申し訳ない。信頼回復は容易でないが、職員の教育を見直すなどして再発防止に努めていきたい」としているが、家族の心配を完全に解消するには至っていない。
足の骨折の治療が終われば退院後の母親の入所先を探すきょうだいは、こうつぶやいた。
「施設側には人質を取られている感じ。文句を言うと何をされるか分からないという弱みがあるから、あまり強く言えない。新しい場所に入所するときには、部屋にカメラを設置しようと思っている」
介護の現場に向けられた強い不信感は、簡単に拭い切れそうにない。