養子縁組あっせん、児童相談所の6割どまり 職員不足背景に

日本経済新聞 2015年9月24日

6歳未満の子供を実子として引き取る特別養子縁組のあっせんを2013年度に実施した児童相談所は全体の6割弱にとどまることが24日、厚生労働省研究班の調査で分かった。成立件数は267件だった。この制度は虐待など様々な事情で実親に育てられない子供が、別の家庭で養育されるようにすることなどを目的にしている。
司法統計によると、民間団体のあっせんなども含めた13年の成立件数は474件。研究班は、あっせんの中核を担う児相の動きが低調だと指摘し、「慢性的な職員不足の中で虐待対応に追われたり、経験を持つ専任職員が配置換えになったりするなど態勢上の問題が背景にある」としている。
調査は昨年8~9月に実施。国内の全207カ所(当時)の児相に質問用紙を送付し、95.2%に当たる197カ所から返信があった。
13年度に、特別養子縁組を前提に、登録している里親に子供を委託した児相は114カ所(57.9%)で、委託件数は276件。委託したのが1件だったのは46カ所(23.4%)、2件が34カ所(17.3%)、3件以上34カ所(17.3%)となっている。このうち267件が成立した。
一方、1件も委託していなかった児相は78カ所(39.6%)だった。5カ所は委託に関する回答がなかった。
児相は、里親と子供の双方と面会するなどして性格や相性、家庭環境を調べ、委託するかどうかを判断することになっている。その際には豊富な経験や専門知識が必要とされるが、専任の常勤職員を置いている児相は56カ所にとどまった。
研究班の代表を務める日本女子大の林浩康教授(社会福祉学)は「子供と里親を引き合わせる時だけでなく、委託後や縁組成立後も支援が欠かせず、児相の役割は大きい。長期間の勤務によって職員が経験を積めるようにする専門職化を進めたり、民間機関との連携を強化したりする必要がある」と話している。

特別養子縁組
原則として6歳未満の子供を養父母と縁組する制度。実親との法的関係が残る普通養子縁組と異なり、戸籍上、養父母の実子と同じ扱いになる。望まない妊娠など実親が育てられない事情があり、家庭裁判所が必要と認めれば、6カ月以上の試験養育期間を経て成立する。
全国の児童相談所が中心となってあっせんするが、都道府県などに届け出をした民間団体や医療機関が行う場合もある。司法統計によると、2012~14年の成立件数は年間300~500件台で推移している。

川崎・老人ホーム転落死 暴行、虐待、窃盗も…

産経ニュース 2015年9月24日

介護現場に不安募らせる家族
80~90代の入所者3人が相次いで転落死した川崎市幸区の介護付き有料老人ホーム。市は「短期間に3件も起きたのはあまりに不自然」とするが、同施設では、他にも暴行や窃盗などの事件が相次いでいたことが明らかになった。問題発覚後、入所者の家族の話からは、他にもあざをつくったり、亡くなった状況に疑問を抱くような事案、不適切な問題があったことが浮かび上がる。「なぜ急に亡くなったのか」「職員を怖がっていた」…。信頼して大切な人を預けた家族からは、真実を求める声が挙がる。

目立つ“特異性”
転落死が相次いだのは、川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」。
市や施設によると、昨年11月4日、4階に暮らしていた男性=当時(87)=が転落。12月9日に4階の同じ部屋から女性=当時(86)=が転落した。同31日には、6階の女性=当時(96)=が転落死した。いずれも未明に転落したとみられている。
県警は事件と事故の両面から経緯を慎重に調べているが、市の高齢者事業推進課の関川真一課長は「昨年まで少なくとも数年間、高齢者が入る(他の)市内の施設で転落死はない」としており、同施設の“特異性”が目立つ形となっている。

「不手際だった」
「すぐに連絡してほしかった。自分たちで判断したかった」
こう話すのは、母親を同施設に預けていたきょうだい(姉と弟)。認知症を患っている母親が今年8月に大腿(だいたい)骨を折ったときのことだ。職員が午前2時ごろに骨折に気付いたが、意識はあるなどとして様子見の対応が取られ、病院搬送されたのは午前9時をすぎてから。家族に「緊急性はない」と、施設から連絡があったのもその時だった。
施設の当直日誌には「頭部を出血したが、すぐに止血。足が痛い」と書かれており、対応の遅れに不満を抱いて施設側を問いただすと、「不手際だった」と非を認めたという。
母親の骨折は全治4週間。その後のリハビリには、さらに3カ月かかるとして入院を続けている。
「施設の男性職員が来ると、怖がったり、嫌がったりすることがあった。暗い感じだった」
入所していたときの様子を振り返るきょうだいは、母親が入院後に笑うようになったことに気付いた。
「アミーユにいたときには、私たちが帰ろうとすると、『自分も一緒に帰りたい』と言っていた」
退院後の母親を同施設に戻すつもりはなく、別の施設を探しているという。

後手後手の行政
昨年12月に母親を施設で亡くした男性も、今回の問題発覚後、亡くなった状況が疑わしく思えてきた。
「痴呆でほとんどトイレに行くこともなく、夜はおむつを着けていると思っていた。夜中にトイレ内で倒れるという状況は…」
市高齢者事業推進課に電話し、当時の状況を調査してくれるよう頼んだが、「時間はかかる。何か分かったら電話します」と言われたのみ。家族に寄り添うべき行政の「後手後手ぶり」は、真実を求める気持ちをさらに募らせている。

別の施設でも…
「Sアミーユ川崎幸町」では、男性職員4人が入所者の女性(86)に暴言を吐き、頭をたたくなどの暴行を加えていたことや、女性入所者から現金を盗んだとして男性職員が逮捕される事件もあった。
ところが、こうした相次ぐ不祥事は、同施設だけに止まらなくなってきている。3人の転落死発覚後、事業者が同じ横浜市と東京都三鷹市の別施設で、入所者が負傷して虐待が疑われたり、職員が入所者に暴行するケースがあったことが明らかになった。
さらに、事業者の親会社が大阪府豊中市で運営する施設では、30代の男性職員が入所している70代女性の首を絞めるなどの虐待をし、負傷させていたことが判明した。
施設を超えて広がりを見せる入所者への暴力、虐待、事件…。一連の事案の背景には、まだ見えていない根深い問題が潜んでいることもうかがえる。
川崎の施設の運営事業者「積和サポートシステム」(東京)の中坪良太郎取締役(37)は、入所者家族からの訴えや、相次いで発覚する問題について「入所者や家族に不安や不信を与えて申し訳ない。信頼回復は容易でないが、職員の教育を見直すなどして再発防止に努めていきたい」としているが、家族の心配を完全に解消するには至っていない。
足の骨折の治療が終われば退院後の母親の入所先を探すきょうだいは、こうつぶやいた。
「施設側には、人質を取られている感じ。文句を言うと何をされるか分からないという弱みがあるから、あまり強く言えない。新しい場所に入所するときには、部屋にカメラを設置しようと思っている」
介護の現場に向けられた強い不信感は、簡単に拭い切れそうにない。(小野晋史、那須慎一、古川有希)

マイナンバー、来月始動 通知カード、どうすれば?

毎日新聞 2015年9月25日

赤ちゃんから高齢者まで国内に住む全ての人に12桁の番号が割り振られる「マイナンバー」制度で、10月から個人の番号を記した「通知カード」が世帯ごとに全員分まとめて送られる。年内には届く予定だ。ただ、やむを得ない事情で家族に居場所を知られないように暮らしている人は、現在の住所に通知カードを送ってもらうことができる。手続きの締め切りは25日だが、発送前なら対応してくれる市区町村もある。

送付先の変更は
住民票と異なる住所で暮らしている人は、住民票がある自治体に「居所情報登録申請書」を出して通知カードの送付先を変える必要がある。ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー、児童虐待などの被害者は、申請書を出さなければ通知カードが加害者の手に渡ってしまう可能性が高い。送付先を変える手続きの締め切りは今月25日とされているが、25日を過ぎても、発送前なら応じる市区町村もあり、窓口に相談してみよう。
変更は、全国の役所や総務省のウェブサイトhttp://www.soumu.go.jp/で入手できる申請書▽居住実態を証明する書類(公共料金の領収書など)▽本人確認書類(運転免許証などのコピー)をそろえて送付する。
DVの加害者が自治体職員だったり職員の知人だったりする場合には、申請書を出すことによって、避難先の居場所が知られてしまう恐れもある。その危険を避けるため、送付先を本人ではなく被害者支援団体の事務所にするなどの方法もある。
また、今回の通知カードの受け取りを機会にして住民票の住所を現住所に変更すれば、カードは現住所に届く。この場合、住民基本台帳や戸籍の付票に閲覧制限をかけることが不可欠で、そのためには警察署などで被害を証明する書類を作成しなければならず、手続きに時間がかかる。
仮に加害者に番号を知られた場合、被害者は番号変更を認められる可能性が高い。

身分証明書にも
そもそもマイナンバーは、現在ばらばらに管理されている「税」や、「社会保障」といった個人情報を同一人物の情報としてひも付けする共通番号だ。行政機関同士のやりとりが効率化し、国は税の徴収漏れなどを防げるという。将来的には預貯金口座もひも付けする方針で、個人資産への国の管理が強まる。
対象は、来月5日現在で住民票がある人。番号は原則として一生変わらない。通知カードは紙製で、表面に番号▽住所▽氏名▽生年月日▽性別を記載。6人家族なら6人分がまとめて簡易書留で届く。
希望すれば通知カードを、「個人番号カード(マイナンバーカード)」という別のカードに無料で替えられる。ICチップ入りのプラスチックカードで、通知カードの記載事項に加えて顔写真も載るため、身分証明書として使用できる。希望者は、通知カードの簡易書留に同封されている交付申請書を使用するか、インターネットで申し込む。
マイナンバーカードの受け取りは、住所がある自治体の窓口に出向いて本人確認書類を提示して通知カードと引き換える。総務省住民制度課によると、なりすましを防ぐため、乳児でも受け取る際は必ず本人の来庁が条件になる。長期入院などでやむを得ない場合のみ、個別に判断するという。
通知カードを手に入れたら、企業などで働いている人は勤務先に番号を報告する。税や雇用保険などの情報管理に使うためだ。扶養家族がいる場合、扶養家族分の番号も申告する。

悪用の懸念
一方、政府はマイナンバーの導入で暮らしが便利になるとしているが、現時点ではそうとも限らないという。例えば、児童手当を申請する際、添付書類を省略できるメリットはあるが、手続きそのものは従来通り役所で行うのが基本になる。また、年金受給者が確定申告をする際、2016年度から書類にマイナンバーを記載するのに伴い、新たに本人確認作業が加わる。
マイナンバーカードがなければ利用できないサービスも多いが、日本弁護士連合会の坂本団(まどか)・情報問題対策委員長は、焦ってカードを取得する必要はないという。「マイナンバーは膨大な個人情報とつながるため、カードを通じた情報漏えいや悪用が懸念される」。また、預貯金口座のひも付けについては「国が個人の預貯金額を把握する目的が不明確」とも指摘する。

カード紛失したら
カードをなくした場合は自治体に連絡し、再発行してもらう。悪用の恐れがある場合、緊急の利用停止措置を取る。問い合わせは10月から電話0570・783・578(緊急対応のみ24時間)へ。
一方、マイナンバー制度に関連し、行政機関や情報セキュリティー会社を装った不審な電話や家庭訪問が全国で相次いでいる。国民生活センターは「マイナンバーや付随する個人情報は絶対に他人に漏らしてはいけない」と注意を呼び掛けている。【鈴木敦子、西田真季子】

厚生労働省が約3万2千人を対象に…

西日本新聞 2015年9月24日

厚生労働省が約3万2千人を対象に、11月のある1日に食べた野菜の量を調べたところ、大根の平均摂取量が最も多かったそうだ。次いでタマネギ、キャベツの順

・秋分の日も過ぎて朝晩ひんやりしてくると、食卓でも辛みが強い夏大根から甘みのある秋冬大根に衣替え。おでん、風呂吹き、ブリ大根…。どれも美味。他の食材との相性も抜群で栄養豊富とくれば、摂取量1位も合点がいく
・「大根役者」は演技の下手な俳優。一説によると、消化の良い大根は生でも煮ても焼いても食あたりしないので、どんな役をやっても当たらない役者を大根と呼ぶようになったとか
・兼好法師の「徒然草」にも大根が登場する。筑紫国のある役人が、大根は万病に効くと信じて長年、毎朝2本焼いて食べていた。ある時、敵が警備の隙を突いて襲ってきた。そこに見知らぬ2人の兵士が現れ、危機を救った。兵士は「長年、あなたが信頼して召し上がってくださった大根です」と言って姿を消した
・九州では鹿児島特産の巨大な桜島大根が有名だ。噴火警戒レベルが引き下げられた桜島で、地元の小学生が毎年恒例の桜島大根の種まきをした。「いつも通り安全な桜島」を訴えたいという
・桜島大根が兵士となって災害から守ってくれるわけではないが、「火山灰を恵みに育つ桜島大根で、地元の方々を少しでも元気づけられれば」と校長先生。大根にこんな効能もあった。

子どもの医療費 地域格差は放置できない

西日本新聞 2015年9月24日

就学前の子どもの医療費は、2割の自己負担が基本だ。ところが実際は著しい地域格差がある。市区町村で援助が異なるためだ。
厚生労働省が子どもの医療制度の在り方を議論する有識者検討会を設置した。
自治体は「お隣」を意識し、競って援助を拡充してきた。その結果、格差が広がり、財政を圧迫しかねない状況が生じている。抜本的な見直しは避けられない。
厚労省によると、昨年4月現在で全国1742市区町村のすべてが都道府県の補助を受け、単独事業として援助を実施している。約8割は所得制限がなく、自己負担ゼロは5割を超す。
対象年齢の上限は4歳未満~22歳の年度末までと幅広い。負担が大きい入院で見ると、6割以上が15歳の年度末(中学生)まで援助している。九州では大分、佐賀、熊本各県で中学生まで援助する市町村が多いのに、長崎県の自治体は8割以上が就学前までだ。
子育て支援は「未来への投資」とされる。少子化対策の目玉とも位置付けられるが、市町村による現状のばらつきは目に余る。
自己負担が減ると受診が増えがちなので医療費の増加分は自治体が負うべきだ-。そんな考えに基づいて自治体の援助が拡大するほど国民健康保険の国庫助成金を減額するルールがある。これが検討会では大きな議題となる。
2013年度の減額調整は総額約115億円に及ぶ。自治体側は援助制度普及の壁になっているとしてルールの撤廃を求めている。
だが、国庫の公平な分配という観点から撤廃を疑問視する声もある。ルールを見直す場合は、地域格差を是正する方向に誘導する条件付けが不可欠だろう。
そもそも、所得が高い人と低所得の人が一律で同じ恩恵を受ける制度が妥当なのかどうか。援助を自治体任せにするのではなく、国がもっと積極的に関わり、全国どこでも公平な自己負担で受診できる体制を目指すべきではないか。
所得制限や財政負担の在り方も含め、徹底的に議論してほしい。