預けた子どもにケガ!法的な責任は?

web R25 2015年9月30日

子どもを預けていたときに起きた事故やケガ。真和総合法律事務所の松村眞理子弁護士によると、損害賠償を支払うかどうかは事例によるのだとか。このとき、預かった側が注意義務を果たしていたかどうかがポイントになる。
「保育園や学童保育、託児所などは運営者に子どもの安全を守る注意義務があります。人を預かるため、危なくないかを見てあげないといけません。もし保育園内で子どもが事故などにあった際、保育士などの園児に対する安全性の配慮が欠けていたと判断されると、園に損害賠償責任が生じます」(松村先生 以下同)
では、そういった園内での子ども同士のトラブルが起きたらどうなるの?
「プロレスごっこをしていてどちらかがケガをした場合、一方的にいたずらでけがをさせてしまった場合と、ケンカでお互いがやりあったという場合では異なります。一方的にどちらかが殴ったら殴ったほうが悪いですが、ケンカの場合、両方過失があって片方の人だけが悪いことにはなりません。しかし、最後に過激なことをしてしまい、どちらかが相手に大ケガをさせたら、両方の過失の度合いに合わせて、賠償責任の負担割合が変わってくるでしょう」

子を預かったときのケガや、家の物を壊してしまった場合はどうなる?
ところで、友だちの子どもを預かっていた場合に何かトラブルが起きた場合も損害賠償が発生するのだろうか…。
「子どもが階段から転げ落ちてしまったとか、何かで手を切ったなど、預かった親の不注意で起きたことであれば、治療費などの賠償責任が発生します」
また、友だちの家に遊びに行った子どもが相手の家の物を壊してしまった場合は、子どもは未成年で賠償責任がないため、壊した子どもの親が監督義務を問われ、賠償する形になる。ただ、この場合も、遊びに行った家の方が、壊れやすいものを子どもの手の届く場所に置いていたような場合には、その過失との兼ね合いで負担の割合が決まります。
もしトラブルになり法律相談をしたい場合は、弁護士会の法律センターなどで相談してみるのも◎。できればモメることなく済ませたいけど、万が一の場合のために知っておくのも良さそうだ。
(石水典子+ノオト)

待機児童は「違法状態」? 弁護士の意見は〈AERA〉

dot. 2015年9月29日

子育て世代を悩ませる待機児童問題。ある弁護士によると、待機児童がいる状態は、見方によっては「違法状態」でもあるという。
「フルタイム勤務でも就労形態でポイントに差がつくことがあって、保育園に入れない。その理由もきちんと教えてもらえないのはおかしいと思いました」
東京都杉並区で2歳の息子を育てる中楯めぐみ(39)は、自身が「保活」をしているときから区の姿勢に疑問を持っていた。杉並区は、認可保育園の入園優先度がポイント制になっている。両親ともフルタイムの場合は20点ずつ、夫婦で40点満点となる。それでも、人気園では入れない家庭が少なくない。だが、区からの通知では「理由」は具体的に明記されていない。
同じ杉並区で3歳の娘がいる増田宣佳(38)も、区の対応は「おかしい」と感じた。娘を1歳児で入園させようと区に聞くと、「待機児童は30人」と言われた。しかし、申し込みに行くと「1歳児で認可は無理ですよ」と言わんばかりの態度だった。
「後で、待機児童のカウント方法がおかしく、もっと深刻な状況だとわかった。声を上げようと思いました」
2人は区に異議申し立てをした「保育園ふやし隊@杉並」に参加し、今も活動している。
「異議申し立ては法律で認められた権利です。児童福祉法24条は、保育の必要な児童には、自治体が保育を実施する義務を課している。つまり待機児童は“違法状態”と言えるのです」
こう語るのは弁護士の大井琢。自治体が認可保育園の入所を認めるか否かは「行政処分」。もし「入所不承諾」なら、処分に至った理由を市民に説明する必要がある。だが、自治体からは十分な説明がない。これは憲法違反にもなるという。
「合理的な説明がないなら、入所を不承諾とされた者は『差別的な取り扱い』を受けたことになり、憲法14条が定める『法の下の平等』に反します」(大井)

脳血管に起こる「もやもや病」を知っていますか?

Mocosuku Woman 2015年9月30日

みなさんはもやもや病という病気を知っていますか?
日本で発見され東アジアに患者が多く、歌手の徳永英明さんもこの病気を経験しました。脳出血や脳梗塞を起こす可能性が高い難病で、10才以下の子どもに発症する例も多いようです。
今回はこのもやもや病について、医師から聞いた話をお伝えします。

もやもや病とは
もやもや病とは、別名「ウィリス動脈輪閉塞症」といい、脳血管障害のひとつです。この病気の人が脳の血管造影というレントゲンの検査を行うと、タバコの煙のようなもやもやした血管像が映ることが、この病名に由来しています。
なぜ脳の血管造影でこのような「もやもや」が見られるのかというと「ウィリス動脈輪」というリング状の動脈が塞がってしまい、そのために発達した異常血管網(細かい側副血行路)が造影されるのです。ウィリス動脈輪の血流が悪くなることで脳に行く血流が低下しますが、 進行が緩やかなため血流不足を補う細かい側副血行路(もやもやして見える異常血管網)が発達します。
椎骨動脈・内頚動脈の合計4本の動脈は、 頭蓋内でウィリス動脈輪と呼ばれるリング状の動脈で交通しています(椎骨動脈や内頚動脈のいずれかが閉塞しても脳への血流を維持できるように、 このような形態になったと考えられています)。もやもや病はなんらかの原因でこのウィリス動脈輪の閉塞がゆっくりと進行してゆく病気なのです。

もやもや病の発症データ
・人口10万人に対して3~6人
・男女比は1:1.8と女性の発症がやや多い
・好発年齢は10歳以下と40歳前後
・家族発症は全体の10~12%(遺伝的な関与の可能性も考えられている)
・1950年代に日本で発見された ・厚生労働省で難病指定している

最近では画像診断の性能の向上に伴い、無症候性の成人の発見例もあります。

もやもや病の症状
もやもや病には2つの発症パターンがあります。
[パターン1]
脳の血流が不足して起こる、脱力などの虚血症状
[パターン2]
負担がかかった側副血行路の血管が破れ、脳出血を起こす出血症状
【子どもの症状】
子どもは虚血症状を示す症例がほとんどです(側副血行路の発達が不十分であるため)。子どもがもやもや病にかかった場合、以下のような特徴的な病状があらわれます。
1. 食事で熱い物を息を吹きかけたり、リコーダーを吹くなど、短時間で深呼吸を繰り返したとき一過性の脱力発作が起きる
2. 突然起こる片側の麻痺。発作のたびに麻痺する側(左右)が変化する
3. 5歳以下の乳幼児は虚血時間が長くなり脳梗塞を発症することが多く、重症が多くなる
【成人の場合】
患者の2/3が、脳出血で発症します。出血を生じる場所によってその症状は異なります。

医師のアドバイス
脳出血や脳梗塞を発症した直後は内科的に治療されます。 状態が安定したら脳の血流不足を改善するための脳外科的な手術が必要になります。 手術には、直接血行再建術、間接血行再建術あります。
子どもが突然の脱力を繰り返す場合は、小児科や小児脳神経外科を受診して検査を受けましょう。 大人の場合は脳ドックで偶然発見される場合もあるので、利用するのも良いでしょう。
「Doctors Me」寄稿 医師監修コラム

「痴漢」と勘違いされたときの鉄則

web R25 2015年7月26日

電車通勤をするビジネスマンにとって、脅威となるのが「痴漢冤罪」。自分は何もやっていないのに痴漢呼ばわりされ、会社に知れ渡って職場での居心地が悪くなり、仕事もうまくいかなくなってしまった…。万が一そんな事態に巻き込まれてしまった場合、損害賠償を求めることは可能なのでしょうか? また、その場合は「どのような損害を」「誰を相手に」訴えればよいのでしょうか?
まず、何を損害とするか、については以下4つが考えられます。
(A)その場で間違えられたことによる精神的な損害
(B)仕事場での居心地が悪くなったことによる精神的損害
(C)精神的ストレスからくる仕事のミス等を原因とする減給処分等の補填
(D)退職せざるを得なくなった場合の逸失利益等
また、相手方の可能性としては以下3つが考えられます。
(1)痴漢だと間違えた女性
(2)痴漢の真犯人
(3)会社に対してその事実を触れ回った人物
では、以上のうち、誰に対してどのようなことを請求できるのでしょうか?

(1)痴漢だと間違えた女性に対して
その女性がわざと間違えたようなケースでもない限り、損害賠償を請求するのは困難です。満員電車ですから、間違えても仕方ないと判断される可能性が高いでしょう。それに、なんといっても被害者ですから。

(2)痴漢の真犯人
心情的には、「お前のせいだ!」と言いたいところですが、損害との関係でいうと、認められたとしても「(A)その場で間違えられたことによる精神的な損害」止まり…ではないかと思われます。
そもそも、損害賠償が認められるためには、「行為」と「損害」との因果関係を立証しなければなりません。
つまり、真犯人の痴漢行為により、会社での居心地が悪くなって仕事がうまくいかなくなった…ということを証明しなければならないのです。しかし、すでに冤罪であることは明らかになっているわけですから、その因果関係の立証はなかなか難しいのではないかと思われます。

(3)会社に対してその事実を触れ回った人物
この人物を特定できるなら、B、C、Dを請求したいところです。ただ、Cの仕事のミスについては、結局ミスをしたのは自分ですから、責任をすべて押し付けることはできません。また、Dの退職についても、自発的な退職による逸失利益を全額賠償せよ…と求めるのは困難です。当人が噂話の範囲で話していただけなら、責任を追及するのは難しいでしょう。したがって、この場合も、Bの精神的損害が認められるかどうか、という話になります。
つまり痴漢に間違えられた場合、それによる損害を他人に賠償させるのは、きわめて難しいのが現実です。満員電車に乗った場合は、疑わしい行動をとらない、手を上に上げる…といった対策をとることをお勧めします。
それでも痴漢に間違えられてしまった場合は、どうするか? その場合は、名刺を置いてすぐに立ち去ることです。駅長室に連れて行かれ、そのまま逮捕・勾留ということになってしまうと、冤罪の危険性が非常に高まります。
痴漢事件は物証が乏しくなりがちなため、被害者の証言が非常に重視される傾向にあります。被害者が現場で「この人です!」と言っているとき、これを覆すのが難しいのは、皆さんも想像いただけるのではないでしょうか。とにもかくにも、相手のペースに巻き込まれないようにすることが大切です。
(弁護士法人アディーレ法律事務所/刈谷龍太弁護士)