子どもの未来応援サイト開設…支援情報の検索や寄付機能あり

リセマム 2015年10月1日

厚生労働省は10月1日、子どもの貧困対策・子どもの未来応援プロジェクトの特設サイト「子供の未来は日本の未来」を開設した。支援情報の検索、活動支援のための寄付、支援活動団体とサポート企業とのマッチングなどの機能を備えている。

貧困家庭を救う4つの支援
プロジェクトは、貧困の連鎖を断ち、すべての子どもが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指した官公民連携によるもの。
貧困の状況にある子どもや家庭に向けて、教育や生活などの支援情報について検索機能も備えて紹介している。検索ページでは、子ども向けには「学校の宿題やるとき、わからないところ、教えて!」「家で食べるご飯やおかずがない!どうすればいい?」、保護者向けには「子どもの文房具や制服を買うお金がない。どうすればいい?」など、具体的な悩みや困りごとに対し、支援情報を探すことができる。
また、貧困の状況下にある子どもに必要な支援が届くことを目指し、「子供の未来応援基金」を設置し、サイト上から寄付の手続きもできる。草の根で活動するNPOなどを積極的に支援するほか、子どもたちの生きる力を育むための拠点整備に取り組む方針で、サイトでは取組事例なども紹介している。
今後は、サイトを通して、子どもの貧困対策について支援活動を行う団体と活動をサポートする企業との交流サービスにも取り組んでいく予定となっている。
《リセマム 奥山直美》

児童福祉司、専門性高め虐待の連鎖を断て

ビューポイント 2015年9月28日

深刻度を増す児童虐待の防止策として、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門委員会が児童福祉司の専門性を向上させるとともに、虐待の緊急性を見極めて対応機関に振り分ける「トリアージセンター」を設置する強化案を発表した。
虐待で命を落とす子供をなくし、また世代間の“連鎖”を断つためには不可欠な内容で、関連法案を改正し着実に実現させてほしい。

状況見極める能力が必要
全国の警察が今年上半期に児童相談所に通告した18歳未満の子供は1万7224人で、昨年同期より4187人(32%)も増えている。また、生命や身体の安全が脅かされるとして、警察が一時保護した子供は1152人(昨年同期185人増)に達した。虐待を受けて死亡した子供は5年ぶりに増えて14人となった。
平成12年に児童虐待防止法が施行されて、虐待に対する国民の意識が高まったことで通報が増えるのはある程度予想された事態である。そうした中で、優先的に取り組むべきは子供の命を奪ったり、健全な成長を妨げたりしてしまう深刻な事例を減らすことだ。
こうした事例が発生するたびに巻き起こる批判は、児相が異常を把握しながら判断を誤って適切な対応を取っていなかったのではないか、というものだ。しかし、マンパワーが不足する上に、職員が専門性で劣っていたのでは対応のしようがない。
子供の命が奪われるとともにもう一つ深刻なのは、虐待が連鎖するということだ。親などからの暴力が何度も繰り返されることで子供の心の傷が深くなれば、健全な成長は難しくなる。そんな子供が大人になった時、虐待する側に回ってしまう恐れがあるのだ。
虐待への対応で重要とされるのは、把握した最初の段階で、子供を親から引き離すべきか、親との同居を続けていても安全は確保できるのかをしっかり見極めることだ。そのためには、対応に当たる児童福祉司が高度な専門性を身につけることが求められる。一般からの通告をトリアージセンターで専門家が一元的に受け付けて緊急性を判断し、警察、児相、市町村などに振り分ける仕組みも早期に実現させるべきだろう。
児童虐待防止法の施行以降、虐待の増加に対応するために、同法及び児童福祉法は何度か改正された。その主な内容は虐待に対応する行政側の義務の明記や、児相所長の親権喪失請求権の拡大など権限の強化だった。
ところが、児相で子供や親の相談に乗り、問題解決の手助けをする公務員である児童福祉司は、心理学や教育学を学び、児相に1年以上従事するなどすれば、任用資格を得ることができるため、その専門性に疑問の声があった。このため、強化案は、試験を課す国家資格にして、専門性を向上させることを柱にしている。

家庭や地域社会の再建を
虐待増加の背景には、核家族化、離婚の増加、地域社会の崩壊などがある。したがって、家庭や地域社会の再建など、長期的な視点に立った虐待防止策も強化すべきだろう。

育児と両立「もう限界」 一日平均12時間在校 忙しすぎる教諭

東京新聞 2015年9月25日

文部科学省が七月に発表した公立小中学校の教職員の勤務実態に関する初の全国調査では、教諭は一日十二時間前後も学校にいることが判明した。自宅に持ち帰る仕事も一時間半あり、特に子育て世代の教諭らは、仕事と育児の両立の難しさを訴える。 (細川暁子)
「成績付けや提出物のチェックが終わらず、学校に寝泊まりしたことがある」。そう打ち明けるのは埼玉県内の中学校に勤務する三十代の男性教諭だ。中二の担任で、部活の顧問。朝七時半に出勤し、帰宅は毎晩九時半を過ぎる。
いじめや不登校の調査を教育委員会に提出したり、放課後に友人関係で問題を抱える生徒や親と話し合ったり。「会議や書類作りに追われて、生徒が帰宅した午後六時以降にやっと授業の準備ができる」という。夏休みは三分の二が部活指導で家庭訪問にも回った。
妻も中学教諭で、小学生と保育園の子ども二人がいる。「平日はほとんど子どもの顔を見られない。妻に育児の負担がのしかかっていて心苦しい」と話す。
東海地方に住む三十代の元小学校教諭の女性は仕事と子育ての両立に悩み、今年三月に仕事を辞めた。
昨年度は高学年四十人のクラスを担任。日本語がたどたどしい外国籍の子もいた。大変だったのは保護者への対応。課外活動費を払わなかったり、子どもを一週間無断欠席させたりする家庭には年に十回以上も訪問。働いている保護者とは、夜遅くに話し合った。

泣く我が子 抱き締める力もないほど疲れ…
子ども二人の母親でもある女性は、帰宅後や土・日曜日も授業準備に追われた。部活の顧問として夏休みも指導。夫も仕事が忙しく、育児はほぼすべて女性が担った。「ぐずって泣く自分の子どもを抱き締める力もないほど疲れていた」。先輩教諭に相談したが、補助の教員は付かなかった。「先生はみんな、いっぱいいっぱいだった」
退職直前の二カ月間は、県外の母親に自宅に住み込んで家事を手伝ってもらった。だが体調が悪化し、「もう限界」と辞表を出した。「子育てと両立できず、仕事を辞めた女性教諭は周りに多い」

「教師増やし少人数学級に」
文科省が教職員の在校時間や負担に感じる業務を調べたのは昨年11月。経済協力開発機構(OECD)の調査で、日本の中学教員の勤務時間は34カ国・地域中で最長だったことを受けて、初めて実施した。
7月に発表された調査結果では、6757人が回答した公立小中学校の教諭の1日平均在校時間は、小学校が11時間35分で、中学校で12時間6分。自宅に持ち帰る仕事もそれぞれ1時間36分、1時間44分だった。
結果と合わせて、文科省が業務改善例にあげる一つが、長野県信濃町の小中一貫校「信濃小中学校」の取り組みだ。小学1~4年は担任に加えて教員免許を持つ常勤の学習支援員を配置。教材の作成など、担任の負担軽減を図っている。
ただ、学校内の努力だけでは問題は解決しないとの指摘も。元さいたま市教育委員会教育長で、埼玉大教育学部の桐淵(きりぶち)博教授は「最近の子どもたちは家庭内の生活習慣に踏み込んだ指導が必要なケースが多い。教員の仕事は増える一方」と指摘。「国の将来が危ぶまれるほど、現場は苦しい状況。国の予算で教師を増やして少人数学級で対応するべきだ」と強調する。