「家庭崩壊」で行き場を失くした子どもたち~この国に居場所はあるのか? 虐待、両親の離婚と失踪、障害…

現代ビジネス 2015年10月4日

食卓に並べられた絹さやと牛肉の炒め物、水菜と油揚げのサラダ、ごはんと味噌汁…。田崎啓子さん(仮名、45歳)は養子縁組をした息子の龍太くん(仮名、5歳)に手際良くおかずを取り分け、恒良さん(仮名、47歳)も料理に手を伸ばす。ありふれた家族での食事風景。里子の安達洋平くん(仮名、16歳)は静かに家族の動きを目で追っている。洋平くんは1年前まで、そんな家庭の食卓を知らなかった。

特別養子縁組で家族になる
田崎夫妻は結婚をして10年経っても子どもに恵まれず、2年間の不妊治療を経験。あきらめようとした矢先に「特別養子縁組制度」の存在を知り、里親登録をした。1年の研修期間を経て子どもを受け入れる体制を整えたが、経験者は口を揃えて「ただ待っているだけでは話はこないよ」と言う。
2013年度、養子縁組希望里親登録数2,445世帯に対し、成立件数は267件にとどまっている。管轄する児童相談所が虐待対応に追われ人手不足となり、重ねて経験のある職員が異動するなど態勢の問題も指摘されている。民間のあっせん団体を含めても成立件数は474件と、ハードルは高い。
田崎夫妻は乳児院でボランティアを始め、児童相談所に積極的に働きかけた。その甲斐あって、登録から5ヵ月後に養子縁組を前提とした里親委託の話がきた。
「チャンスが少ないこともわかっていたので、話がきたときはとにかく嬉しくて、どんな子でも受け入れると覚悟を決めて乳児院に会いに行きました。それで、初めて会ったとき龍太が心なしか僕を見て笑ったんです。もうこの子だ、運命だ、と思いましたね」
恒良さんは生後5ヵ月の龍太くんと出会った瞬間の喜びを今でもはっきりと覚えている。しかしその後、2週間乳児院に通い、6ヵ月間家庭で養育し、家庭裁判所の審判を待ったが、そこから話が前に進まなかった。
「いよいよ龍太を息子として我が家に迎えられるというタイミングで、実母が親権を手放すことを拒否したんですね。実母はその間龍太の近くにいたわけではないんですが、やっぱり我が子を手放したくないと思ったんでしょう。ショックでしたが、どうすることもできませんでしたから」
親権を重視する日本では、子どもが親の意思によって振り回されてしまうケースも多い。田崎夫妻は、親権は実母にあるまま、1年間里子として龍太くんを家庭で養育した。結局実母が親権を放棄したため、田崎夫妻と龍太くんの間に養子縁組が成立し、親子になった。生後5ヵ月で出会った龍太くんは今、5歳になる。
「はじめはだっこをしても泣き止まなくて父になれるのか不安もありました。1歳を超えてコミュニケーションがとれるようになったときに初めて『パパ』と呼ばれたときは嬉しくて涙が出ましたね。
今は紛れもなく自分の子どもだと思っていますよ。そもそも夫婦だって血のつながりがなく、一緒に暮らすことで家族になる。家族に血のつながりなんて関係ないですよ」

家庭を知らない子ども
ちょうど1年前、そんな田崎家に洋平くんが新しい家族として加わった。
里親登録をしていた田崎夫妻に、児童相談所から受け入れてほしい子がいると相談があったのだ。障害や虐待の傷があるとは聞いていたものの、その深さは田崎夫妻の想像を超えるものだった。
心臓・腸・腎臓などに先天性の障害を抱える洋平くんは幼い頃から、精神的に不安定だった母親から虐待を受けていた。暴力をふるう父親に抵抗できない母親のストレスは、子どもたちに向かった。
両親が離婚した小学校3年生のときに児童養護施設に入所。兄と妹がいたが別の施設に措置されたため、そこで血のつながった家族とは離ればなれになったままだ。
そこから車いすに乗って施設で暮らし、中学2年生のとき、児童相談所を通じて田崎夫妻に出会う。3ヵ月間毎月1回の交流をして、2泊3日の家庭訪問を重ね、中学卒業と同時に田崎家に里子として迎え入れられた。しかしちょうど1年経つこの日、洋平くんは施設に戻ることが決まっていた。家庭で過ごす最後の週末だった。
「私たちも彼を家庭で育てたいという気持ちはあるのですが、この1年どれだけがんばっても1mmも距離が縮まらなくて……。
1級レベルの重度な障害を持っているためケアが必要となりますが、ずっと無口で自分の意思を示さないので何をしてあげたらいいのかわからないんです。とにかくコミュニケーションがとれなくて。児童相談所に相談しても、“投げ捨て状態”で対応してくれず、私たち夫婦が追い込まれてしまったんです……」
啓子さんはときどきうつむきながらも強く訴えるように言葉を放つ。虐待対応などに追われる児童相談所は忙しく、里親委託家庭のアフターケアにまで手がまわらないことが多いと聞く。
児童養護施設に入所する児童のうち虐待を受けた児童は全体の半数以上、障害のある児童は約2割となっており、年々増加傾向にある。
日本は社会的養護下の子どもたちの約9割が施設で暮らしているが、国は「可能なかぎり家庭的な環境において安定した人間関係の下で育てることができるよう」里親やファミリーホームを推進している。将来目標として、施設、里親、ファミリーホームを3分の1ずつにすることを掲げる。しかし、実現に向けて課題は多い。
虐待の経験や障害のある児童の養育は容易なものではない。“育てにくい子”になってしまうケースが多く、施設から里親に委託されても、里親が負担を感じたり里子がなじめなかったり、4分の1の子どもが施設に戻っているという。
施設よりも家庭は孤立しやすく、「弧育て」になれば共倒れしてしまう危険性もある。田崎夫妻のように限界を超える前にSOSを出すことも大事な判断だ。子どもたちに家庭的な環境を作るためには、受け入れる里親に対する研修やモニタリング、教育や家庭訪問ほかサポートが求められる。
恒良さんは消防士、啓子さんは看護師であり、養子縁組里親の実績もあるため児童相談所が信頼し、施設で育ってきた洋平くんを田崎家に措置変更をしたのだろう。それでも支援がない状況での養育には困難が伴う。
「どうしようもなかったけれど、途中で投げ出してしまったようで、どこか罪悪感が残っています……」
洋平くんが施設に戻った1ヵ月後、啓子さんはため息まじりに悔やんだ。サポートすることもない不適切な委託は受け入れる家族にも傷を残してしまう。

障害と虐待がもたらす深い傷
洋平くんは母親に「殺すぞ」と包丁を向けられたこともあり、トラウマからいまでも人と向き合って話すことができない。田崎さんが褒めていたとしても、向き合うだけで涙を流してしまう。自分や相手が何を求めているのかわからず、感情もうまく表現できない。
「クリスマスに欲しいものを尋ねてもなかなか答えが返ってこないんです。何もいらないのかな、と思っていたら『靴…』と小さくつぶやいたので、スニーカーをプレゼントしました。でも、無言で受け取って、喜ぶ様子もなく、包装紙に包まれたままずっと机の上に置かれていたんです。欲しくなかったのかな?ってなんだか少し寂しい気持ちになりました。とにかくいつも無表情なので何を考えているのかわからないんですね」
田崎夫妻は洋平くんの養育を巡って口論になることが増えていった。無口な洋平くんが初めて自分から2人に投げかけたのは「けんかってこうやってするんだね…」という言葉だった。
父が母を殴る光景が当たり前だった洋平くんには、手を挙げず言い争う田崎夫妻のけんかが新鮮だったのかもしれない。洋平くんの家庭の記憶には、暴力と虐待が刻まれている。
また施設での規則的な生活が、家庭や社会での不規則な生活に支障をもたらすこともある。洋平くんは施設で同じ時間に自分に与えられた分の食事をとり、決まった時間にお風呂に入って就寝していた。家庭では、大皿に盛られた料理に手を伸ばすことができず、お風呂もいつ入ったらいいかわからない。
障害もあり風呂場で排便してしまうこともあったが、施設では職員が片付けてくれていたため、自分で処理することはできず、そのことで人が不快な思いをするという感覚も鈍ってしまい謝ることもできない。
ほかにも田崎家は共働きであるため洋平くんは特別支援学級へ電車で通っていたが、少し時間がずれただけでパニックを起こしてしまう。田崎夫妻に連絡をしたり駅員に声をかけたりすることもなく、夫妻が見つけ出すまで駅で長時間過ごしてしまうこともあった。
「身体的な障害のほかにも発達障害や愛着障害を抱えているからきちんと治療をしたほうがいいと児童相談所に伝えても、『おとなしい性格だから』と取り合ってくれませんでした。これまで腫れ物に触るようにして、彼の障害ときちんと向き合ってこなかったんだと思います。
だから、彼自身もその障害を克服するどころか、受け入れることすらできない。職員がいる施設の中では生活できたとしても、一歩外に出たら1人では何もできないと思いますよ」
恒良さんは家庭養育のなかで自分の障害と向き合うよう洋平くんを怒ることもあったという。でもその怒りは、洋平くん自身ではなく、16歳になるまで彼を家庭を知らない環境に置いてしまったさまざまな要因に向けられるものだろう。
先天的な障害に加え、虐待のトラウマからくるコミュニケーション力の欠如、施設養護における生活基盤の低下……そのすべてを洋平くんは1人で背負う。
「バスの運転手になりたい……」と消えるような声でつぶやいた洋平くん。彼は今、その夢を叶えられない厳しい現実のなかにいる。
社会に出るための準備として田崎家に迎え入れられたが、洋平くんにとって家庭を経験する1年という期間は短すぎた。田崎家に残りたいのか、施設に戻りたいのか本心はわからないが、洋平くんは1人施設に戻り、18歳になれば施設を出なければならない。
暴力と虐待により家庭が崩壊、離婚して母親は家を出て行き、養育者になった父は失踪したまま、高校3年生の兄は知的障害を抱え、中2の妹は自傷を繰り返す。両親はおろか、家族を頼ることもできない。家族を失った洋平くんは、新しい家族を築くこともできなかった。
洋平くんのよりどころは社会に作っていかなければならない。

子どもが18歳までに必要な学費は300万円「児童手当を貯蓄せよ」

週刊女性PRIME 2015年10月4日

経済好調動向といわれながら収入アップにつながらず、家計は苦しくなるばかり。消費税増税や円安による相次ぐ食品の値上げが家計を圧迫。今年7月、厚生労働省が発表した『平成26年版 国民生活基礎調査』では、児童のいる世帯の生活意識調査で67・4%が「苦しい」と答えている。
夫の年収ダウン、リストラ、さらには離婚などで思うように学費が貯められなくて、いざ子どもの進学となり学費の調達にあえぐ主婦が続出。どうしたらいい? そこで、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、学費貯蓄対策を聞いてみた。
「大学まで進学すると、学校に支払う学費だけで、子ども1人につき1000万円といわれています。学費は子どもが生まれた時から、計画的に貯めることが理想ですが、貯められなかった人は賢い借り入れで卒業を目指す方法をお話ししましょう」

気軽に解約できない金融商品で貯めるのがコツ
「学費は計画が立てやすい支出です。1日でも早く貯蓄を始めるのが月々の負担額を少なくするコツです」(以下、横山さん)
子ども1人にかかる学費の半分以上は大学。18歳までに500万円貯めるのが目標。
「せめて300万円は貯蓄をしておきましょう。理想は子どもが生まれた時から月々決まった金額を貯める方法。ただし、幼稚園に通う、住宅ローン頭金を払うなど学費貯蓄が困難な時期はムリをすることはありません」
学費にお金がかからない小中学校の貯めどきにガッツリ貯めておくのがコツ。
「貯め方は途中で解約しにくく、元本割れしないタイプの金融商品を利用するのがいいでしょう。気軽に解約できるタイプだと子どもが18歳になる前にほかのことに使ってしまう可能性があるからです。貯蓄型の学資保険もいいですが、来年から始まる“ジュニアNISA”もオススメです」

手軽に貯めるコツ「手当や補助金を学費貯蓄に回そう!」
「児童手当をそのまま学費貯蓄に回せば、あれこれ節約して家計から捻出することなく貯めることができます」
所得制限があるが、0~3歳未満は月々15000円、3歳以上から中学生まで月々10000円支給されるので、目標金額300万円の場合、児童手当である程度まかなえる。
「従来型の幼稚園では補助金制度があるのでそれを活用しましょう。補助金の金額は所得や自治体により異なります」
今年4月から子ども・子育て支援制度が実施され、自己負担額が変わったところもあるそう。
「こちらも自治体によりますが、小中学校では学用品や給食費の一部を援助してくれる就学援助制度、高校では就学支援金の加算などがあります。ただし所得制限がありますので各自治体に問い合わせてみましょう」

学童期の事故の特徴と防ぎ方

ラーニングパーク 2015年10月4日

小学生になると、幼児期とは異なり、保護者の目の届かない所での事故が急増する。こうした事故を防ぐために親ができることは? 事故予防に尽力している小児科医の山中龍宏氏に、学童期の事故の特徴と防ぎ方について伺った。
不慮の事故による死因を、厚生労働省の「2008(平成20)年 人口動態統計」で見ると、5~9歳は交通事故によるものが約半数。歩行中の事故と自動車乗車中の事故に加え、新たに出てくるのが自転車に乗っているときの事故です。小学生になると自転車に乗る機会も増えるでしょう。そのとき忘れてほしくないのが、ヘルメットです。現在、道路交通法でも、13歳未満のヘルメット着用は保護者の努力義務とされています。しかし、小学生のヘルメットはそれほど定着していません。交通事故や転倒の際、ヘルメットをつけていなかったために重症または死亡になるケースが多いのです。
とはいえ、小学生では「みんなヘルメットしていないから……」と着用を嫌がるケースもあるでしょう。自転車乗車時のヘルメット着用は、学校または地域全体で取り組みたい課題です。その一方で「自転車をおりて遊ぶときは、ヘルメットを外すこと」を徹底させましょう。公園などの遊具にヘルメットのあごひもが引っかかって、首を絞める危険があります。
一方で、12歳以下の子どもの火遊びによる火災も後を絶たず、中でも使い捨てライターを使った火遊びは約7割を占めています。こうした危険を防ぐために実施されているのが、ライターの販売規制です。使い捨てライター等の規制対象ライターは、子どもが簡単に操作できないようにするための機能(チャイルドレジスタンス機能)があり、国の定めた「PSCマーク」が付いたものでなければ販売できなくなっています。しかし、チャイルドレジスタンス機能は幼児を対象としたものですから、小学生なら点火できてしまいます。ライターは子どもの手の届かない所に保管するのが基本ですが、衣類に燃え移ったらその場で地面に転がりすぐ消化する、火事の際は煙を吸わないように口をハンカチなどで覆い姿勢を低くして非難するなど、万が一の時の対処法もしっかり教えておくことが必要でしょう。

アイドル事務所に所属するには、社長と「1回寝て」から――そんな要求は法的に問題?

弁護士ドットコム 2015年10月4日

友だちと街を歩いていたら、スカウトに声をかけられて、そのままアイドルデビュー!? きらびやかな芸能界に憧れる女性は昔も今も少なくないが、そんな彼女たちの立場につけこむ「悪い大人」が潜んでいるのかもしれない。
ニュースサイト『日刊SPA!』が9月に掲載した記事では、Kカップのグラビアアイドル、吉沢さりぃさんの次のような体験談が紹介されていた。
吉沢さんは3年ほど前、芸能事務所に所属しないフリーだったころ、新宿・歌舞伎町でスカウトマンから、ある事務所の社長を紹介されたという。そのとき、DVD出演や海外ロケの話題などで盛りあがった。
ところが、後日、契約の話をするということで呼び出されると、スカウトマンの口から「社長がホテルで待っている」「(契約は)社長と1回寝てからだよ」「それでOKが出たら所属」という驚くべき言葉を告げられたというのだ。吉沢さんはその場でキッパリと断ったそうだ。
このように、性的な関係を結ぶことが所属するための条件となるのは、法的に問題ないのだろうか。また、身体を許したにも関わらず、「NG」とされた場合、女性は泣き寝入りするしかないのだろうか。岡田崇弁護士に聞いた。

セクハラの一種として「不法行為」にあたる
「芸能界に憧れる人は多いので、なかなか難しいことかもしれませんが、もし仮に事務所に所属するためとして、性的な関係を結ぶよう求められたら、吉沢さんと同様に、キッパリと断るべきでしょう」
岡田弁護士はこう切り出した。もし断り切れず、性的な関係を結んだ場合はどうなのだろうか。
「女性の弱い立場につけこんでいるので、セクハラの一種として、『不法行為』にあたるでしょう。女性は社長や事務所に対して、損害賠償を請求することができます。
ただ、社長の行為については、女性が自分で証明しなければなりません。したがって、実際に裁判を起こすとなると、かなりハードルが高いことになるかもしれません」
もし、身体を許したにも関わらず、事務所に入れてもらえなかった場合、女性は「所属させろ」と求めることができるのだろうか。
「契約については、その詳細が決まっていない以上、事務所への所属を強制することは難しいと考えます」
では、何らかの犯罪にあたるなど、刑法上の問題はないのだろうか。
「原則として、刑法上の問題にはならないと思います。
もっとも、強引に押し倒されたり、暴力を振るわれるなどして、性的関係を強いられた場合は、強姦罪や強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。
また、女性が18歳未満であれば、児童買春・児童ポルノ防止法や児童福祉法に違反する可能性があります」
岡田弁護士はこのように述べていた。