児童虐待 芽を摘む取り組みへ地域連携を

愛媛新聞 2015年10月19日

児童虐待が止まらない。厚生労働省によると、全国の児童相談所が2014年度に対応した児童虐待の件数は8万8931件(速報値)。前年度に比べて2割増え、過去最悪となった。
格差拡大による貧困や社会的な孤立などで、虐待が発生しやすい環境が広がっている。命の危機にある子どもたちの存在に一刻も早く気付き、救わなければならない。9万件に迫る虐待数はあくまで把握できたケースにすぎない。周囲に気付かれることなく苦しむ子どもたちや追い詰められた家族がさらに潜んでいる、との認識を強くもつことが大切だ。
児童相談所に虐待の通告や相談があると、児童福祉司らが原則48時間以内に家庭を訪問し、子どもの安全を確認する。親子と面談し、養育環境を調査した上で、子どもの緊急避難が必要な場合は児童福祉法に基づき一時保護。親の改善が見られない場合は児童養護施設への入所や里親委託の対応を取り、親への指導や子どもの心理ケアを続けることになっている。
だが、体制は十分ではない。全国の児童福祉司の数はこの15年でほぼ2倍となったものの、まだ約3千人で虐待件数の増加には到底追いつかない。13年度に虐待によって死亡した36人の事案に関わっていた児童福祉司について厚労省が確認したところ、平均で年間65件もの虐待事案を受け持っていた。
全都道府県で、児童福祉法の施行令に定められた配置基準は満たしているというが、こうした状況では、きめ細かな対応や継続的な支援は難しいに違いない。国には配置基準の見直しによる負担の軽減と体制強化、養成の加速を求めたい。
児童相談所と市町村、警察、学校などの地域連携も急務だ。市町村も虐待の通告先になっているが、児童相談所との役割分担が曖昧なため、互いに当てにし合い、対応が後手に回っている。厚労省は有識者会議の議論を経て、役割の明確化を図るよう児童福祉法の抜本改正を目指すというが、役割分担で終わらず、日常的に小さな情報も共有し合う体制構築へ力を尽くさなければならない。
事後の対応だけでなく、虐待の芽を摘む取り組みが重要であることは、言うまでもない。死亡した子は0歳児が多く、望まない妊娠やシングルマザー、貧困で出産前の妊婦健診を受けず誰にも相談できないで追い詰められた母親の加害が目立つ。働きやすい環境整備や保健師らの訪問に加え、保育所や民間団体など地域ぐるみで子育てや食事などの必要な支援を進めたい。
誰しも、守られ、自分が大切にされていると思えて初めて、他者をいたわることができる。逆に、愛された経験を欠いて大人になれば、虐待の連鎖が生まれる恐れがある。地域の人間関係が希薄になったいま、一人一人の苦悩に寄り添った支援なくして虐待は根絶できないと胸に刻まなければならない。

なぜ? 急増する小学校での暴力行為 斎藤剛史

産経ニュース 2015年10月19日

文部科学省がまとめた2014(平成26)年度「問題行動調査」の結果、対教師暴力や生徒間暴力などの暴力行為が小学校で増加し、過去最悪となったことがわかりました。一方、中学校や高校では、暴力行為が減少しています。一体、現在の小学校で、何が起きているのでしょうか。
2014(平成26)年度中に学校内外で発生した暴力行為(器物損壊を含む)は、国公私立学校全体で小学校が1万1,468件(前年度より572件増)、中学校が3万5,683件(同4,563件減)、高校が7,091件(同1,112件減)で、小学校だけが4年連続で増えており、現行方式で統計を取り始めた2006(平成18)年度以降で最悪となりました。
児童生徒1,000人当たりの発生件数を見ても、中学校と高校は減少しているのに、小学校だけが増えています。さらに気になるのは、加害児童の数を見ると、小6は前年度より減少しているのに対して、小5以下の学年はいずれも増えていることです。
問題行動の低年齢化が、小学校にまで本格的に及んだということでしょうか。そう言い切るのは少し早計でしょう。学校内の暴力行為の場合、発生件数は実質的に学校による「認知件数」を意味しているからです。小中学校の暴力行為の件数を見ると、共に2013(平成25)年度に急増したのが目立ちます。これは大津市の中学生いじめ自殺事件や、それをきっかけとする「いじめ防止対策推進法」の制定などにより、いじめをはじめとする問題行動の把握や対応が厳格化したことが理由として挙げられます。
以前ならば暴力行為とまでは判断されなかった、低学年や中学年の子どもの乱暴な行動が、現在の小学校では暴力行為として「認知」されるようになったことが、発生件数増加の理由の一つとして考えられます。実際、警察の補導や児童相談所への送致など、外部機関による措置を受けた子どもの割合は、中学校に比べると小学校ははるかに低くなっています。
しかし、暴力行為として「認知」されなくても、それと同等の問題行動が以前から小学校で起こっていたとすれば、やはり大きな問題と言わざるを得ません。また、小学校のみ4年連続で暴力行為が増えていることからも、現在の小学校は深刻な状況にあると言って間違いないでしょう。
小学校で暴力行為が増加した理由について、都道府県教育委員会は「感情をうまくコントロールできない児童が増え、ささいなことで暴力に至ってしまう事案が大幅に増加している」などと述べています。ただし、その背景には、コミュニケーション能力に問題のある子どもの増加のほか、さまざまな要因がありそうです。
一方、学級担任制である小学校では、生徒指導関係の組織があっても、実際には学級担任のみが対応している場合が少なくないという指摘もあります。
複雑化する子どもたちの問題行動に対して、学級担任が一人で対応するのはもう困難です。問題行動に対して、学校全体で組織的に対応する体制づくりが、現在の小学校に求められているといえるでしょう。

ドイツ・オランダ・イギリスに共通していた、社会的養護・児童養護の見習うべき点まとめ

2015年10月16日

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日の英教育省、民間支援団体「ファミリーライツウォッチ」の視察が終わり、
すべての日程が終了して現在ヒースロー空港です。

搭乗までの間に、今回訪れた3ヵ国に共通していた
「社会的養護・児童養護について日本が見習うべき点」をまとめておきます。

児童福祉の主体が基礎自治体に移管されている
各国ともに、児童養護を担う当局は「基礎自治体」です。
いずれの国も以前は州政府が持っていたようですが、「身近な自治体が、きめ細かい支援を提供するべき」という発想から、基礎自治体への移管が完了しています。
これは非常に重要な転機だった、と担当者は口をそろえていました。
我が国では児童福祉を司る「児童相談所」は都道府県管轄。
特に東京都の場合、1300万人の人口に対して11か所しか児童相談所がなく、人口比率あたりのソーシャルワーカー数も非常に希薄です。
特別区(23区)区長会が児童相談所の移管を都に求めていますが、財源・人的資源とともに速やかに移管を行うべきです。

民間支援団体・相談機関の活用・連携
児童福祉のプレイヤーは当局(地方自治体)だけでなく、様々な民間支援団体が担っていることも各国共通事項でした。
養子縁組先や里親とのマッチング、候補者のリクルート、その育成やアフターフォローまで、多くの機能を民間支援機関が実施しており、 行政との業務負担の比率は概ね5:5から4:6程度のようです。
里親や要保護児童に対応するものだけでなく、イギリスでは子どもを引き離されてしまった(保護されてしまった)両親・家族側をケアする相談・支援機関も民間に存在し、実行しています。
里親候補の開拓からマッチング、要保護児童の引き離しや家族ケアまで、すべての事業を児童相談所が担っている我が国の状態は、明らかにキャパオーバーです。
あらゆる角度から要保護児童・里親・養育困難家庭を支える仕組みづくりを進めるべきです。

「子どもの利益が最優先」という概念の定着と法制化
いずれの国も1970年代から様々な社会運動により「子どもの利益が最優先」の価値観が定着しており、イギリスの「児童法」のように明確に法制化されている国もありました。
要保護とみなされた児童たちは迅速にソーシャルワーカーによって保護され、 裁判所によって親権停止・はく奪を行ってまで子どもの利益を守ります。(もちろん、オランダのように限界まで再統合の努力はするわけですが)
ところが、我が国の親権の強さは異常なレベルになっており、 平成24年の法改正で親権停止が理論上は可能になったものの、その実施は数件程度。親権に配慮するあまり、保護された子どもたちもほとんどが施設に送り込まれます。

そして日本には
・児童福祉法
・児童虐待防止法
・子ども子育て支援法
など児童養護に係る法律が複数存在しますが、いずれも児童を「施し」の対象とみるもので、子どもの人権が主体になった国内法は存在しません。
児童相談所は子どもの利益最優先のために行動し、 時には親権停止もいとわずに行動するべきです。そのための法的根拠が脆弱なのであれば、子どもの視点に立った新たな法整備も視野に入れるべきだと思います。

乳児院は原則廃止!
どの国でも念のため「乳児院はありますか?」と聞くと、「え、とっくになくなりましたよ(日本はまだあるんですか?)」というリアクションをされることが悲しかったです(苦笑)。
年齢を重ねた児童や、スペシャルニーズに対応するために施設であれば すべてをなくすことはできませんが、少なくとも乳児院は段階的に廃止が可能です。
各国ともに、乳児は一時保護→里親での対応に切り替えており、特に問題は起きていない・愛着を育む上で必要な転換だったと口をそろえていたことが印象的です。
また、医療的ケアが必要な重症心身障害児を除けば、どんな障害があれ里親家庭で育てることは可能であるという姿勢も共通でした。
もちろんそのためには、単に里親にマッチングすれば良いのではなく、 里親たちに対して専門機関がサポートする体制を整える必要があることは言うまでもありません。

以上、駆け足になりましたが、やるべきことが明確になり、たくさんの論拠を得れた視察になったと思います。

「マイナンバー」通知スタート 受け取りを拒否したらどうなるの?

THE PAGE 2015年10月19日

赤ちゃんからお年寄りまで、日本に住む全ての人に番号をつける「マイナンバー制度」の通知が10月から始まった。国民一人ひとりの住民票の住所あてに「通知カード」の発送が進められている。しかし、マイナンバー制度については根強い反対意見があり、「受け取りを拒否しよう」との呼びかけがネット上などで見られる。果たして、マイナンバーの通知を拒否したらどうなるのか。現実的に、そのような対応は可能なのだろうか?

「受け取り拒否」呼びかけるツイートが反響
「政府が一番恐れているのがマイナンバーの受け取り拒否です。……国民の過半数が拒否したら、マイナンバー、終わります」。今年春ごろ、ネット上でこのようなつぶやきが現れた。すると、多くの人がこのメッセージを拡散。「国に管理されたくない」「みんなで拒否しよう」などと反響が広がった。
マイナンバー制度とは、所得や年金支給額、住民登録のほか、雇用保険、医療保険の手続き、生活保護、児童手当といった福祉の給付など、これまで別々に管理されていた個人情報について、国がすべてひもづけて一元管理できるようにするもの。マイナンバーは12ケタで、原則として一生変えられない。つまり、国はマイナンバーを今後、日本で暮らす人々が社会生活を送るうえで必要不可欠な個人情報に位置付けようとしている。
しかし、このマイナンバー制度。ネット上での声にも見られるように、国民の間で理解が進んでいるとは言い難い。内閣府が今年7~8月に実施した調査でも、回答者のうち34.5%もの人が「個人情報漏えい、プライバシー侵害」 を不安視。また、「国に個人情報が一元管理され、監視、監督される」と心配する人も14.4%に上った。
マイナンバーについては、「国民にメリットは少なく、国民から税金を取りやすくするなど、役人が得をするための制度」との声も根強い。制度の発足に伴って巨額の利権が生まれている。実際に10月13日には、マイナンバーに関する公共事業の発注に伴い、厚生労働省の職員がIT業者から100万円の賄賂を受け取っていたとして警視庁から逮捕される汚職事件も発生。人々のマイナンバーを見る目は厳しさを増している。

受け取らなくても「番号」は消えない
では、国民はこのマイナンバー通知を拒否することはできるのか? 10月から始まったマイナンバーの通知は、市区町村から郵便の「簡易書留」によって行われる。通知は、家族分まとめて世帯主あてに届く。不在の場合は1週間以内に郵便局に取りに行くか、再配達してもらう。そこで受け取られなかった通知は、住所地の市区町村に返送され、役所内で保管されるという。
これを無視し続けると、どうなるのか? そもそもマイナンバーは、本人の意思にかかわわらず、10月5日時点の住民票コードを元にして、コンピューターで自動的にすべての日本国内在住者の番号が生成される。たとえ通知が返送されても、その人のマイナンバーが消えるわけではない。

医療保険や年金給付、会社に提示する必要
では、自らに割り振られたマイナンバーを知らないままの人は、今後どのような不利益を被るのだろうか。
2016年1月から、社会保障・税などの手続きの際、マイナンバーの提示を求められるようになる。自己への直接的なメリットが乏しい納税や住民登録はともかく、雇用保険や医療保険、年金、生活保護、児童手当など福祉の給付といった場面で、マイナンバーを提示できなければ、かなりの面倒や不利益を強いられることが予想される。
また、企業などに勤める従業員は、会社へのマイナンバーの提出が義務づけられる。納税や社会保険で必要なためだ。内閣官房サイトの「よくある質問」には、「従業員等がマイナンバーの提供を拒んだ場合、どうすればいいですか? 」との質問がある。これに対し、回答では「マイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください。それでも提供を受けられないときは、書類の提出先の機関の指示に従ってください」としている。勤め人がマイナンバーを拒否すれば、会社の総務担当者を困らせることになる。
結局、本人がマイナンバーを受け取ろうが拒否しようが、番号は割り振られている事実は変わりがない。そして本人の意思に関わらず、社会はマイナンバーを前提とした仕組みの整備が進み、外堀はどんどん埋められていくだろう。法的な縛りがある以上、たとえマイナンバーの通知を拒否しただけでは、「制度を終わらせる」ことは現実的に難しい。本当に国の制度を変えたいのなら、国政選挙で声を上げるのが正道ということだろう。