ネット依存 兵庫県内高校生8.3% 4時間以上31% イライラ、睡眠障害…

神戸新聞NEXT 2015年11月4日

スマートフォン(スマホ)の長時間利用など「ネット依存」の疑いのある小中高生の割合が、兵庫県内で6・4%だったことが県の初めての調査で分かった。高校生が8・3%と最も高く、1日4時間以上利用する割合も31%に上る。睡眠障害などの健康被害につながるとされ、専門家は注意を呼び掛けている。(斉藤正志)
調査は小中高生2881人を対象に、県青少年課が7~8月にアンケート方式で実施した。
「使用時間を短くしたり完全にやめようとしたりすると不機嫌やイライラなどを感じる」「熱中しすぎを隠すためにうそをついたことがある」など8項目を尋ね、5項目以上の該当者を「依存傾向」とした。中学生は6・6%、小学生は1・4%。学年が上がるほど高い割合を示した。高校生のうち、76%は女子だった。
1日4時間以上の利用者も、中学生19%、小学生14%と、高校生が突出して高い。依存傾向者では、48%と約半数に上った。
普段から「イライラすることがある」との回答も、依存傾向者は84%。日常生活にも影響が大きいことが分かった。
一方、約4割の子どもが、保護者とネット利用のルール作りをしていると回答。スマホなどのネット利用を規制する「フィルタリング」については全体の55%が利用していたが、機能は十分に活用されていなかった。
厚生労働省が中高生を対象に行った同様の全国調査(2012年度)によると、ネット依存が疑われる生徒は8・1%。
県青少年課は「大人が押しつけて利用を制限するのは難しい。子どもと一緒に危険性を学び、対策を考えてほしい」とする。

11月9日午後2時から、姫路市北条口3の市立総合教育センターで、専門家を招いたネット依存防止対策セミナーがある。無料。同課TEL078・362・3142

【兵庫県立大環境人間学部の竹内和雄准教授(生徒指導論)の話】
家族との会話や読書などの時間がスマホに取って代わり、“隙間の時間”もゲームやラインで埋められれば、何となく何かを考えるという子どもにとって大切な時間が失われてしまう。情緒不安定や睡眠不足などの影響も出る。スマホは普及し始めたばかりで危険性の詳細な研究がなく、保護者も子どもも危ないと気付かないまま依存が進行している。子ども同士で対策などを話し合う機会をつくり、その上で大人と子どもが一緒に考えることが大事だ。

九州の子ども、2割が「貧困」 約42万人、深刻さ浮き彫り

西日本新聞 2015年11月4日

就学援助を受けるなど、経済的に貧困状態にあると推測される子ども(18歳未満)の数が、九州7県で約42万人に上ることが、2013~14年度の統計データを基にした西日本新聞の試算で明らかになった。全体の19・4%で、ほぼ5人に1人となる。同じ手法で試算した全国平均は15・6%で、九州の深刻さが浮き彫りになった。県別の貧困率は福岡が23・0%と最も高く、鹿児島21・3%、長崎18・5%と続いた。

子どもの貧困率については、厚生労働省が経済協力開発機構(OECD)の基準に基づき公表。平均的な可処分所得(いわゆる手取り年収)の半分(2012年、4人世帯で244万円)を下回る世帯を「相対的貧困層」とし、貧困層に含まれる子の割合が12年に16・3%と過去最悪を更新した。
だが、厚労省の調査は全国から無作為抽出したデータを基にしており、都道府県別の算出はできない。このため、自県の子どもの貧困率を独自に調査した奈良県の手法を参考に、本紙が九州7県の貧困率を試算した。奈良県の手法は、実際に何らかの公的援助を受けている子どもの数から試算したのが特徴だ。

「実際の貧困率は、もっと高い可能性がある」
小中学生については、自治体による就学援助(福岡市の場合は生活保護支給基準の1・25倍の年収以下程度の世帯が対象)を受給している子どもとし、九州7県で19万6352人(13年度)となった。
高校生や高専生については、おおむね世帯年収250万円未満程度が対象となる低所得世帯向け奨学給付金の受給者を対象とした。高校の授業料無償化見直しの影響で、14年度の1年生(九州で計2万3830人)しか実数がないため、これを3倍して約7万人と試算した。
未就学児童については、小中学生の就学援助受給率を当てはめ、貧困層を約15万人と試算。これらの合計が約42万人となり、九州7県の18歳未満の人口約216万人のうち、19・4%に当たった。
ただ、就学援助や奨学給付金はあくまで申請した人が対象だ。奈良県こども家庭課は「援助を受けていないが貧困状態にある子どももおり、実際の貧困率は、もっと高い可能性がある」としている。

金を払えば解雇OK 賛否は二分

R25 2015年11月4日

会社を辞める時、なるべくなら穏便な形で会社を去りたいものだが、時に不当解雇を訴える人は存在する。そんな状況に一石を投じるべく、解雇トラブルを金銭で解決する策を政府が検討し始め、これがネットで議論となっている。
現在の法律において、企業は雇用契約を結んだ労働者を簡単に解雇することはできない。しかし現実的には、解雇された労働者が企業を相手に不当解雇を訴える例は多く、こうした紛争は長引きがち。政府が目指しているのは、企業が労働者に金銭を支払い、労使双方が了承すれば解雇できるという制度だ。
この制度について厚生労働省は10月29日、検討会を発足させた。同日付の時事通信の記事によれば、検討会は学識者、実務経験者、弁護士らで構成されており、制度の可否を検討するとのこと。ヨーロッパや韓国などでは、すでにこういった制度が導入されているという。
不当解雇で企業を訴えた場合、たとえ労働者が勝っても現実的には会社に戻るのは難しく、結局は“カネで解決”されるケースが多い。それゆえツイッターには、
「私なら不当解雇という仕打ちがあったら、解雇を取り下げられても戻りたくないと考える場合もありそう。お金でも良いのでは?」
「解雇できないので弊害を生んでいる部分が大きい」
「終身雇用にこだわる前時代感覚から抜け出せない人が多いと感じる。お金をもらい、次のステップにしてください」
「金で解決でいいと思うけどなぁ。解決にならない額で決着することを非難すべきで」
と、これを歓迎する意見は少なくない。しかし、
「絶対反対!こんな事は許されない」
「安っい解決金で首切り自由化!定年間近にバサバサやられるんだろうなぁ」
「泣く泣く金銭解決をさせられていたのに、今度はそれがスタンダードになる。紛争が解決しやすくなって得するのは経営側だけ」
「世の中、お金で全部解決できないし、してはならないこともある」
など、一方からは猛反発の声も登場。会社員なら誰にでも振りかかる可能性がある話題だけに、今しばらく議論は続きそうだ。
(金子則男)

年金保険料を払わないとあなたは必ず損する

東洋経済オンライン 2015年11月4日

知らないと損する、経済とおかねの話。大手証券会社で、長年、個人の資産運用相談を担当し、接したお客様は3万人以上。さらに「経済や投資の基本テキスト」などのコンテンツを制作し、延べ40万人以上に「経済とおかね」に関する授業を開催してきた大江英樹氏。
新入社員から、ファイナンシャルプランナーといったおかねの専門家に至るまで「これ以上ないくらい、わかりやすい」と評判の内容が、このたび『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』として書籍化。本連載では、書籍では紹介しきれなかった、人生のここ一番の選択から、日々の買い物まで、あなたが人生で損をしないために知っておくべき「経済とおかね」の超基本の一部をお伝えします!

年金?評判悪いよね
年金、特に国が運営している公的年金については、いつの時代でもあまり評判がよくありません。特に制度を主管している厚生労働省、そして社会保険庁の前身である日本年金機構では、今までいくつもの不祥事が取り上げられてきました。
古くはグリーンピアのように、年金積立金を投入した非常に効率の悪い投資と言われた案件から、2007年に大きく取り上げられた年金記録問題、そして最近では2015年の5月に起きた加入者の個人情報流出問題など、数え上げるとキリがありません。
年金というのは、私たちにとっては老後の生活を賄う大切な手段であるからこそ、こういった問題が大きく取り上げられるのですが、こういう不祥事は別に年金だけに限らず、ほかの官庁や民間企業においても発生しています。
組織というのは人間が運営していくわけですから、多かれ少なかれ、こういう不祥事がつきまとうものです。でも、たまたま何らかの不祥事があったからといって、その組織が作っている製品やサービスが、全部、否定されるというわけではありません。
最近では東芝の不適切会計問題もありましたが、だからといって東芝の製品はどれも悪いかと言えば、そんなことはありません。組織の不祥事とはまた別の問題です。人間は何かひとつよいことがあると、全面的に賞賛してしまいがちになることがあり、これを行動経済学では「満足化」と言います。
逆に、何かひとつ問題があると、そのほかのものもすべて悪いと感じてしまうのです。年金については、まさにこのパターンと言えるでしょう。
ところが、世間で言われているほど、公的年金というのは頼りないものでも悪いものでもありません。よく話題に出る、公的年金に関するさまざまなウワサについて実際のところはどうなのかを、考えてみましょう。

公的年金は赤字、は本当か
まず、最もよく言われるのが「公的年金は赤字だ!」ということです。どういう状態のことを赤字だと言うのかにもよりますが、仮に年金の支払いが賄えなくて、借金して支払っているという意味であるとすれば、年金は赤字というわけではありません。赤字なのは国の一般会計です。赤字だからこそ毎年国債を発行して支出の穴埋めをし、その借金の合計が1000兆円以上もあるのです。
年金の場合はどうかと言えば、借金どころか貯金が180兆円余りあります。これが年金特別会計です。ご存じのように日本の年金制度は単年度決済で、毎年入ってくる年金保険料が年金を支払う原資になっています。ところが昔と違って、今は高齢者の割合が多くなってきたために、年金自体の毎年の“入”と“出”で言えば、“出”のほうが多くなっています。
毎年の収支ということで言えば、これは確かに赤字です。でも今までの貯金がありますから、赤字と言っても国の一般会計と違ってすぐに借金する必要はなく、貯金を下ろしていけばいいのです。現実に毎年この貯金の中から5兆~6兆円ぐらいが補?鹸されています。
もちろん、何もせずにただ貯金を取り崩していくだけなら、いつかは蓄えがなくなってしまいます。そこでこの貯金が減らないようにするために、年金の積立金を運用して増やしています。ところがこの年金の運用にも、どうやら誤解があるようです。

GPIFは大丈夫か?
公的年金の運用は「年金積立金管理運用独立行政法人」というところが行っています。長い名前なので、一般的には英語名の頭文字をとってGPIFと言われており、最近はこの運用改革が話題になっています。
このGPIFが年金積立金を自主運用し始めたのが2001年ですが、2014年末までの13年間で上げた利益の累計額は47兆円あまりあります。ここ数年の年度別に見ても、リーマンショックのあった2008年度こそ年間で9.3兆円ぐらいのマイナスが発生していますが、2009年度から昨年度までの5年間では、2010年度に3000億円のマイナスを出した以外は、毎年プラスの利益となっています。
アベノミクスが始まった2012年、2013年はいずれも、10兆円以上の利益が上がっています。さすがに、今年の7~9月は日経平均が大幅に下落した影響で9兆円以上のマイナスが出ていると言われていますが、これはマーケットの変化に伴う現象ですからやむをえません。10月に入ってからは再び回復基調にあるので、年間を通じてみると影響は均されるのではないかと思います。つまり年金資金の運用自体は、決してうまくいっていないというわけではないのです。
ところがマスコミなどでは、リーマンショックの年のように、大きくマイナスが出たときだけセンセーショナルに報道するものですから、「どうやら年金の運用はうまくいってないらしい」という印象が植え付けられてしまうのです。
でも実際にGPIFのホームページを見れば、今までの運用成果が全部公表されていますから、問題はないということがわかるはずです。

未納者が4割もいるから、年金は破綻寸前!?
「年金の未納者は4割にも達する」と報道されていますが、これも実はかなり誤解を招く表現です。この表現だけ見ると、国民の4割が未納だと思ってしまいます。でもここでいう4割というのは、いったい何の4割なのでしょうか?
それは一号被保険者です。公的年金の加入者数は2013年度で6718万人いますが、その内、自営業や無職、学生といった人たちのことを一号被保険者と言い、その数はおよそ1805万人です。この人たちの年金の納付率が60%なので、払っていない人は残りの40%、つまり722万人ということになります(実際には40%の人がまったく払っていないという意味ではなく、納付月数の割合が60%という意味ですが、ややこしいのでここではまったく払っていないとして計算します)。
ところが、学生で収入が少なかったり生活保護で保険料が払えなかったり、あるいは震災などの災害で収入が途絶えてしまったりした人は、保険料の納付が免除される仕組みになっており、そういう人が同じ2013年現在では606万人ほどいます。すなわち、確信犯的に保険料を払っていない未納の人たちの数は、115万人ということになります。だとすれば、実際の未納率は115万人÷6718万人で、わずか1.7%です。
これですぐに年金制度が崩壊するということはありません。だいいち、この保険料を払っていない人たちには年金が支給されませんから、これだけをもって年金の財政が大きく悪化するということはないはずです。

「100年安心」ではないけれど「破綻寸前」でもない
もちろん私は、年金は今後、何があっても大丈夫とか、未来永劫安心などと言うつもりはありません。日本の経済成長が続かなければ、社会保障制度も決して安泰とは言えないでしょうし、かつて年金を「100年安心」と言った人がいましたが、そこまで言うのは言い過ぎだろうと思います。
ただ、年金不安をあおり立てている金融機関や一部のマスコミの言葉に乗って、年金保険料を支払わないということになれば、それは結果としてあなた自身の将来に大きな禍根を残すことになりかねません。もちろん公的年金だけで、将来、自分の望む生活を維持するというのは難しいでしょうから、これからは自立や自助努力ということが一層求められる時代になることは確かです。でも、その場合でも公的年金というのは、第一の土台となる部分だということはしっかりと認識しておく必要がありそうです。
人生で損をしないために、年金は「100年安心」とは言えないけれど「破綻寸前」でもないということを知っておくことが大切です。

ピロリ菌、胃がん原因の8割 検査・除菌の機会が拡大

産経新聞 2015年11月4日

胃がんの原因の8割を占めるといわれるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染。平成25年に胃潰瘍などの病気がなくても除菌治療が保険適用となったことで、検査や除菌を受ける人が増えている。胃がんによる住民の死亡を減らそうと、検査と除菌を独自に導入する自治体も出てきている。(平沢裕子)

内視鏡が「推奨」に
千葉県在住の公務員男性(60)は昨年9月、人間ドックで胃からピロリ菌が見つかった。男性は毎年、人間ドックで内視鏡検査を受けていたが、これまではピロリ菌検査は項目外で、初めて感染を指摘された。男性は「内視鏡検査で『胃が荒れている』と言われたことはあったが、ピロリ菌に感染しているとは思わなかった」と話す。除菌治療を2回行い、今年9月の人間ドックではピロリ菌は消えていた。男性は「除菌できてよかった。胃の調子もよくなった」と喜ぶ。
ピロリ菌に感染すると慢性的な胃炎を起こし、その後に胃潰瘍などを発症し胃粘膜の縮小が進むと、胃がんになるリスクが高まるとされる。こうした事実から、世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関」は2014年、「胃がんの8割がピロリ菌の感染が原因で、胃がん対策はピロリ菌除菌を中心にすべき」とする報告書をまとめている。
ただ、日本の胃がん対策は、胃のエックス線検査による胃がん検診が推奨されるだけで、ピロリ菌の検査は入っていない。厚生労働省が9月に公表した「がん検診のあり方に関する検討会中間報告書」では、胃がん対策として新たに胃の内視鏡検査が推奨に加わったものの、ピロリ菌検査は「死亡率減少効果のエビデンス(科学的根拠)が十分ではない」として見送られた。

中高生も対象
一方で、独自にピロリ菌検査を導入する自治体は増えている。厚労省によると全国で6%に上る。
岡山県真庭市は平成23年度から40歳以上を対象に導入。胃がん検診を受ける人にまずピロリ菌の抗体検査を受けてもらい、陽性者に対して内視鏡検査を勧めている。25年度からは中学2、3年生も対象とした。
同市健康推進課は「除菌による胃がんの発生予防効果などから導入した。同時に保護者への啓発活動を行えば、市全体で胃がんとなる人を減らせるかもしれない」と期待を寄せる。
北海道でも北海道大の協力を受け、稚内市や美幌町で中学生や高校生を対象に検査と除菌を行っている。
北海道大大学院がん予防内科学講座の浅香正博特任教授は「ピロリ菌感染者の除菌が進めば、胃がんで亡くなる人が激減するとみられる。自分や家族の健康のために、ぜひ一度、検査を受けてほしい」と呼びかけている。

孫のため…祖父母の育休制度が登場

読売新聞(ヨミウリオンライン) 2015年11月4日

企業が導入、自治体も支援
祖父母が孫のために仕事を休める休暇制度を設ける企業が登場している。
共働き世帯が増え、保育所などの子育て支援が不足するなかで、祖父母に育児を頼る人は多い。祖父母のワーク・ライフ・バランスへの配慮が必要な時代になったようだ。
東邦銀行(福島市)で個人融資事務を担当する高野文子さん(59)は今月、同行の「イクまご休暇」制度を使い、11日間の休みを取った。第3子を出産した同居の娘の体調が悪くなったためだ。娘の夫も忙しく、上の小学生の孫娘2人の世話をした。「孫たちとたくさん接して充実していた。制度があると上司にも言いやすく、休みやすい」と話す。
同行は4月、未消化の有給休暇を最大120日分積み立てて、看病や行事参加など孫のために使える制度を導入した。女性6人が利用し、うち5人が娘の第2子以降の出産時だった。最長で1か月取得した。人事部の担当者は、「祖父母の助けがあれば子どもを産みやすくなるのではないか」と話す。
第一生命保険(東京)も2006年に孫の誕生時の休暇を導入、昨年度は約870人が取得した。こうした休暇は企業がベテラン社員の流出を防ぐ狙いもある。
なぜ孫のための休暇が登場したのか。家族問題研究家の麻生マリ子さんは「保育所の整備が不十分なうえ、出産直後や急な病気などの突発時に対応してくれる施設やサービスが少ない。結果として祖父母に頼らざるを得ない」と指摘する。
企業で定年まで働く女性が増えたことも影響しているとみられる。再雇用制度で定年後も働きたいという人も多い。総務省の労働力調査によると、2014年の女性の就業率は55~59歳が66%、60~64歳が48%で、30年前に比べそれぞれ17ポイントと10ポイント上昇している。
また団塊以降の世代は、それ以前の世代よりも孫とのかかわりに前向きだ。博報堂新しい大人文化研究所の調査では、60代の祖父母が孫育てをする理由は「一緒にいて楽しい」が最も多く、「子どもの家族を助けたい」を上回った。
孫育てへの期待は大きく、NPO法人孫育て・ニッポン理事長の棒田明子さんは、「継続的な支援があれば、もう1人子どもを産もうと考える家庭が増える」と話す。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(2010年)では、夫婦と祖母が離れて暮らす場合の出生数は1・84人だったが近居は1・99人、同居は2・09人だった。
こうしたなか厚生労働省は昨秋、企業が策定する両立支援の行動計画の指針に、孫の誕生時の休暇制度の創設を盛り込んだ。福井県や岡山県は今年度、休暇取得を促進するため、企業への支援を始めた。学習院大教授の脇坂明さん(労働経済学)は、「社会全体で子育てを支えるために、企業が孫のための休暇制度を導入するのは有効な方法の一つだ」と話す。
祖母のワーク・ライフ・バランスが重要になってきている。関東在住の60代前半の女性は今春、娘2人の出産が重なり、娘や孫のためならやむを得ないと保育士の仕事を辞めた。麻生さんは、「娘の夫の転勤や離婚で孫育てを担うことになり、仕事を辞めざるをえない例も目立つ。孫育ては祖母にとって負担が大きく、頼りすぎないよう協力内容を話し合っておくべきだ」と話す。

負担が集中しないように
「団塊世代の孫育てのススメ」などの著書がある家族問題評論家・宮本まき子さんの話
「子育てを頼る相手は、妻の実母であることが多い。60代の私と同世代の知人にも、孫が増えるにつれて負担も重くなり、自分の時間を取られている人が何人もいる。今後、孫育てをしながら老親の介護を担うケースも増えるだろう。
これまで仕事一筋で育児を十分してこなかった祖父の中には、孫には積極的にかかわりたいという気持ちの強い人もいる。祖父も巻き込んで、祖母一人に負担が集中しないよう役割分担することも大切だ。」

頼りにするのは「親」
働く女性が子育てで頼りにしているのは、夫より親のようだ。
国立社会保障・人口問題研究所の2013年の全国家庭動向調査によると、「妻が働きに出る時の子どもの世話」について最も重要な支援提供者は誰かを尋ねたところ、親が最も多く、42.2%だった。次いで、保育所などの公共機関が33.8%、夫は15.5%だった。1993年の第1回調査から継続して親が最も重要な位置を占めている。

甘えすぎず感謝の気持ち
◎取材を終えて
子育ては親が担うもので、孫休暇はそれに反しており、祖父母と距離を置くべきだという意見もある。
孫育ては体力的にも大変で、小さな子どもを見る気疲れもかなりあると、取材した子育て広場の担当者は話していた。一方、祖父母のかかわりは子どもの社会性を育み、多様な価値観に触れることにもなる。
休暇制度などの環境を整えるとともに、私たち親世代も忙しいからと甘えすぎず、普段から感謝を伝えていくような気遣いが大切だと感じた。(小野仁)