児童施設で4百万円不明 性的虐待で京都市特別監査

京都新聞 2015年11月11日

入所の少女にみだらな行為をしたとして、児童養護施設「迦陵園」(京都市左京区)の男性施設長(54)=休職中=が児童福祉法違反の罪で起訴された事件で、市は11日、同園への特別監査の結果を市議会に報告した。入所者が受け取るはずの児童手当や奨学金計約400万円が所在不明となっていたことを指摘した。
報告書や市によると、2013年12月~15年6月の児童手当約376万円と、14年度~15年度の公益財団法人京都新聞社会福祉事業団の奨学激励金33万円が施設長の手に渡った後、入所者の口座に入金されず、所在不明になった。
また、職員への聞き取りでは、精神的な攻撃や過大な要求にあたるパワハラ行為の指摘もあったという。入所者42人の中に少女と同様の性的被害の訴えはなかったとしている。
厚生労働省の通知は、児童手当は各入所者名義の口座で管理するよう定めている。監査開始後に施設長は全額を運営の社会福祉法人迦陵園に弁済、法人が各入所者に渡した。
市は同日、児童福祉法に基づき社会福祉法人と施設に改善を勧告。事実関係や施設長らの責任について、12月10日までに市に報告するよう求めた。迦陵園の理事は「特別監査結果を真摯に受け止め、早急に理事会を開いて対応したい」としている。

児童養護施設で不明金 児童手当400万円分「自分が管理していた」逮捕の施設長が返金

産経WEST 2015年11月11日

京都市は11日、児童養護施設「迦陵園」(京都市左京区)の特別監査で、施設が児童の代わりに受け取っていた児童手当など計約409万円の所在が不明になっていると明らかにした。
同施設では9月、入所していた女子高生にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反容疑で施設長の松浦弘和被告(54)が逮捕、起訴された。施設長は不明金について「自分が管理していた」と説明。すでに全額弁済したという。横領は認めていない。
市によると、所在不明になった児童手当などは、松浦被告から職員を通じて児童名義の口座へ入金されるはずだったが、同被告が施設長に就任した約2年前から一切入金されていなかった。松浦被告の逮捕を受け、市が施設の運営実態などを調べていた。

団地の空き部屋、安く提供 世田谷区、児童養護施設退所者の負担軽減 東京

産経新聞 2015年11月11日

経済的不安を緩和 大学などの中退防ぐ
世田谷区は平成28年度にも、児童養護施設を退所した若者に、区営住宅の空き部屋を月額1万円程度の家賃で貸す取り組みを始める。経済的負担を減らすことで、退所者が大学などへ進学した場合の中退を防ぐ狙いだ。ただ、退所者の中には、施設職員以外に相談相手がおらず、退所後の孤独から中退することも少なくないといい、併せて精神的支援も求められている。(植木裕香子)

バイトでやりくり
保育士をめざす女子短大生(20)は、経済的な理由で8歳から姉、兄とともに入所していた同区内の児童養護施設を高校卒業後に退所。現在、1人暮らしをして短大に通う。
授業料は奨学金で支払っているが、毎月の家賃や生活費などは、午後5時から午後11時まで、時給975円でスポーツクラブのアルバイトなどで得る約8万円の中からやりくりする。
連絡が取れない兄、結婚し嫁いだ姉、定年退職した父。家族に経済的に頼ろうとは思わない。とはいえ、「アルバイトで稼いだ同じ8万円でも、他の人はライブとか、おいしい食事を楽しむことができる。私は(生活費など)使い道が限られているし、遊びの幅がない。周りと比べたときに落ち込むときがある」と打ち明ける。
授業料が払えなかったり、出席日数が足りず、大学などを中退する退所者も多いという。
厚生労働省の調査で、児童養護施設の退所者の大学などの進学率は、全国平均の約7割を大幅に下回る約2割にとどまる。一方で、NPO法人「ブリッジフォースマイル」(千代田区)の調べによると、施設退所者の大学などの中退率は約3割にのぼる。

月額1万円程度
こうした現状を踏まえ、同区は区内の児童養護施設の出身者を対象に、5カ所程度の区営住宅の空き部屋を月額1万円程度で入居できる取り組みを検討している。退所者の家賃負担を軽減する経済支援で、中退者を減らす狙いだ。
現在2~18歳までの子供約50人が入所する同区の児童養護施設「福音寮」の飯田政人園長(57)は「保護者が授業料を負担して学校へ行く子供と比べて、施設の退所者が越えなければならないハードルは多い。経済的不安が緩和されることは、退所者にとっては大きな安心材料になる」と述べ、区の取り組みを評価する。

精神的サポートも重要
家賃4万円のアパートに住む女子短大生も「4万と1万じゃ、全然違う。すごく助かる」と、区の取り組みを期待する一方、精神的なサポートも重要と話す。
「学校がつまらなくて欠席が続き、短大を辞めようと思う度に、姉が『自分で決めたことなんだから最後までやりなさい』と励ましてくれた。心が通じ合える人が相談に乗ってくれたり、支えてくれなかったら、途中で短大を辞めていたかもしれない」と振り返る。
飯田園長も「1万円でアパートを貸すというだけでなく、最低でも大学などを卒業するまでの間、施設の職員らが、退所者の部屋に行って話を聞くなどして支え、自立に向けて支援する態勢を整えることが重要」と指摘。区でも退所者が相談できる環境の整備についても検討している。

小児の神経難病、遺伝子治療で運動機能が改善

読売新聞 2015年11月11日

自治医科大は10日、全身の筋肉をうまく動かせない小児の神経難病の患者2人に遺伝子治療を行い、1~2か月で運動能力が回復したと発表した。
大きな副作用はないという。
この難病は、神経で信号を伝える物質を生まれつき作れない「芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症」。国内で6人、世界で約100人の患者がいるという。同大のチームは厚生労働省の承認を得て、今年6月、AADCを作る遺伝子を組み込んだウイルスを男性患者(15)の脳に投与。7月には男性の妹(12)にも同じ治療を行った。
治療前の2人はほぼ寝たきりの状態で、頻繁に全身が硬直する発作に見舞われていた。しかし、治療開始から1~2か月で発作が減り、介助付きで体を起こしたり、手を動かしたりできるようになったという。