アベノミクス新3本の矢「夢をつむぐ子育て支援」で潤う企業は

ZUU online 2015年11月16日

安倍晋三首相は「アベノミクスによって雇用は100万人以上増え、2年連続で給料が上がり、中小・小規模事業者の倒産件数も大きく減少した」「もはや『デフレではない』という状態まできた」「次は未来を見据えた、新たな国づくりを強く進めていきたい」として、アベノミクス第2ステージへの移行を宣言。一人ひとりの日本人、誰もがもっと活躍できる「一億総活躍」社会を目指すため、新たな3本の矢を発表した。
新3本の矢は①希望を生み出す強い経済、②夢をつむぐ子育て支援、③安心につながる社会保障である。新アベノミクスについては、いまひとつ具体性に欠けることから、市場では冷ややかに見る向きも少なくないが、ここでは「夢をつむぐ子育て支援」に注目したい。

希望出生率1.8の実現をターゲットに
新アベノミクス・第2の矢「子育て支援」は、希望出生率1.8の実現をターゲットにしている。1.4程度に落ち込んでいる出生率を1.8に回復。家族を持つことの素晴らしさを実感することで、子どもを望む人が増え、人口が安定する出生率2.08も視野に入れるというものだ。
子育て支援と一口に言ってもその施策は幅広い。経済的な理由で子どもを持てないとする問題の打開策としては、待機児童ゼロの実現、幼児教育の無償化、三世代の同居などを促し、大家族で支えあう環境づくりを応援、多子世帯への重点的な支援を掲げている。また、不妊治療や結婚支援などにも取り組んでいく。教育制度の見直し、奨学金の拡充などにも取り組み、希望すれば誰もが進学できる環境を整えるとしている。

保育園や学童保育、こども園などを運営する企業
このような施策から業績に好影響を及ぼす企業を見てみよう。保育園や学童保育、こども園などを運営する企業は多い。
まず挙げられるのが、支援関連の代表格として新3本の矢が発表された直後に大幅高となったJPホールディングス <2749> 。首都圏を中心に愛知、宮城、大阪、北海道で100以上の保育園を運営、児童館や学童クラブで放課後児童健全育成事業、放課後子ども教室推進事業にも取り組んでいる。ほかにも法人向けに保育園運営のトータル提案のコンサルタント、アドバイザリーを行っており、全国で保育園の設置、運営をバックアップしている。
ベネッセホールディングス <9783> も首都圏で保育園を運営、2014年からは学童クラブも始めた。人材派遣のジェイコムホールディングス <2462> 傘下のサクセスホールディングス <6065> は、大学や企業、病院内の保育施設受託運営、公設民営保育園の運営、学童クラブ、児童館の運営などを手掛ける。このほか千趣会 <8165> 、ニチイ学館 <9792> なども保育園を運営している。東京急行電鉄 <9005> 、京浜急行電鉄 <9006> 、東日本旅客鉄道 <9020> などは住みよい沿線を目指して保育園を設置している。

事業所内保育施設や婚活パーティーも
意外なところでは染色加工大手の東海染工 <3577> 。100%子会社のトットメイトが、東海圏で企業・病院内保育所や商業施設内の保育ルーム運営、保育士・幼稚園教諭派遣、ベビーシッティング、直営保育ルームの運営などを手掛けており、2016年3月期の上期(15年4~9月)売上高は8億9500万円で、東海染工の連結ベース80億800万円の1割以上を占めている。
イオン <8267> はことし4月、東京と千葉に「イオン放課後教室」を開校した。駅前に立地し、土日祝日も営業。豊富なプログラムで体育・知育・徳育・食育が学べるのが特徴だ。同社は事業所内保育施設「イオンゆめみらい保育園」を開園、女性が働きやすい会社を目指している。傘下に結婚相手紹介サービス大手のツヴァイ <2417> を持つことも追い風。婚活パーティーの主催やコンピューターによる適合性判断などを積極的に行っており、会員数も増加している。

仕事と育児の両立を支援する「子育てサポート企業」
仕事を持つ母親の育児支援に積極的に取り組んでいるのは、「子育てサポート企業」の認定を受けている三越伊勢丹HD <3099> 。最長3年の育児休業制度を設けているほか、勤務時間を選べる育児勤務制度もある。社員の8割以上が女性という資生堂 <4911> も事業所内保育施設の開設や男性社員の育児休業有給化など様々な制度や施策を導入して、仕事と育児の両立を支援する。
女性の家事負担を減らすという点から、家事代行ではダスキン <4665> やニチイ学館 <9792> 。育児関連では、紙おむつやベビー用品、育児用品などを扱う企業としてピジョン <7956> 、ユニ・チャーム <8113> 、西松屋チェーン <7545> などが挙げられる。ピジョンは企業内保育施設の運営など、企業や自治体の子育て支援をバックアップする活動も行っている。

「子育て支援賃貸マンション」や「子育て世帯応援タウン」も
三世代同居や子育てには住環境も大切な要素。京王電鉄 <9008> は子育て支援賃貸マンションを建設、京王子育てサポートが運営する認証保育所や、公営の子ども家庭支援センターも同じ建物に入る。
ポーラ・オルビスホールディングス <4927> も不動産事業のピーオーリアルエステートが、認可保育所を設置するなど子育て支援に特化した賃貸マンションを運営している。積水ハウス <1928> は子育て世帯応援タウンを展開。中庭を囲むように棟を配置することで、建物内からも遊ぶ子どもたちを見守ることができるほか、子ども目線の安全設計や子育て支援仕様を賃貸住宅で標準化している。

自分の意思で避難できる施設を 子どもシェルター研修会

沖縄タイムス 2015年11月16日

虐待を受けるなど、安心して生活できる場所を失った子どもの一時避難先として、来春開設予定の「子どもシェルター」のボランティア研修が15日、那覇市の沖縄弁護士会館で始まった。「基礎講座」として、専門家3人が開設の意義などを語り、児童福祉関係者ら約70人が聴き入った。同会弁護士らが中心の任意団体「子どもシェルターおきなわ」の主催。
団体理事長で弁護士の横江崇さん(38)=那覇市=は正職員3人とボランティアで、定員5、6人のシェルター開設を目指すと説明。最初は主に中学卒業から20歳未満の女子を対象に、入所後は2カ月間をめどに支援する計画だとした。
沖大名誉教授の加藤彰彦さん(73)=横浜市=は県内の貧困は全国最悪レベルで、非行少年の再犯率も全国的に高いと説明。「親世代の経済的余裕がなくなり、生活のストレスが子どもに向けられるケースが多い」と貧困と少年非行の関係を指摘し、「子どもが貧困や親の虐待に悩む場合、自分の意思で避難できるシェルターのような施設が必要だ」と強調した。
社会福祉士の海野高志さん(36)=浦添市=は「避難する子どもを24時間体制で支援する必要があり、スタッフの充実が欠かせない。正職員3人では足りない」と訴えた。
会場からは「支援期間のめどは、なぜ2カ月か」「地域の民生委員や保護司との連携が必要だ」などの質問が飛び交った。
「子どもシェルターおきなわ」は年内に4回の講座を予定しており、引き続き受講生を募集している。
次回は12月1日午後7時、同会館で「思春期にある子どもの心理」を開く。講師は琉大病院の精神科医島袋盛洋さん。受講料は千円、問い合わせは電話098(836)6363。

【児童虐待を考える】子どもの奨学金やバイト代搾取「経済的虐待」

西日本新聞 2015年11月16日

10代後半の子どもたちが、親に奨学金の使い込みやアルバイト代の搾取などをされる「経済的虐待」が問題化している。暴力や暴言もなく、育児放棄で命が危ぶまれるほど被害者が幼くもない。奪われるのは、自分に使われるべき金-。児童虐待防止法に定義はないが、子どもの将来にも大きく関わる事態も多く、関係者は頭を悩ませている。

校納金未納のまま
10月に入ったころから、九州のある公立高校の職員室に、2年生のミノル(17)=仮名=が毎日訪ねてくるようになった。第一声は「振り込まれた?」。
心配しているのは未納が続く校納金だ。授業料は無償だが、毎月約1万円の校納金が必要で、修学旅行の積立金も含む。校納金のために奨学金を借りているはずなのに。このままでは修学旅行に参加できない可能性がある。
ミノルは母子家庭で生活保護を受けている。奨学金が振り込まれるミノル名義の通帳は、自宅には不在がちの母親が管理している。未納が続くため、ミノルが振込日の昼休みに教員と現金自動預払機(ATM)に向かうと、残額は既にゼロだった。家庭訪問で教員が母親と話せても、「払う」と答えて未納のまま。いたちごっこが続く。
ミノルはバイト代も一部は母親に引き落とされ、残額で食いつなぐ。自分のために使われなかった奨学金を、卒業後に自分で働いて返済することになる。
「しょうがない。お母さんはああいう人やけん、直らん」。ミノルは時折、諦めた表情になる。同校の40代男性教諭は「苦しい家計を子がバイトで支える構図ではなく『搾取』。児童相談所も関わりづらく、守る手段が少ない」と苦悩を語る。

子どもが申し立て
福岡県京築地方でスクールソーシャルワーカーを務める野中勝治さん(34)は、義務教育中心に年間130件ほどの事例に関わるが、年に数件、高校生の相談が舞い込む。
2年生のダイキ(17)=仮名=は痩せて、皮膚は疾患でただれていた。奨学金による校納金の未納だけでなく、親が面倒を見ていないのは一目瞭然だった。被害児が10代後半だと、周囲から「自力でSOSを出せる」と思われがちだが、野中さんは「その家庭でしか育っていないので、『親が自分の奨学金を使い込むのは正しくない』と判断する指標を持っていない」と、難しさを指摘する。
教員の説得により、親は奨学金口座の通帳をダイキに渡したが「子に金を使う感覚がなく、今後も健康的に生活していけるとは思えない」(野中さん)と先月、野中さんはある法的措置に乗り出した。「親権停止」だ。
親権は、子の監護権や財産管理権を含む強い権利。2012年4月から民法の改正で、家庭裁判所が認めれば最長2年の親権停止が可能になった。申立人は親族や児相の例が多いが、今回はダイキ本人が申し立てた。
親は今になって、優しい言葉のメールを送ってくる。葛藤もあるだろう。野中さんの「自分の人生を第一に考えよう」という言葉に、ダイキは深くうなずいた。