「僕の父は母を殺した」父への憎しみと周囲の差別から非行へ…

西日本新聞 2015年11月17日

小学6年のとき母親が死亡し、2年後にその殺人の容疑で逮捕されたのは父親だった。広島市出身の大山寛人さん(27)は23、24日、福岡市内で、自分の半生を振り返る。父への憎しみと周囲の差別から、非行や自殺未遂を繰り返した。そんな自分を救ってくれたのは、身近な大人だったという。事前に同市を訪れた大山さんに、話を聞いた。

―父親が逮捕された当時、中学生だった大山さんは非行に走った。児童養護施設に入ったものの、高校を中退して退所。友人宅を転々としたり、公園のトイレで夜を過ごしたりした―
「差別やいじめから自分を守るために強がり、押さえきれない父への憎しみが非行を加速させたと思います。一緒にバイクで暴走する仲間は帰る家があるのに、僕が帰るのは公園のトイレ。みんなが普通に持っているものが自分にはなかった。気付けば自殺未遂をしていました。スーパーの試食や万引で腹を満たしたけど、そこで手をつなぐ家族連れを見るだけでつらかったんですよ」

―アルバイトの採用面接では数え切れないほど落ちた。就職できても父親の事件を知られて解雇された―
「勤め先に『あいつのオヤジ人殺しだよ』と電話が入ってクビになったこともありました。悔しいというか、諦めていました。人殺しの息子はこういう差別を受けるんだ、と」

―その中で唯一支えてくれた大人がいた。友人の母親だった―
「自殺未遂で病院に運ばれた僕を友人が迎えに来て、その友人の母親が『今日からうちに住みなさい』と言ってくれました。そこで生活が落ち着いたとき、やっと父に会ってみよう、と思うようになったんです」

―一審判決後に父と初めて面会。頬はこけて、弱々しくなっていた―
「どれだけ後悔しているのか一目で分かりました。そのとき、父への憎しみを終わらせようと思ったんです。このままでは前に進めない、憎しみや他人との比較という負のスパイラルから抜け出せない、と。それから父とは面会や手紙のやりとりを重ねました」

―23日に講演するイベントの主催は「ストリート・プロジェクト」(ストプロ、福岡市)。「生きづらさ」を抱えた若者の貧困や孤立を解消し、支える活動をしている。どんな思いで語るのか―
「当時の僕が福岡にいて、ストプロを知っていたら、訪ねていたと思います。僕の体験から『生きづらさ』とは何なのか、考えるきっかけにしてほしい。以前は過去を知られてクビになっていたのに、今はさらけ出すことで『強く生きようと思った』などと声を掛けられるのはうれしいです」

大山寛人さんの講演は23日午前11時50分から、福岡市南区の同市男女共同参画推進センター「アミカス」で。貧困や孤立状態にある若者を支援する団体「ストリート・プロジェクト」(福岡市)が主催するイベント「第5回ストプロ★フェスタ」(午前11時半~午後4時20分)内で、講演する。イベントでは大山さんのほか、広島市の自宅で子どもに手料理を振る舞う元保護司の中本忠子さんが講演する。
24日も午後1時半から、福岡市・天神の西日本ビル9階で大山さんの単独講演会がある。いずれも参加無料。事前にストリート・プロジェクトに電話=080(3376)3510、またはメール=stpro2010@gmail.com=で申し込む。
▼おおやま・ひろと 風俗店社員、名古屋市在住。中学生だった2002年に、事故死とされていた母親の殺人容疑で父親が逮捕される。11年に父親の死刑が確定。被害者遺族、加害者家族の苦悩や差別の問題を伝え、死刑制度について考えてもらおうと講演活動をしている。13年には「僕の父は母を殺した」(朝日新聞出版)を出版した。

「ジュースの砂糖の量」「手洗い後の残った汚れ」園児に目に見える食育

西日本新聞 2015年11月16日

体感させて理解深める
本格的な食育活動を実践している福岡市東区の貝塚幼稚園の庄司誠園長(48)と食育担当の大友可奈子教諭(28)が、共著「食育ってなぁに? 子どもが育つ親も育つ魔法の食活」を出版した。毎年度の具体的な活動のほか、食育によって園児だけでなく保護者や教員も成長する様子を紹介。実践法に悩む現場の良き手引書になりそうだ。

庄司園長は2005年の食育基本法施行から3年後に園長に就任し、食育を幼児教育の柱の一つにすることを決めた。すぐに昼食の弁当を週3回、無農薬、有機栽培中心の食材で無添加、アレルギー対応のものに見直したが、食育については手本になるものがなく、悩んでいたという。
そんな時期に出会ったのが、教員実習で園に来た大友さん。大友さんは香蘭女子短大(同市南区)で幼稚園教諭と保育士の資格を取って卒業後、再入学して栄養士の資格も取得していた。庄司園長は「幼児教育の知識を持ちながら、食育ができる貴重な人材」と09年4月に採用。大友さんは実践を重ねながら、食育の内容を充実させていった。
食育の授業は毎月1回。「ジュースに含まれる砂糖の量」のテーマでは、水が入ったペットボトルに園児の目の前でスティックシュガーを数十本分入れたり、「手洗いの実験」では、手洗い後に汚れが落ちていない部分がヨウ素反応で黒くなる体験をさせたりと、目に見える形で園児に教えているのが特徴だ。
本では、こうした取り組みをマナー編、食と身体編、知識編、食材編、器具編、クッキング編に分け、園児の変化とともに紹介している。「おやつの量を自分で調整できるようになった」「苦手なものを自分から食べるようになった」など保護者の声も収録した。
「食の大切さが伝わり、実践の参考になればうれしい」と庄司園長。A5判177ページで1512円。文芸社刊。2千部発行。

青葉区 児童養護施設 2月着工

建通新聞社 2015年11月17日

【横浜】社会福祉法人幼年保護会(横浜市保土ケ谷区釜台町18ノ1)は、横浜市青葉区で児童養護施設「(仮称)横浜中里学園新築工事」を計画しており、2016年2月に着工する予定だ。現段階で施工者は未定としている。