育児の悩み、困った時に相談するのは誰?第2位「ママ友」、第1は?

ラーニングパーク 2015年12月26日

最近ミルクを吐いてばっかり、おむつかぶれもひどいし・・・。育児に悩みはつきものです。子供が小さいときは小さいときの、そして大きくなれば大きくなったなりの悩みや心配事がつきまとうものです。
「どうしよう」と思ったとき、あなたは誰に相談していますか?子育てのパートナーである夫でしょうか、それとも親しいママ友でしょうか。

やっぱり頼りになる!本音をさらけ出せるのは自分の母親
今回のアンケートでは、困ったとき一番の相談役は自分の「母」であるとの回答が最も多く寄せられました。
「やはり自分の母親が一番です。自分の弱い所や不安に思っていることをさらけ出すことができるし、本音も言えます。母親も自分の孫のことなので、本気で考えてくれます。」
「一番身近な経験者であり、遠慮なく何でも聞けたり言ってもらえるので母です。」
「母」と回答していただいたかたのほとんどが、自分の「母」が一番遠慮せず本音で語り合える人だ、と感じているようです。悩みの尽きない育児、正解が欲しいのではなくて、ただただ今の気持ちを誰かに聞いてほしい時もありますよね。こういう時、育児の先輩であり自分を育ててくれた母親なら、相談事も自分の気持ちも受け止めてもらえるという安心感があるのがわかります。

ママ友、夫、そして専門家。他にも力強い相談役が。
「やはり、同じ年頃の子を育てている人になら、リアルタイムでわかってもらえます」
「同じ位の年の子を育てているママ友は、気持ちをわかり合えるし、新しい情報やアドバイスをたくさんくれるから。」
自分と同時期に同世代の子どもを育てている「ママ友」。そんな「ママ友」は自分の子どもの成長過程にあったアドバイスをくれ、かつもっている子育て情報が親世代より新しいようです。また、同じ悩みを抱える友だちどうしいろいろな辛さもわかち合うことができるため、相談相手として頼りにしているかたが多くいました。
他には「やはり、育児を一緒にしていく相手なので。何より、子どもが今どういう状況かをお互い知るうえでは大切な時間だと思うので」と、パートナーである夫に相談するというかたや「専門家の意見を聞いて自分で判断したいので、保育士など育児の専門家に聞きます。自分と同じような素人にはあまり聞きたくないです」とプロの意見を仰ぐというかたもいました。
母親、ママ友、夫に専門家・・・。育児に悩んだとき相談に乗ってくれる人は非常に多くいる、ということもこのアンケートからわかりました。

一人で悩みを抱えないで!協力してくれる人はたくさんいる。
「どうしたらいいんだろう」と悩みや心配事の尽きない育児。テストなどと違って「こうしたら絶対大丈夫」という正解も無いからこそ、時にはモヤモヤしすぎて嫌になることがあると思います。
そんな時は「母親」でも「ママ友」でも自分の本音をさらけ出せる相手に、心配事だけでなく自分の気持ちも一緒に吐き出してしまいましょう。
相談にのってくれる相手も家族、友だち、専門家と、あなたのまわりに沢山います。一人でいっぱいいっぱいになる前にそういった相手に相談して、気分一新、今しかない子育てタイムを存分に楽しみましょう。

【アンケートについて】
質問:育児の相談をするなら誰?
調査地域:全国
調査対象:お子さまをお持ちの保護者のかた
調査期間:2014年9月10日~9月12日
調査手法:Webアンケート
有効回答数:100サンプル

援助交際は「少女だけの問題」なのか?「児童買春」被害者を支援する団体に実情を聞く

弁護士ドットコム 2015年12月26日

成人男性がお金を払って、18歳未満の少女と会い、性的な行為を行う「援助交際」が社会問題化したのは、20年近くも前のことだ。しかし今もなお、「援助交際」は10代の少女を取り巻く深刻な問題となっている。
「13歳のころから援助交際をしているが、この生活から抜け出したい」。買春やアダルトビデオへの強制出演など、性的搾取の被害者を支援する「NPO法人 人身取引被害者サポートセンター ライトハウス」には、このような相談が寄せられるという。
援助交際をする生活から抜け出せない背景には、どのような事情があるのか。「ライトハウス」代表の藤原志帆子さんと広報・アドボカシー マネージャーの瀬川愛葵さんに話を聞いた。(取材・構成/瀬戸佐和子)

日本には「児童が買われ続ける土壌」がある
女子中高生は、何がきっかけで援助交際を始めてしまうのでしょうか?
藤原:まず、「援助交際」という言葉ですが、少女たちと大人が同等の立場で取引をしていて、少女たちが自分の判断で行動をしている、というような表現ですよね。児童買春という犯罪をこのような言葉に置き換えてしまう社会こそ、問題だと思いませんか。
また、どうして少女は援助交際をするのかという質問ですが、買われる少女たちにのみ焦点が当てられる傾向も違和感を感じます。なぜなら、買春をする大人たちはいつの時代も「匿名」だからです。
日本における児童買春の処罰は、他の先進国やアジア隣国と比べて軽度なもので、社会的な制裁もほとんどありません。処罰されるリスクが低く、社会的にも「買う側」を問題視する意識が希薄な状況では、買春者は繰り返し10代の性を買います。
瀬川:少女たちがなぜ援助交際に巻き込まれてしまうのかと問うとき、日本にはこのように「児童が買われ続ける土壌」があることをまず理解する必要があります。
援助交際を強いられる少女たちの背景は様々ですが、家庭内で性虐待を受けていたり、家庭環境が複雑な女の子たちがいます。家が安心できる安全な場所でないため、彼女たちは家に帰りたくない、帰れないのです。そして、そのことを相談できる大人が周りにいないとき、一晩だけでも家に帰らずに済むようにと、援助交際にたどり着くケースがあります。
自分を守ってくれるはずの大人や信頼していた大人からの暴力により、子どもたちは人間関係への不安を常に抱くようになります。その孤独感から、ときに自分たちを利用するような人が近づいてきても、それを受け入れることがあります。その相手が自分を必要としてくれたり、寂しさを埋めてくれるのならば、なおさらです。
援交相手や、性産業のスカウトマン、彼女たちを買う客が、その寂しさや孤独感を満たす存在になってしまうのです。「優しくしてもらったから、援交したけどお金はいらない」という子もいました。
藤原:援助交際をするか、自分の居場所がない家に帰るかの二者択一の中で、援助交際から抜け出せない子は多いです。
瀬川:相談支援をしていて出会う子の中には、「家で性虐待を受けるくらいなら、援助交際のほうがまだマシだ」と考える子もいるようです。家での性虐待は、自分の意志に関係なく毎日同じような時間帯に被害を受けるもので、拒否できない。でも、援助交際は自分で少しはコントロールできるし、お金ももらえる場合が多い。
もちろん、赤の他人と一緒に過ごすことには恐怖を感じていると思います。「これから援交するよ」とLINEで私たちに伝える子もいます。連絡をするということは、他の人に知っておいてほしいといった複雑な想いがあるのでしょう。何も怖くないなら、他の人には言わないと思いますから。

「その子が自ら援助交際をしたから悪い」とは言えない
援助交際について、「買った側だけが処罰されるのはおかしい」「子どもが自ら援助交際を持ちかけていたら、その子にも非があるのでは」という声があるようです。
藤原:どんな状況の子であっても、大人が「その子が自ら援助交際をしたから悪い」とは、絶対に言えないと思います。
しかし、私たちの社会には、子どもたちに自己責任論を押し付ける風潮があります。「彼女たちが16歳や17歳だとしても、性を売ると決断した事実を尊重するべきだ。だから被害者ではない」という世論も、一昔前までは特に強くありました。主に買春者、そして少女たちをビジネスにする斡旋者たちの詭弁ですね。
しかし、児童買春・ポルノの被害が深刻になり、被害児童の若年化も明らかになった上、子どもの貧困という大きな問題に日本中が直面している中、そんな認識は通用しません。
すごく切なかった話ですが、「援交する代わりに、コンタクトレンズの消毒液とレンズを買ってもらう」「メイク道具を買ってもらうために援交した」という子もいました。貧困は、子どもたちが性産業に取り込まれるひとつの大きな背景になっていると思います。
と同時に、先ほどお話しした通り、家庭の経済状況にかかわらず、家庭環境や孤独感が背景にある場合もあります。子どもたちは、援助交際をせざるを得ない状況に追い込まれているのです。

日本社会の構造にも何か原因があるのでしょうか。
藤原:自分の尊厳や権利、また、体や性のことに関する知識を身につける機会を、私たちは子どもたちに十分に与えていないと思います。学校や家庭で、自分の性や恋愛に向き合って話し合う機会は、日本では文化としても、制度としても、確立されていません。
子どもたちと性の話をしていると、いかに子どもたちが、漫画やネットで得る性の情報を頼りにしているかがわかります。商業目的で作られた大人の男性向けの性の情報に翻弄され、混乱しています。小学生でも性的搾取被害に遭っている現状がある今、性の権利や性と体の情報は早い段階から子どもたちに伝えていきたいものです。
瀬川:日本の過激なアイドル文化にも問題があると思います。未成年を含む若い女性が露出度の高い服を着て、テレビや雑誌で取り上げられ、社会的に大きな支持を得ているのを見ると、「ああいう見せ方が普通なんだ」「私もあんな風に注目されたい」と思う女の子も多いのではないでしょうか。
子どものときから女性を性的商品として宣伝するメディアや広告に触れていたり、日常的に痴漢被害にあっていたり、大人に援助交際を持ちかけられたり、裸の写真を送るよう要求されたりしていると、自分の体は需要があるとか、商業的価値があるということが、幼いながらもわかるんですよね。

外国の捜査官から「うちの国ではありえない」と言われた
援助交際がきっかけで、犯罪に巻き込まれてしまうケースもあるのでしょうか。
瀬川:子どもの性を買う行為である「援助交際」自体が犯罪だと思いますが、たとえば、性行為の様子が撮影され、ネットで配信されてしまった、というケースもあります。
藤原:「自分の裸の写真を送った相手から、恐喝されている」という相談も、2009年ごろから増えはじめました。お小遣い稼ぎや「周りの友達がみんなやっているから」という軽い気持ちで写真を送った結果、「ばらまかれたくなかったら、今度会わせろ」と脅されるなどの被害にあってしまうのです。
瀬川:アメリカでは、未成年ではない童顔のモデルが、ヌードで雑誌の表紙をかざると、「これは児童ポルノではないか」と一般市民から声があがって問題になります。
藤原:一方、日本では、「着エロ」と呼ばれる、15歳以下の女の子にヒモのような小さな水着を着せ、わいせつな行為をさせて撮影した動画の配信サイトやDVDレーベルが多数あります。需要もあります。そういう現状に対して、私たちのような団体はもちろん声をあげますが、一般の人が声をあげず、野放しにされているのが、アメリカなどとの大きな違いではないでしょうか。
日本では、電車の中吊り広告やコンビニで、水着を着た16歳の女の子が普通に雑誌のグラビアを飾ってますよね。欧米ではもちろんですが、他のアジアの捜査官からも、「これはうちの国ではあり得ない」と言われます。「日本のペドファイル(児童性虐待者)”文化”は深刻だ」と指摘されています。

ライトハウスに相談を寄せた人に対しては、どのようなサポートをしているのですか。
藤原:お話をうかがい、必要であれば、病院や弁護士などにつなぎます。親から極限までネグレクト(育児放棄)されていて、繁華街で男性に声をかけられて援交していたような子に対しては、児童相談所などの福祉につなげたこともあります。
また、相談を寄せてくれた子と引き続きつながっていくために、定期的にLINEで連絡を取っています。そのとき、「また援交するの?」「ダメだよ」などと責めるようなことを言うと、向こうから連絡を絶ってしまいます。本人を否定するようなことは言わず、「今日ご飯食べた?」とか、体調を気遣ったり、危ない目にあったらどこに連絡・相談すべきかといった、身を守る方法を伝えています。
瀬川:援助交際をしたり、性虐待を受けている子をそのままにしておくことが良いとは思っていません。本当は、すぐに駆けつけて、どうにか環境を変えてあげたい。もどかしいです。ただ、アクションを起こすタイミングは、すごく大事だと思っています。
親や周りの大人から暴力や性虐待を受けて、どんな大人も信じられなくなっている子が多いです。また、本人にある程度「この生活から抜け出したい」という意志がないと、私たちが介入しても、すぐ元の状態に戻ってしまったり、親との関係が余計に悪化する可能性もあります。
支援が途切れないように、少しずつ関係を深めていって、この先どういう支援につなげるべきかを慎重に考えながらサポートしています。

※ライトハウス・人身取引被害専用ホットライン
電話:0120-879-871(月~金/10時~19時)
メール:soudan@lhj.jp(24時間365日受付)
LINE: LH214(http://line.me/ti/p/VkQXNT_gFeよりアクセス)

あの人が「うつ病」を自覚できない最大の理由

東洋経済オンライン 2015年12月28日

「夫がうつ病かもしれないのですが、私がいくら言っても病院を受診しようとしてくれません。一体、どうしたらいいでしょうか?」
40代男性会社員の妻から、こんな相談を受けたことがある。その男性会社員は職場の人間関係で悩み、不眠や食欲不振など家族から見て「うつ病では?」と疑われるような症状がいくつか見受けられていた。そこで心配した妻が本人に精神科や心療内科の診察を勧めてみたところ、「俺を精神病棟に閉じ込める気か!?」と反発され、それをまったく聞き入れないのだという。
このケースに限らず、自分がうつ病かもしれないのにそれを認めず、みずからをいじめ続ける「うつ病予備軍」は多い。家族や会社の同僚など周囲から心配されても、頑として治療を始めない人だ。あなたの周りにもいないだろうか。

数百万人がうつ病を自覚できていない
この12月から、改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が多くの企業や役所などで義務付けられた。業種を問わず、常時使用する労働者が50人以上いる事業所は、従業員に対してストレスの程度を計測するアンケートのような調査を、毎年1回以上は実施しなければならない。つまり身体の健康診断と同じように、心の健康診断が義務付けられた。
これをめぐっては、「メンタル不調者をあぶり出そうとしているのではないか」という指摘もされている。確かにそうした側面も否定はできない。ただ、心の専門家の立場から見ると、そのリスクよりもはるかに重要な問題に手をつけるための制度であることは間違いない。それは何か。メンタル不調を患っている人に対し、その「自覚」を促すことだ。
そもそもどんな病気でも特別なケースを除いて、自覚がないのに病院を受診する人はいない。うつ病の治療においても同じだ。「当たり前だ」と思うかもしれないが、その当たり前が実現されないからこそ、うつ病の問題が解決しない。
最新の調査によると、通院しているうつ病患者数は約96万人(厚生労働省患者調査 2011)。ところが、世界保健機関(WHO)の調査から推計すると、日本のうつ病患者数は360万人から600万人いるとされる。まったく数が合わない。うつ病患者予備軍が、受診の必要性を自覚できず今も苦しんでいる。
筆者は心理カウンセラーという仕事のほかに、うつ病患者の家族を対象に、患者に対する接し方のアドバイスを行っている。言わば「接し方アドバイザー」でもある。その相談の約3割が、「家族がうつ病のような症状を訴えているが病院を受診してくれない」という本人の自覚に関する悩みである。冒頭の事例のように、精神疾患に対する一昔前のイメージから、受診を恐れる人は少なくない。
「本人が望まないのならそれでいいじゃないか」という意見もあるかもしれない。それでも不眠や食欲不振など症状を訴える患者をただ見守る生活というのは、家族にとって酷なものである。うつ病の治療には投薬と休養が必須だ。本当にうつ病だった場合、治療せず放っておいて良くなることはありえない。

うつ病になる人=会社にとって都合の良い社員
とはいえ、「治療が必要かもしれない」と認める行為はそれほど簡単ではない。これは「歯が痛くても歯医者に行きたくない」という心境と少し似ている。歯が痛いという以上に「治療が恐ろしい」のだ。「なぜもっと早く来なかったのか」と医師から咎められることが分かっているのにもかわらず、である。
治療の必要性をみずからなぜ自覚できないのか。その理由は、うつ病になりやすい人の性格傾向と深く関係している。その代表例を3つ挙げてみよう。

①「まぁ、いいや」と言えない完璧主義
仕事を完璧にこなさないと気が済まない。与えられた仕事は最後まで責任を持って「自身の心身がどうなろうと」まっとうする。

②決まりごとを絶対守ろうとする几帳面さ
ルールを守ったり、目標を達成したり、決まりごとを重視する傾向がある。柔軟な対応ができず、ストレスを溜めてしまうことが多い。

③無茶な要求に「NO!」と言えないお人好し
その場の空気を読む能力が高いという傾向がある。相手の期待が読み取れてしまうため、自身の気持ちより相手の要求を優先してしまう。

もちろん個人差はあるだろう。しかし、うつ病になりやすい人は「会社にとって都合の良い社員」であることは多い。過去にうつ病を患った私の妻も、この条件に見事当てはまっていた。大手通信企業の管理者であった妻は、過重労働や無理難題に対して「NO!」と言えない性格であった。責任感が強く几帳面、しかもNOと言わない。会社からすると使いやすい人材だったに違いない。

簡単に休めるような人はうつ病にならない
うつ病になりやすい人は、心身の不調があっても簡単に仕事を休んだりはしない。多くの精神科医はこう言うだろう。「仕事を減らしてもっと休みなさい」と。ただ、それが簡単にできる人はそもそもうつ病にならない。いくらつらくても仕事を優先してしまう人だからこそ、うつ病になるのだ。
「うつ病予備軍」の家族から受けた相談をまとめると、「治療が必要かもしれない」という自覚を彼らが拒否する理由のほとんどが以下3つに分けられる。

①仕事が忙しくてそれどころではない
「この仕事が落ち着いたら…」といつまでも言い続ける人は多い。しかしうつ病は、往々にして「休めない時期」に限って発症する病気である。

②人事考課や昇進に影響するのが恐ろしい
「会社にあるメンタルヘルス相談室」には行きたくないと訴える人も少なくない。「アイツは戦線離脱した」と思われるのが恐ろしいのだ。

③自分はうつ病になるほど弱い人間ではない
「警察官の夫がうつ病を治療してくれない」と相談を受けたことがある。「うつ病は弱い人間の病気だ。おれはうつ病じゃない」と抵抗していたという。

以上、3つの理由には共通点がある。「他者の評価を気にしている」という点だ。うつ病になりやすい人は周囲の声に対して敏感に反応する。「職場の人に迷惑がかかるから」という理由も、「仕事ができないと思われたくない」という他者の評価を気にする心理の裏返しである。
確かに、ある程度、他者からの評価は必要である。給料をもらって生活をするには、会社から見捨てられるわけにはいかないだろう。ただ「治療の必要性」を認めない限り、遅かれ早かれ、その時はやってくる。職場のストレスを我慢し続けた30代の男性会社員は、「突然、体がいっさい動かなくなった」と言う。心身の叫びを無視し続けたツケは大きい。

うつ病を自覚するかどうか? は本人次第
ストレスチェック制度は、会社側に課せられた義務である。厳密に言うと、労働者側にチェックを受ける義務はない。労働者はチェックや医師の面談を拒むこともできる。結局、ストレスチェック制度は単なる仕組みであり、その仕組みによって自分を守るかどうか、最終的な判断は本人に委ねられる。
自身のうつ病に気付く一つの指標が「残業時間」である。長時間労働でうつ病発症のリスクが2倍になるという研究結果も出ている(米科学雑誌プロスワン 2012)。こういった客観的で明確な基準があるのだ。思い当たる節があるなら、ストレスチェックを受験し、その結果を真剣に受け止めてみてはどうだろう。
実は、私の姉はうつ病を苦に自殺している。やはり真面目で責任感が強く、仕事もできるほうだったが、徹底的に「頑固」でもあった。最後に話をしたとき、「自分さえ我慢すれば何とかなる」と呟いたのを覚えている。周囲に迷惑を掛ける自分を最期まで許せなかったのだろう。しかし、残された家族としては「迷惑を掛けてでも生きていて欲しかった」、そう思わざるを得ない。
「自殺」は深刻な問題である。減少傾向にあるとはいえ、いまだ毎年2万5000人以上が自殺している。特定できた動機のうち、「うつ病」は常にトップだ(警察庁自殺統計 2014)。彼らは決して死にたかったわけではない。命を投じても解放されたいと願うほど苦しかったのだ。
会社の評価は大事だ。周囲に迷惑を掛けないに越したことはない。ただ、いずれも「生きていればこそ」の話である。「治療が必要かもしれない」という自覚は、生きるための第一ステップなのだ。
本記事のタイトルを一見して、あなたは誰を想像したのだろう。ひょっとしたらあなた本人かもしれないし、誰か思い当たる「あの人」がいるかもしれない。もし、「あの人」が、「治療が必要かもしれない」という自覚をためらっているのなら、あなたが背中を押してみてはどうだろう。人生は長い。潔く足を止めて治療に踏み切ることが、残りの人生を楽しく生きる最短の道であることを伝えてあげてほしい。