「いじめなどの対応に関心」が69% 内閣府調査

NHKニュース 2016年2月13日

内閣府が行った教育と生涯学習に関する世論調査によりますと、教育に関心がある人のうち69%の人が、いじめや不登校への対応などに関心があると答え、文部科学省は「大きな課題と受け止め、対応していきたい」としています。

内閣府は去年12月、全国の20歳以上の男女3000人を対象に、教育と生涯学習に関する世論調査を行い、55.1%に当たる1653人から回答を得ました。
それによりますと、教育についてのニュースや話題に関心があるか尋ねたところ、関心があると答えた人が80.9%で、ないと答えた人は18.7%でした。関心があると答えた人に、どのようなことに関心があるか、複数回答で聞いたところ、「いじめ、暴力行為などへの対応や不登校の児童・生徒への支援」と答えた人が69%と最も多く、次いで「道徳教育など豊かな心の育成」が54.7%、「学力の向上」が52.4%、「家庭での教育やしつけ」が51.3%でした。
また、生涯学習に関連し、機会があれば再び学びたいと思うものがあるか、複数回答で尋ねたところ、「外国語」が31.3%、「医療や福祉」が27%、「日本や世界の歴史・地理」が26.6%でした。
文部科学省は、「学校教育では、いじめや不登校への対応に非常に高い関心がみられた。大きな課題と受け止め、対応していきたい」としています。

子どもシェルター 支援減などで休止相次ぐ

NHKニュース  2016年2月14日

虐待などで家庭で暮らすことができない子どもたちを緊急に保護するため、NPOなどが運営している全国の「子どもシェルター」が、国などからの公的支援の減額や職員の確保が難しいなどの理由で、相次いで休止に追い込まれていることが分かりました。

虐待などで家庭で暮らすことができない子どもたちを一時的に保護する施設には、児童相談所の一時保護所がありますが、17歳までの年齢制限があるほか、定員がいっぱいで恒常的に受け入れができない地域もあります。
このため、弁護士が作るNPOや社会福祉法人が全国12か所に「子どもシェルター」を設立し、国や地方自治体から運営費などの支援を受けながら運営してきました。
ところが、今月、NHKが各施設に取材したところ、福岡のシェルターが運営費の不足を理由に開設から2年で、千葉のシェルターが職員が確保できないことを理由に開設から1年もたたずに休止に追い込まれるなど、現在3か所の施設が受け入れを休止していることが分かりました。
このうち福岡のシェルターは、特定の子どもに手厚く対応する必要が生じたため、ほかの入所者を受け入れられなくなりました。その結果、入所者数の基準が満たせず、国や自治体からの支援が1000万円ほど減額されることになり、運営に行き詰まったということです。
現在の制度では、一定の入所者数を確保しなければ翌年の公的支援が減額される可能性があるため、各施設からは、安定的な運営が難しいという声が上がっています。
現在運営している9つの施設のうち7つの施設も、子どもたちの生活費や人件費の確保に不安があり、今後の運営の見通しが立っていないと回答していて、公的支援の制度を運営の実態に合うよう見直してほしいと話しています。

子どもシェルターとは
「子どもシェルター」は、虐待を受けるなど家庭で暮らすことができない10代後半の子どもたちなどを緊急的に保護する施設です。入所した子どもたちは、周囲から知られることのない安全な場所で、専門のスタッフに見守られながら自立に向けた準備を進めます。
子どもたちを一時保護する施設は児童相談所の一時保護所がありますが、法律で17歳までの年齢制限があります。
このため、10代後半の子どもたちの居場所を作る必要があるとして、平成16年に初めて東京に子どもシェルターが開設されたのをきっかけに、全国で開設する動きが広がりました。

専門家「支援の仕組み 見直しを」
子どもシェルターの現状について、児童虐待の対応に詳しい明治学院大学の松原康雄教授は「一定の子どもの数を確保できないと公的支援が減額されてしまうので、職員の賃金を抑えざるをえなかったり、赤字が増えていくという悪循環に陥っている。それぞれの地域で必要性があって開設された子どもシェルターが休止に追い込まれるのは、かなり深刻なことだ」と話しています。
そのうえで、「子どもシェルターの運営を継続していくためには、こうした施設が必要だという視点から財政的な支援の仕組みを考えなければ、課題は解決できない」と、公的支援の制度を現場の実態に合わせて見直す必要があると指摘しています。

年間なんと800万トン! 日本はいつから「食品過剰廃棄」社会になったのか 「モッタイナイ」はどこへ?

現代ビジネス 2016年2月13日

ひとつの商品に異物が混じっていたら、同じ種類の数万食をすべて捨てる。1日でも賞味期限を過ぎていたら、すぐゴミ箱行き……。食の「常識」がそんな風に変わってしまったのは、いつからだろう。

年間800万トン
まだ夜も明けきらぬ午前4時30分。都内の某スーパーでは、商品の入れ替え作業が行われていた。
店先に、人の背丈ほどの高さに積まれた、青いプラスチックのトレイ。中には、売れ残った弁当や総菜がずらりと並ぶ。
「廃棄する食品は毎日業者さんが回収に来ます。最近は商品管理システムもありますから、驚くほどたくさんの廃棄が出る、というわけではないですが……」(店員)
同じような光景は、全国に星の数ほどあるスーパーやコンビニ、飲食店で見ることができる。
賞味期限切れの鶏肉や、「カレーハウスCoCo壱番屋」(以下ココイチ)で廃棄となった、異物混入の疑いがあるビーフカツなどの食材が、愛知県のスーパーなどへ産廃処理業者によって横流しされていた問題。
多くの国民は、「一度捨てられた食材で儲けるなんて、許せない」と、関係した業者らに激怒している。食材を転売していた「みのりフーズ」(岐阜県)の実質的経営者・岡田正男氏の、
「違法だとは思わない」
「昔は腐ったご飯も洗って食べた」
といった悪びれる様子のない言動も、火に油を注いだ。岡田氏に改めて話を聞くと、こう述べた。
「大いに反省しています。悪気があってしたことではないけど、たくさんの人に迷惑をかけました。
今は倉庫の片付けをしています。妻に言われて、離婚届にも判を押しました。子供からは縁を切られた。これから先、どうやって生きていこうか。期限切れだけど、倉庫には食べ物があるので、工夫しながら頑張ります。
私は8人兄弟の5番目で、小さな頃から腹一杯食べることなんてなかった。だからかな、食べ物を大事にするという意識が身についたんだと思います。期限切れでも保存状態が良ければ、問題ないものもいっぱいある。自分の目で見て匂いを嗅いで、食べられるかどうか判断するんです」
捨てられたはずの食品を売っていた岡田氏らの手口は、金儲けの手段としては許されるものではなく、批判されて当然だろう。
だが一方で、冒頭でも紹介したように、日々捨てられている食品の多くが、食べても問題ないものであることも事実だ。
現在、全国で廃棄される「まだ食べられる」食品の量は年間800万トン。東京ドーム6杯半といえば、いかに膨大か伝わるだろうか。これは、日本全国の米の年間生産量ともほぼ同じである。
おそらく、ココイチが異物混入の疑いで廃棄を決めた約4万枚、5・6トンのカツの中にも、食べられるものはあっただろう。

捨てないと叩かれるから
マーケッターでビジネスラボ代表の大西宏氏は、今回の事件で、世間の声に違和感を抱いたという。
「食品の横流しが違法なのはその通りです。しかし、産廃業者が横流しを長年の生業にできるほど、日々大量の『まだ食べられる食品』が廃棄されている事実がある。ある意味では、この現状を何とも思わないことのほうが、よほど病的だと思います。
あるワイドショーでは、この横流し問題を報じた後、『ピザの耳を食べるか食べないか』というテーマで出演者が議論を始め、中には平気で『食べずに捨てる』と語る人もいました。その感覚のほうがおかしいのではないか」
一昨年12月、群馬県のまるか食品が製造するカップ焼きそば「ぺヤングソースやきそば」にゴキブリが混入した事件では、4万6000個の商品を回収したまるか食品に対して「そこまでしなくても」「過剰反応だ」との声も少なくなかった。
だが、今回の事件では「もったいない」「業者だけが悪と言えるのか」といった意見を述べた人に対してまで、非難が浴びせられている。
たとえば、「ココイチは被害者だが、社会的責任は重い」と述べた愛知県の大村秀章知事や、フジテレビ系『とくダネ! 』で「シリアでは餓死している子どもたちがいる一方で、廃棄されている食品もある」と発言したキャスターの小倉智昭氏。ネット上で、彼らに寄せられた声は――。
〈もったいないと思うなら、お前らが全部食って処分しろよ〉
〈悪徳業者をかばうって、頭おかしいのか?〉
こうした匿名の意見が、「消費者が『安心』できない食品は、全て捨てて当然」という風潮をますます加速させる。
企業が何よりも恐れているのは、こうした非難の矛先が自社に向くことだ。もしココイチが、異物が混入した可能性のあるカツを客に出し、それが後で露見していたら。先ほど紹介したような悪罵は、すべてココイチに向けられていただろう。
「業績が悪化していたマクドナルドに追い討ちをかけ、日本法人株の一部売却まで追い込んだのも、一昨年の末に発覚した異物混入事件でした。それ以来、多くの企業が『少しでも危ない商品は、全部廃棄しよう』と考えるようになった。
でも常識的に考えれば、異物が混じった商品に出くわしたとしても、メーカーに連絡して交換してもらえば済むはずでしょう。不祥事を隠す企業は許してはなりませんが、消費者の側も、過剰反応を戒めることが必要ではないか」(前出・大西氏)
異物混入への不安に加えて、消費者の間で「賞味期限切れ=食べられない」という考え方が当たり前になったことも、廃棄の増加に拍車をかけている。消費者問題研究所代表で、食品表示に詳しい垣田達哉氏が言う。
「現在、小売店では製造から賞味期限までの期間の3分の2を過ぎると売り場から下げるという暗黙のルールがあります。また、『賞味期限が近い商品を売って万が一問題が起きては、経営危機にもつながりかねない』と、特に大手企業の間で、早めに処分する傾向が強まっているのです」
ある大手スーパー役員も、こう明かした。
「商品が完売したら終わり、つまり『売り切れ御免』にすれば、廃棄量は今の5分の1まで減らせるでしょう。しかし、それをやったら文句を言うのは消費者です。『せっかく買いに来たのに、売り切れとは何だ』と。だから、廃棄が出るのを覚悟で商品を並べるしかない。
延びる一方の営業時間も問題です。深夜でも、商品を極端に減らすわけにはいきませんから、やはり廃棄が増えることになる。完全な悪循環です」

過剰廃棄社会
もちろん一部には、ムダをなくそうという動きもある。NPO法人「セカンドハーベスト・ジャパン」では、廃棄される予定の野菜や加工食品、米・パンなどを企業から引き取り、児童養護施設や福祉施設に提供する活動を行っている。
「企業の側には、廃棄を減らしたいと思ってもなかなか難しい現状がある。一方で、近年は子供や高齢者の貧困問題など、日本国内でも食料が足りていないことが目に見えるようになっています。
私たちが扱う食品は、もちろん違法に横流しされたものではないことを確認しています」(同法人スタッフ・田中入馬氏)
健康被害が出てからでは取り返しがつかない以上、「食の安全」は確かに大切だ。しかし、今の日本は明らかに「過剰廃棄社会」に陥っているのではないか。ココイチのカツを転売した「みのりフーズ」の岡田氏は、本誌にこうも漏らした。
「日付だけ見て、すぐ捨ててしまうなんて、もったいないですよ。今の日本人は食べ物の有り難みを忘れてしまったのかな。皆さんも、特売で買いすぎた食材を、結局捨てることがあるはずです。本当にもったいないです」
彼は悪事を犯したが、その言葉には、一片の真実も含まれている。食文化史研究家の永山久夫氏はこう指摘する。
「驚いたのは、『みのりフーズ』が横流ししていたという食品の中に『賞味期限切れのみそ』が含まれていたことです。みそは発酵食品ですから、本来、賞味期限などありません。昔は7~8年は平気で使っていたものです。
食べ物が腐っているかどうかなんて、本当は自分の五感で確かめればいいことです。今は日本が豊かですから、皆『食品は安全で当たり前』と思っているかもしれませんが、今後はTPPに加入するわけだし、未来永劫安全な食品だけが出回るとは限らないでしょう。そうなった時、今の日本人は自分の身を守ることができるのでしょうか。
それに、食料自給率40%以下の日本で大量の廃棄を出し続けるなんて、エコじゃありません」
日本人ならば普通に持っていたはずの「食べ物を粗末にしてはいけない」という常識。今、それが麻痺し始めているのは間違いない。

貧困、虐待…子ども巡る今昔

読売新聞 2016年2月15日

失われた他人への気遣い
『ルポ 消えた子どもたち』は話題となったテレビ番組〈消えた子どもたち〉のNHK取材班がまとめた衝撃的な本だ。5歳でアパートに放置され、7年余り後に白骨化して発見された少年の事件を知り、子どもの事件を各施設に問い合わせたのが始まり。団地一室に閉じ込められ、18歳で逃げた少女の事件も知り、彼女への取材から事情を掌握する。18歳ながら発見時は小学生にしか見えなかったほど成長が止まり、母親からは産みたくなかった子となじり続けられたという。
更に驚くのは、全国の児童相談所や児童養護施設などへの問い合わせで十年間に1039人の子どもが、保育園や学校に通えず、社会から消されていた事実だ。しかも保護されぬ子や無回答の施設もあり、千人強の子も氷山の一角に過ぎない。では親の状況は。貧困、自らも虐待を受けた者、精神疾患などが原因で単純に親が悪いとはいい切れない。精神疾患の母親の世話で学校に行けなかった子もいた。
しかも施設収容後も彼らは人との交際が上手うまく出来ず、勉学の遅れに悩み、就職も難しい。悲惨なのは虐待された記憶が蘇よみがえり、パニックに陥り、自暴自棄になることだ。
この結果、施設を飛び出て、5年後に自殺した女の子もいる。彼女が施設を出た際に残した手紙には、「本当に弱い人はやらっれぱなしのイジメられた人ではなく、一人では行動できず、イジメで強さを表し、多数で行動して認められたい人だと私は思います。人を守って自分ががまんして来た人こそ素てきな人だと思います」と書かれていた。
河合雅司著『日本の少子化 百年の迷走』は明治以降の人口問題を軸に、なぜ現在、少子化が進んでしまったのかを解き明かす。元々、日露戦争に勝利し、人口は増え始める。特に第一次大戦時はヨーロッパへの輸出が増え、工業化が進み、一気に人口増加は進み、当時は人口増加の解決策が問われた。工業振興で更に富を増やし食糧輸入で人々を養う策、植民地拡張策、移民を奨励する策が考えられた。産児制限をする策も話題となったが、戦争への機運が高まるにつれ〈産めよ殖やせよ〉の標語通りに人口抑制は忘れ去られる。

敗戦後、団塊の世代以降も人口が増え続け、日本が再び領土拡張策に進む可能性をGHQは危惧し、産児制限の普及が急務となる。そのためGHQは様々な策を弄し、産児制限をPRし一般化させ、戦後のベビーブームから一転して少子化の途みちを突き進む。
そして今、政府は少子化対策に取り組むようになった。ともあれ本書を読むと、政治が子どもの数をコントロールしてきた事実がよくわかる。
では消えた子どもたちの問題も政治的解決しかないのか。実際、子どもたちを見守る目の網を細かくする試みが行政から始まっている。しかし私たちは今一つ忘れてしまったことがあるのではないか。
『忘れられた子どもたち』は民俗学者宮本常一が間引き、堕胎、貰もらい子、棄すて子など貧しさ故に日本各地で行われていた実態を取材した文を再編集した本。だが、悲惨な記述ばかりではない。故郷の周防大島で子どもの頃、毎朝聞いた神社で祈る母親たちの声、我が子が亡くなる直前に氏神へ自身が祈った経験、子どもの行く末を祈る実母と祖母の記憶も綴つづっている。
昭和14年、出雲の海岸の村で泊めてくれた家の母親が、息子の出征以来、「近隣の神社への参拝を欠かしたことはないが、他人への親切も平常以上に心がけている」という言葉も聞き取っている。この母の祈りは、パニック後に自殺した少女が残した手紙の言葉と響き合っていないか。
三冊で改めて感じたのは政治的解決以前に、私たちが失い、忘れたのは子と他人を気遣う祈りの心ではないか、と。